HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

白熱の室内楽!藤木大地&みなとみらいクインテット ソワレ(夜公演)

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〖主催者言〗

 世界を代表するカウンターテナー藤木大地と名手ぞろいのピアノ五重奏による室内楽コンサート。ソリストたちの輝く音色が藤木の柔らかな声と響き合う極上の1時間をお届けします。昼と夜のコンサートでは曲目も出演者も入れ替わります。ぜひ、2公演通してお楽しみください。
横浜みなとみらいホールという音響の優れた室内空間を活かし、濃密なソロリサイタルのような瞬間も、合奏の響きとともに透き通るようなうたが染み渡る瞬間も楽しめる魅力的な編成です。

【日時】2023.2.16.(木)19:00~

【会場】みなとみらいホール小ホール

【出演】

カウンターテナー:藤木大地(みなとみらい館プロシデューサー)
ヴァイオリン:長原幸太(読響コンマス)
ヴァイオリン:辻彩奈(人気ヴァイオリニスト)
ヴィオラ:川本嘉子(元都響首席Va奏者)

【曲目】

①ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲 イ長調 Op. 81, B. 155より第3楽章

②ベートーヴェン:アデライーデ Op. 46

③フォーレ:リディア Op. 4 No. 2

④プーランク:美しき青春

⑤モノ―:愛の讃歌

⑥ヴォーン゠ウィリアムズ:静かな真昼

⑦マーラー:交響曲6番 イ短調「悲劇的」より第3楽章

⑧村松崇継:生命の奇跡

⑨木下牧子:夢みたものは

⑩アーレン:オーバー・ザ・レインボー

⑪J. S. バッハ:満ち足れる安らい、うれしき魂の悦びよ

 

【演奏の模様】

 今回のコンサートは【主催者言】にある様に、昼と夜の二回、それぞれ若手と中堅の名の通った演奏家達が演奏する室内楽に合わせて、カウンターテナーの藤木大地さんが歌うという珍しくまた一人の歌手が歌う環境としては贅沢なバックによるもので、滅多にないコンサートだという事と、会場が近場の「みなとみらいホール」で行われるという事なので興味を持って聴きに行きました。(夜の部のみ拝聴)

 

長原、辻、萩原、藤木、辻本、川本

①と⑦は器楽演奏によるピアノ五重奏、その他はすべて五重奏を背景に藤木さんがカウンターテナーの歌声を響かせました。

いつだったか藤木さんの歌を聴いた事がありますが、大ホール向けの声量ではないなと思いながら聴いた事があります(文末に参考までその時の記録を再掲(抜粋)しておきます)。

 今回の藤木さんは、過去の印象を全く払拭する様な声量も有り美しくも有り、何か幽玄さも感じる歌唱でした。みなとみらい小ホールは440座席位、今回は前方の席だったので、藤木さんの声がバッチリ捉えることが出来たのでしょう。勿論本人の調子も良かったのでしょう。第②曲のベートーヴェンから力強い歌い振り、何回も❝アデライード、アデライード❞と歌う歌詞が聞こえました。藤木さんは今日は絶好調の様子。歌詞の発音も明確でした。美しい曲です。

次からのフランス歌曲(③④⑤)は何れも味もある声も伸びがある歌い振りでテナーの高い音も耳に心地良いものでしたが、欲を言えば、フランスの歌独特の香りがあるとさらに良いと思いました。特に⑤はシャンソンの味わいが不足していたと思います。この歌は淡谷のり子や越路吹雪の持ち歌にもなっていましたが、本場のシャンソンとは歌の雰囲気が異なっています。パリのモンマルトルに行った時、シャンソン酒場『 Au Lapin Agile』に入ると客数十人が声を合わせて、この歌他有名なシャンソンを歌っている光景に出会いました。藤木さん、フランス語の発音とintonationをさらに本物に近づければいい雰囲気になると思いますよ。

後半は日本の歌曲等ですが、矢張りカウンターテナーが歌う歌は何か ‘外国産からたちのカヲリ’といった一種独特の響きをしていました。最後の⑪バッハのカンタータはこうなるともうバッハではなくなりますね。バックの五重奏は、勿論それ以前の曲からここまでのアンサンブルは一流のものでしたが、ここバッハになると力の入れ処、拍の強弱、したがって全体の流れにどうもあのバッハ臭さが出ていません。カンタータ―を十も聴けば、バッハらしさとはどういうものかすぐ分かる筈です。最後の〆の曲としてはもったない気がしました。

予定曲の演奏が終わり大きな拍手の中、幾つかの用意されたマイクを持った壇上の奏者は、自己紹介ならぬ他己紹介というトークを順番にして、客席は笑い声も起こり和やかな雰囲気に包まれました。そして最後に藤木さんがマイクを握り、❝アンコール曲を歌と共に演奏します。初めての試みなのですが、皆さんカメラOK、録画もOKですので、どうぞ遠慮なく。❞と言った趣旨のことを語り、演奏が始まりました。

     

              《アンコール曲》加藤昌則(宮本益光作詞)『もしも歌がなかったら』

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////( 2020-10-06 HUKKATS Hyoro Roc.(抜粋再掲)

 

幻想音楽の系譜、大野和士監督オペラ『ブリテン作曲「夏の夜の夢」at 新国劇オペラパレス』観劇

 

 2月以降「新国劇オペラ」は半年以上公演中止・延期していたのですが、9月に『フィデリオ(二期会)』の公演が行われ久し振りの聴衆の喝さいを浴びました。今回政府の規制緩和を受け10月から年間プログラムとして本格公演が再開されることとなったのです。その先き駆けとしてブリテン作曲の『夏の夜の夢』が10月4日から10月12日にかけて公演の運びとなり、今日 10月6日(火)の第2日目を観てきました。

近年の状況を考えた新しい演出で行われたオペラで、新国劇の公式関連アナウンスでは次の様に述べています。

”新国立劇場オペラ再開公演! 英国が生んだ傑作喜劇『夏の夜の夢』を特別バージョンで!
2020年2月の『セビリアの理髪師』の後、約8カ月間、8演目の公演中止を経て、新国立劇場オペラ公演もいよいよ 10月に再開の日を迎えます。
再開公演『夏の夜の夢』は、デイヴィッド・マクヴィカーの原演出に基づき、新型コロナウイルス感染症対策を講じた“ニューノーマル時代の新演出版”公演として、ソーシャル・ディスタンスや飛沫感染予防に配慮した形に演出を変更して上演します。 『夏の夜の夢』は、「20 世紀オペラの中で最も華やかで心の底から楽しめる作品をシーズン開幕に」という、大野和士芸術監督のチョイス。シェイクスピアのお馴染みの喜劇が英国の作曲家ブリテンの多彩で幻想的な音楽で展開し、ボーイ・ソプラノによる妖精たちや、 カウンターテナーの妖精の王オベロンの音楽は特に印象的です。モネ劇場で初演されたマクヴィカー演出のプロダクションは、世界的デザイナーのレイ・スミスが美術・衣裳を手がけ、巨大な屋根裏部屋を舞台に、神秘的な闇の中で次々に起こる男女の応酬を現代的なタッチで描いたものです。
<レイ・スミスによる現代的タッチ、神秘的な舞台>
マクヴィカー演出のプロダクションは 2004年のクリスマスシーズンにベルギーのモネ劇場で 初演されたもので、『夏の夜の夢』の奔放な男女の機微を現代的なタッチで描いたもの。古 びた玩具や調度品が散在するカントリーハウスの屋根裏を登場させた美術・衣裳はレイ・ス ミスのデザイン。レイ・スミスはヨーロッパ各地で演劇やミュージカル、オペラのデザインを手 がけ、オリヴィエ賞、オービー賞、サウスバンク・アワードなどの受賞歴を誇る女性デザイナーで、世界的話題作『War Horse』ではトニー賞を受賞、新国立劇場では同じブリテン作曲の バレエ『パゴダの王子』で奇想天外な大ファンタジーを創出し舞台ファンをあっと驚かせまし た。この『夏の夜の夢』も、幻想的な森と妖精たちの魔法の世界という劇中の世界観はもちろん、舞台ならではの遊び心や、美しい中に毒も あるレイ・スミス独特のセンスに満ち、舞台やデザインに興味のある人をたちまち虜にしてしまう魅力が詰まっています。薄暗い屋根裏、月の 光、森と、誰しも幼い日に怖れを感じたであろう情景は、人間と自然の神秘的な側面に光を当て、観客の心の扉を開いていきます。
<アヴェモ、藤木大地ら、実力派歌手が勢揃い>
妖精たち、恋人たち、職人たちと 3 つの世界が次々交錯する『夏の夜の夢』。大勢の歌手のアンサンブルが求められるこ の作品に、世界から選りすぐりの歌手陣が集まります。何と言っても注目は、妖精の王オベロンに登場するカウンター テナーの逸材・藤木大地。新国立劇場オペラ研修所で学んだ後、カウンターテナーとしてウィーン国立歌劇場をはじめ世界で活躍中の藤木大地が、シーズン開幕公演の要の役に登場、17 年ぶりの新国立劇場オペラパレスの舞台へ立ちま す。藤木との共演を重ねている大野和士芸術監督も「私達のヒーロー、日本が誇るカウンターテナー」と太鼓判。今や日 本のクラシック音楽界最注目のアーティストである藤木大地のオベロンは見逃せません。

妖精の王オベロンと女王タイターニア

    タイターニア役のシェシュティン・アヴェモ(hukkats注、来日出来ず、代役平井香織)は現代音楽でも名を馳せるスウェーデンのソプラノ。アテネの恋人たち 4 人は、ウェブ、オクリッチ、 グーラ、ウィルソンと英語圏の若手歌手たち(hukkats注代役、何れも日本人歌手)。タイターニアが夢中になるロバ男に変身する職人ボトムは、この役を大の得意とするヘンリー・ ワディントン(hukkats注、代役高橋正尚)。ボトムの職人仲間には妻屋秀和、村上公太、志村文彦、青地英幸、吉川健一と日本の実力派男声陣が集結。爆笑もののアン サンブルにご期待ください。
指揮にはマーティン・ブラビンスに代わり、国内外でエネルギッシュに活躍する飯森範親が登場します。”

 さてこの作品の作曲者ブリテンはその名前はかなり有名で以前から私でさえ知っていますが、その作品となるとハテナ?です。「夏の夜の夢」のタイトルでさえ、ブリテンの名とは直結せず、まずメンデルスゾーン、特に結婚行進曲が頭に浮かびます。ブリテンに関しては殆ど知らなくて、相当昔の作曲家かと思っていましたが、つい最近(半世紀前位)まで生きていた人なのですね(1913年~1976年)。現代音楽家だったのです。近・現代音楽と言えば、ストラビンスキーやショスタコービッチやプロコフィエフ位しか生で聴きに行ったことがない。
ブリテンのこの物語のオペラは今回初めてです。物語は多くの登場人物が現れ場面も輻輳しています。
【登場人物】
◎大人の妖精たち
人物名 ・ 声域 ・ 役
オベロン ・  C.Ten・ 妖精の王
タイタニア ・  Sop  ・オベロンの妃
パック  ・語り手・オベロンの臣下

◎タイタニアにつく小妖精、(ボーイソプラノ)
蜘蛛の巣、豆の花、からしの種、蛾 その他(ボーイソプラノ)
◎この他妖精の合唱員も含まれる。

◎廷臣他
人物名 ・声域 ・   役
シーシアス  ・Bas. ・アテネの大公
ヒポリタ  ・Alt  ・アマゾン族の女王

◎恋人たち
人物名・声域・役
ハーミア  ・Mz  ・ライサンダーに恋
ライサンダ・Ten.・ハーミアに恋 
デメトリアス・Ba・ 同上
ヘレナ・Sop・デメトリアスに恋

◎田舎の人たち
人物名・声域・ 役
ボトム ・Bas.・機屋
クィンス ・Bas.・大工
フルート ・Ten.・修理士
スナッグ  ・Bas.・指物師
スナウト ・Ten.・鋳掛屋
スターヴリング・Ten.仕立屋

【6人の劇中劇登場人物】
・ボトム(ピラマス)              ・クィンズ(大工 劇の制作者役)
・フルート(シスピー)
・スナッグ指物屋(ライオン役)
・スナウト鋳掛屋(塀役)
・スターヴリング(仕立屋)

以上の様に多くの登場人物がいて複雑な挙句、そのストーリーも相当複雑に入り組んでいて、この粗筋に関しても公式アナウンスが良く纏めているので次に引用します。

<「夏の夜の夢」あらすじ>
【第1幕】妖精の王オベロンとティターニアは小姓をめぐって夫婦げんか中。オベロンは惚れ薬の力でティターニアを出し抜こうと、パックに薬草を 採ってくるよう命じる。その汁を瞼に塗れば、目覚めて最初に見た者に恋焦がれるという薬草だ。舞台にはアテネの若者ライサンダーとハーミアが登 場。ハーミアはディミートリアスとの結婚を命じられ、駆け落ちしようとしているのだ。ディミートリアスがヘレナに追い回されている光景も目にして、オー ベロンは恋人たちをまとめようと思いつき、薬草を使ってディミートリアスをヘレナに惚れさせろとパックに命じる。アテネの職人たちは、シーシアス公の 御前で演じる芝居の準備をしている。パックが誤ってライサンダーの目に薬を垂らしたので、目覚めたライサンダーは通りがかりのヘレナに恋してしま う。一方オベロンはティターニアの瞼に薬を垂らす。
【第2幕】職人たちは芝居の稽古中。ボトムが稽古の輪を離れると、パックがボトムの頭をロバの頭に変えてしまう。職人たちは怪物に驚き、逃げ回 る。傍らで目を覚ましたティターニアは、ロバ頭のボトムに夢中になる。ライサンダーに捨てられたハーミア、恋敵のライサンダーとディミートリアス、突 如2人から求愛され怒るヘレナ、4人の若者たちはけんかになり、パックは事態を収拾しようと、4人を眠りにつかせる。
【第3幕】朝、目覚めた若者たちは、ライサンダーとハーミア、ディミートリアスとヘレナという2組のカップルに落ち着き、シーシアス公に結婚の許しを請う。ボトムも元の姿に戻り、職人たちはシーシアスとヒポリタの結婚式で「ピラマスとシスビー」の芝居を上演する。オベロンとティターニアも恋人たち を祝福する


【出演歌手】さて演奏会の概要は以下の通りです。

 このオペラ開始の数日前に政府によって大規模催事の参加者(観客数)上限が撤廃されたのを受けて、チケットの追加販売も行われた模様なので、今回は、以前と同じく前後左右密な座席着席になったかな、コロナ感染の危機感を相当持たなくては等と思って、会場入りしたのですが、結局最近までの観客席配置と同様な市松模様の座席配置でした。しかも2階の右翼席なので舞台は良く見えるし、オケピットもかなり良く見えるし、ゆったりとした気分で気持ち良く観劇出来ました。感謝します。

【日 時】2020.10.6.(火)14:00~  予定上演時間(約3時間20分)
(第Ⅰ幕50分 休憩25分 第Ⅱ幕50分 休憩20分 第Ⅲ幕55分)

【管弦楽】飯森範親指揮・東京フィルハーモニー交響楽団

【合 唱】東京FM少年合唱団

【演 出・ムーヴメント】レア・ハウスマン(デイヴィッド・マクヴィカー演出に基づく)
【美術・衣裳, 衣裳補】レイ・スミス ウィリアム・フリッカー

【照 明】ベン・ピッカースギ(ポール・コンスタブルによるオリジナルデザインに基づく)
【舞台監督】
髙橋尚史
【出演】

オベロン   藤木大地
タイターニア 平井香織
パック    河野鉄平
シーシアス  大塚博章
ヒポリタ   小林由佳
ライサンダー 村上公太
ディミートリアス近藤 圭
ハーミア   但馬由香
ヘレナ    大隅智佳子
ボトム    高橋正尚
クインス   妻屋秀和
フルート   岸浪愛学スナッグ   志村文彦
スナウト   青地英幸
スターヴリング 吉川健一

小さな妖精たち 合唱団員

【演奏・演技の模様】
≪第一幕≫
 チンカンチンカンと鐘の様な不気味な音楽でスタート、トライアングルのチーンという音も交じって、妖精の子供たちが登場、歌を合わせ唱なえる、ほどなく妖精の王オベロン役の藤木さんが登場、先ずソロで続いて登場した妃ターターニア役の平井さんとデュエットしたのですが、藤木さんはやや声量不足、平井さんは小締んまりしていますが高いそこそこの声で歌いました。

 

《第二幕》

ここでもオベロン役のカウンターテノールの声が響きましたが、矢張り大ホールの多くの聴衆に響かせる堂々たる王様の声としては物足りないものを感じました。藤木さんの歌は、昨年11月に光岡さんのソプラノと合わせたコンサートで初めて聴きました。その時の最初の歌『Ombra mai fu』、またその後歌った『私を泣かせて下さい』はあたかも女性のAltが歌っているが如き響きを持ったいい声だったので、素晴らしいカウンターテナーが日本にも現れたものだなと(岡本知高さんという人もおられますけれど)思ったものでした。でもやはりコンサートホールとオペラ大劇場では同じ歌い方では客席の響きが全然違って聴こえますね。

(以下略)