HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

L.F.J.第2日目『ピアノ三重奏曲第7番≪大公≫』を聴く

【日時】2023.5.5.(金・祝)15:00~

【会場】東京国際フォーラムホールC

【出演】神尾真由子(Vn.)萩原麻未(Pf.) 横坂源(Vc.)



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【曲目】

①ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 op.97 「大公」

 巨きさと気品と。べートーヴェンが恩人に捧げた偉大なる名曲。ピアノの名手でもあった芸術庇護者ルドルフ大公に献呈された、格調高きピアノ三重奏曲。

(曲について)

 ルドルフ大公に献呈されたため、『大公』と通称されて親しまれている。その通称にふさわしく、優雅さと堂々とした気品がある曲想で、ピアノ三重奏団には必須のレパートリーとなっている。

 ルドルフ大公はアマチュア・ピアニストとしては相当の水準にあったといわれ、ヴァイオリンソナタ第10番の初演も行っている。本作もピアノが主役を演じており、作曲者と献呈先との身分を越えた芸術的なつながりが指摘されている。

 初演は1814年4月11日にウィーンのホテル「ローマ皇帝」(Zum römischen Kaiser)で行われた。ベートーヴェン自身がピアノを弾き、ヴァイオリンはシュパンツィヒ弦楽四重奏団を率いていたイグナーツ・シュパンツィヒが、チェロはヨーゼフ・リンケが弾いたが、この当時ベートーヴェンは耳がほとんど聞こえなかったために、他の2人の音をかき消すほど乱暴な音で弾き、演奏そのものは決して良くなかったと言われている。これを最後に、ベートーヴェンは公の場での演奏をしなくなったという。
 

【演奏の模様】

 ベートーヴェンのピアノ三重奏曲は、全部で13曲位ありますが、この『大公』は、通し番号付きの最後の曲、第7曲で、ベートーヴェンが耳の病気がかなり悪化した1811年に書かれました。しかしその内容は、贈呈されたルドルフ大公も満足したといわれる充実した内容でした。全四楽章構成です。演奏時間は約40分。

第1楽章 アレグロ・モデラート

第2楽章 アレグロ

第3楽章 アンダンテ・カンタービレ

第4楽章 アレグロ・モデラート - プレスト

 

今回の演奏は結論的には、三者の高度な技術に裏打ちされた完成度の高い演奏でした。

 ピアノが中心となる三重奏曲ですが、萩原さんのピアノ演奏を支え、盛り上げた神尾さんのヴァイオリン演奏はさすがでした。特に第3楽章冒頭のビアノが緩やかで厳かな調べを謳い始めると、ヴァイオリンは、重音の響きでそれに応じ、続く横坂さんのチェロの低音弦の響きが下支えをして、三者の斉奏アンサンブルは、将に三重奏曲の魅力を伝える素晴らしいものでした。いつも三重奏を組んでいる訳ではない奏者が、これ程息が合った演奏が出来るということは、やはり、普段から相当慣れ親しんだ合奏をしている証しではなかろうかと思いました。勿論即座に相手の音を読みそれに瞬間的な応答が出来るテクニックというかセンスを皆さん身につけているのでしょう。それが端的に現れていた箇所をもう一つ例示すれば、四楽章の曲終焉の最後の最後、三者の終焉一つ前のアンサンブルが止んで、瞬間的に一呼吸置いて、萩原さんは、他の二人を目だけ動かして一瞥し、神尾さんが、僅かに振り返って頭で微かな合図を送って、横坂さんも含め三者は最後の一音を絶妙のタイミングで、完璧に音を合わせて演奏を終えたのでした。かくの如く指揮者にたよれない室内楽アンサンブルは、アウンの一致が如何に大事かということを、痛感させられます。

 なお参考まで記しますと、ベルリンフィル・デジタルコンサートホールで見れるベートーヴェンの三重奏などの室内楽演奏では、何と指揮者のペトレンコが指揮をしていました。指揮者がいれば、奏者は安心して演奏に没頭出来るのでしょうね、きっと。

 演奏が終わった三人の演奏者には、この1500人は入る大きなホールを埋め尽くした観衆から盛大な拍手が送られました。声援も飛び交っていた。
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矢張り聴きに来た甲斐がありました。