HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

NNTTオペラ/オフェンバック『ホフマン物語』三日目鑑賞

 このオペラはオッフェンバックの唯一のオペラとして1881年に完成・初演されました。三つのショートストーリから成り、ホフマンはその語り部であると共に、物語に主体(メインキャスト)として登場します。要するに自分の体験談を語るのです。

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【鑑賞日時】3日目鑑賞 2023.3.19.(日)14:00~

【会場】NNTTオペラパレス

【演目】ホフマン物語(Les Contes d'Hoffmann)、仏語、全五幕3時間40分(第1・2幕75分 休憩30分 第3幕50分     休憩30分 第4・5幕40分)

【公演期間】2023年3月15日(水)~3月21日(火・祝)全4日間

【管弦楽】東京交響楽団

【指 揮】マルコ・レトーニャ

【合 唱】新国立劇場合唱

【合唱指揮】三澤洋史

【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー
【衣 裳】アンドレア・ウーマン
【振 付】上田 遙
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】須藤清香

【主催者言】

  観るものを幻想の世界へ誘う、
  詩人ホフマンの3つの恋物語

光の魔術師"フィリップ・アルローの演出による幻想的恋物語

『ホフマン物語』は『天国と地獄』などを生んだ世紀末パリのオペレッタ王オッフェンバック(hukkats注)唯一のオペラ作品で、ドイツ・ロマン主義の作家E.T.A.ホフマンによる3つの物語をモチーフとし、ホフマンが用いた"現実と幻想の二重性"がそのままオペラの物語と渾然一体となった、珠玉の傑作です。ホフマンをめぐる3人の女性、恋物語を破滅に導く悪魔的な存在、芸術の女神ミューズ。謎めいた夢幻の物語が、オッフェンバックのメロディックな音楽で次々に展開し、有名な「ホフマンの舟歌」、ホフマンの歌、ホフマンの歌う「クラインザックの歌」、コロラトゥーラ・ソプラノの見せ場であるオランピアのアリア「生け垣に鳥たちが」など、聴きどころも満載です。
アルローにとって新国立劇場での演出第一作となった本作品では、ウィットとユーモアいっぱいの衣裳や、黒い舞台空間に蛍光色を効果的に配して原作の幻想性を醸し出し、作品に一層の深みをもたらしています。
指揮はブレーメン・フィル音楽総監督のマルコ・レトーニャ。ホフマンには"新世代のテノールの王子"と称されホフマン歌いとして大成功を重ねるレオナルド・カパルボ、悪役4役には世界屈指のバス・バリトンのエギルス・シリンスが登場します。う「クラインザックの歌」、コロラトゥーラ・ソプラノの見せ場であるオランピアのアリア「生け垣に鳥たちが」など、聴きどころも満載です。
アルローにとって新国立劇場での演出第一作となった本作品では、ウィットとユーモアいっぱいの衣裳や、黒い舞台空間に蛍光色を効果的に配して原作の幻想性を醸し出し、作品に一層の深みをもたらしています。
指揮はブレーメン・フィル音楽総監督のマルコ・レトーニャ。ホフマンには"新世代のテノールの王子"と称されホフマン歌いとして大成功を重ねるレオナルド・カパルボ、悪役4役には世界屈指のバス・バリトンのエギルス・シリンスが登場します。

オペレッタ王オッフェンバック(hukkats注)

オフェンバック(1819-1880)はプロイセン王国ケルンの出身で、フランスに帰化(41歳)、独語、仏語に通じていた。生涯で100以上のオペレッタを作った。ロッシーニは彼のことを「シャンゼリゼのモーツァルト」と称した(彼はシャンゼリゼで自前の劇場(ブッフ・パリジャン座)を経営していて、自分の作品を上演していた)。彼の作品は、第二帝政(ナポレオン2世下)の軽佻浮薄な世相を反映しており、次第に忘れ去られて行ったが、200周年記念となった2019年を契機に見直されてきている。「ホフマン物語」はドイツの作家E.T.A.ホフマンの『砂男』から第2幕「オランピア」を、同作家の『顧問官クレスペル』から第3幕「アントニオ」、同じく『大晦日の夜の冒険』から第4幕「ジュリエッタ」を着想している。尚、有名なバレエの演目『コッペリア』は同じ『砂男』から題材が取られている。

 

【登場人物】

人物名

声域

原語名

ホフマン

テノール

Hoffmann

詩人

リンドルフ※1

バリトン

Lindorf

ニュルンベルクの顧問官

上院議員

コッペリウス※1

バリトン

Coppélius

スパランツァーニの敵手、人形師

ミラクル博士※1

バリトン

Le docteur Miracle

医者(悪魔的)

ダペルトゥット船長※1

バリトン

Le capitaine Dapertutto

魔術師

スパランツァーニ

バリトン

Spalanzani

発明家、科学者

クレスペル

バス

Crespel

アントニアの父親、

楽器職人

ペーター・シュレミール

バリトン

Peter Schlemil

ジュリエッタの情夫

ホフマンの恋敵

アンドレス※2

テノール

Andrès'

ステラの召使

コシュニーユ※2

テノール

Cochenille

スパランツァーニの召使

フランツ※2

テノール

Frantz

クレスペルの召使

ピティキナッチョ※2

テノール

Pitichinaccio

ジュリエッタの下男

ジュリエッタと駆け落ち

ルーテル

バス

Luther

酒場のおやじ

ナタナエル

テノール

Nathanaël

学生

ヘルマン

バス

Hermann

学生

オランピア

ソプラノ

Olympia

自動人形

アントニア

ソプラノ

Antonia

歌手、クレスペルの娘

肺を病んでいる

ジュリエッタ

ソプラノ

Giulietta

ヴェネツア高級娼婦

ミューズ※3

メゾソプラノ

La Muse

詩の女神

ニクラウス※3

メゾソプラノ

Nicklausse

ホフマンの友人

アントニアの母の声

メゾソプラノ

Voix de la mère d'Antonia

ステッラ※4

ソプラノ

Stella

歌手、歌姫

※1、2、3はそれぞれ同一のキャストが演じる。

 

 

【出演】
○ホフマン:レオナルド・カパルボ

 

○ニクラウス/ミューズ:小林由佳

○オランピア:安井陽子

○アントニア:木下美穂子

○ジュリエッタ:大隅智佳子

○リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:エギルス・シリンス

○アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:青地英幸

○ルーテル/クレスペル:伊藤貴之

○ヘルマン:安東玄人

○ナタナエル:村上敏明

○スパランツァーニ:晴 雅彦

○シュレーミル:須藤慎吾

○アントニアの母の声/ステッラ:谷口睦美

 

【粗筋】

《第1幕(プロローグ)》

ルーテルおやじの酒場。月明かりだけがある夜。酒の精とともにミューズが登場。詩人ホフマンの心を占める歌姫ステラに対抗するべく、ホフマンの親友ニクラウスの姿に変身する。

酒場に主のルーテル、ボーイが登場する。オペラ《ドン・ジョヴァンニ》の幕間に来る客を迎える準備をする。そこに顧問官リンドルフとステラの付き人アンドレスが登場。リンドルフは金でステラのホフマンへ向けた恋文をアンドレスから買う。恋敵のホフマンをリンドルフは酒場で待ち受けることにする。学生たちの陽気な一団が酒場に飛び込み、大いに騒ぐ。そこにホフマンとニクラウスがやってくる。学生たちにせがまれてホフマンは陽気なクラインザックの物語を歌うが、途中で恋しいステラの面影を歌うようになる(シャンソン(クラインザックの伝説「むかしアイゼナッハの宮廷に……」)。学生のナタナエルに恋をしているのかとからかわれたホフマンは否定するが、リンドルフがそれを揶揄する。ホフマンは重ねて否定し、いかに自分に運がないか、自らの恋物語を訊きたいか、と学生たちに尋ね、学生たちはオペラもほったらかしに話をねだる。

 

 

《第2幕(オランピア)》

物理学者のスパランツァーニの書斎にホフマンが尋ねてくる。スパランツァーニはホフマンが詩人の道を捨て、科学者になる決心をしたことを喜び、今日は娘のオランピアを社交界におひろめするのだと述べ、助手コシュニーユとともに酒造へ向かう。

ホフマンが、カーテンのすきまからオランピアをのぞいているところに、親友のニクラウスが来る。傍によって声をかけろというニクラウスに対して、ホフマンは見ているだけでよいと言い張る。皮肉たっぷりにニクラウスは「精巧な人形」の歌を歌うが、恋に落ちているホフマンには意味がわからない。

そこにコッペリウスが登場する。ホフマンが熱心にオランピアを見詰めているのをみて、ほくそえむ。様々な怪しい道具を売ろうし、綺麗な目を強く勧めるが、当然そのようなものはホフマンもニクラウスも必要ないので断る。さらに勧められた眼鏡をホフマンがかけると不思議なことにオランピアの美しい姿が見える。夢うつつのままホフマンは眼鏡をコッペリウスから購入する。

コッペリウスはスパランツァーニを見つけ、オランピアの眼の支払いとして金を要求し、それが駄目なら山分けを要求する。スパランツァーニは倒産した会社の手形を渡し、コッペリウスはそうと知らずに満足し、オランピアに首っ丈のホフマンを笑い、結婚させればよいとそそのかす。

夜会が始まり、招待客たちの前にオランピアが披露される。素晴らしい出来のオランピアに賛辞が送られるが、眼鏡をかけているホフマンだけが彼女が人形であることに気づかない。招待客の前でオランピアはアリアを披露する(オランピアのクプレ「生垣には、小鳥たち」)。途中で力尽きるたびに、スパンランツァーニが慌ててゼンマイを巻くが、聞きほれているホフマンは気づかない。その後、招待客たちは夜食に入るが、オランピアは食べないため下がる。スパランツァーニは面白がってホフマンに娘の付き添いを頼む。

二人きりになったホフマンはオランピアに愛を囁くが、彼女は突如ゼンマイじかけのように動き出して出て行ってしまう。戸惑うホフマンにニクラウスが遠まわしにオランピアが人形であることを伝えるが、ホフマンは愛する女性が中傷されていると思い聞き入れない。

一方、スパランツァーニに渡された手形が不渡りであることに気づいたコッペリウスは、夜会に乗り込こむ。

夜会ではホフマンがオランピアとダンスを踊るが、段々スピードが速くなってゆき、ついに壊れる勢いでまわりだす。ホフマンは跳ね飛ばされ、スパランツァーニは何とか娘を止めて、オランピアを下がらせる。飛ばされた勢いでホフマンの眼鏡が壊れてしまう。

奥からコシュニーユが飛び出し、コッペリウスがオランピアを壊したことを告げ、怒ったスパランツァーニとコッペリウスが争いだす。眼鏡の影響から抜け出たホフマンは壊されたオランピアを見て、初めて彼女が自動人形であることに気づき失意のあまり倒れる。人形に恋していたホフマンを招待客たちは笑う。

 

《第3幕(アントニア)》

ミュンヘンのクレスペルの家。奇妙に傾いた部屋で、アントニアが歌う(ロマンス「逃げてしまったの、雉鳥は」)。父親のクレスペルが部屋に入り、アントニアに死んだ母親の声に似ているので歌ってはいけないと言い聞かせる。歌手を諦めることに絶望しながらもアントニアは歌わないことを約束し、退場する。クレスペルは召使のフランツに誰も入れるなといって下がるが、やってきたホフマンとニクラウスを入れてしまう。ニクラウスはオランピアのことに言及しながら、今回の愛にも疑問を呈する。

ホフマンがやってきたことに気づいたアントニアが駆け込んでくる。ホフマンは突然引っ越したわけをたずねるが、アントニアにはわからない。二人は明日夫婦になることを約束する。彼女はホフマンに歌を禁じないことを確認し、ホフマンは疑問に思う。クレスペルの気配にアントニアは部屋に下がるが、ホフマンは謎が解けるかと、身を隠す。

ホフマンが来たのかと思ってやってきたクレスペルの前に、ミラクル博士が現れる。アントニアの母が死んだときにいたミラクル博士をクレスペルは嫌悪するが、博士はかまわずに誰も座っていない椅子に向かって、アントニアの診察を行う。悪魔的な光景に隠れて見ていたホフマンは驚く。ミラクル博士はアントニアに薬と歌を勧めるが、クレスペルが必死に追い払う。

クレスペルとミラクルが出て行った部屋に残ったホフマンにアントニアは近づく。ホフマンはアントニアに歌わないように、歌手の道は諦めるように頼み、彼女はそれを受け入れる。

一人になったアントニアに、突如現れたミラクル博士がその若さ、才能で歌わずにいられるものかとそそのかす。悪魔の誘惑に打ち勝つべくアントニアは亡き母に救いを求めるが、そこに母の亡霊が現れアントニアを激しく呼ぶ。声にあおられるように、アントニアは狂ったように歌い、倒れる。

倒れた娘を見つけたクレスペルは嘆き、飛び込んできたホフマンを殺そうとするが、ニクラウスに阻止される。ホフマンはアントニアに医者を呼ぼうとするが、いつのまにかそこにミラクル博士が現れ、彼女の死を宣告する。

 

《第4幕(ジュリエッタ)》

第1場

運河でゴンドラの行き交うヴェネツィアの歓楽場の豪華な館で、高級娼婦ジュリエッタとニクラウスが夢見る恋の歌を歌う(舟歌 (Barcarolle)。それに対して、ホフマンは欲望を歌い、屋敷の招待客たちと騒ぐ。そこにジュリエッタの情夫シュレミールがやってきていやみを言う。それをとりなす彼女は情夫よりむしろ連れのダペルトゥット船長の手に輝くダイヤに眼を奪われるが、場を収めて全員を賭博(カード)に誘う。

全員が移動する中、ニクラウスはホフマンに注意を促す。もし彼が悪魔に負け、愚かな愛に取り付かれたらすぐにここから連れ出すと。娼婦相手に本気になるはずがないとホフマンは一笑に付す。

ダペルトゥットはホフマンたちの挑戦を受けてたつべく、以前にシュレミールの影をジュリエッタに盗ませたように、手のダイヤを使って彼女にホフマンを誘惑させることを決心する(シャンソン 「まわれ、まわれ、雲雀を捕らえる鏡の罠よ!」)。そこにやってきたジュリエッタはダイヤに眼が眩み、ホフマンを誘惑して彼の影像を盗むことを約束する。

賭場ではホフマンたちをはじめ皆がカードをしているが、ホフマンは参加せずに考え込むジュリエッタに心を奪われる。愛を囁くホフマンをジュリエッタはつれなくさえぎるが、シュレミールが彼女の鍵を持っているので、それを奪って欲しいと頼む。

そこにゴンドラがやってきて時間が来たことを告げ、招待客の一部は去る。ホフマンはそこにとどまり、シュレミールに鍵を渡すように要求する。命がある限り渡さないというシュレミールとホフマンは決闘をする。剣のないホフマンに、すかさずダペルトゥットが自分の剣を差し出す。

第2場

ジュリエッタは決闘の前に閨房で、ホフマンの命が大切だから彼女より先に逃げてくれるように懇願する。ホフマンはそれを承服できないが、ジュリエッタが離れていても彼女はホフマンのものであるとかきくどくと、心を奪われ承服する。ジュリエッタは心の支えとして、ホフマンに何かを置いていってくれと頼む。何かと聞くホフマンに、彼女は彼のすべてが欲しい、そして影が欲しいと言う。ホフマンは驚くが、ジュリエッタの情熱に押し切られ陶酔のうちに影を差し出し、気を失う。

影を奪われたホフマンがダペルトゥットに笑われ呆然としているところに、彼の存在に気づかないジュリエッタが、自分の誘惑の成功に笑いながら従者のピティキナッチョから受け取ったワインを飲む。しかし、その瞬間苦悶に顔をゆがめて倒れ、ホフマンの腕の中で息を引き取る。ダペルトゥットとピティキナッチョの高笑いが響く。

 

《第5幕(エピローグ)》

再びルーテルの酒場。3つの恋物語を語り終えたホフマンは、自棄に学生たちと酒をあおり騒ぐ。そこに公演が終わったプリマドンナ・ステラがやってくるが、正体もなく飲んだホフマンには、仮面を取った彼女がオランピアに、アントニアに、そしてジュリエッタに見える。ニクラウスはステラが来るのが遅かったと笑い、リンドルフがステラの腕を取り、再び学生たちと騒ぎ出すホフマンを尻目に2人で退場する。残されたホフマンは、すべてを失った惨めさにそのまま死を望み倒れる。

暗転した舞台に、輝かしいミューズが現れ、ホフマンを詩人として蘇らせる。

 

 

【上演の模様】

※以下代表的曲、歌を中心に絞って記します。

 今回のNNTTオペラは、前シーズンの『ペレアスとメリザンド』以来の前・後期通じて二度目の仏語公演でした。前者は、ドビュッシー作曲、今回のオペラは、オッフェンバック(オッフェンバッハ)作曲です。いずれも、パリ在住で活躍した作曲家です。但し後者は、元々はドイツ・ケルン生まれで、後にフランスに帰化しました。第三幕のアントニアが父親と逃避したのもケルンです。オッフェンバックの生まれ故郷に逃げたことにしたのですね。

 

◎第1幕ではシャンソン(クラインザックの伝説「むかしアイゼナッハの宮廷に……が、先ず1番先に出て来る良く知られた歌となっています。しかしこの歌の邦訳はあいまいな表現がされているので、気が付かない場合が多いのですが、原文フランス語では、以下の歌詞の中には、身体的弱点を差別用語で表現し、差別を助長する恐れがある事に気が付きます。

(下の方に引用した歌の歌詞を参考)

具体的には、①「Il était une fois~」 ②「~a la cour d’Eisenach」③「Un petit avorton qui se nommait Kleinzach!」の歌詞の

先ず Un petit avorton se nommait Kleinzach! の太文字部です。

意味は要するに、①が主節 ③が叙述節で「昔々クラインザックと言う名の小さいできそこないがいました」という侮蔑的用語で、 ②は「アイゼナッハの宮廷に」という修飾節。

、Il avait une bosse en guise d’estomac の歌詞の「Il avait une bosse」もそうです。意味は「彼はお腹の代わりに瘤(こぶ)を(背に)持っていた」

そしてさらにまずいことには、学生たちもホフマンもその手足の状態(恐らく短いため普通の歩行が出来ないのでしょう)歩き方まで表現して(一部マネをする学生もいたりして)身体的特徴を、笑いものにしている、侮辱しているのです。これはオフェンバックの19世紀の世界では許されたことなのでしょうが、21世紀の世界では許されることではないでしょう。

(参考歌詞)

HOFFMANN
Il était une fois à la cour d’Eisenach!

 

ÉTUDIANTS
À la cour d’Eisenach!

HOFFMANN
Un petit avorton qui se nommait Kleinzach!

ÉTUDIANTS
Qui se nommait Kleinzach!

HOFFMANN
Il était coiffé d’un colback,
Et ses jambes, ses jambes faisaient clic clac!
clic clac! clic clac!
Voilà, voilà Kleinzach!

TOUS
Cric crac! cric crac!
Cric crac! cric crac!
Voilà, voilà Kleinzach!

HOFFMANN
Il avait une bosse en guise d’estomac

TOUS
En guise d’estomac

HOFFMANN
Ses pieds ramifiés semblaient sortir d’un sac

ÉTUDIANTS
Semblaient sortir d’un sac!

 

HOFFMANN
Son nez était noir de tabac,
Et sa tête, sa tête faisait cric crac!
cric crac! cric crac!
Voilà, voilà Kleinzach!

TOUS
Cric crac! cric crac!
Cric crac! cric crac!
Voilà, voilà Kleinzach!

国連憲章を持ち出すまでも無いですが、「世界人権宣言」の前文では

❝第 1 に、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを 承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎」であり、 第 2 に、「人権の無視及び軽悔が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論 及び信仰の自由が受けられ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望 として宣言され」、 第 3 に、「人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないように するためには、法の支配によって人権を保護することが肝要である」と述べています。 つづいて、この宣言の背景及び目的を次の通り述べています。 第 1 に、「国際連合の諸国民は、国際連合憲章において、基本的人権、人間の尊厳及び価 値並びに男女の同権についての信念を再確認し、かつ、一層大きな自由のうちで社会的進 歩と生活水準の向上とを促進することを決意」し、 第 2 に、「加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守 の促進を達成することを誓約」し、 第 3 に、「これらの権利及び自由に対する共通の理解は、この誓約を完全にするために最 も重要」であるので、 社会の各個人及び各機関が「これらの権利と自由との尊重を指導及び教育によって促進 すること並びにそれらの普遍的かつ効果的な承認と遵守とを国内的および国際的な漸進的 措置によって確保することに努力するように、すべての人民とすべての国とが達成すべき 共通の基準」となる❞

 日本もその精神は十分理解している筈です。

 こうしたことを『ホフマン物語』を聴くたびに思い出すせいなのかどうか分かりませんが、この歌を学生たちの合唱とカパルボのアリアを聴いた時に、良い印象はしませんでした。先ずカパルボの歌の立ち上がりがエンジンかかっていない感じ。世にはひと声聴いて、これは素晴らしいというテノール歌手は沢山いますから。でも良く見ていると、この歌を歌う時のカパルボの演技、振りつけは相当地味な動きをしていました。演出によっては、派手にクリックザインの歩き方を真似して歌ったり、身体的特徴を誇示したりする録画や公演が未だ以てありますが。

 

◎第2幕のピークは何と言ってもオランピアの歌でしょう。オランピアのクプレ「生垣には、小鳥たち」です。オランピア役の安井さんは、以前何のオペラだったかな?調べれば分かりますけれど、聴いた事があります。その時の記憶では、綺麗なソプラノでしたが、やや線が細いかなと感じたと思います。これはオランピアには適役かも知れないと思って聞き始めました。案の定、コロラテュールを細かい音符まで正確に表現していて相当練習した跡が感じられました。良かったと思います。課題は最高音を出す時、いかに音楽の音として出せる様になるかだと思いました。音程は出せても音楽ではなく単なる叫び声になっていました。これは一か所だけでなく幾つかの箇所で散見されたので、まだ最高音が出せていないのでしょう。叫びでも出せているのだから、後は如何にそれをチューニングするかです。練習すればすぐ克服できると思います。尚ついでに、オランピアのクプレは、歌だけでなく、大抵の歌手の場合、その演技に力を入れている様です。その辺がやや物足りなかったかな?

 

◎第3幕でアントニアの歌(ロマンス「逃げてしまったの、雉鳥は・・・

幕が開き舞台には大きな細長いセット(舟の形?)が置いてありその脇には椅子が沢山並べてあります。壁の左には大きな肖像画が掛けてある。多分アントニアの母でしょう。冒頭オケがブラームスの1番風のジャーンという調べを響かせ、その後登場したアントニアに合わせてHp.が奏でられ、アントニア役の木下さんは歌い始めました。(歌は肺の病気に悪いという事で父親から制限されているのです。それでも恋人のホフマンを想い出す余り歌うのでした。)

「飛び去って行ったの あの山鳩は!(立ち上がって)ああ!思い出はあまりに甘いわ!記憶はあまりにむごいの!ああ!私の膝の上で私は聞いたのに 私は見たのに!
ああ!私の膝の上で 私は見たのに!私は聞いたのに 私は見たのに!飛び去って行ったの あの山鳩は飛び去って行ったの 遠くあなたからだけど 彼女はずっと忠実であなたとの誓いを守っているわ!愛する人 私の声はあなたを呼んでいるのそう 私の心はあなたのものなの!私の心はあなたのものなの!私の心はあなたのものなの!~」と。

木下さんの歌声は如何にも日本人によくある歌い方で、綺麗な声で歌い、せつせつとした感情は出ていました。でもやや小振りかな?

アントニア退場の後、ケルンまで追いかけて来たニクラウス(ミューズの変身)とホフマンが、アントニアの家に入りますが、中には誰もいません。先ずニクラウスがVnのソロ音に合わせ歌います。コンマスのVnソロはいい響き、ニクラウス役の小林さんは「見たまえ柳の下で胴が震えて~」と美しいVn.ソロ音に乗ってヴァイオリンの事を歌うのです。その歌詞が「響きはいいが虚空にかなしく響く、それは愛が無いから」と現況を表現しているのが面白い、手堅い歌唱で拍手を呼んでいました。響くOb.の調べ、Fl.も続きます。それに応じてホフマンが歌い出すのでした。「愛の歌が飛びたつ悲しさと苦しさ」と歌い始めたその時、恋人のアントニアが登場しホフマンと二人は再会を喜びすぐに結婚しようと話し歌うのでした。ホフマン役のカパルボは、第一幕から時々ホールにかなり広がる朗々とした歌唱を披露するのですが、それが又余り冴える歌声でない時も度々ありました。抑制的に歌っているのか、最後まで保つ声の力を貯めているのか、最初から最後まで変わらぬ力強さはまだ備わっていないテノール歌手の様です。

尚この幕でフランツ役の青地さんが[Tra la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, lala, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la」と歌の練習をしているのは、滑稽というか面白い場面でした。

◎第4幕1場「ジュリエッタとニクラウスが「夢見る恋の歌を歌う(舟歌(Barcarolle)」これは余りにも有名な歌です。単独の歌としても曲演奏としてもコンサート等で演奏される、或いはメディアでも放送されるので、多くの人が知っています。でも昔から何か寂しさを感じる曲だと思っていました。ジュリエッタ役の大隅さんは、初めて登場、かなり力強い歌唱力がある人だと思いました。

 

◎第4幕1場 ダペルトゥットはジュリエッタにホフマンを誘惑させることを決心する(シャンソン 「まわれ、まわれ、雲雀を捕らえる鏡の罠よ!」)を歌いましたが、最後まで力をキープしたシリンスが、デモニッシュな最後の魅力的な歌声を発散させていた。いいバス・バリトンでした。

◎第4幕2場でジュリエッタはホフマンに「影が欲しい」と言います。この発想は、台本の元となったE.T.A.ホフマンの『大晦日の夜の冒険』が、同じドイツの作家シャミソーの『ペーター・シュレミールの不思議な冒険』に影響を受けたからです。E.T.A.ホフマンはシャミソーと当時交友関係にあり、シャミソーのこの作品が気に入っていた様です。シャミソーのこの発想は『影のなくした男(岩波文庫赤417-1)』を読めば、良く理解出来ます。

 

 以上雑駁に歌唱を中心とした上演の模様を記しましたが、各幕を通してこれは素晴らしいと言った感動する歌い手は残念ながら見当たりませんでした。その中で、シリンスの歌唱は、リンドルフ役、コッペリウス役、ドクターミラクル役、ダベルトゥット役何れでも安定した低音の魅力を発揮し、勿論力強さはあるし相当光を放っていたと思います。

 

 尚、このオペラにはその他の聞きどころ(以下の【参考】記載)が満載され、所々オペレッタ「天国と地獄」で見せたオッフェンバックの一見悲劇に見えても喜劇的な(ふざけた、笑い飛ばせる)色彩、そうそう色彩、色気を有している場面も多いことから、十分パリのお洒落さを感じる事も出来る作品だと思います。(半面北国ドイツ性も同居)

 

【参考】

第1幕

  • 前奏曲 Prélude

[N°1 導入部 Introduction]

グル、グル、グル! おいらはビール! (酒の精の合唱) Glou, glou, glou! Je suis la bière!

  • 瓢箪から駒、と言いますけれども (ミューズ、酒の精の合唱)La vérité, dit-on, sortait d'un puits
  • さあ、みんな、店の支度だ! (ルーテル、リンドルフ、アンドレス) Allons ! mes enfants

[N°2 リンドルフのクプレ Couplets de Lindorf]

  • ほう、《ホフマンさまへ》か! (リンドルフ)Voyons : "Pour Hoffmann" !

[N°3,4A]

  • まだあと2時間はある! (リンドルフ、ルーテル、学生たち、ヘルマン、ナタナエル)Deux heures devant moi !

[N°4B]

  • 何とまあ、諸君、すばらしい歌姫だろう! (ナタナエル、学生たち、ヘルマン、リンドルフ、ルーテル)Vive Dieu ! mes amis, la belle créature !

[N°4C]

  • やあ、諸君! (ホフマン、ニクラウス、ナタナエル、学生たち、ヘルマン)Bonjour, amis !

[N°5 シャンソン(クラインザックの伝説) Chanson (la légende de Kleinzach)]

  • むかしアイゼナックの宮廷に…(ホフマン、学生たち、ナタナエル)Il était une fois à la cour d'Eisenach

[N°6 フィナーレ Finale]

  • うう! このビールはまずいや! (ホフマン、学生たち、ニクラウス、ナタナエル、リンドルフ)Peuh ! cette bière est détestable !

[二重唱 Duo]

  • で、また、どこから、この悪魔閣下は (ホフマン、リンドルフ、ニクラウス、学生たち)Et par où votre diablerie
  • いいかい、僕は不幸におびやかされている (ホフマン、リンドルフ、ナタナエル、ヘルマン、学生たち、ニクラウス、ルーテル)Je vous dis, moi, qu'un malheur me menace !

 

第2幕(オランピア

  • 間奏曲Entr'acte
  • そこにいなさい、可愛い娘や! (スパランツァーニ、ホフマン)Là, charmante !

[N°7]

  • さあ! 勇気を出して自信を持とう! (ホフマン、ニクラウス)Allons ! courage et confiance !
  • 七宝細工の眼をした人形 (ニクラウス、ホフマン)Une poupée aux yeus d'émail

[N°8]

  • わしがコッペリウスだ (コッペリウス、ニクラウス、ホフマン)C'est moi, Coppélius

[三重唱 Trio]

  • わしの名はコッペリウス (コッペリウス、ニクラウス、ホフマン)Je me nomme Coppélius
  • 失礼 (ホフマン、コッペリウス、ニクラウス)Serviteur !
  • 用意はできた! (スパランツァーニ、コッペリウス)Tout est prêt !

[N°9]

  • ほんと、これ以上豪華な夜会に (招待客たち、スパランツァーニ、ニクラウス、ホフマン、コシュニーユ、オランピア)Non, aucun hôte vraiment

[オランピアのクプレ Couplets d'Olympia]

  • 生垣には、小鳥たち (オランピア、招待客たち)Les oiseaux dans la charmille
  • ねえきみ、何てすてきな節回し! (ホフマン、ニクラウス、スパランツァーニ、招待客たち、オランピア、コシュニーユ)Ah ! mon ami, quel accent !

[N°10 シェーナとロマンス Scène et Romance]

  • みんな行ってしまった (ホフマン、オランピア)Ils se sont éloignés, enfin !

[N°11]

  • 逃げるの? (ホフマン、ニクラウス、コッペリウス)Tu me fuis ?

[N°12 フィナーレ Finale]

  • さあ、ダンスの位置について! (スパランツァーニ、コシュニーユ、ホフマン、オランピア、招待客たち、ニクラウス、コッペリウス)Voici les valseurs !

 

第3幕(アントニア

  • 間奏曲Entr'acte

[N°13 ロマンス Romance]

逃げてしまったの、雉鳥は (アントニア) Elle a fui la tourterelle

  • いけないね、娘や…… (クレスペル、アントニア、フランツ)Malheureuse enfant !

[N°14 クプレ Couplets]

  • 朝から晩まで汗水たらし (フランツ)Jour et nuit
  • フランツだ。やっぱりここだ (ホフマン、フランツ、ニクラウス)Voilà ce brave Frantz

[N°15 ロマンス Romance]

  • 見たまえ、わななく弓の下で (ニクラウス)Vois sous l'archet frémissant

[シェーナ Scène N°16 二重唱 Duo]

  • ああ、君はなんでも疑うんだな! (ホフマン、ニクラウス、アントニア)Ah ! tu doutes de tout!
  • でもね、可愛いフィアンセさん (ホフマン、アントニア)Pourtant, ô ma fiancée
  • 愛の歌が (アントニア、ホフマン)C'est une chanson d'amour
  • どうした? ……苦しいの? (ホフマン、アントニア、クレスペル、フランツ)Qu'as-tu donc ? ...Tu souffres ?

[N°17 三重唱 Trio]

  • 危険を払いのけるには (ミラクル、ホフマン、クレスペル、アントニア)Pour conjurer le danger

[N°16bis メロドラマ Mélodrame]

  • もう歌えないのか! (ホフマン、アントニア)Ne plus chater !

[N°17A]

  • もう歌わないだと? (ミラクル、アントニア)Tu ne chanteras plus ?

[N°17A 三重唱 Trio]

  • お母様だと? よくも頼めるね、母さんに? (ミラクル、アントニアの母の声、アントニア)Ta mère ? Oses-tu l'invoquer ?

[N°17b フィナーレ Finale]

  • どうした! 娘や! (クレスペル、アントニア、ホフマン、ニクラウス、ミラクル)Mon enfant ! Ma fille !

第4幕(ジュリエッタ)

第1場

[N°18 (舟歌) (Baracarolle)]

  • 間奏曲Entr'acte
  • 諸君、お静かに (ホフマン)Messieurs, silence !

[(舟歌) (Barcarolle)]

  • 美しい夜、おお、恋の夜(ホフマン、ニクラウス、ジュリエッタ、ゴンドラの船頭たちの合唱) Belle nuit, ô nuit d'amour

[N°18B レチタティーヴォと酒盛りの歌 Récit et Couplets bachiques]

  • 僕には、そんなものは、ちっとも面白くないね! (ホフマン、招待客たち)Et moi, ce n'est pas là ce qui m'enchante

[情景 Scène, 情景の音楽 Musique de Scène と N°18bis 退場場面 Sortie]

  • これはこれは、賑やかなことだね、マダム! (シュレミール、ジュリエッタ、ダペルトゥット、ニクラウス、ホフマン)A merveille, madame !

[N°19 シャンソン Chanson]

  • まわれ、まわれ、雲雀を捕らえる鏡の罠よ! (ダペルトゥット)Tourne, tourne, miroir
  • 魅力的だね (ダペルトゥット、ジュリエッタ、シュレミール)Charmante !

[N°20]

  • ジュリエッタ、どうしたの (招待客たち、ホフマン、シュレミール、ダペルトゥット、ピティキナッチョ、ジュリエッタ)Giulietta, palsembleu !
  • 愛の神が彼女に言った、綺麗な人よ (ジュリエッタ、ホフマン、シュレミール、ピティキナッチョ)L'amour lui dit: la belle
  • 君、引き継いでくれ! (ホフマン、ニクラウス、シュレミール、ピティキナッチョ、ダペルトゥット、ジュリエッタ)Tiens, mes cartes !
  • 馬鹿な! (シュレミール、ダペルトゥット、ピティキナッチョ)Morbleu !

[N°21]

  • 彼は私の鍵を持っているの (ジュリエッタ、ゴンドラの船頭たちの合唱、ニクラウス、ホフマン、シュレミール、ダペルトゥット)Il a ma clé

第2場

 [N°22 二重唱 Duo]

  • お友達の言うのは本当だわ (ジュリエッタ、ホフマン)Ton ami dit vrai

[ロマンス Romance]

  • おお、神よ、何という陶酔でしょう (ホフマン)Ô Dieu, de quelle ivresse
  • でも、それまでの間 (ジュリエッタ、ホフマン)Jusque là, cependant

[情景 Scène, メロドラマ Mélodrame, 情景の音楽 Musique de scène と N°22bis]

  • 結局こうなったのね (ジュリエッタ、ダペルトゥット、ホフマン)Le Voilà, donc

第5幕(エピローグ)

[N°23]

  • 恋心よ! (学生たち)Folie !

[N°24,N°25A (メロドラマ) (Mélodrame)]

  • これが、諸君 (ホフマン、ナタナエル、ヘルマン、ヴィルヘルム、ニクラウス、酒の精の合唱、学生たち、アンドレス、ステラ、リンドルフ)Voilà, mes amis

[N°25B]

  • いとしいフリネは二つの心 (ホフマン、学生たち)Pour le cœur de Phryné

[N°26 フィナーレ Finale - 大団円 Apothéose]

  • さがってくれ、みんな! (ホフマン、ミューズ、学生たち、一同)Arrière, tou

NNTT H.P.より(2018年公演)