HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

L.F.J.Japanスタート/第1日目『名手達による彩りのコンチェルト』鑑賞

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 今日(5/4木・祝)から5月6日(土)まで、三日間の日程で、「ラ フォルジュルネ(L.F.J.)」が、実に4年振りに無事開演されました。会場の東京国際フォーラムには、多くの音楽聴衆が集まり、コロナ禍以前の賑わいをみせています。


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コロナ感染が下火になり外国からの演奏者、聴衆もかなり参加出来る様になった会場は、様々な言葉が飛び交って、将に「国際フォーラム(= forum :古代ローマの公共広場。集会所)」の様相を呈していました。以前と同じ様に、臨時の飲食店も数多く設営され、野外演奏会場では、admission freeのさまざまな演奏が為されていました。”お一人さま”だけでなく、親子連れや友人と覚しきグループも多く、食べたり飲んだり、聴いたり、フォーラムの広場は、人混みでビッシリでした。こうした光景を見るのも久しぶり、自分としても、若い頃を思い出しながらも、もう若くはないのでここはざっと一瞥してスルー、予定していた演奏会場に直行しました。今回の三日間の演奏日から各日、一番聴きたいと思った演奏を、一つだけピックアップして、聴くことにしました。今日(5/4)聴いたのは、以下に記した演奏会です。

 

◎名手達による彩りのコンチェルト

【主催者言】

 ベートーヴェンが憧れのパリの流行に乗った華麗な協奏曲と、高弟ツェルニーが補筆した遺作を。

【日時】2023.5.4.(木)18:00~

【会場】東京国際フォーラムAホール

【管弦楽】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【指揮】松本宋利音

【出演】

〇谷口知聡(Pf.)


 〇辻彩奈(Vn.)

〇レミ・ジュニエ(Pf.)

 

 

 

〇伊東裕(Vc.)
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【曲目】

①ベートーヴェン:ピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 WoO6

(曲について)

・ベートーヴェンが1793年に作曲した作品。元々は「ピアノ協奏曲第2番」の終楽章にする予定で構想されたものであった。カール・チェルニーが独奏パートを補筆完成させ、アントン・ディアベリの出版社から1829年に出版された。


②ベートーヴェン:ピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲 ハ長調 op.56

(曲について)

ヴァイオリンソナタ第9番『クロイツェル』、ピアノソナタ第21番『ワルトシュタイン』、ピアノソナタ第23番『熱情』、交響曲第3番『英雄』などが書かれた時期の作品であるが、今日ではあまり評価が高くない。ピアノ三重奏を独奏楽器として管弦楽と対置するという発想は意欲的なものであったが、ベートーヴェンはそれを十分に処理しきれずに終わった、というのが一般的な評価である。このように作品自体が凡作と見なされている上に、独奏者を3人も必要とすることから、演奏の機会は非常に少ない。とはいえ、あくまでベートーヴェンの中期の作品との比較で見劣りがするということであり、古典派協奏曲の様式に則った充実した作品である。なお、当時チェロを伴った協奏曲はほとんどなく、ベートーヴェンの師匠であるハイドンが残した第1番、第2番のチェロ協奏曲などが見られるくらいで、ベートーヴェン自身もチェロ単独で独奏楽器とした協奏曲を残していない。本作はベートーヴェンが残した唯一の、チェロを伴った協奏曲である。

 

 

【演奏の模様】

 今日の会場ホールAは、国際フォーラムの複数のホールの中でも、一番大きい座席数5000を超えます。自分の座席は1階30番台の中央付近でした。東京文化会館だと1階席の最後部位にあたりますでしょうか?ただ会場に入ってみれば分かることですが、横にも自分の席の後ろにも随分と広い空間が広がっていて、以前から思っていることですが、ここではクラシック音楽の音響を観客が耳で拾うのはそう簡単ではないだろうという事でした。国際会議等を念頭に置いて建てられたものですから。

 最初の演奏は、ピアニストの谷さんがオーケストラをバックにコンチェルト風の演奏を披露しました。

ベートーヴェン:ピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 WoO6

 プログラムノートにも記載があります様に、もともとこの曲はピアノコンチェルトの一部であったものを、コンチェルトに使われなくなってしまったので、ツエルニーが加筆してタイトルの様な独立した曲となった経緯があり、10分程度の短い曲です。従って谷さんの演奏も、オーケストラと協奏する雰囲気は残っているものの、オケに対して競争的な色彩が出てしまい、冒頭など弾き急いでいるせっかちな感じを受けました。他のベートーヴェンのコンチェトの様な纏まりには欠ける演奏の印象を受けました。また谷さんの演奏は、軽やかで綺麗な音を立てている時もあるのですが、全体として音がとても小さく聴こえました。これは演奏に原因があるというよりも、ホール自体の問題が大きいのでは?と思われます。文化会館でも、サントリーホールでも、池袋芸劇でも、ミューザでも横浜みなとみらいホールでも、こうした小さな音のオーケストラの響きを聴いたことがありません。遠い100mも先の箱庭の動きを見ているよう」な感覚でした。

 

②ベートーヴェン:ピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲 ハ長調 op.56

 今日のトリオを見ると将に若手の名手達と言ってもいい顔振れです。

1.Allegro

2.Largo

3.Rondo alla polacca

 

 アレグロでピアノが愛らしい主題を奏でて開始しました。ピアノのスケールによる装飾的音形を奏でた後、テンポはゆっくりとアンダンテになります。しばらく穏やかに推移し、次にピアノがアルペジオ主体の装飾的音形を奏でてかなり速いアレグロに戻りました。全体としては40分にも及ぶ長い曲でしたが、特筆すべきはトリオのVcとPfの音質が最初から最後までとても美しく聴こえたことです。辻さんのヴァイオリンの音は、前半谷さんのピアノと同じ様な印象を受けましたが、これは会場のせいもあったのでしょう。後半の辻さんは、見違える様に強くしっかりした、しかもパッセジによってはヴァイオリンの魅力を遺憾なく発揮する美しい調べを立てていました。三者とも三重奏曲としては、ソロ、重奏、合いの手、カノン的推移などあらゆる技法、例えばベートーヴェンのカルテットで見られるようなテクニックを駆使してトリオを立派に成立させていましたが、「協奏交響曲」としての試みは、曲本来の構造からも(トリオを一つのパートと看做す交響曲のオーケストレーションとしても)駆け引き、タイミング性、両者の協同性などなどに於いていま一つの感じを抱きました。でも三者三様の(カデンツアを含めた)ソロ演奏のおんしょくは非常に優れたものを聴くことが出来て満足しました。特にピアノ演奏の音楽性の良さには感心しました。


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 尚、ベートーヴァンには、『ピアノ、クラリネットとチェロのための三重奏曲』や、『二本のオーボエとイングリッシュホルンのための三重奏曲』などもあって、これらの曲はペトレンコ指揮ベルリンフィルのメンバーの演奏で、聴くことが出来ます。(ベルリンフィル・デジタルコンサートホール)