表記のシティーフィル第345回定演は、ストラビンスキー没後50周年記念演奏ということで、allストラビンスキープログラム。バレエ音楽で滅多に演奏されない曲も入っているので、聴きにいきました。
【日時】2021.10.14.(木)19:00~
【会場】オベラシティー・タケミツメモリアル
【管弦楽】東京シティーフィル
【指揮】関高健
【曲目】
①ストラヴィンスキー『小管弦楽のための組曲 第2番』
②ストラヴィンスキー『バレエ音楽「ミューズを率いるアポロ』
③ストラヴィンスキー『バレエ音楽<カルタ遊び>』
④ストラヴィンスキー『3楽章の交響曲』
【東京シティ-フィル概要】
東京にはたくさんのオーケストラがあって、似た様な名前のものもあり、余程オーケストラばかりを聴いていないと、区別がつきません。特にこの管弦楽団と東京ニューシティ管弦楽団の違いとなるとさっぱり??ついこの間まで区別しないで考えていた。(日フィル、新日フィルなども同様)ネットにある情報では、東京シティーフィルの来歴は、以下の通りです。 1975年、指揮者の堤俊作を中心に若く才能ある演奏家たちによって設立。同年ベオグラード音楽祭開幕演奏会を含むヨーロッパ公演、香港公演はどを成功させ、プロ・オーケストラとしての基礎を築く
東京オペラシティコンサートホール、ティアラこうとうで定期演奏会を開催するほか、東京文化会館で特別演奏会を開催している。
1997年飯森泰次郎が常任指揮者に就任、ワーグナーのオペラ他多くの公演を成功させ、聴衆の多大な支持を集めている。
左から常任指揮者高関健、 桂冠名誉指揮者飯守泰次郎、 首席客演指揮者藤岡幸夫
ストラビンスキーは、時代が進むにつれ作風が変わったので、「カメレオン作曲家」とも呼ばれ、今回は第1次大戦後から第2次大戦後間に作られた新古典派的曲を作曲の年代順に演奏するとのことでした。
詳細はシティフィルH.P.の関高さんの話すプロモート映像を参考のこと。
【演奏の模様】
演奏前に関高さんのプレトークがあったので、その話とプログラムノートの内容を合わせて、感じたこと考えたことを記します。
①ストラヴィンスキー『小管弦楽のための組曲 第2番』
元々はピアノ連弾のための初期の作品で、小さなオーケストラ用に編曲。器楽構成は、2管編成(但しOb,Hr,Trb,Tub各1、+Pf,シンバル、大太鼓、スネアドラム)弦楽五部8型(Cb6)の管も弦も比較的小編成でした。4曲から成り、1.行進曲 2.ワルツ 3.ポルカ 4.ギャロップ です。
1.Timpと他の打楽器+管からスタート、弦のピッツィが効いて、リズムは変化するも、マーチの雰囲気作りにオケと指揮は邁進。
2.プログラムノートにある ’奇妙 ’ な感じはそれ程でなく、むしろ幻想的。
3. 大太鼓が打ち鳴らされ、Trpが鳴り響き、ピッツイが捕捉する。軽快なリズムだがTrpにメロディが奇妙な感じ。
②ストラヴィンスキーバレエ音楽『ミューズを率いるアポロ』
弦楽器のみ演奏する作品で、弦楽五部は12型に増強。新古典主義に入ってからの作品で非常に美しい曲だと思いました。バロック的な響きがありカラヤンが好んで演奏したそうです。
登場人物は、アポロと3人のミューズ(カリオペ、ポリュムニア、テルプシコラ)です。
ちなみに、カリオペ(Calliope)は詩、ポリュムニア(Polymnia)は演劇、テルプシコラ(Terpsichore)は舞踏を司る女神とされている。
以下の10曲から成り、演奏時間は約30分と結構長い曲でした。 1.プロローグ:アポロの誕生
2.アポロの変奏曲
3.パ・ダクシオン:アポロとミューズ達
4.カリオペの変奏曲
5.ポリュムニアの変奏曲
6.テレプシコラの変奏曲
7.アポロの変奏曲
8.パ・ドゥ・ドゥ:アポロとテレプシコラ
9.コーダ:アポロとミューズ達
10.アポテオーズ:アポロとミューズ達
ストラビンスキーとは思えない様なオーケストラレーションや旋律が出てきて、とてもいい曲を聴いたという満足感がありました。
②以下は、何れも曲に合わせたバレエが振付されているもの。音楽だけでも興味深いのですが、曲に合わせるバレエを実際に見て鑑賞すれば、一層理解が深まると思います。
ただレアな(マイナーな)演目のため実際に上演を見ることは困難かも知れない。従って取り合えずネット等の動画で見る他ないでしょう。検索すると、音楽のみはカラヤンの演奏がトップで出てきます。
③ストラヴィンスキー『バレエ音楽「カルタ遊び』
これも三大バレエ以外のバレエ作品です。管弦編成は、①のケースにHr.Trp.Fgが増強、Hrp.とTimpが入りました。 ポーカーの三番勝負に関するもので三楽章構成。一楽章づつポーカーの勝負になっています。ジョーカーの役割が面白い。勝負相手がストレートを出して勝ったと思ったとたんジョーカーが相手方の方に入って、ロイヤルストレートフラッシュを出して逆転勝ちするのです。 アバドの得意曲だったとも謂われる。
曲のあちこちにロシーニ、ベートヴェン他の曲の一節がパロディとして挿入され、ユーモラスな側面があります。
二回の大戦をロシアで経験したストラビンスキーは、暗い社会が性格にも合わなかったのかも知れない、フランスに出国し、ココ・シャネルの処に暫く世話になってから、アメリカに向かったのでした。
演奏の中ではコンマスがソロ及び次席との重奏を華やかに演奏して一番目立っていました。
④ストラヴィンスキー『3楽章の交響曲』
作曲された三つの交響曲(他の曲は、詩編交響曲、ハ調の交響曲)の最後の作品です。 ブラームスの交響曲が参考にされています。
1楽章ではピアノの存在はそれ程感じなかった。続く2楽章の大太鼓の大音やHp.の優雅な音がオケに溶け込む管弦の音やアンサンブルに合わせるTimpのリズミカルな音のコントロール・調和を、高関指揮はよどみなく誘導していました。Ft. Hnも大いに活躍。
高関さんは、トークでの ”難しい曲だからうまく指揮できるかなあ?”と言った言葉とは裏腹に、一貫して自信をみなぎらせた指揮ぶりでした。東京シティーはそれに良く答えた演奏をしていて仲々いい演奏でした。選曲も良かった。
今日は演奏されなかったのですが、ストラビンスキーの三大バレエ音楽は、結構な頻度であちこちで演奏されます。昨年のウィーンフィルのサントリーホール公演では『火の鳥』全曲演奏を聴きました。また一昨年の来日の時には、ミューザ川崎では、『春の祭典』を聴きました。
今年の来日では、ムーティはシューベルトを主に指揮し、加うるにモーツァルトやメンデルスゾーンの古典派、ロマン派のシンフォニーが中心です。一つだけストラビンスキーの『ディヴェルティメント~バレエ音楽<妖精の接吻>による交響組曲~』という複雑なタイトルの曲が演奏されます。一応全曲目を聴くことにしているので、あと20日弱心待ちにしています。
昨年の感想にも書きましたが、ストラビンスキーの曲の演奏では、どこかにちょっとだけでも、バレエの踊りが入れば、インパクトが強くなるのにと思っています。先週のホールオペラ『椿姫』(サントリーホール)の二幕では、バレエダンサーとバレリーナのパ・ド・ドゥが踊られ華やかさを増しました。最もサントリーホールのステージはオケが入ると一杯になってしまい、踊るスペースは特設舞台でも作らないと、無いのかも知れません。でも工夫次第では小さな踊りであれば可能では?指揮者(ムーティ)の周りを少し開けて空間を作るとか、座席中央通路を踊りながら登場するとか、舞台下の平土間空間の3席程、椅子を取り除き空間を作るとか。これからは、オーケストラ演奏にも演出家が要る様になるかな?いや、そんなことは無理筋なのかも知れません。