HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

オペラ/ベルリーニ『清教徒(藤原歌劇)』第二日目拝聴

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【日時】2021.9.11.(土)14:00~

【会場】NNTTオペラパレス

【主催】藤原歌劇団公演(NNTT&東京二期会共催)

【概要】三幕物ベルカントオペラ(ニュープロダクション)               イタリア語上演 ,字幕(日本語)   

【総監督】折江忠道

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指 揮】柴田重孝

【合唱】(藤原歌劇団&NNTT&二期会)合唱団

【合唱指揮】安部克彦

【演出】松本重孝

【美術】大沢佐智子

【衣装】前岡直子

【照明】服部基

【舞台監督】菅原多敢弘

【出演】今回のオペラはダブルキャストで組まれましたが、以下の第二日目のメンバーの歌を聴きました。

・光岡曉恵(エルヴィーラ/Sop 清教徒側司令官ヴァルトンの娘) 

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・山本康寛(アルトゥーロ/T 騎士、エルヴィーラの婚約者)    

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・小野寺光(ジョルジョ/Br  退役大佐、エルヴィラの伯父) 

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・井出壮志朗(リッカルド/Br 大佐、アルトゥーロの恋敵) 

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・安東玄人(ヴァルトン卿/Br 英貴族)

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・工藤翔陽(ブルーノ/T 士官、リッカルドの親友)

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・丸尾有香(エンリケッタ/Ms 王妃)

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【オペラの時代背景】 

 ヴェンチェンツオ・ベルリーニは、19世紀のイタリアの作曲家。彼は1801年、シチリア島の都市の代々音楽家を継承する家に生まれ、神童とも呼ばれ同時代のロッシーニ、ドニゼッティなどと共に、ベルカントオペラの代表的な作曲家です。しかし1835年、 33歳という若さで亡くなり、丁度その数年前ウィーンで短い生涯を終えたシューベルトの短い生涯に重なります。(早々と作曲家を引退し、悠々自適の生活を送ったロッシーニは、美食家でも有名ですが、彼らの倍以上も長生きしたといいますから、考えさせられますね。)

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ベルリーニ

 ベルリーニは1825年ころから本格的にオペラを書き始め、1827年には『海賊』を書いてミラノ・スカラ座で初演し、「清教徒」は、死の直前1835年に作曲されました。この「清教徒」はベルリーニの時代から150年程遡った16世紀後半、英国の主流派である旧教徒(英国教会、カトリック教徒に準ずる)に反対して起こった新教徒(清教徒、ピューリタン)が、次第にその力と勢力を伸ばして、100年程経った17世紀中葉には、清教徒(ピューリタン)革命に発展したのです。まさにその革命の時期の物語として、このオペラが書かれました。清教徒革命に至る経緯に関しては、2021年、年初のhukkats記事に詳細記録していますので、参考まで文末に再掲しておきました。

 

【粗筋】

 清教徒・議会党派のリッカルドは、エルヴィーラとの結婚の許可を父親のヴァルトン卿からもらう。だが戦いから戻ると、エルヴィーラは恋人で王党派のアルトゥーロと結婚することに。皆が集まり城で結婚を祝うが、その城には処刑された国王の王妃が閉じ込められていると知り、アルトゥーロは王妃をこっそり逃がすため、二人で城から脱出する。エルヴィーラはアルトゥーロが他の女性と逃げたと勘違いし、錯乱する。王妃を無事に逃がしたアルトゥーロが戻ってきて、全てを知ったエルヴィーラは正気を取り戻す。だが、清教徒・議会党派の兵士によってアルトゥーロは捕らえられ、死刑を宣告される。しかし死刑になる直前、王党派は全て滅び、罪人も無罪放免になったという知らせが入り、アルトゥーロも助かることに。エルヴィーラとともにアルトゥーロは喜び、二人は結ばれる。

【各幕の概要】H.P.から転載。

【第1幕】
(第1場)1650年ごろのイングランド南西部、港湾都市プリマスの近郊。清教徒たちの要塞内の広い台地には、跳ね橋や城壁、塔が見え、朝日が昇ってくる。士官ブルーノ(T)と兵士たちが現れ、敵方のスチュアート王家に対する闘志を燃やす。オルガンが讃美歌のメロディを奏でると、ブルーノが〈①おお、クロムウエルの戦士たちよ!〉と呼びかけ、一同に祈りを促す。舞台裏からは、清教徒軍の司令官の娘エルヴィーラ(S)、王党派の騎士アルトゥーロ(T)、清教徒軍の大佐リッカルド(Br)、エルヴィーラの叔父ジョルジョ(B)の祈りの声が響く。
皆はエルヴィーラの婚礼を祝うが、リッカルドだけは悄然と佇む。ブルーノの問いかけに、彼は「戦地に赴く前、エルヴィーラの父ヴァルトン卿(B)に彼女との結婚を承諾させたが、帰郷してみると彼女の心は騎士アルトゥーロ・タルボにあると分った。それゆえ、ヴァルトン卿からも『娘は与えられない』と断られてしまったのだ」と胸の内を語る(②アリア〈ああ、永久に貴女を失ったのだ〉)
(第2場)エルヴィーラの部屋。叔父のジョルジョを相手に、彼女は「私の清らかな望みと潔白な心をご存知ですね」と語り、望まぬ相手との結婚に対する懼れを言外に伝える。するとジョルジョは「相手はアルトゥーロになる」と答え、ヴァルトン卿に事情を話して、自分の娘を、彼女が真に愛する人と結婚させるよう説得したと告げる。二人は共に喜び合う(③二重唱〈貴方は私の胸に〉)
(第3場)武器の置いてある広間。到着したアルトゥーロが喜びの名旋律〈④いとしい乙女よ、貴方に愛を〉を歌い上げ、人々が声を合わせる。ブルーノとヴァルトン卿が囚われの貴婦人を連れてくる。彼女に向って卿は「議会が貴方を召喚している」と告げ、娘を祝福してから出て行く。
すると、もともと王党派であり、スチュアート家への忠誠心を引きずるアルトゥーロは、死罪となるであろう彼女の運命に同情するが、その女性が実は王妃エンリケッタ(Ms)であると知って驚く。エルヴィーラが出てきて、エンリケッタに、婚礼のヴェールの形を整えたいので力を貸して下さいと頼み、自分からヴェールを王妃の頭に載せてから一旦退場する(⑤ポロネーズ〈私は愛らしい乙女〉)。アルトゥーロはそこで閃き、ヴェールを被ったままの王妃を連れ出そうとする。すると、リッカルドが現れて剣を抜くが、止めに入った王妃の顔を目にしたリッカルドは、二人の逃亡を黙認する。
エルヴィーラが出てきてアルトゥーロを探す。ブルーノが「彼は出かけた」と告げると、二頭の馬で逃げ出す男女の姿をその場の全員が遠くに認める。エルヴィーラは突然のことに乱心し、美しいコンチェルタート〈⑥おお、教会に参りましょう〉で悲嘆にくれる。人々は逃げおおせた二人を呪う。

【第2幕】
城内の広間。人々がエルヴィーラの憐れな様子を噂していると、ジョルジョが彼女の模様を伝えにやってきて(⑦ロマンツァ〈ほどけた美しい髪を花で飾り〉)を歌う。そこに正気を失ったエルヴィーラが登場、髪を振り乱し、恋人の姿を追い求めて(⑧シェーナとアリア〈ここで貴方の優しい声が〉(狂乱の場))を歌い錯乱状態のまま退場する。
彼女の哀れな姿を目にしたジョルジョは、<⑨二重唱(君は君の敵を救わねばならない ~ ラッパを吹き鳴らせ)>で、アルトゥーロの出奔の理由についてリッカルドに問い質し、「君が黙っていることで、二人の犠牲者が出たのだ」と語りかけ、「私の悲しみが、君の優しい心を目覚めさせるように」と説く。それに応えてリッカルドは「私は貴方の涙に負けた」と口を開き、ジョルジョと共に「ラッパを吹き鳴らせ。勇敢に、力の限り戦おう!」と声を合わせる。

【第3幕】
エルヴィーラの館近くの庭園。アルトゥーロが現れ、敵の襲撃を逃れたことを喜ぶ。エルヴィーラの声がする。その様子を見守る彼は、<⑩ロマンツァ〈谷に走り、山に走る〉>で、自分は「故国を失った流離いの男」だと独白する。再び現れたエルヴィーラの前に、彼は進み出て赦しを請う。事情を知ったエルヴィーラも誤解を解き、二人は愛の結びつきを朗々と歌い上げる(⑪二重唱〈アルトゥーロ、あの方だわ〉)
しかし、清教徒側の指導者クロムウエルの勝利を告げる声が遠くから聴こえるので、エルヴィーラはまた乱心し始める。人々がアルトゥーロを見つけ、リッカルドが彼に「神が貴方を捕らえた」と告げる。リッカルド、ジョルジョ、エルヴィーラ、アルトゥーロは、合唱付きの四重唱で各自の心中を歌う。
そして、男たちがアルトゥーロに復讐しようとした瞬間、角笛が響き渡り、使者が現れてジョルジョに書簡を渡す。それを読んだ彼は「王家は滅びた!」と宣言。リッカルドも「罪ある者は赦された!」と声を放つ。そこで恋人たちは喜びを取り戻し、人々の歓声に包まれながら、かたく抱き合う。                         

【バックステージ】twitter掲載のメッセージ・写真を転載します。

♪山本康寛より 

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★アルトゥーロ役の“ここを見てほしい!”という注目ポイントを教えてください。
「登場から、美しい旋律美と高音で有名なアリア《A te,o cara》から始まるアルトゥーロ。この一曲だけでも難易度の高い見せ場の一つですが、僕が見てほしいのは、第三幕冒頭からのアルトゥーロのモノローグです。
    三カ月の逃亡の果てにエルヴィーラの元まで戻ってきた喜びと苦悩を、これまた美しい旋律に乗せて歌います。
三幕は出ずっぱりで、そこから二重唱、四重唱とハイCを超える高音の連発が続き、終幕まで歌い続けるという難役です。三幕はアルトゥーロから目が離せません!!」

♪光岡暁恵より

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★エルヴィーラ役の“ここを見てほしい!”という注目ポイントを教えてください。
「エルヴィーラは信仰心の熱い清教徒の一族であり、とても素直で清らかな人。
でも清らかだからこそ秘めた情熱は誰よりも熱い人なのだと思います。
ベッリーニはその清潔さのある旋律美の中に熱い情熱たくさん込めて作曲しているので、それを汲み取って引き出して歌うのは容易なことではありませんが、
キャラクターをわかりやすく表現して、それをお見せできればいいなと思っています。」

 練習風景の一コマを見るとマスクをして歌っています。声楽家にとっては大変なことですね。息も十分出来ないでしょう。本番でマスクを外して伸び伸び歌ってくれると思いますが。

 と思いきや、本番でも合唱の皆さんマスク姿で歌ったのです。でも、客席に届く歌声は少しもくぐもった感じは有りません。感染症対策もここまでやるかとさすがに思いました。

                                               【上演の模様】
 演出は、少し簡素で地味な舞台の感はありますが、伝統的な舞台に準じたようです。奇をてらったところはありませんでした。

 本公演の主役の一人、エルヴィーラ役に、光岡暁恵さんが初めて挑戦するそうです。光岡さんはこれまで、何回かいろんな公演で聴いたことがある歌手です。もともと清純な声質を有しているのですが、何回か聴くうちにつれ、声量と声力とが着いて来ている様に思えました。今回はさらに迫力ある歌と演技を期待して聴きに行きました。

<第一幕>

 演出は、少し簡素で地味な舞台の感はありますが、伝統的な舞台に準じています。奇をてらったところはありませんでした。    幕が開くと、場面は、イングランドらしく霧に蔽われた海岸の風景、兵士達が、船から荷揚げした武器の箱を運んで来て、合唱します。

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やや迫力に欠けましたが。女性達も現れともに歌う。そこに登場した下士官風の兵士ブルーノが、オルガンの音がする中登場、なかなかいい声のテノールで歌いました。

 冒頭のホルンの音が厳かな雰囲気を醸し出し、

①<おお、クロムウエルの戦士たちよ!>を歌ったブルーノ役の工藤さんは、しっかりした歌い方だと思いました。

 次に登場したのが、戦場から戻った清教徒側士官リッカルド、彼は戻ってみると、許婚だった筈のエルヴィーラが、別の男と結婚することを知り、愛する許婚者のために命をかけて戦場で戦い戦効をあげて戻ったら結婚しようと考えていたのに、しかも彼女の結婚相手は、王党派の男(アルトゥール)だというのです。裏切られた感が一杯で苦しみます。ここでその気持ちを、

 アリア〈ああ、永久に貴女を失ったのだ〉と歌うのでした。

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 リッカルド役の井出さんは、深い声のバリトンではないですが、声量もあり、ホールに良く響く声で、せちない気持ち歌いました。 

 次にエルヴィーラ役の光岡さんの登場です。伯父のジョルジョ役小野寺さんと

二重唱〈貴方は私の胸に〉を歌います。光岡さんと小野寺さんは息もピッタリ新たなカップル誕生を互いに喜び歌いましたが、光岡さんは、心なしやや弱いかなと思いました。立ち上がったばかりだったからかな?

場面は、新しいカップルの結婚式を祝う人達に取り囲まれ、新郎のアルトゥールが、上陸してきます。彼は王党派で、ここ清教徒の砦は、敵の中に入るようなものですが、清教徒側のジョルジョ伯父が両派と仲介交渉して何らかの取引きでもしたのでしょうか?ジョルジョは、近づいてきたアルトゥールに、「結婚すれば、議会(清教徒側)に出入り出来る許可証」を渡すのです。ここで、アルトゥールは、

いとしい乙女よ、貴方に愛を>を歌います。アルトゥーロ役の山本さんは若々しいテノールらしい声で力強く喜びを歌い上げました。

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主役として十分な条件の揃った歌い手だとおもいました。難を言えば、高音にやや不安を感じましたけれど。次にいよいよ光岡さんの愛の歌です。 

ポロネーズ〈私は愛らしい乙女〉、

を歌ったエルヴィーラ役の光岡さんは心地良いきれいな声で、ここかしこに潜むコロラテュールを交え最後の高音も良く響かせました。その若々しい姿形といえ歌といえ、うっとりとする程でした。

 しかしその後状況は一変し、囚人女性死刑囚に同情したアルトゥールが、リッカルドを何とか やり過ごして城門から逃亡してしまうのでした。実はその囚人は王妃エンリケッタ(史実では王妃アンリエッタ・マリア)だったのです。それを知っていた筈のリッカルドが何故逃亡を黙認したのか?  

 一つにはエルヴィーラの愛するアルトゥールを彼女から引き離したいという魂胆があったかも知れませんが、もう一つ想像出来ることは、王妃が先のフランス王アンリ四世の末子と知っていたからかも知れない。この仏王は、ナントの勅令でプロテスタントの権利を認めることにより、長年のプロテスタント(新教派)とカトリック(旧教派)のフランスにおける戦争を終結させた王だったのです。リッカルドは幾ばくかの恩義を感じたのかも知れません。

 式を挙げようとしたさ中に別の女と消えてしまったアルトゥール、広場に戻ったエルヴィーラは落胆して気も狂わんばかりに(いやもう狂っていたのかも知れません)、早く教会に行って式を上げましょうと歌うのでした。

⑥コンチェルタート〈おお、教会に参りましょう〉

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 嘆きの光岡エルヴィーラは、ここも狂乱の場と呼ぶ人もいますが、静かに、内向的に心の乱れを合唱を挟みあるいは合唱と一緒になってまずまず難しい場面を歌い切りました。ただ合唱と一緒の時はエルヴィーラの声が打ち消されてほとんど聞こえない場合もありました。合唱の方で音量を調節するか、合唱に負けない強さをさらに身に着けるかだと思います。

 

 次の第2幕以下は、後日の記録にしたいと思います。

 

    《 続 く 》


///////////////////////////////////(再掲)//////////////////////////////////////////////////////////

『KING&QUEEN展(from National Portrait Gallery of London)』鑑賞詳報Ⅱ-2

編集

《Ⅱステュアート朝②》

    前回触れましたが、ジェイムズ1世は王権神授説を主張「王の権限は神から授けられたもので不可侵あり、神以外に責任は負わない。」と宣言したのに対し、議会は「Common Lawこそイギリスの古来の理念であり、法律がすべて(議会、王も含む)の上に立つと」反論しました。これを強く主張した法学者で王座裁判所長であったクックは王に罷免されましたが次の王の時も主張は変えませんでした。           しかし王室の財政は議会に認められない位逼迫し、国家財政の危機とも言われ、晩年には健康状態が次第に悪化し、痛風やリューマチ的な症状も出て、発作も起こすなど最後は三日熱というマラリア的疾病で遂に1625年に亡くなりました。享年59歳でした。

 ジェイムズ1世が亡くなると、跡を継いでチャールズ1世を名乗ったチャールズは、ジェイムズ1世がイングランド王位を継ぐ以前、スコットランドのジェイムズ6世時代に妃アン・オブ・デンマークとの間の次男として1600年に生まれていました。

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チャールズ1世

 兄ヘンリー・フレデリックの死去に伴い、1612年にコーンウオール公とロスシー公に、1616年には、プリンス・オブ・ウエールズ(王太子)に叙位されました。これは1603年にイングランド王となったジェイムズが任命したものです。

 即位の3か月後、フランスの亡きアンリ4世の娘で、ルイ13世の妹アンリエッタ・マリアと結婚しました。

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アンリエッタ・マリア

 しかし彼女はカトリック教徒だったため、議会とも対立する様になり、またチャールズも父ジェームズ1世と同様、王権神授説を錦の御旗としたことも反感を買う要因となりました。                              次第にチャールズ1世とイギリス議会の対立は、深刻になっていったため、1628年、イギリス議会は議決を経て、大憲章以来続く自治権の保障を求める「権利の請願」を国王に提出したのです。これは、先に挙げたクックが中心となって起草したもので、その概要は次の通りです。                                                                  ①何人も議会の制定法に依る同意無しには、如何なる贈与、公債、献金、税金、その他同種の負担をなくし、或いはこれに応ずるよう強制されない。                                                      ②いかなる自由人も理由を示さずに拘禁又は抑留されない。                                        ③国王陛下は、陸海軍兵士を立ち退かせ、陛下の人民は将来かかる重荷をおわされない。                            ④軍法による裁判についての命令書は取り消され、無効とされる。

 これはイギリスにおける人権宣言の走りだとも言われています。その背景には経済的に成功したピューリタンたちが、議会の多数派を占めるようになっていったことがあります。
 ところが、これを国王は一旦認めたもののすぐに無視し、専制政治を続けました。その後スコットランド鎮圧の費用を増税で賄おうと短期議会、長期議会という2つの議会を招集し、長期議会のさなか、王党派と議会派の対立が激化して、1642年イングランド内戦が勃発しました。戦いは議会派が次第に優勢となり、遂には「ピューリタン革命」がおきたのです。チャールズ1世は処刑されてしまい、最終的に議会派が勝利したのでした。     

 これはひとえに王の失政が大きな原因で、王を取り巻く則近の政治的、軍事的失敗もひびきました。スコットランドやアイルランドが反旗を翻し、その鎮圧のための戦費を議会から承認されなくなって、議会とも決定的対立状態に追い込まれていったのが痛かった。もう少し有能な人材を得て王権を主張するばかりの強気姿勢を軟化し、妥協を早い段階でしていれば、内戦は防げたかも知れません。 こうして逮捕されたチャールズ1世は、一旦は逃走して再度内戦を仕掛けたのでしたが、クロムウェル率いる議会軍に打ち破られ投降し、裁判にかけられた後イングランド王として初めてギロチンにかけられるという惨めな結果となったのでした。

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チャールズ1世の処刑