HUKKATS hyoro Roc

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オペラ速報/春音楽祭《ニュルンベルクのマイスタージンガー》

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【日時】2023年4月6日 [木] 15:00開演
【会場】東京文化会館 大ホール 

【演目】ワーグナー:楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》(全3幕) 
上演時間:約5時間30分(休憩2回含む)

【管弦楽】NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・ キュッヒル)

【指揮】マレク・ヤノフスキ

〈Profile〉

 生後間もなくからドイツで育ち、ヴッパータールで初等教育、中等教育を受けた。15歳の頃には、パウル・ヒンデミットが指揮するオーケストラでヴァイオリンを弾いたこともあった。その後はケルン音楽大学にてヴォルフガング・サヴァリッシュに指揮法を師事した。フライブルクやドルトムントの歌劇場で音楽監督を務めた後、欧米各地のオーケストラを指揮している。ベートーヴェンやワーグナー、ブラームス、リヒャルト・シュトラウスを得意とする。

また、シュターツカペレ・ドレスデンは1970年代に、オペラのレパートリーのクオリティを維持するためにエテルナ・レーベルで一連の録音を行ったが、ヤノフスキは指揮者陣の1人として選出され、『ニーベルングの指環』を録音した。なお、同時期にヘルベルト・フォン・カラヤンが『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を、カルロス・クライバーが『トリスタンとイゾルデ』と『魔弾の射手』を録音している。

1984年より2000年までフランス放送フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務め、極めて高い評価を得る。2000年から2006年までモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務め、2001年から2003年にはドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者も兼任していた。2005年より2012年までスイス・ロマンド管弦楽団の音楽監督を務めた。

2016年、2017年、バイロイト音楽祭で『ニーベルングの指環』を指揮。

2019年より再びドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務める。

【合唱】東京オペラシンガーズ  /他

【合唱指揮】エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩

【音楽コーチ】トーマス・ラウスマン

 

【配役・出演】

〇ザックス(バス・バリトン):エギルス・シリンス


〇ポークナー/夜警(バス):アンドレアス・バウアー・カナバス

 

〇ベックメッサー(バリトン):アドリアン・エレート


〇フリッツ・コートナー(バス・バリトン):ヨーゼフ・ワーグナー


〇ヴァルター(テノール):デイヴィッド・バット・フィリップ


〇ダフィト(テノール):ダニエル・ベーレ 


〇エファ(ソプラノ):ヨハンニ・フォン・オオストラム


〇マグダレーネ(メゾ・ソプラノ):カトリン・ヴンドザム

 

〇クンツ・フォーゲルゲザング(テノール):木下紀章


〇コンラート・ナハティガル(バリトン):小林啓倫


〇バルタザール・ツォルン(テノール):大槻孝志


〇ウルリヒ・アイスリンガー(テノール):下村将太


〇アウグスティン・モーザー(テノール):髙梨英次郎


〇ヘルマン・オルテル(バス・バリトン):山田大智


〇ハンス・シュヴァルツ(バス):金子慧一


〇ハンス・フォルツ(バス・バリトン):後藤春馬

 

 

【上演速報】

※外国人歌手陣、総じて高いレヴエルの歌唱でした。

〇ヴァルター(テノール)役のデイヴィッド・バット・フィリップ

一幕の最初のアリア「冬の日の静かな炉端で城は雪に閉ざされていまし・・・」を歌いました。最初の1/3位までは、発声が波に乗らない感じでしたが、中盤までには本来の力を発揮し出してきて、最後、「・・・湧き上がる言葉と調べが僕に流れ込んでくる。それをマイスター歌曲に仕立て、僕の知識のほどを見ていただきたいと思います。」と歌い終わる頃には見違える様に、声にも張りがでて、美声のテノールを張り上げていました。その後は順調に歌声を響かせ役割を立派に果たしていました。時々声が伸びない時も散見しましたが、あれは、三幕最後の歌合戦での大舞台のアリアのために余力を溜めていたのでしょう。最後は誠に申し分ない素晴らし歌唱を披露したフィリップでした。

 

〇ザックス(バス・バリトン)役のエギルス・シリンス  

この演目は2021年11月に見ましたが、あの時のザックスは、歌はうまいのですが、何か覇気が無く少し物足りなさを感じました。それに比し、きょうのシリンスは、声量も声の張りも充分で、ザックス役としては申し分ないバリトンだったと思いました。勿論昨日、ブリン・ターフェルが、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から歌ったのを聴いていて、同じ歌だったのでどうしても思い出して比較してしまいますが、それには触れません。今回の歌をあちこち聴くと、ザックス親方は、エーファと相思相愛に近い時期があったことは以前から知っていましたが、それに流されなかったのは、エーファには、もっと若い人が現れて、愛し合いそして結婚すべきだと、セルフコントロールが効いたからだということと、何事も極端に走らず自重し、何が共同体の皆の利に叶うかを常に考え、それにもとる悪さの種は、前もって除去する、そのための決断力も兼ね備えた、マイスタージンガーであったことを再認識しました。それだからこそ合唱が歌合戦の時、ザツクス親方を讃えて「万歳、万歳」という掛け声で歌ったのでしょう。(ふつう、この掛け声は、王様、皇帝、天皇に掛ける歓声です)

 

〇エファ(ソプラノ)役のヨハンニ・フォン・オオストラム  

エファ役のオオストラムは、言わば才色兼備、才とは歌唱力、色とは美しさのこと、これは所謂る外見だけの美でなく内面の知性からにじみ出る美です。

 

〇ポークナー/夜警(バス):アンドレアス・バウアー・カナバス

この配役は、これまで聴いた限りでは、当たり外れがありません。今回のボーグナー役カナバスもエーファの父親役として適役でした。低いが余り内にこもらない声で、歌合戦の優勝者に全財産と、一人娘をゆだねと宣言する一幕最初のアリア、三幕の歌合戦の前段で、ザックス親方が宣言して歌う娘に関する事項に、感謝の意を表して歌うボーグナー役カナバスの歌唱力は、ザックス役シリンスに匹敵する立派なバスでした。

 

 

〇ベックメッサー(バリトン)役のアドリアン・エレート

エレートは中々上手なバリトンでしたが、バリトンと言っても、高音の歌は、テノールと紛う程の柔軟さも兼ね備えていました。歌合戦で唱うアリアの前半で、その歌唱の素晴らしさが分かります。ただ、役回り上どうして損な役ですね。悪役に仕立てられ(自分の性格から起因するところもあるのでしょうが)散々な目に会うのは、可愛そうなぐらい。

 

そのほかフリッツ・コートナー(バス・バリトン)役のヨーゼフ・ワーグナーやダフィト(テノール)役ダニエル・ベーレ また小林さんや大槻さん、下村さん、金子さん、高梨さん、後藤さん達日本人歌手も出番は少ないですが、堅実な歌唱で健闘していました。

 一方、この演目でも合唱団の役割は大きく、一幕では、バックコーラスでしたが、二幕と三幕の終盤でオケの後ろのひな壇に、男声 女声合計70人はいたでしょうか?登壇し、オーケストラに合わせて又は合唱のみで、男声、女声、混声を場面に応じて使い分け歌っていました。

 

また何と言っても、今回の白眉は、ヤノフスキ指揮のN響の演奏でした。三管編成(Ob.Cl. は2. Fl.2+Picc.1 Hr.5) 弦楽五部14型。

この楽劇の曲のうちでは、前奏曲が世界で最も良く知られたメロディーの一つと言っても過言でないと思います。恰好いいですネ。迫力もあるし威風堂々としています。大抵のプロオケであれば、いい演奏をします。’今日のヤノフスキN響は出だしから絶好調。弦楽アンサンブルは、分厚く、管と弦の調和も絶妙、昨夜も同じく聴いた東響のやや雑然とした前奏曲演奏とは、大違いでした。

終演後は割れんばかりの大拍手と歓声のどっという音に大ホールは地響きを立てました。自分も手を叩き過ぎて、手の平が赤くなる程でした。