HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『芸劇ピアノリサイタル/反田&小林』

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 反田、小林両ピアニストは、ショパンコンクールで優秀な成績を収めて、日本に凱旋したことは周知の事実です。帰国後それぞれリサイタルやオケとの共演を開いて、好評を博していますが、二人のジョイント・コンサートは、東京では今回が初めてです。実は、このコンサートの前の午後夕方にかけて、別のリサイタルのチケットを本公演のチケット売出し前に買っていたので、夕方五時前にそちら(at 横浜)を、聴き終わってすぐに、池袋にはせ参じた次第です。

【日時】202.12.9.(水)19:00~

【会場】東京芸術劇場

【演奏】反田恭平

    小林愛実

【曲目】

①モーツァルト/2台のピアノのためのソナタ ニ長調 KV448

②シューマン『小さな子供と大きな子供のための12の連弾小品 作品85』より 第三曲「庭園のメロディ」

③ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲
④シューベルト/幻想曲 ヘ短調 作品103 D940
⑤ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 作品56b

【演奏の模様】

 会場に入ると二千も入るあの広い会場が、満杯状態でした。それはそうでしょう。ショパンコンクールでファイナルに残るだけでも、たいした物なのに、二位と四位同時入賞という本邦初の快挙を遂げたピアニスト二人のジョイント・リサイタルが聴けるなど、誰もが生きているうちに最初で最後のチャンスかも知れないと思ったに違い有りません。

壇上には、グランド・ピアノが二台、対向して鎮座しています。奥のピアノは、蓋を開け、手前は、蓋を取り除いてある。開演の音が告げられ、演奏者二人が登場し挨拶すると、大きな拍手が鳴り響きました。

今回のリサイタルは、ショパンコンクール前にセットされたので、演奏曲目にショパンは、入っていません。先ずモーツァルトからです。 

①小林さんが、舞台左方の1st鍵盤を使い、反田さんは、右側の2nd に座りました。お二方の二台による演奏は息がぴったり合って、音が倍加している分重厚な響きが流れ、ずれて弾く時は、細やかな表現が次々と繰り出されました。ただ二楽章までは、小林さんがやや(少しだけ)音が弱いかな?という気がしましたが気のせいかもしれない。小林さんは一貫して首を右にかしげながら弾いています。元気がない様にも見えます。三楽章になってやっと腕の振りも指の切れ味も元気が出てきた感じ、二人の曲がより生き生きして来ました。

②シューマンは、一台のピアノを使った二人による連弾でした。高音側は小林さん、低音側が反田さんです。スタートは反田さんの方からで、途中で小林さんが参加。とてもきれいな曲でした。でも非常に短かった。

③今度は①の場合と逆で、左の1st が反田さん、右の2nd が小林さんです。この曲はよく聞く編曲されたメロディが出てくるのですが、今回は通常とは違って、非常に荒々しく二人共強い打鍵で中には不協和音的響きやジャズっぽい響きも交えながら、速いテンポで曲が進行しました。反田さんの左手による強打、二回のグリッサンドなど①、②とは打って変わった演奏でした。息はここでもピッタリ合っています。

 この曲を作曲したルトスワフスキーは、ポーランドの音楽家の様です。⑤に書いたオピッツを聴いた時に、東京交響楽団がジョナサンノットの演奏で、彼の『管弦楽のための交響曲』という曲を演奏しました。その時初めて聴いた作曲家で、まだ広くは知られていない音楽家だと思うのですが、こうも立て続けに出て来るのは、何かあるのでしょうか?

 

《休憩20分》

 

休憩の後は先ず                            

 ④シューベルトの幻想曲です。これは一台のピアノで二人の連弾です。高音側が小林さん、低音側が反田さん。最初のメロディは如何にもシューベルトらしく、旋律を美しく奏でるものでしたが、何となく裏寂しい響きを有しています。ここでもソロでは得られない重厚な調べが、あたかもシューベルトが、内にこもった悩みを吐き出したいのだけれど出せなくてまた飲み込んでしまう様な感じを与え、小林さんは高音のメロディを非常に美しく表現していました。続く軽快なリズムの高い音のパッセッジは悩みは忘れて快活に行こうよとシューベルトが気持ちを持ち直したかのような印象です。この曲では、シューベルトの旋律表現が多い小林さんの1stの方が、どうしても主役を演じたきらいがありました。

⑤最後はブラームスです。ブラームスの曲は三日前にピアノ協奏曲を、オピッツの演奏で聴いたばかりで、耳にまだブラームスの濃厚な余韻が残っている状態だったので、今日のこの変奏曲は、ブラームスとしては少し軽量級の曲かなという印象を持ちました。1 st が小林さん、2  nd が反田さん。最初の主題は二人共、割りとゆっくりしたテンポで斉奏です。1変奏は反田さんがゆっくりとメロディを弾き2変奏では二人共速いテンポの強打をしています。3変奏は主題のを綺麗なメロディで変奏。4では短調で反田さんは右手のみで弾く箇所もありました。ここまで進んでもブラームスらしさを有した力強い変奏曲は現われません。最初の主題と最後の終曲を含めて10曲組み合わさっているのですが、それは有るのかな?無いのかな?と思って聴いていた処、一番最後の「終曲」がそれでした。重層感のある強い印象の圧倒的に他の変奏より長い曲でした。反田さんと小林さんは、ここでも一つの演奏椅子に狭そうに座って、息の合った演奏をしていました。

 これで全部ですが、素晴らしい二人の演奏でも、矢張り演奏曲がショパンとは関係ない曲だったので、何か物足りなさを感じたのは自分ばかりではなかったと思います。

 予定曲の演奏終了後、大きな拍手に二回ほど袖に消えては現われた二人ですが、その後反田さんが一人で出て来て、おもむろにピアノに向かいました。アンコール演奏です。矢張りショパンでした。そうこなくちゃ!!反田さん得意のマズルカ。『マズルカ34番』です。次のアンコールは小林さん、こちらもショパン『24の前奏曲17番』でした。続いて二人の連弾アンコールまで。シューマン『連弾小品』より12番<夕べの歌>、3番<庭園のメロディ>でした。四曲も追加で聴くことが出来た聴衆は大満足だったでしょう。演奏されたお二方はさぞ疲れたことでしょう。各地での一人の凱旋公演も、今回の二人での凱旋公演も行なわれ、一段落ついたらゆっくり休養して下さい。そして又素晴らしい音楽をクラシックピアノを愛する人々に送り届けて下さい。