HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『ミューザ川崎ホリデーアフタヌーンコンサート2021後期/石田・YAMATO QUALTET《死と乙女/天使と悪魔》

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YAMATO QUARTET

【日時】2021年10月16日(土) 13:30開演
【出演】YAMATO STRING QUARTET               

    (やまと弦楽四重奏団)
                1Vn:石田泰尚

                2Vn:執行恒宏

                  Va:榎戸崇浩
                  Vc:阪田宏彰
【曲目】
①シューベルト『弦楽四重奏曲第14番ニ短調「死と乙女」D810』

 

《20分の休憩》


②ピンクフロイド『狂気』

 

③ピアソラ『悪魔の組曲』

悪魔をやっつけろ/悪魔のロマンス

 

④ピアソラ『天使の組曲』 

天使へのイントロダクション/天使のミロンガ/天使の死/天使の復活

【Profile】

〇YAMATO S.Q.

異なる音楽大学の学生として知り合った4人によって1994年に結成され、松尾学術財団の特別奨励金・秋田県大曲市新人音楽祭グランプリ・大阪国際室内楽コンクール入選など受賞歴を重ねてその活動を開始しました。

JYACMSの第10回記念コンサート・リゾナーレ音楽祭・NHK-FMリサイタル・ニッポン放送公開録音「新日鉄コンサート」などの経験を経て、澄んだ音色と巨大な響きを持った弦楽四重奏団として個性を確立すると、世界初録音となるCD「山田耕筰 室内楽全集」、幸松肇氏の「日本民謡全集」の録音により、日本音楽のスペシャリストとして知られるようになります。                  近年は近藤和明氏のアレンジを武器に、膨大なピアソラ作品、「ピンクパンサー」「ひまわり」などの映画音楽など、ジャンルの壁を取り払う企画を進行中。

中でもジミ・ヘンドリクスやレッド・ツェッペリンなど、ロックの王道を取り上げたプログラムは、ヴァイオリン石田泰尚の他に類を見ないプレイスタイルと合致し、新しい弦楽四重奏の世界を拓き続けています。

〇石田泰尚

神奈川県出身。国立音楽大学を首席で卒業、同時に矢田部賞受賞。新星日本交響楽団コンサートマスターを経て、2001年より神奈川フィルハーモニー管弦楽団ソロ・コンサートマスターに就任。以来“神奈川フィルの顔”となり現在は首席ソロ・コンサートマスターとしてその重責を担っている。これまでに神奈川文化賞未来賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。幅広いレパートリーを誇り神奈川フィル他各地のオーケストラと協奏曲の演奏やリサイタルを行いソリストとしての顔も持つ。

自身がプロデュースした男性奏者のみの弦楽アンサンブル“石田組”、新しいスタイルのピアソラを追及した“トリオリベルタ”、ピアニスト及川浩治の呼びかけで結成されたピアノトリオ“Bee”など、様々なユニットでも独特の輝きを見せる。結成時から参加するYAMATO S.Qでは20年以上に渡り唯一無二のヴァイオリニストとしてグループの方向性を決定づけてきた。2018年「音楽の友」4月号「クラシック音楽ベストテン」においてソリスト・室内楽など4部門にランクインするなど各方面から高く評価されている。録音も多く2016年発売の“石田泰尚/LIVE”、2017年発売の“ALLBRAHMS LIVE”は共にレコード芸術誌上で準特選、さらに石田組デビューアルバム“THE石田組”は特選盤の評価を得た。2018 年には石田組がNHK-FM「ベストオブクラシック」およびBSプレミアム「クラシック倶楽部」 で放送されその熱いステージの模様は大きな反響を呼んだ。使用楽器は 1690 年製 G.Tononi、 1726 年製 M.Goffriller。

 

〇執行恒宏
 東京藝術大学付属高校を卒業後、同大学に入学。在学中より演奏活動をはじめ、山形交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者に就任。後に同楽団コンサートマスターを2006年まで務める。現在東京ニューシティ管弦楽団コンサートマスターを務めると同時に、国内主要オーケストラのゲストコンサートマスターとしても活動している。東京オペラシティでのリサイタルの他 、各地のオーケストラと協奏曲を共演するなどソリストとしても活躍、またYAMATO弦楽四重奏団他のメンバーとして室内楽も積極的に取り組んでいる。

これまでに、浅川 多美子 鷲見 康郎 澤 和樹 小林 健次の各氏に師事。

 

〇榎戸崇浩
 1988年名古屋市立菊里高校音楽科にヴァイオリンで入学。第44回全日本学生音楽コンクール名古屋大会第1位。92年東京音楽大学特待生としてヴィオラ専攻で入学。93年摂津音楽祭リトルカメリアコンクール第3位。96年第66回読売新人演奏会に出演。関東主要オーケストラに客演首席奏者として出演。97年に読売日本交響楽団入団、首席代行を務めた。

現在は、同団ヴィオラ奏者として、またアンサンブル奏者、ドラマ、CM、ゲーム等のレコーディング奏者としても活躍している

 

〇阪田宏彰
 国立音楽大学卒業。YAMATO弦楽四重奏団代表。喜多直毅とTANGOPHOBICSメンバーとして「TANGOPHOBIA」「Concet in MORIOKA」をリリース。Cello Ensemble 008代表。CD「Cello Ensemble 008 vol.1」「Cello Ensemble 008 vol.2」をリリース。
多くのグループでリーダーを務め、個性的なメンバーの特質を生かしたプロデュースを得意とする。

群馬交響楽団、大阪センチュリー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、神奈川フィルハーモニー、山形交響楽団、東京シティフィルハーモニック管弦楽団などの客演首席奏者を務める。桜美林大学非常勤講師。

 

【演奏の模様】

 演奏会場でいつも驚くのは、石田さんのいる演奏会はいつも大勢の観客が入ってるという事です。今日も2000人ほどの座席は、ほとんど(9割以上)埋まっている様に見えました。昨日のオーケストラの演奏会よりはるかに多い集客です。しかもカルテットですから、たった四人で大ホールが埋まるとは驚異的なことです。それだけ人気が高いのでしょう。今日も中年以上の女性の姿が(親子連れの場合は若い娘さんの姿も)多く見かけられました。

①シューベルト『弦楽四重奏曲第14番ニ短調「死と乙女」D810』          この曲の関連曲として、D531に「死と乙女」の歌曲があります。弦楽四重奏曲は四楽章構成です。                                          

  ①-1(Allegro) 

 演奏の出だしでは、Vnはソロ部分も含め順調なスタートでしたが、Va Vcの響きがやや弱い様に聞こえました。1Vnの石田さんの演奏はこれまで何回か聴いたことがあり、特に高音は透明な奇麗な音なのですが、やや女性的というか線が細いかなといつも思います。1Vnと2Vnとのフーガ的やり取りも良く聞こえました。次第に調子が上がってきたのか、四重奏としてのVolumeが上がってきました。

①-2(Andante con moto)                          

 鎮魂の歌の様な厳かな旋律に感じました。1Vnが高い音でほとんどソロに近い演奏、Vcはピッツィカートで拍子をとり、続いてVcが旋律を奏でて他の三者は伴奏にまわりました。主題が変奏され、最後再び最初のしめやかな、厳かなメロディに戻ります。この楽章を聴きながら、やはりシューベルトは旋律Makerなのだなと考えたりして、会場を一瞥すると、この大観客はシーンと咳一つせず、まばたきもしないのではと思うほど静まりかえって、演奏に聞き入っていました。

①-3(Scherzo: Allegro molto)

 冒頭から速いテンポの元気な演奏が飛び跳ね、各パート間のマッチングが良くて、一楽章、二楽章の演奏よりも、よりカルテットらしいアンサンブルの響きが出てきました。短い楽章。

①‐4(Prest)

 非常に速いテンポで前楽章とはニュアンスの異なる舞曲風のメロディが、強奏ともいえるアンサンブルを形成、最後は力一杯の力演の後、静かに幕が引かれました。

以前聴いた石田さんは、「石田組」と呼ばれる若い演奏者たちを配下に従えている様な親分的所作を伴った演奏が多かったので、今日のカルテットの演奏が、「石田組」からいよいよ別次元に脱却するスタートなのかな?と思ったのです。しかし配布資料のプログラムノートを見ると、この「YAMATO String Quartet」の歴史は随分古くに遡るのですね。「石田組」よりはるかに長いキャリアがある。皆さん石田さんが学生の頃の知り合いで、1994年に結成されたというのですから、二十数年経つ訳です。コロナ禍で少数グループによる演奏が以前にも増して求められている昨今、「石田組」の演奏も良いですが、この四重奏団の結束をさらに強め、本格的にカルテットの演奏活動を活発化して欲しいものです。いい曲が沢山ありますから。

 ついでにプログラムノートの記載に関して一言。「シューベルトは歌曲王のイメージが強いが器楽作品にも日を当てるべきだ」といった趣旨のことが書かれていますが、確かに「歌曲王」に間違いなく素晴らしいDeutsch Liedの曲が沢山あります。しかし最近は、特に日本では、フィッシャー・ディスカウ存命の頃の様なリート人気は陰ってしまい、演奏会も少なくなって、オペラ演奏やその他の国の歌曲演奏に押され気味の傾向があるのでは?と思うのです。むしろシューベルトのピアノ曲に素晴らしい作品が沢山あって、演奏される機会も多いですね。因みに今月下旬に内田光子さんのピアノリサイタルがありますが、シューベルトの「impromptus」も演奏曲目に入っています。以前はモーツアルト弾きと言われた彼女も最近はシューベルトのピアノ曲を弾くことが多いです。二年前に来日公演した時もシュ-ベルトのソナタを弾いたのを聴きました。

 その他シューベルトには、合唱曲に素晴らしい作品が多々あるのですが、これも余り日の目を見ない今日この頃だと思います。器楽曲は交響曲が結構演奏されています。11月のウィーンフィルの来日公演でも、シューベルトの4番と8番が演奏されます。カルテットはさすがにハイドンやべートーヴェンの作品に隠れて影が薄いですね。残念ながら両者の四重奏曲をシューベルトは超えることが出来なかった。せめてあと十年でも長生きしたら、もっと素晴らしいものを作っていたかも知れません。だって彼は天才ですから。

 

《20分の休憩》


②ピンク・フロイド『狂気』

 ピンク・フロイドの名前は有名なので知ってはいましたが、残念ながら関心がなく一度も聴いたことがありませんでした。比較は出来ないので、今回聞いたままの感じだけを記録します。その前に狂気の原曲を調べたところ、ロックバンドの曲とは思えない程、穏やかで音楽として普遍性を有した録音でした。それもその筈、ピンク・フロイドの第三期には、所謂「プログレ(Progressive Rock )」の試みがなされ、クラシック音楽を含めた様々な音楽要素で曲が作られ演奏されたといいます。ミリオンセラーだったみたい。YAMATOカルテットの演奏を聴くと、Vcのピッツィと他の三者のトレモロでスタートした演奏は、暫く穏やかに推移するのみで ‘狂気’ などどこにも無い、と思った将にその時、曲風が急に北風、嵐に変わり、Vcは激しく音を出して他の三者も強奏を始めました。1Vnは高音を出して叫んでいます。後半になると叫びも収まってカルテットの強奏も終わり、発作が沈静したかのような静かなアンサンブルに戻りました。原曲の録音では一貫して穏やかな雰囲気で時としてバンドの速いパッセッジが混じることがありますが表面上は平静さを保っている。原曲のコンセプトは“人間の内面に潜む「狂気」(The Dark Side of the Moon)を描き出す”というものだったらしい。「狂気」という言葉は日本で初めて使われたのでしょうか?だとするとカルテットに編曲した時に、その用語に取らわれ過ぎたのではないかな?そういえばプログラムには誰が編曲したか記載が有りませんでした。                                  

③アストル・ピアソラ『悪魔の組曲』                       ④アストラ・ピアソラ『天使の組曲』                        今年はピアソラ生誕100年の年として、あちこちでピアソラの曲が演奏されています。『ブエノスアイレスの四季』は良く演奏されます。                     ③では不気味なメロディからスタート、Vc は黙々とピッツィ。1Vcの高音が震えるほど良く聞こえました。Vaのソロも良かった。またVcのソロが圧巻で、重音も上手に混じえて演奏、荒々しくもあり音も透明で、表現力もありこの日最大の収穫の気分でした。                                                   ④は、最初の曲ではVcのピッツィが多く、激しく弓をぶつける様なピッツィもあり、またチェロ本体の木部を叩いて拍子を取ったり、結構激しい調子になり面白いリズミカルなタンゴ調の表現がありました。最後の曲では、穏やかな調べに落ち着くのでした。

 話は少し飛ぶのですが、時々この記録に書く様に、アルゼンチン、ブエノスアイレスには歴史の古いTeatro Colon (コロン劇場)があり、そこから定期的に映像がプッシュされて送られてくるのです。いつも見られるとは限らないのですが、10/15には歴史的公演の映像としてレナータ・スコットやリチャードタッカー、コルネル マクネイル出演の「リゴレット」が送られてきました。2時間もかかるのでまだ全部見切れていません。少し前には「Quinteto Astor Piazzolla」の演奏の映像が有りました。

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バンドネオン、ヴァイオリン、コントラバス、ギター、ピアノの五重奏団です。

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ピアソラの曲にはやはりバンドネオンが欠かせないのかも知れません。