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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

幻想音楽の系譜、大野和士監督オペラ『ブリテン作曲「夏の夜の夢」at 新国劇オペラパレス』観劇

 2月以降「新国劇オペラ」は半年以上公演中止・延期していたのですが、9月に『フィデリオ(二期会)』の公演が行われ久し振りの聴衆の喝さいを浴びました。今回政府の規制緩和を受け10月から年間プログラムとして本格公演が再開されることとなったのです。その先き駆けとしてブリテン作曲の『夏の夜の夢』が10月4日から10月12日にかけて公演の運びとなり、今日 10月6日(火)の第2日目を観てきました。

 

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近年の状況を考えた新しい演出で行われたオペラで、新国劇の公式関連アナウンスでは次の様に述べています。

”新国立劇場オペラ再開公演! 英国が生んだ傑作喜劇『夏の夜の夢』を特別バージョンで!
2020年2月の『セビリアの理髪師』の後、約8カ月間、8演目の公演中止を経て、新国立劇場オペラ公演もいよいよ 10月に再開の日を迎えます。
再開公演『夏の夜の夢』は、デイヴィッド・マクヴィカーの原演出に基づき、新型コロナウイルス感染症対策を講じた“ニューノーマル時代の新演出版”公演として、ソーシャル・ディスタンスや飛沫感染予防に配慮した形に演出を変更して上演します。 『夏の夜の夢』は、「20 世紀オペラの中で最も華やかで心の底から楽しめる作品をシーズン開幕に」という、大野和士芸術監督のチョイス。シェイクスピアのお馴染みの喜劇が英国の作曲家ブリテンの多彩で幻想的な音楽で展開し、ボーイ・ソプラノによる妖精たちや、 カウンターテナーの妖精の王オベロンの音楽は特に印象的です。モネ劇場で初演されたマクヴィカー演出のプロダクションは、世界的デザイナーのレイ・スミスが美術・衣裳を手がけ、巨大な屋根裏部屋を舞台に、神秘的な闇の中で次々に起こる男女の応酬を現代的なタッチで描いたものです。
<レイ・スミスによる現代的タッチ、神秘的な舞台>
マクヴィカー演出のプロダクションは 2004年のクリスマスシーズンにベルギーのモネ劇場で 初演されたもので、『夏の夜の夢』の奔放な男女の機微を現代的なタッチで描いたもの。古 びた玩具や調度品が散在するカントリーハウスの屋根裏を登場させた美術・衣裳はレイ・ス ミスのデザイン。レイ・スミスはヨーロッパ各地で演劇やミュージカル、オペラのデザインを手 がけ、オリヴィエ賞、オービー賞、サウスバンク・アワードなどの受賞歴を誇る女性デザイナーで、世界的話題作『War Horse』ではトニー賞を受賞、新国立劇場では同じブリテン作曲の バレエ『パゴダの王子』で奇想天外な大ファンタジーを創出し舞台ファンをあっと驚かせまし た。この『夏の夜の夢』も、幻想的な森と妖精たちの魔法の世界という劇中の世界観はもちろん、舞台ならではの遊び心や、美しい中に毒も あるレイ・スミス独特のセンスに満ち、舞台やデザインに興味のある人をたちまち虜にしてしまう魅力が詰まっています。薄暗い屋根裏、月の 光、森と、誰しも幼い日に怖れを感じたであろう情景は、人間と自然の神秘的な側面に光を当て、観客の心の扉を開いていきます。
<アヴェモ、藤木大地ら、実力派歌手が勢揃い>
妖精たち、恋人たち、職人たちと 3 つの世界が次々交錯する『夏の夜の夢』。大勢の歌手のアンサンブルが求められるこ の作品に、世界から選りすぐりの歌手陣が集まります。何と言っても注目は、妖精の王オベロンに登場するカウンター テナーの逸材・藤木大地。新国立劇場オペラ研修所で学んだ後、カウンターテナーとしてウィーン国立歌劇場をはじめ世界で活躍中の藤木大地が、シーズン開幕公演の要の役に登場、17 年ぶりの新国立劇場オペラパレスの舞台へ立ちま す。藤木との共演を重ねている大野和士芸術監督も「私達のヒーロー、日本が誇るカウンターテナー」と太鼓判。今や日 本のクラシック音楽界最注目のアーティストである藤木大地のオベロンは見逃せません。

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妖精の王オベロンと女王タイターニア

タイターニア役のシェシュティン・アヴェモ(hukkats注、来日出来ず、代役平井香織)は現代音楽でも名を馳せるスウェーデンのソプラノ。アテネの恋人たち 4 人は、ウェブ、オクリッチ、 グーラ、ウィルソンと英語圏の若手歌手たち(hukkats注代役、何れも日本人歌手)。タイターニアが夢中になるロバ男に変身する職人ボトムは、この役を大の得意とするヘンリー・ ワディントン(hukkats注、代役高橋正尚)。ボトムの職人仲間には妻屋秀和、村上公太、志村文彦、青地英幸、吉川健一と日本の実力派男声陣が集結。爆笑もののアン サンブルにご期待ください。
指揮にはマーティン・ブラビンスに代わり、国内外でエネルギッシュに活躍する飯森範親が登場します。

 さてこの作品の作曲者ブリテンはその名前はかなり有名で以前から私でさえ知っていますが、その作品となるとハテナ?です。「夏の夜の夢」のタイトルでさえ、ブリテンの名とは直結せず、まずメンデルスゾーン、特に結婚行進曲が頭に浮かびます。ブリテンに関しては殆ど知らなくて、相当昔の作曲家かと思っていましたが、つい最近(半世紀前位)まで生きていた人なのですね(1913年~1976年)。現代音楽家だったのです。近・現代音楽と言えば、ストラビンスキーやショスタコービッチやプロコフィエフ位しか生で聴きに行ったことがない。
ブリテンのこの物語のオペラは今回初めてです。物語は多くの登場人物が現れ場面も輻輳しています。
【登場人物】
◎大人の妖精たち
人物名 ・ 声域 ・ 役
オベロン ・  C.Ten・ 妖精の王
タイタニア ・  Sop  ・オベロンの妃
パック  ・語り手・オベロンの臣下

◎タイタニアにつく小妖精、(ボーイソプラノ)
蜘蛛の巣、豆の花、からしの種、蛾 その他(ボーイソプラノ)
◎この他妖精の合唱員も含まれる。

◎廷臣他
人物名 ・声域 ・   役
シーシアス  ・Bas. ・アテネの大公
ヒポリタ  ・Alt  ・アマゾン族の女王

◎恋人たち
人物名・声域・役
ハーミア  ・Mz  ・ライサンダーに恋
ライサンダ・Ten.・ハーミアに恋 
デメトリアス・Ba・ 同上
ヘレナ・Sop・デメトリアスに恋

◎田舎の人たち
人物名・声域・ 役
ボトム ・Bas.・機屋
クィンス ・Bas.・大工
フルート ・Ten.・修理士
スナッグ  ・Bas.・指物師
スナウト ・Ten.・鋳掛屋
スターヴリング・Ten.仕立屋

【6人の劇中劇登場人物】
・ボトム(ピラマス)              ・クィンズ(大工 劇の制作者役)
・フルート(シスピー)
・スナッグ指物屋(ライオン役)
・スナウト鋳掛屋(塀役)
・スターヴリング(仕立屋)

以上の様に多くの登場人物がいて複雑な挙句、そのストーリーも相当複雑に入り組んでいて、この粗筋に関しても公式アナウンスが良く纏めているので次に引用します。

<「夏の夜の夢」あらすじ>
【第1幕】妖精の王オベロンとティターニアは小姓をめぐって夫婦げんか中。オベロンは惚れ薬の力でティターニアを出し抜こうと、パックに薬草を 採ってくるよう命じる。その汁を瞼に塗れば、目覚めて最初に見た者に恋焦がれるという薬草だ。舞台にはアテネの若者ライサンダーとハーミアが登 場。ハーミアはディミートリアスとの結婚を命じられ、駆け落ちしようとしているのだ。ディミートリアスがヘレナに追い回されている光景も目にして、オー ベロンは恋人たちをまとめようと思いつき、薬草を使ってディミートリアスをヘレナに惚れさせろとパックに命じる。アテネの職人たちは、シーシアス公の 御前で演じる芝居の準備をしている。パックが誤ってライサンダーの目に薬を垂らしたので、目覚めたライサンダーは通りがかりのヘレナに恋してしま う。一方オベロンはティターニアの瞼に薬を垂らす。
【第2幕】職人たちは芝居の稽古中。ボトムが稽古の輪を離れると、パックがボトムの頭をロバの頭に変えてしまう。職人たちは怪物に驚き、逃げ回 る。傍らで目を覚ましたティターニアは、ロバ頭のボトムに夢中になる。ライサンダーに捨てられたハーミア、恋敵のライサンダーとディミートリアス、突 如2人から求愛され怒るヘレナ、4人の若者たちはけんかになり、パックは事態を収拾しようと、4人を眠りにつかせる。
【第3幕】朝、目覚めた若者たちは、ライサンダーとハーミア、ディミートリアスとヘレナという2組のカップルに落ち着き、シーシアス公に結婚の許しを請う。ボトムも元の姿に戻り、職人たちはシーシアスとヒポリタの結婚式で「ピラマスとシスビー」の芝居を上演する。オベロンとティターニアも恋人たち を祝福する

さて演奏会の概要は以下の通りです。

 このオペラ開始の数日前に政府によって大規模催事の参加者(観客数)上限が撤廃されたのを受けて、チケットの追加販売も行われた模様なので、今回は、以前と同じく前後左右密な座席着席になったかな、コロナ感染の危機感を相当持たなくては等と思って、会場入りしたのですが、結局最近までの観客席配置と同様な市松模様の座席配置でした。しかも2階の右翼席なので舞台は良く見えるし、オケピットもかなり良く見えるし、ゆったりとした気分で気持ち良く観劇出来ました。感謝します。

【日 時】2020.10.6.(火)14:00~  予定上演時間(約3時間20分)
(第Ⅰ幕50分 休憩25分 第Ⅱ幕50分 休憩20分 第Ⅲ幕55分)

【管弦楽】飯森範親指揮・東京フィルハーモニー交響楽団

【合 唱】東京FM少年合唱団

【演 出・ムーヴメント】レア・ハウスマン(デイヴィッド・マクヴィカー演出に基づく)
【美術・衣裳, 衣裳補】レイ・スミス ウィリアム・フリッカー

【照 明】ベン・ピッカースギ(ポール・コンスタブルによるオリジナルデザインに基づく)
【舞台監督】
髙橋尚史

【出演歌手】
オベロン     藤木大地

タイターニア 平井香織

パック    河野鉄平

シーシアス  大塚博章

ヒポリタ   小林由佳

ライサンダー 村上公太

ディミートリアス近藤 圭

ハーミア   但馬由香

ヘレナ    大隅智佳子

ボトム    高橋正尚

クインス   妻屋秀和

フルート   岸浪愛学

スナッグ   志村文彦

スナウト   青地英幸

スターヴリング 吉川健一


小さな妖精たち 合唱団員

【演奏・演技の模様】
≪第一幕≫
 チンカンチンカンと鐘の様な不気味な音楽でスタート、トライアングルのチーンという音も交じって、妖精の子供たちが登場、歌を合わせ唱なえる、ほどなく妖精の王オベロン役の藤木が登場、先ずソロで続いて登場した妃ターターニア役の平井とデュエットしたのですが、藤木はやや声量不足、平井は小締んまりしていますが高いそこそこの声で歌いました。
 次に駆け落ちしたハーミア役の但馬とライサンダー役の村上が一緒に登場、二人共特に気になる様な処は無いまずまずの立ち上がりの歌い振りでした。
 続いて白いドレスに眼鏡もどきをかけたヘレナ役の大隅が登場して、彼女が片思いしている黒いスーツ姿で登場したディミートリアス役の近藤にかなり言い寄る歌を歌いますが、通じません。彼は親に許婚されたハーミアを追ってきたのですから心は別の処にあった訳です。ヘレナの歌声は秀れている様に感じました、声質、声量とも。      続いて、職人たち6人が登場、アテネ大公の結婚式で演ずる演劇の相談をしながら歌い上げます。劇制作役のクィンスを演じた妻屋さんのバスの声が他を抜きんで聞こえました。低く良く響く声だったせいかな?ロッボット風の犬まで登場。職人たちと言ってもスーツ姿が多かったですね。6人全員が男ですが女性役も演じる処が面白かった。
 この第一幕のポイントは、オベロンの配下パックの間違いでハーミアとライサンダーのカップルからライサンダーを引き離し、次の幕のドタバタ劇の要因の一つ、オベロンが妃に小細工したことで問題をはらませた幕でした。従ってオケの演奏も不気味な弦の響きや、かなり興奮して声を張り上げるヒステリックな歌声も聴かれました。この楽章の舞台演出で綺麗な個所は、妃が天井からユックリと降りて来るレース天蓋のかかった円錐形の吊り寝台ですね。女王が優雅に妖精たちの前に登場した場面は美しい幻想的な風景でした。

≪第二幕≫

 幻想的と言えば、子供の妖精が声を合わせて歌う歌と、その伴奏が不気味な独特の調べで響いたことも幻想的ですが、森の中を演出するのに舞台の壁から天井を、大きな竹網とおぼしき材料で組んだドーム状のもので大半を覆い、奥の壁の真ん中辺には窓状の空間が丸く大きいくポッカリ開いていて見ようによっては、大きな満月にも見立てられ、月夜の幻想的風景を想起させられます。 室内は全体的に薄茶色かセピア色の箇所もあるのですが、物語の設定は深い森ですから、もっと緑がかった室内色や照明を使っても良かったのでは?
 また、舞台右前方には結構大きな箪笥の様な家具が置いてあり、歌手たちが必要に応じて引き出しから小物を出して、演技に使っていました。これもニューノーマル時代の新演出の一つでしょうか。

 舞台では二組の男女カップル計4人と妃の都合5人の配役が寝ており夜が更けて行きます。嵐の前の静けさです。
 目覚めたライサンダーが最初に見たのはヘレナ。惚れ薬のせいでたちまち恋に陥てしまう。ヘレナはデミートリアスとライサンダーの板挟みにあい、二人の男の葛藤、いさかいの気持ちと一人の女性の憤慨した心をソロ、デュエット、三重唱で歌います。
 ソプラノの大隅さんは二人の争いにうんざりといった気持ちと持ててまんざらでもない感じをうまく歌で表現出来ていたと思います。少しスケールは小さいけれどもいい声でした。
 ハーミアが登場、ライサンダーの裏切りに、怒りの歌をぶちまけますが、ヘレナは、昔のハーミアとの義姉妹の約束を持ち出して宥めようとして歌います。         一方妃タイターニアも目覚め、一目惚れしたのは何と職人である機屋のボトム。ところがボトムはパックのいたずらで、頭がロバに替えられてしまっていたのでした。でも妃はそんなことにはお構いなくボトムに言い寄り、結局二人はベッドインしてしまいます。妖精と(一部家畜化した)人間との禁断の愛と交わり、この辺りが物語の猥雑な部分とされることもあり、確かに妃の歌には植物に例えた淫靡な歌詞もありました。そういう文をシェイクスピアが書いたのでしょうね。
 ハーミアは「背が低いから(捨てられる)」と劣等感からの歌を歌いますが、但馬さんは、それ程背が低く見えませんでしたけれど。
 この辺りになるとオケはティンパニーの音に合わせてヘレナが走って逃げたり、ハープの優雅な音や、何かスイスのカウベルの様な音の楽器(これは第一幕でも使っていた)など様々な音が響き幻想的雰囲気がさらに現出されていました。
 ここでもオベロン役のカウンターテノールの声が響きましたが、矢張り大ホールの多くの聴衆に響かせる堂々たる王様の声としては物足りないものを感じました。藤木さんの歌は、昨年11月に光岡さんのソプラノと合わせたコンサートで初めて聴きました。その時の最初の歌『Ombra mai fu』、またその後歌った『私を泣かせて下さい』はあたかも女性のAltが歌っているが如き響きを持ったいい声だったので、素晴らしいカウンターテナーが日本にも現れたものだなと(岡本知高さんという人もおられますけれど)思ったものでした。でもやはりコンサートホールとオペラ大劇場では同じ歌い方では客席の響きが全然違って聴こえますね。最もオベロンという役柄は妖精ですから不気味な側面、神秘的な側面があると思われ、女性アルトよりはカウンターテナーの声の方が相応しいと思います。
 ヘレンに関して争った男二人は疲れて寝てしまいます。ここで女王が登場、はっきりと表情までは見えなかったのですが、この人ってタイターニアではないですよね。大公の婚約者アマゾン族の女王ヒポリタじゃないですか?そのアリアや残った人たちとの重唱もかなり良く耳に聴こえました。ただヒポリタの役割が今一つ把握出来ませんでした。それにしてもパック役のバリトンの河野さんの声は大きいですね。少し荒々しい感じでしたが。パックという役柄は歌う場面は少なくほとんどナレーター的存在でした。でもまだ40歳台とお見受けします。今後別な機会があれば聴いてみたいと思いました。

≪第三幕≫
 二十分の休憩の後座席に戻って会場全体を見渡すと、第二幕時より若干観客が減ったように見えます。特に一階席には空席が増えたと思いました。平日の夕方ですから都合があったり、或いは二幕まで見てつまらなく感じた人もいるでしょうし、様々な理由があるのでしょう。(でも自分本位で恐縮な気持ちですが、コロナ感染防止の意味からは、平日の夜でない音楽会が狙い目であることが分かりました。) 
 軽やかなオーケストラのメロディで幕開けです。弦の調べが美しい。
 この楽章では、ポイントが三つあって、眠りから覚めたカップルたちが元のさやに戻って二組結婚することになったこと、劇中劇を準備していた職人6人の内1人(ボトム)が練習に来ないので、気をもんでいたら、魔法が解けてロバの頭から解放されたボトムが練習に戻りホッとした職人たちのこと、これらがこぞってアテネ大公シーシアスの館での大公の結婚式に合同参加することでした。
 この楽章で初めて大公が登場しアリアを歌いました。大公役の大塚さん、バスの割には声量もビリビリ響くところがなく、本調子ではないのでしょうか?結婚相手のヒポリタは堂々とアルトの声を響かせていた。その朗々とした歌声は良かったと思いました。
 さらに ライサンダーとハーミアのカップル、デミートリアスとヘレナのカップルも館に登場、四重唱を歌い、これまでの経緯を大公に話そうとしますが、大公は後で聞こうと言って、劇中劇が職人たちによって行われることになったのです。これがシェイクスピアの手になるとは思われない程、低俗でくだらない、吉本のネタにも劣ると思えるほどの内容なので割愛します(これは理解度がまだ浅い自分のせいなのかも知れませんが)。ただフルートと言う名の職人を登場させているので、ブリテンはフルートが歌唱、演技する辺りでは、管のフルートの音を曲に入れて作曲していて、原典を尊重する姿勢が見えました。
 最後のシーンはいったん幕が下り、再び上がった舞台には子供の妖精4人が前列に並び斉唱、続いてオベロンのソロ、これは良く出来ていました。次に妃のソロ、続いてデュエット、子供の妖精たち20人との合唱、後列には公爵のカップル、その他の二組のカップル、職人たちなどが整列し、盛大なフィナーレを迎えました。

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 最後にパック(ロビン?)が出て来て、このオペラを見聴きし、不満や不快なところが有ってもそれは“つかぬ間の夢であった”と思って欲しいと、最後の口上を述べていました。まるで映画みたい。

  尚、時々不気味にというか、すずろげというか余りオーケストラでは聞かない鐘の音の様なものが鳴っていたのですが、調べたら『チューブラベル』という楽器でした。
何とあのNHKのど自慢で使われる鐘と同じです。このオペラでは非常に効果的だったと思います。          

総じての感想は、‘矢張り観にきて良かった’ということでした。今まで‘来ない方が良かった’と思った事は、一度たりとも無かったですけれど。(行きたくないと思って行ったことは何回かありましたが。)