表記の音楽会は
「文化庁:大規模かつ質の高い文化芸術活動を核としたアートキャラバン事業」の一環として、「クラシックキャラバン」隊を組み全国各地の会場を廻って、音楽会を開催するものです。コロナ禍で、活動が停滞気味にあるクラシック音楽演奏及び音楽家の下支えのための文化庁補助事業の様です。一種の公的資金援助でしょう。
今回は、「動物の謝肉祭」としてのプログラムで、前半は主にソロ演奏で、様々な器楽曲と歌が演奏され、後半は、サンサーンスの『動物の謝肉祭』が、サンサーンスの初演時の器楽構成のアンサンブルで、演奏されました。
【日時】2021.9.23.(祝)15:00~
【会場】銀座・王子ホール
[司会]松本志のぶ (フリーアナウンサー)
[出演]
大江 馨(ヴァイオリン)
城戸かれん(ヴァイオリン)
徳永二男(ヴァイオリン)
田原綾子(ヴィオラ)
矢部優典(チェロ)
谷口拓史(コントラバス)
吉野直子(ハープ)
竹山 愛(フルート)
イシュトヴァーン・コハーン(クラリネット)
塚越慎子(シロフォン)
森山拓哉(グロッケンシュピール)
近藤嘉宏(ピアノ)
實川 風(ピアノ)
三舩優子(ピアノ)
山岸茂人(ピアノ)
安井陽子(ソプラノ)
中島郁子(メゾ・ソプラノ)
中鉢 聡(テノール)
宮本益光(バリトン)
松本志のぶ(司会)
【曲目】
①-1エルガー:愛の挨拶 Op.12
①-2モンティ:チャールダーシュ
(Vn徳永二男 Pf三舩優子)
②-1ショパン:幻想曲 Op.49
②-2革命エチュードOp.10
(Pf.Solo 近藤嘉宏)
③-1サルツェード:バラードOp.28
(Hp 吉野直子)
③-2マスネ:タイスの瞑想曲
(Hp.吉野直子 Vn.徳永二男)
④山田耕筰/北原白秋:からたちの花
中田喜直:組曲「魚とオレンジ」~華やぐ朝
(Sop.安井陽子)
⑤-1黒い瞳(ロシア民謡)
⑤-2ドヴォルザーク/松本隆:眠りなさい
(Bar.宮本益光 Pf.山岸茂人)
⑥-1フォスター:夢路より
⑥-2黒人霊歌:アメイジング・グレイス
(Mez.中島郁子 Pf.山岸茂人)
⑦-1ナポリ民謡:カタリ・カタリ
⑦-2ディ・カプア:オー・ソレ・ミオ
(Te.中鉢聡 Pf. 山岸茂人)
《15分の休憩》
⑧サンサーンス:動物の謝肉祭
三舩優子、實川風(Pf.)竹山愛(Fl.)
イシュトヴァーン・コハーン(Cl.)大江馨、城戸かれん(Vn.)田原綾子(Va.)矢部優典(Vc.)
谷口拓史(Cb.)塚越慎子(Xylo.)森山卓哉(Glsp.)松本志のぶ(司会・進行)
【演奏の模様】
①を弾いたヴァイオリニストの徳永さんは、以前、ビバルディの四季を弾いたのを聴いたことがあります。その時の記録を見てみると次の様に記してました。
❝やはり主役は徳永さんの独奏(これはヴィヴァルディのVnのためのコンチェルトですから)です。ずーとこの演奏会で徳永さんを聴いて、百戦錬磨の弓使い、指使いで縦横無尽に演奏するvirtuosoの感はあるものの、音質はやや大時代的で、これまで聴いている多くのヴァイオリニストの音質とは少しかけ離れている感がした。
「春」の冒頭の音を聴いておやと思ったのですが、その後の「夏」「秋」と進むにつれて安心して聴ける音を出していたので、後で考えると、あれは出だしだったので、音のテューニングはこれからという愛嬌ではなかったのかな?等と想像しました。
「冬」のlargoは、ゆったりとしたVn独奏の調べなので、一番好きな箇処ですが、矢張りスタート時の音に雑味を感じました。その他は完璧。99.9点の素晴らしい演奏かなと思っていたら、アンコールにまた同じ個所を演奏していました。❞
今回の①の二つの曲の演奏は、何れもその音楽性に於いて熟練の技の成せる素晴らしいものがあったのですが、音質に関しては、やはり以前と同じ感じを持ちました。すなわち、今を時めいてオーケストラバックにコンチェルトを弾いている若いヴァイオリニスト達には決して真似出来ない、深いというか幅広いというか重々しい音質なのです。徳永さん独特の固有の音なのでしょう。「徳永音(おん)」です。でも考え様によっては、古風な香りのする音ですね。あたかも正倉院や国立博物館の宝物(ほうもつ)を見る様な印象。たまさかの、特にppの音のカスレ、途切れが気になりました。それからもう一点思ったことは、重音演奏部分が明快にその前後の音とクリアに異なると分かるのではなく、重音が前後の演奏音と余り変わらない、逆に言うと、通常の演奏における音の幅はかなり広いのではなかろうかと思われたことです。言葉を換えれば、音の周波数分布を若し測定して解析すれば、他のヴァイオリニスト達の周波数のピーク数よりもかなり多数(多く)のピークが分布しているのではなかろうか、それが徳永さんの音質の特徴なのではないかということです。間違いかも知れませんが。
②の第1曲は、司会の松本さんの説明で「雪の降る街」のメロディとして取り入れられた、という旋律そのもので開始したのですが、どうもピアノの音が芳しく聞こえません。次第にテンポが速くなってくると奇麗なショパンのピアノ音になってきました。特に高音がとても澄んで聞こえました。速いパッセジもフォルテで力強く弾く箇所も近藤さんは表現豊かに弾いており、素晴らしいピアニストだと思いました、ただ惜しいかな途中二度程立ち往生してしまいましたが、これは熟練度が増すにつれてミスが少なくなるでしょうから、今後のさらなる向上、活躍が期待されます。
③は吉野さんのハープです。ソロ演奏は初めて聴きました。演奏前の松本司会の話にも有った通り、普段あまり見えないペダル使いや様々な指使いが良く見ることが出来ました。(割と前方の席だったこともあって。)③の二曲目、「タイスの瞑想曲」は、ハープが伴奏に徹っしているのか、徳永さんの演奏に隠れてしまいました。逆にハープが主旋律、Vnが伴奏の編曲は無いのでしょうか?
④からは歌です。④の安井さんは先日の東京文化会館でのオペラ『魔笛』で夜の女王を歌ったのを拝聴しましたが、その時の記録は
“ここでの安井さんの歌は見事な歌いぶりでした。コロラもコロコロと転がし、最高音もしっかりと出ていて、復讐に燃える女王の勢いもあったし、ほぼミスがない立派な歌いぶりでした。”
と書いています。でも今日の歌は、代表的日本歌曲ともいえる山田耕筰と北原白秋の歌なのですから、大ホールでのオペラと同じ歌い方では、全然その良さが感じられません。歌心を大事にしたいものです。二曲目の中田喜直の曲は初めて聴きましたので、安井さんの様な表現もあるのかなと思いましたが・・・。
⑤の宮本さんの歌も大ホールのオペラで聴きたいと思った程の迫力でした。
⑥の中島さんの二曲は歌う順がプログラムの逆になりました。一曲目、フォスターの「夢路」はどのような状況下で何をイメージして作曲されたかわからなかったので、中島さんもオペラで活躍している余力と思える力演でしたが、‘夢路’は文字通り考えると、何かロマンティックな感じがするのですが、歌いぶりはそれからは程遠いものでした。それに比し二曲目の有名な黒人霊歌はしっとり感がありました。
最後の中鉢さんはこれまでオペラでも縁がなく初めて聴くテノールです。演奏順がプログラムとは逆でした。⑦のいずれの曲も、三大テノールを筆頭に世界のテノール歌手が、コンサートでよく歌う曲です。中鉢さんはオペラ歌手として声量が十分あって力強く、ドラマティコかリリコスピントかと思われるほどでしたが、ドミンゴの様な透き通る様なねいろが少しでも欲しいですね。宮本さんもそうでしたが、今日の数百人の中規模ホールでは音の反響がありすぎて、大ホールに移って聴きたくなりました。
休憩の後の、「動物の謝肉祭」が非常に良い舞台だと思いましたのでそれを以下に記します。
最初に司会の松本アナが、今回はサンサーンスの初演の時とほぼ同じ器楽構成にしたということと、松本さんが曲演奏のあいだに、ナレーションを付けて語りを入れるということを説明しました。
各曲を若干捕捉しますと、
- 第1曲「序奏と獅子王の行進曲」
ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
- 第2曲「雌鶏と雄鶏」
ピアノと弦楽器が鶏の鳴き声を模倣しあう。全35小節。
クラリネット、ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ
- 第3曲「騾馬」
ピアノの上り下りする強奏の音階。
- 第4曲「亀」
弦楽器がのそのそとユニゾンでオフェンバックの『天国と地獄』の旋律をわざとゆっくり演奏。ピアノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
- 第5曲「象」
コントラバスがもそもそと軽やかにワルツを奏する。ベルリオーズの『ファウストの劫罰』から「妖精のワルツ」、メンデルスゾーンの『夏の夜の夢』から「スケルツォ」が重低音で組み入れられている。コントラバス、ピアノ
- 第6曲「カンガルー」
装飾の付いた和音が上下して、飛び回るカンガルーを描写する。
- 第7曲「水族館」
グラスハーモニカの入った幻想的なメロディーに、分散和音のピアノ伴奏が添えられる。フルート、グラスハーモニカ、ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ
- 第8曲「耳の長い登場人物」
おそらくは驢馬、アジアロバでない驢馬。のどかな驢馬の鳴き声をヴァイオリンが模倣する。サン=サーンスの音楽に嫌味な評価を下していた音楽評論家への皮肉と言われている。ヴァイオリン2
- 第9曲「森の奥のカッコウ」
クラリネットがカッコウの鳴き声を模倣する。全43小節。ピアノ協奏曲第2番の第3楽章の一部から和声進行がそのまま引用される。
クラリネット、ピアノ2
- 第10曲「大きな鳥籠」
弦楽器のトレモロによる伴奏の上を、フルートが軽やかに飛び回る。全31小節。
フルート、ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
- 第11曲「ピアニスト」
わざとへたくそに、ピアノの練習曲を弾く。最後は明確な区切りもなく、そのまま次の曲へ入る。ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
- 第12曲「化石」
自作『死の舞踏』の「骸骨の踊り」の旋律、ロッシーニの『セビリアの理髪師』から「ロジーナのアリア」、その他「大事なタバコ」「きらきら星」「月の光に」)、「シリアへの旅立ちながら」などのフランス民謡が組み合わされる。ピアノ2、クラリネット、シロフォン、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
- 終曲第13曲「白鳥」 チェロ
松本さんのナレーションが朗読の様々な技術を使って、口調や声色(こわいろ)を変えたり、演劇のセリフ的ないいまわしや、面白ろ可笑しく話したり、曲を盛り立てるのに非常に効果がありました。さすがアナウンサー出身です。曲を聴く聴衆の理解も一層よく深まったと思います。こうした演奏会は初めて聴くので、大変興味深く聞いておりました。實川さんが、初心ピアニストが慌てる様子を楽譜を落としてしまって慌てて拾う仕草なども笑いを誘って和やかな雰囲気を盛り立てました。
こうした演奏ならば子供が聴いても非常に喜ぶと思いますよ。残念ながら今日は、お子さん連れは二、三人しか見かけませんでしたけれど。
前半だけでも立派な演奏会でしたが、後半の演奏会はそれ以上に盛り上がって、トータルとしては、さすが国の肝いりで行われる演奏会はかくも充実しすぎる位の立派なものになるんだな!と思った次第です。コロナ禍などで音楽界はシュリンクしない!
なお、演奏後、ホールの建物の裏側に「王子サーモン」のかかるお店が目に入ったので入ってみました。
訊くと、王子ホールや王子サーモンの店は、製紙業界の大手「王子製紙」が営んでいるとのことでした。酒のつまみに「鮭の腹びれ燻製」を一パック購入しました。今度の土、日でも試してみようと思います。
まだ18時くらいで明るいし、久しぶりの銀座だったので、昔を思い出し、『銀座コージーコーナー』に行って夕食をとってから帰ろうと思いました。あれは確か何十年も昔、自分がまだ20代か30そこそこの頃だったと思います。銀座に割と近い職場だったので、お昼になると、ちょくちょく散歩がてら、コージーコーナー本店まで歩き、確か二階にあったコージーコーナーのレストランで、サラダ付きのワンプレート料理を食し、コーヒーを飲んで戻ったものでした。その切っ掛けは、当時の直属の上司が、まだ自分より4~5歳しか上でなかったのですが、幹部候補生に選考され(その後自分は別なところに移ったので、耳に入った噂によれば、その組織の大幹部になった様です)、上司‐部下の関係になってから一週間もたたないうちに、「いいところがあるから食事に行きませんか?」と昼休みに誘われたのです。そして連れていかれたのが、かなり歩きましたが、当時6丁目にあった「コージーコーナー本店のレストラン」だったのです。「・・・・行こう」とか「・・・・行かないか?」とは謂わないのです。部下に対しても威張った態度とか言葉は取らず、ジェントルマンでした。確か金沢のお医者さんの長男だったと言っていました。芸術にも造詣が深い人でした。当時の「コージーコーナー・レストラン」はテーブルもゆったりとして白いクロスがかかり、壁にはあまり大きくはないですけれど、本物の油絵が飾ってあり、食べながら「あれは誰それの絵で、こうなのです、あーなのです」と講釈を聞きながら自分なりに感心したものでした。料理も当時としては、組織内にある食堂よりもはるかに美味しいと感じました。自分のやり方を通して、奢ってはもらわないで、割り勘にしてもらいましたが、コスパが非常にいいと思われる値段でした。その後度々食べに行くようになったのです。たまには家内にケーキ(モンブランが大好物で❛モンブランのモンブランが最高❜などとのたまいます)を買って帰ったこともありました。
今日は演奏会の後、そのことを思い出し、夕食を食べて帰ろうとしたのです。現在、本店は数十年前に移転して、1丁目になりました。1丁目本店は初めてなので、スマホで地図を検索したりして探しているうちに6時も半過ぎになり、ややうす暗くなってきました。日本橋方面の1丁目の交番の目の前の本通り交差点にそれは有りました。近くには去年は見かけない大きなビルが建っています。
「銀座はちょっと行かないと変わっているよ」と友人が言っていたことを思い出しました。
1階がケーキ販売で2階が食事出来るというので狭い階段を上ってみたらほとんど客はいませんでした。メニューを出してもらって、何か美味しそうなのはないかなと見たら、サンドイッチ類とカレーとパスタしか書いてない、訊くと、肉、魚料理はやっていないとのこと。仕方ないのでサンドイッチとコーヒーを頼んだら、ラストオーダー(7時)に近いので作れないとのことでした。しぶしぶパスタとコーヒーに変更、出てきた料理はそれでも茹で加減といい味といい相当美味しかった。
コーヒーもまずまず。食後に上さんの土産のテークアウト用にケーキメニューを見たら、モンブランは売り切れとのことでした。仕方なくプチケーキの詰め合わせを頼んで買って帰った訳です。
コーヒーにはある程度ズート凝っているので、普通の店のコーヒーはマー普通だと思ってしまいます。十年程前は、家で豆を粉に挽き、手で入れていたのですが、忙しくなって面倒くさくなったこともあって、コーヒーマシンを導入し、豆は粉に挽いてもらったのを購入し、機械で入れて飲んでいたのです。スターバックス、ドトールなどの普通の店よりは美味しいのですが、最近あるホテルの店のカフェラテを飲んだらその美味しさにびっくり、あれこれやってもマシーンではあの味は出ませんでした。そこで、またその店に行った時にバリスタに訊いてみたら、コツみたいなことを教えてくれたのです。
そのポイントは、深い煎り豆、と挽き方らしい。
そのマシーンは向いていないとマシーンを買った店から聞いたので、それこそ相当古くに使っていたエスプレッソの器具を納戸から取り出して試みてみることにしました。
各部分に外すと
1胴体上部
2胴体下部
3上部と下部間のパッキン
4上部と下部間のフィルター
5コーヒ粉入れ
この機械を使ってコーヒーを入れ、ミルクを泡立てる道具がないのでラテは造れないので、カフェオーレにしてみました。
1で八分目くらいの水をはかり
2に注いで移します。
1の下部に4をはめ込み3のパッキンで止めます。
5にコーヒー粉を充填
この時。スプーンか何か平坦なもので、粉を押し付けて締め付けておきます。
粉の入った5を水の入った2に差し込みます。
あとは2の上部に1を乗せねじを回してきつく止めます、
そして、直火に掛けます。
何分でしょう?計測していませんが、水量がカップ2杯分くらいなら、10分もかかりませんでした。
できた濃いコーヒーに牛乳を半々くらい混ぜ。氷を入れてアイスで飲んだら、かなりホテルの店の味に近づきました。しかも甘味さえ感じました。上出来、上出来、今後豆種、充填の度合い牛乳の混合割合などを変えてみて、さらに美味しいコーヒーを追求しようと考えています。