先々週、フランス映画界の名優、ジャンポールベルモンドが亡くなったという報道がなされました。88歳でした。トリュフォーやゴダールの息のかかった映画『勝手にしやがれ』に主演しての成功は、ヌヴェルバーグ映画の記念碑的存在でした。今回、横浜の映画館、ジャック&ベティではその死を悼んで、「ベルモンド傑作選」を、9/11~9/24までは一日2作品、及び9/25~10/1までは一日1作品のスケジュールで上演予定の模様。
今回は『カトマンズの男』を見ました。
『カトマンズの男』は、1965年に公開されたフランス・イタリア映画。フィリップ・ド・ブロカ監督、ダニエル・ブーランジェ脚本、ジャン=ポール・ベルモンド主演による映画です。原作はジュール・ヴェルヌの小説『必死の逃亡者』ですが、ブロカは非常に自由な解釈をしている様です。
【日時】2021.9.19.(日)9:00~
【上映館】横浜ジャック&ベティ
【監督】フィリップ・ド・ブロカ
【出演】
・ジャン=ポール・ベルモンド
(アルチュール・ランペルール)
・ウルスラ・アンドレス
(アレクサンドリーヌ)
・ジャン・ロシュフォール
(レオン)
・ダリー・コール
(ビスコトン)
・ワレリイ・インキジノフ
(ミスター・ゴオ)
・バレリー・ラグランジェ
(アリス)
・マリア・パコーム
(スージー)
・ジェス・ハーン
(コルネリウス)
【概要】
世界的ヒット作「リオの男」の主演ジャン=ポール・ベルモンドと監督フィリップ・ド・ブロカをはじめ主要スタッフが再結集し、ジュール・ベルヌの小説「必死の逃亡者」を原作に壮大なスケールで描いたアクションコメディ。父から莫大な遺産を相続したアルチュール(ベルモンド)は、あらゆる快楽に飽き、退屈のあまり自殺を試みるが失敗する。彼は父の友人だった中国人ゴオの勧めで世界一周の船旅に出るが、寄港先の香港で、株の大暴落により自身が破産したことを知る。これで心置きなく自殺できると喜ぶアルチュールに、ゴオは有意義に死ぬべきだと多額の生命保険をかけ、1カ月以内に殺してあげようと約束。そんな矢先、アルチュールは香港でストリッパーのアルバイトをしていた社会学者アレクサンドリーヌに一目ぼれし、死ぬのが惜しくなってしまう。アレクサンドリーヌ役に「007 ドクター・ノオ」で初代ボンドガールを演じたウルスラ・アンドレス。
【感想】
兎に角、最初から最後まで破天荒な、ハチャメチャ、ドタバタ喜劇、会場は年配者が多かったのですが、何回も抑制した笑い声が場内から起こりました。ブラボーを控えている音楽ファンみたい。一日も早く思い切って笑える日が来ることを願っています。
さて物語は、香港スタート。主人公アルチュール役のベルモンドは、30歳くらいでしょう。縦横無尽、八面六臂の活躍で、スタントマン擬きのすごいアクションを演じます。驚きました。中盤は物語の流れで、場面が香港からカトマンズに移りますが、再び香港に戻って来ます。従って香港がこの映画の主場面と言えるのですが、それなのに邦題は『カトマンズの男』。これは原題の『Les Tribulations d'un Chinois en Chine』の直訳では、分かりづらく単純過ぎるので、「おやこれは何かな?」と日本の映画ファンの気を引く題にしたのでしょう。実際自分も映画を見る前は、「カトマンズ?フランス映画とどういう風に関係しているのかな?」と興味をそそられました。でも実際には、カトマンズでは殺し屋から逃れる場面が仏教寺院だったということと、雪の高山に知人を追って、過酷な自然に挑戦する場面が主でした。
この映画に占める香港の存在には、カトマンズの活劇はおよびません。60年近く前の香港が、雑然とした中に活力があり、人々が生き生きと自由に毎日を営んでいる様子が窺うことが出来ます。
中国の圧力で押しつぶされた現在の香港では、決して見られない風景でしょう。
ベルモンドは真面目な顔をして演技している分、余計に面白さが増しました。特にストリップ小屋に逃げ込んで、自分が舞台に立つ羽目になったその踊りや、京劇の小屋に逃げ込んで、活劇を演じる羽目になったところなど、非常に面白かった。またストリップ小屋で踊りのバイトをして資金を稼ぎ、本業の社会学の研究(?)をしている、ウルスラ・アンドレス(アレクサンドリー役)に惚れてしまって、殺し屋の大親分(香港のマフィア)の追手から逃れた二人が、楽園の島に辿り着き、美しい浜辺で見せる愛の景色は、まさにフランス映画の絵の様な風景で、特にウルスラ・アンドレスは、プロポーションもいいし、美人だし場面にピッタリの女優でした。
後で調べたら、彼女は初代のボンドガールだったとのこと、道理でお色気満点のはずでした。久し振りで、笑いを誘う映画を見て満足でした。若し時間が許すならば、別の作品も見てみたい気になりました。
処で今日(9/21火)は「中秋の名月」、夕方から雲が増えてきましたが、何とか満月(重なるのは何年に一回とのこと)を拝むことが出来ました。最も、晴天の日の月はもちろんいいですが、雲に見え隠れする月もなかなか風情があります。 将に
「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」
でした。