表記のコンサートは、プロのピアニストでなくて、大学で音楽を学び音楽関係の仕事に従事しながらピアノの鍛錬も続けているという、若手を中心とするグループによる年に一度の定期演奏会でした。今日は四人のメンバーが演奏しました。知り合いの関係者が出るというので、他に行くコンサートの予定も無い日なので、またこの会場が割りと近場の戸塚区にあるホールであることもあり、しかも演目がショパンやリスト、ドビュッシー、ラフマニノフなどの本格的曲から選んでいるので、聴きに行きました。演奏会の概要は次の通りです。
【日時】2021.6.12(土)14:00~
【会場】戸塚区さくらプラザホール(横浜市)
【出演】山村 結、南條 菜々子、柄澤 光葉、北原 郁郎
【曲目】
<演奏者Ⅰ 山村>
①F.ショパン:前奏曲 変ニ長調 Op.28-15《雨だれ》
②F.ショパン:バラード第1番 ト短調Op.23
<演奏者Ⅱ 南條>
③F.リスト:巡礼の年 第1年〈スイス〉S.160より《泉のほとりで》
④F.ショパン:バラード第4番ヘ短調Op.52
《休憩》
<演奏者Ⅲ 柄澤>
⑤C.ドビュッシー:ベルガマスク組曲
5-1 プレリュード
5-2 メヌエット
5-3 月の光
5-4 パスピエ
<演奏者Ⅳ 北原>
⑥S.ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.36(1931年版)
【感想】
皆さん想像していた何倍も素敵な演奏をしていました。学校などの通常の職場では8時間勤務でしょうから、その残りの時間と休日で、ピアノの鍛錬に時間を割くには皆さん、相当の強い意思と体力と、何よりも音楽が好きだという気持ちを持ち続ける継続力が人一倍強いのでしょう。技術的にも、表現力も相当なレベルに達していると思いました。Ⅰの山村さんの前奏曲は、やさしい、おっとりとした「雨だれ」で、聴いていてうっとりしました。次のバラード一番は指も良く動いていて力強さが出ていました。Ⅱの南條さんは、相当ピアノを弾きこなしている感のする音を立てて、リストの③の曲はキラキラする高音が印象的でした。弾くにつれ益々調子を上げ、バラード4番では和音は安定しリズムも良くて、天性のいい音楽性を感じました。
休憩後のⅢ柄澤さんは、冒頭から迫力あるタッチで1曲、2曲と弾き進み、圧巻は3曲目の「月の光」でした。この有名な曲を、1、2、とは全く異なるソフトで柔らかい表現力で心地良く弾き切りました。心で「ブラボー」と叫びました。
ラフマニノフの難曲を弾いたⅣ北原さんは、この日初めての男性奏者として、力強い高度な技巧的なテクニックを駆使して物凄いエネルギーで力演していました。聴いていて手に汗握る感がした。演奏後、北原さんは、力を出し切った様子で、ふらふらしている様子でした。
この演奏会を聴いて思った事ですが、日本にはこうした仕事も音楽も立派にこなしている人たちが、随分多くいるだろうなということです。プロの人気演奏者になる人は音楽人口のほんの一握り。これは何も音楽に限らないことです。その分野の頂点を目指すも人生、少しでも向上し音楽を楽しむ生活をするのも人生、優劣などつけられません。すそ野の広い山は全体として高みを際立たせ、見事な全体像を浮かび上がらせるでしょう。富士の山の様に。