HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『 アルゲリッチ&クレーメル』

マルタ・アルゲリッチ/ギドン・クレーメル

【日時】2022.6.6.19:00~

【会場】サントリーホール

【出演】マルタ・アルゲリッチ(Pf.)

     ギドン・クレーメル (Vn.)

     ギードレ・ディルヴァナウスカイテ (Vc.)

【曲目】

①ロボダ&シルヴェストロフ『無伴奏ヴァイオリン』(クレーメルソロ)

②ヴァインベルク『ヴァイオリン・ソナタ第5番Op.53』(アルゲリッチ クレーメル)

③ピアノ曲(未発表)アルゲリッチ

④ショスタコーヴィッチ『ピアノ三重奏第2番ホ短調Op.67』(アルゲリッチ、クレーメル、)

 

【演奏の模様】

①-1 ロボダ『レクイエム』

①-2 シルヴェストロフ『セレナード』無伴奏ヴァイオリン』

前者のこの曲は、イゴール・ロボダ(作曲家、1956~)が作曲したもの。後者はシルヴェストロフにより作曲された曲です。何れも苦難の歴史の国に絡む曲でクレーメルのソロ演奏でおそらく多くの魂に。

 前者でも後者でも、音の極限状態を現出させていた。この様な音は聴いたことがありません。例えば極限のピアニッシモ。前者の最後では、ピッツィカートで締めくくるのですが、ピッツィの最終音近くになると、弦に指が極僅かに触れる程度の出音なので、舞台に割と近い席にいた自分でも微かに聞こえる程度。最終音は指が弦の傍で将に出番を待っている状態。その時後ろの高台の席から大きな拍手をする人がいたのです。もう演奏が終わったと思ったのでしょう。それも有りなん。音は全然聞こえなかったのでしょうし、プログラムでは、二人の作曲家の一つの曲の演奏だと勘違いしてまう様な書き方ですから。自分も全然知らない作曲家の曲で、最初は二つの曲とは思わなかった。入場して貰った冊子のプログラムノートをすぐ読んで二人の二つの曲が、弾かれるのだとやっと気が付いたのでしたから。最後のピッツィ音を出して、クレーメルは、徐に楽器を肩から下ろし、一呼吸置いて次曲に進みました。  

 次の曲は、夜孤独にさいなまれ眠れない様な寂寥感を感じる小夜曲でした。

最初の曲でも、次曲でも、ピッツィカートと重音奏を多用し、しかもピアニッシモの音が多いので、”心に染み入る虫の声”のごとし。

 

②ヴァインベルク『ヴァイオリン・ソナタ第5番Op.53』

 プログラム・ノートによれば、ヴァインベルクは、ユダヤ人で、ショスタコーヴィチの助力も得て一命を取り留めたといいます。この曲は四楽章構成のかなり長い曲でした。ショスタコーヴィチの影響やユダヤ旋律の要素があるみたいですが、聴いてどこかは、分かりませんでした。

何と言っても圧巻だったのは、アタッカ的に進んだ最終楽章。Pfはややゆっくりと主題を弾き始め、Vnは弱い音で速いテンポで進んでいます。PfとVnは、交互に旋律を繰り返し中頃からアルゲリッチは、ピアノを大いに鳴らし、終盤のピアノソロでは、クレーメルの見つめるなか、アルゲリッチは、たいそう難しそうな演奏を綺麗な調べで、難なく弾いていました。

ここでは、演奏の勢いは、PfがVnを凌駕していた。楽譜がそうなっているのかクレーメルが抑制的に弾いていたのかは分かりませんが。

 

《休憩》

 

 休憩の後は、アルゲリッチが一人で登場、

③は演奏曲が未発表だったので、アルゲリッチが弾き始めるまでは、いったい何を弾いてくれるのかな?と期待がふくらみました。開けてびっくり玉手箱の気分でしょうか?

開けたら、聴き慣れたメロディばかり流れるので自然と体で拍子をとってしまいました。

③-1 シューマン:『子供の情景』より「見知らぬ国」 
③-2.S.バッハ:イギリス組曲第3番 ガヴォット
③-3 D.スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K. 141

でした。懐かしい友達に再会した気分でした。

それにしてもアルゲリッチの音、調べは何故にかくも澄んでいるのでしょう。最近、オペラやバレエで、精霊達に接しているので、アルゲリッチは、ピアノの精霊の生まれ代わりではないか?などと妄想を抱くほどです。

 

④最後の演奏は、チェロのギードレ嬢が加わってショスタコーヴィチのピアノ三重奏です。1944年作曲といいますから、大戦が、終わるか終わった頃の作品ですね。亡くなった友人に捧げられたそうです。この曲は、初めてききましたが、4楽章構成の変化に富んだ曲で、二楽章のクレーメルの速いテンポのメロデックな枯れ枯れとした調べや三楽章でのアルゲリッチの半音階的和音のソロ、また終楽章で、チェロ奏者が楽器を、まるで打楽器の如く強く叩いていたことなど見物な箇所、聞き所の印象が深く、もう一度じっくり聴いてみたい曲だと思いました。(ついでながら、ショスタコーヴィチの曲では、交響曲第七番を聴きたいと思って各ホールの演奏予定をさがしたら、26日に、サントリーホールでやるみたいなのです。そこでチケット申し込みしようとしたら、既に完売でした。オーケストラは会員通し券は、買わないので、聴きたいと思って単独券を買おうとしても、なくなっていることがたびたびあります。まーその内またやるさ、位に思う時もあるのですが、ショスタコの七番は、どうしても聴きたいと思ったので、主宰者に電話して、最後の一枚が残っていると言うので、幸いゲットできました。)

 鳴り止まぬ大拍手に応えアンコール演奏がありました。

アンコール曲

①シューベルト:君はわが憩い(ピアノ三重奏版)

アルゲリッチが弾く冒頭の旋律で、すぐシューベルトだと分かりました。ヤッター大好きなシューベルト!!アルゲリッチの音の何と綺麗なこと!(←こんなありふれた言葉では表せない程)。ピアノに向かっているアルゲリッチの顔の何と若々しいことだろう!(舞台とそでを往復するアルゲリッチとクレーメルは、ゆっくりゆっくり歩を進め、流石に老いを感じるのですが、いざ楽器に向かうとエネルギーが満ちる様です)。

②ロボダ:タンゴ「カルメン」

これは、アルゲリッチの故郷のタンゴを矢張りアンコールに入れてきたなと思いました。ビアソラの曲かなと思ったら、最初ののロボダの曲でした。

 

③ベートーヴェン:ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲 第2楽章

サントリーホールでは今将にベートーヴェンの四重奏曲が小ホールで行われているのですが、このアンコール曲を聴くと、三重奏曲をもっと聴きたい気がしてきました。