HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

オペラ速報/グルック『オルフェウスとエウリディーチェ』

⭕このオペラは、八割方オルフェオの歌で出来ています!!

⭕ザッゾ・カウンターテナー大活躍!!

⭕三宅・アモーレ、可愛い歌声!!適役でした。

⭕ウィルソン・エウリディーチェ、本格ソプラノ響かす!!

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【演目】オルフェオとエウリディーチェ(Orfeo ed Euridice)

【台本】ラニエリ・テ・カルツァビージ

【作曲】グルック

【言語】イタリア語上演、日本語&英語字幕

【上演時間】約2時間(第一・二幕60分。休憩25分、第三幕35分)

【日時】2021.5.19.19:00~

【会場】NNTTオペラパレス

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指揮】鈴木優人

【合唱】新国立劇場合唱団

【合唱指揮】冨平恭平

【演出・振付等】勅使川原三郎

【舞台監督】高橋尚史

【舞踊】佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ他

【出演】

〇オルフェオ:ローレンス・ザッゾ(Ct.Te.)

【Profile】

アメリカのカウンターテナー。ロンドンの王立音楽院在学中にブリテン『夏の夜の夢』オーベロンでデビュー。同役はその後カナディアン・オペラ・カンパニー、エクサンプロヴァンス音楽祭、ハンブルク州立歌劇場、ウィーン国立歌劇場のイリーナ・ブルックの新演出で出演している。近年では、モネ劇場、イングリッシュ・ナショナル・オペラ、ザクセン州立歌劇場、パリ・オペラ座の『ジュリオ・チェーザレ』タイトルロール、バイエルン州立歌劇場『ポントの王ミトリダーテ』ファルナ―チェ、メトロポリタン歌劇場『ジュリオ・チェーザレ』トロメーオなど世界の主要劇場のほか、イングリッシュ・ナショナル・オペラ『ラダミスト』タイトルロール、ウェルシュ・ナショナル・オペラ『オルランド』、フランクフルト歌劇場『タメルラーノ』タイトルロール、英国ロイヤルオペラのオラトリオ『ソロモン』タイトルロールに出演。今シーズンはザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭及びザルツブルク音楽祭のヘンデルのオラトリオ『時と悟りの勝利』、スコティッシュ・オペラ『夏の夜の夢』オーベロンなどに出演。新国立劇場初登場。


〇エウリディーチェ:ヴァルダ・ウイルソン(Sop.)

【Profile】

オーストラリア出身。シドニー音楽院で学び、数々の賞や奨学金を獲得してロンドンのオペラスタジオで研鑽を積む。ザクセン州立歌劇場若手専属歌手のメンバーとなった後、ザルツブルク音楽祭、ヴェルビエ音楽祭の若手歌手プログラムにも参加。オルデンブルク歌劇場専属歌手を経て、17/18シーズンよりザールブリュッケン歌劇場専属歌手。これまでに、ザルツブルク音楽祭『子供のための魔笛』パミーナ、ナポリ・サンカルロ歌劇場『ルサルカ』、ヴェルビエ音楽祭『セビリアの理髪師』ロジーナ、ザクセン州立歌劇場『魔笛』パミーナとパパゲーナ、ザルツブルク音楽祭『カルミナ・ブラーナ』、オルデンブルク歌劇場『ファルスタッフ』アリーチェ、『フィガロの結婚』伯爵夫人、『メリー・ウィドウ』ハンナ・グラヴァリ、『夏の夜の夢』ヘレナなどに出演している。ザールブリュッケン歌劇場では『ラ・ボエーム』ムゼッタ、『ソラリス』ハリー、『コジ・ファン・トゥッテ』フィオルディリージ、『椿姫』ヴィオレッタ、『ファウスト』マルグリート、『ばらの騎士』元帥夫人、『フィガロの結婚』伯爵夫人、『ファウスト』マルグリート、『メリー・ウィドウ』ハンナ・グラヴァリ、『ドン・カルロ』エリザベッタなどに出演している。新国立劇場初登場。

〇アモーレ:三宅理恵(Sop.)  

【芸術監督】大野和士

 

【作品概説】

『オルフェオとエウリディーチェ』はクリストフ・ヴィリバルト・グルックが作曲した三幕からなるイタリア語オペラで、フランス語改訂版は『オルフェとウリディス』あるいは『オルフェとユリディス』と表記される。グルックのオペラの中で最も有名な作品。

1762年版楽譜の挿絵

 『オルフェオとエウリディーチェ』は1762年に作曲された。台本作者の ラニエーリ・カルツァビージと共に改革に乗り出していたグルックは、オペラ改革理論を実践で示した最初の作品となった。神聖ローマ皇帝フランツ1世の零名日に当たる1762年10月5日にウィーン、ブルク劇場で初演された。音楽劇の改革理論に基づいて作曲されたもので、初演当時から大成功を収め、グルックのオペラの代表作となった。本作で「革新的なことは歌劇史上初めてチェンバロによるレシタティーヴォを管弦楽伴奏に変え、二つの明確に相違する音色をもつ歌劇の流れを同質の音色で一貫するようにしたことである」。リブレットはギリシャ神話を集大成したオウィディウスの『変身物語』の第10巻第1章<オルフェオとエウリディーチェ>と第11巻第1章<オルフェオの死>、及びヴェルギリウスの「農耕歌」第4篇に基づいて、ラニエーリ・カルツァビージにより作成された。本作はイタリア語のオペラではあるが、多くをフランスのオペラとドラマに負っている。カルツァビージは長くパリに住んでおり、彼が体験したフランスの演劇とオペラの影響は本作の台本を通じて明らかである。このオペラは、ベルリオーズ也ワーグナー他に大きな影響を与えた。

 こうした事より、このオペラには複数の版が存在し、ウィーン版(ウィーン原典版とも)とパリ版と呼ばれているものがグルックによって作曲された重要なものである。上記の1762年にウィーン宮廷劇場で初演されたのがウィーン版であるが、パリ版は1774年8月のパリのオペラ座での上演に際して改作したものである。パリ版にはバレエ曲やアモーレの最初のアリア、フルート独奏の「天国の野原」(いわゆる「精霊の踊り」)の場面が追加されている。またフランス語台本は詩人のピエール=ルイ・モリーヌ(Pierre-Louis Moline)がイタリア語台本から翻訳している。パリではカストラートが好まれなかったことから、オルフェオ役はオートコントル(超高音域のテノール)に変えられ、歌や器楽曲が増やされて、作品全体の規模が大きくなり、オペラ座の大編成のオーケストラを十分に生かすように手が加えられた。今回の上演はウィーン版に基づき行われ、パリ版から『復讐の女神の踊り(第二幕第1場)』も加えられている。またグルック時代のウィーン版ではオルフェオ役はカスタラートが歌ったが、パリではカスタラートが好まれずオートコントロルが歌い、今回はカウンターテナーが採用されている。

 【楽器編成(ウィーン版)】

木管楽器: シャリュモー1、 フルート2、オーボエ2、バスーン2
金管楽器: ホルン2、トランペット2、コルネット2、 トロンボーン2
打楽器: シンバル
弦楽五部 、チェンバロ、ハープ

 
【粗筋】
第一幕
カミーユ・コローによるウリディスを導くオルフェオでは、月桂樹と糸杉の木立がエウリディーチェの墓を取り巻いている。オルフェオは友人と共に妻エウリディーチェの死を悼んでいる。オルフェオは泣き崩れ、「エウリディーチェ」と悲痛な声をあげる。絶望のあまり妻を連れ戻しに黄泉の国に下がると神々たちに言う。そこに愛の神が現れ、オルフェオの嘆きに心を動かされたゼウス神たち神々は憐れみ、彼が黄泉の国に行って妻を連れてくることを許すという。ただし愛の神は、彼の歌によって地獄の番人たちをなだめること、そして何があっても決してエウリディーチェを振り返って見ないことが条件である。もしオルフェオが自分の事態を説明しようとしたり、振り返ったりすると彼女は永久に失うという。オルフェオはこの難しい試練に挑み、黄泉の国へと向かう。

第二幕
第1場、黄泉の国の入口
嘆きの川の先におどろおどろしい洞窟の入り口に、復讐の女神や死霊たちが踊っている。復讐の女神たちはオルフェオを恐ろしがらせようとして、地獄の入り口で彼を押しとどめる。オルフェオは勇気をもって竪琴を取り、甘い歌声で彼女たちを静め、オルフェオに道をあける。そして復讐の女神や死霊たちは静かに消えて行く。

第2場、エリゼの園(エリシウムの楽園)
エリゼの園でエウリディーチェは妖精と共に、エリゼの園の静けさと平和を讃えて歌っている。その時オルフェオはエウリディーチェを発見し、オルフェオはエウリディーチェの姿を見えないようにして手を取り、地上へと向かう

第三幕
第1場、薄暗い洞窟の迷宮の中
ルーベンスによるウリディスを導くオルフェオでは、オルフェオがエウリディーチェの手を引いて上がって来る。エウリディーチェは初めのうちは喜んでいたが、オルフェオがすぐに自分の方に見ようとしないことに不審を抱き、ためらう。エウリディーチェは夫の愛が冷めたのではないかと怪しんで、それ以上夫について行こうしなかった。絶望したオルフェオは耐え切れず、エウリディーチェの方を振り向いてしまう。そのとたん、エウリディーチェは倒れて息絶える。オルフェオは嘆き、そして短剣を取り上げて自ら自殺を決意する。その時、愛の神が現れ、彼を押し留める。愛の神は「お前の愛の誠は十分示された」と告げ、エウリディーチェは再び息を吹き返す。2人は喜んで抱き合う。

第2場、地上の愛の神の宮殿
オルフェオが羊飼いやニンフたちと共に愛の神に感謝し、羊飼いやニンフは踊りを捧げる。エウリディーチェも愛の神に感謝し、全員が愛を讃える。

 
【主な楽曲】

〇シンフォニア(前奏曲)

〇復讐の女神たちの踊り(Air de furie)(バレエ音楽『ドン・ファン』の終曲に同じものが使われている)

〇精霊の踊り

〇オルフェオのアリア「エウリディーチェを失って(Che faro senza Euridice?」

〇終曲の三重唱(オルフェオ。エウリディーチェ、アモーレ、⁺合唱)

 

【上演の模様】

このオペラは、【作品概説】にも書いたように、古代ローマの詩人オウィディウスがギリシア神話に取材して描き上げた「変身物語」の中の一編をカルツァビージが台本に仕上げ、グルックが音符に落とし込み新たな世界を築き上げたオペラ界の至宝とも言える作品です。オルフェオは芸術の女神のひとりカリオペイアの息子(hukkats注1)で、歌と竪琴の名手でした。彼の歌と音楽には野獣や草木、岩石さえも魅了されたと謂われます。舞台は月桂樹や糸杉の木立が立ち並ぶ中、蛇に噛まれ非業の死を遂げたオルフェオの妻、エウリディーチェの墓を取り巻き、牧童たちや妖精たちが嘆き悲しんでいるところから始まります。

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 カリオペー

 オルフェオの出生に関しては諸説あるが、通常、文藝の女神ムーサイの一人カリオペーと父はオイアグロス(不詳)の子とされ、ただし名義上の父親はアポロン神として、オルペウスは生まれたとされる。カリオペーは美声の持ち主でもあった。一方オルペウスの父は、バルカン半島南東部であるトラキアの王であったともされ、オイアグロスをトラキア王とする説もある。10世紀頃の東ローマの辞典「スーダ」はオルペウスをアトラスの娘の1人アルキュオネーの子孫と伝えている。竪琴の技はアポロンより伝授されたともいう。その技は非常に巧みで、彼が竪琴を弾くと、森の動物たちばかりでなく木々や岩までもが彼の周りに集まって耳を傾けたと言われる。又歌も上手で母親譲りの美声であった。

 

 各幕の聴き処、見どころは多かったのですが、各幕それぞれ一番印象深い箇所を一つづつピックアップして感想を記します。

 

第一幕 葬礼の場

 シンフォニア(前奏曲)は、バロック音楽そのもの、ヘンデルで聴く様な雰囲気を思い起こしました。

<第1場>

葬礼の場面、合唱が粛々と悲しい葬礼の場の雰囲気を盛り上げて歌い、オルフェオが何回も何回も「エウリディーチェ」、「エウリディーチェ」と嘆き呼び、最初のアリアを歌うのです。

Chiamo il mio ben così Quando si mostra il dì, Quando s'asconde. Ma, oh vano mio dolor! L'idolo del mio cor Non mi risponde.(And so I call to my beloved from day’s first light to sunset. Alas,my sorrow is in vain The idol of my heart gives no answer.)❞

典型的なバロックのメロディ、オルフェオ役のローレンス・ザッツォの歌声は、カウンターテナー独特の高い声域ですが、女性の声ではないとすぐ分かる声質です。最初こそ耳に雑に聞こえる時もあったものの、すぐ安定した歌声を響かせ、最後までそのペースを崩しませんでした。

 続いて彼は レチタティーヴォを歌いました。

Euridice! Euridice! Ombra cara, ove sei? sempre affannato Il tuo sposo fedel invan ti chiama, Agli Dei ti domanda e sparge ai venti Con le lagrime sue Invano i suoi lamenti!

Euridice! Euridice! Beloved spirit, where are you? Your faithful husband calls you in vain Beseeching the Gods,he scatters fears and laments to wind  But always in vain )❞

アリアは明るい長調の雰囲気、レチタティーヴォは短調の暗い色調を持った歌です。

再度オルフェオはアリアを歌います。

Cerco il mio ben così In queste, ove morì, Funeste sponde. Ma sola al mio dolor, Perché conobbe amor, L'eco risponde. 

(So I seek my beloved upon these sad shores where she died upon these sad shores where she died But only Echo answersmy grief for she once knew love)❞

 

この場面では、アリアとレチタティーヴォが交互に歌われ、妻の名を呼んで探し求めても、彼女の死んだ岸辺を探しても、こだまがむなしく帰って来るだけだったと深い悲しみ(grief)にくれているオルフェオでした。

そこにアモーレ(三宅理恵)が登場、オルフェオの妻に対する愛の深さに同情した神(ユピテル)の救済をオルフェオに告げます。要するに、冥界に迎えに行って、歌と竪琴の音楽で冥界の死せる魂、特に冥界の王を感動・納得させて、エゥリディーチェを生きて連れ戻す事を認めるが、その際の約束事として、「決して後ろを見て妻の方を向いては行けない、話しかけてはいけない」ということを誓約したのでした。

三宅さんの歌は、声はやや小さめでしたが、ホールには十分の声量。返ってそれが、彼女の声質と相まって、可愛いいアモーレの雰囲気を醸しだしていました。適役だったと思います。

 

第二幕 2場 天国の野原の場

ここでフルート演奏で、「精霊の踊り(独 Reigen Der Seligen Geister)(仏Ballet des Champs-Elysees)(伊 Danza dello spirito)

が踊られます。この曲は特に有名な曲です。

  精霊の踊り(パユ演奏at Teatro Colon)

 私がウトウトしていたための聞き違えでなければ、フルート独奏は、二人のFl.奏者が吹いていた気がします。さらに繰り返し記号を、少し端折って吹いた気がします。演奏時間も通常より短い気がしました。ここは、このオペラの一つの山場なのだから、ソリストの演奏をじっくり聞きたかった気もします(自分が居眠りかいていたら御免なさい。) 

 グルックはこの結構長い(繰り返し記号が多い)フルート曲に黄泉の国に妻を探しに行ったオルフェオの様子を落とし込んでいるとも謂われます。即ちスタートはヘ長調のメヌェットで始まり、天国の野原に集う精霊たちが踊る雰囲気を表し、それが一転、29小節からニ短調に転じ、声を上げながら妻を探す様子をあの有名な朗々とした笛の音で表現しました。精霊の間を縫って、この人かな?いや違うあの人かな?と探し求めるオルフェオ、39小節の、倚音を使った旋律で「ああまた人違いか」と嘆き、43小節の後打ちの音形のシンコペーションで、嘆きや驚きを表現、44小節からは二回「エウリディーチェ!、エウリディーチェ!と呼ぶ音形になっています。

 今日のフルート演奏は、オケ、東フィルの主席奏者でしょうか?どなたか存じないですが、女性かな?男性かな?二人かな?何れにせよオペラの歌に代替する役割を持つ箇所を、バロック専門家の鈴木さんが、端折る訳がないですよね。矢張り自分の聞きおとし、感違いだったのでしょう。

 

第三幕

 やっと妻を見つけ出し、黄泉の国から地上に向かうオルフェオ、神との約束を強く意識しながら妻を後に引き連れて歩き出しました。しかし事はうまく運びません、道中疑心暗鬼になった妻に「何故私の顔を振り返ってみないのか?愛が覚めてしまったのでは?顔を見て愛を示して!」と攻め立てられたオルフェオは遂に、一瞬ですが振り返って見て、だきしめてしまうのです。その途端エウリディーチは意識が無くなり、再び帰らぬ人になってしまったのでした。

 エウリディーチェに再会した時、事情を何かに書いて、紙、皮なんでもいいですから、何も無ければ、地面にでも書いて、知らせる訳にはいかなかったのでしょうか?これも神に禁止されていたのでしたっけ?また見方によっては、エウリディーチェは、少し我が儘というか洞察力に欠けるのでは?オルフェオが、いつもと違う様子であれば、何かあると気が付き、オルフェオに従って行けば良かったのに。

 

 

第1場の最後、

 再び死の世界へと去ってしまったエウリディーチ、そしてせっかく連れ戻せると思っていた、もう少しで地上に出られると思っていたオルフェオは、またまた深い嘆き悲しみのどん底に陥るのでした。そこで歌われる有名なアリアです。

Che farò senza Euridice? Dove andrò senza il mio ben? Euridice!... Oh Dio! Rispondi! lo son pure il tuo fedel! Euridice... Ah! non m'avanza Più soccorso, più speranza, Né dal mondo, né dal ciel!Che farò senza Euridice? Dove andrò senza il mio ben? 

(Ihave lost my Eurydice Nothing can match my sorrow  Cruel fate! Such hardship! Nothing can match my misery I yield to pain! Eurydice  Eurydice Answer me! Iam your faithful husband Hear my voice calling you )❞

ホントにいい旋律と穏やかさを兼ね備えた名アリアですね。マリア・カラスも歌っている様です。

今日のエウリディーチェ役のヴァルダ・ウイルソンのソプラノは、本格的ソプラノの歌い振りで、見事なアリア等を披露してくれました。この人なら他のオペラのタイトルロールも、色んな演目で歌えるでしょう。

 

 本来、原作の『返信物語』ではここまでで、悲劇に終わるのです。オルフェオはその後決して幸福でなく、二年か三年、女性と関わるのを絶って(随分もてたそうですが)エウリディーチェの事ばかりを考えて暮らしたそうです。そして、上記【作品解説】で挙げた❝第11巻第1章<オルフェオの死>❞ では、オルフェオもこれまた非業の死を遂げてしまうのです。しかも体を八つ裂きにされるという残忍無残な殺人で。物語は二人は死んでから黄泉の世界で再開するのですが、こうした悲劇の結末には、グルックたちは賛同しなかったのでしょう。

 オペラの最後は、妻を再び失ったものの、神との約束を破ったことを、死をもって贖おうとした(自ら死を選んだ)オルフェオを全能の神ユピテルは死なせず、許すのでした。しかも妻エウリディーチェの息も復活させ、二人は目出度し目出度し、アモーレと共に、合唱団の歌声を背景に三人で三重唱を、にぎにぎしく歌って幕となりました。

 

 今回のオペラはこれまでのNNTTオペラの演目とはやや趣きが異なるバロックオペラでした。指揮者にその道の専門家とも言える、鈴木優人さんを当て、又このオペラの舞台での舞踊の重要性を認識して、テンポラリー舞踊の大家、勅使川原さんを起用した試みは、十分成果を上げたと思いました。今日の東フィルのアンサンブルは古楽器でないものの、十分バロック音楽の神髄を表現で来ていたと思いますし、各幕の要所要所でのダンス、バレエは管弦楽のアンサンブル共々、舞台に活気と華を添えていました。ソロ歌手陣も十分その役割を歌声で表現で来ていたと思うし、特に忘れてならないのは合唱団の活躍です。最近の色々見たオペラ演目やバレエ演目でも、合唱団の役割は益々重要さを増している様に思います。就中、先日観に行った「カルミナ・ブラーナ」等では、合唱を中心に舞台がまわるというものもありました。

 こうした様々な分野の協力、統合は一層魅力的で面白い作品表現の展開を見せるのではと期待が大きいです(最もStendhalの残した日記を読むと、1800年代のオペラではそうしたことが当たり前の様に行われていて、現代では失われてしまった風習なのかも知れません)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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