HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

アレクサンドル・ラザレフ指揮『日フィル定演』配信観賞

f:id:hukkats:20210426003800j:plain

 表記の演奏会には他の用件があって聴きに行けなかったので、配信受信権を購入しました。何日間も見れる様です。今日日曜日も家庭の事情で日中は聴けなかったので、遅い夕食後配信を観ました。開いたら「CLASSICAL MUSIC」という配信サイトなのですね。数日前の忙しい時に、急いで配信チケットを買って詳細は確認しなかったので、U-TUBE の有料版かまたは以前神尾さんの配信を聴いた時のCurtain Call ネットか何かなのかと思っていました。色々な配信企業があるのですね。配信するオケも企業に配信料を渡すのでしょうから、コロナが生じてから雨後の筍の様に多くの配信企業がぼこぼこ生まれたら、演奏サイドと聴く側双方にとって利用料金にどう跳ね返るのか簡単には分かりませんね。それと逆に配信量を多く持つ(即ち配信信号を沢山出せる)企業が少数存在する状態だと独占的に価格が決められて高くなるかもしれないし、分からない。サントリーホールなんかだと最近演奏者が配信も出来るシステムを構築したらしい。東京文化会館やその他の演奏回数が多いホールにも配信システムが出来て、安価な価格で利用できる様になるとリモート音楽鑑賞が今より増えるかも知れません。

 今回のラザレフ指揮の配信された演奏会プログラム概要は次の通りです。

【日時】2021.4.24(土)14:00~

 【会    場】サントリーホール大ホール 

【管弦楽】日本フィルハーモニー交響楽団 

【指 揮】アレクサンドル・ラザレフ

 【曲 目】

①グラズノフ『交響曲第7番ヘ長調Op.7《田園》

 

②ストラヴィンスキー『バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版)』

    ピアノ演奏:野田清隆

 

 【器楽構成】①2管編成弦楽五部10型(Vn1-Vn2-Va-Vc-Cbは10-10-9-6-6)

②本来4管編成と大きい編成だが、今回は3管編成に規模縮小(Fl3-Ob2-Cl3-Fg2-Hr4-Trp3- Trb2Tub1-Timp1-Hrp1- Pf1)して演奏。弦楽五部10型

 

【曲の概要(引用)

①この作品は1902年グラズノフ(hukkats注37歳の時に作曲され、翌年明け早々に「ロシア交響楽演奏会」で作曲者の指揮により初演された。第1楽章がベートーヴェンの交響曲第6番「田園」を参考として作曲されているところから「田園」と呼ばれているが、後続楽章に関しては、具体的にベートーヴェンの音楽を連想させる印象は希薄です。対位法的扱いが散見され、その素材をロシア的な旋律に求めている

(hukkats注)グラズノフは、1865年サンクトペテルブルグ生まれ、今から約150年前の作曲家。リムスキー・コルサコフの弟子とも謂われます。交響曲を8曲(第9番目は未完)の他バレエ音楽、管弦楽曲、弦楽四重曲、協奏曲を多数残しており、後ペテルブルグ音楽院の院長となる。音楽院長には18年間在職したが、音楽院の様々な軋轢から逃れる様に1928年ウィーンに出国、そのままロシアには戻らず事実上の亡命となった。1935年パリに死す。尚、ストラブンスキーは若かりし頃、グラズノフを尊敬していたが、次第に彼を疎んじる様になり、これは彼が若いストラビンスキーの音楽を理解しようとせず、批判的な言動をしていたためと謂われる。『ペトルーシュカ』を聴いたグラズノフは、‛あれは音楽じゃない。でも管弦楽法は見事だ。’と評したという。

②ストラビンスキーが1911年にバレー・リュのために作曲したバレエ音楽。おがくずの体を持つ藁人形の物語で、主人公のパペットは命を吹き込まれて恋を知る。ペトルーシュカ(ピョートルの愛称)は、いわばロシア版のピノッキオであり、悲劇的なことに、正真正銘の人間ではないにもかかわらず真の情熱を感じており、そのために(決して実現しないにもかかわらず)人間に憧れている。ペトルーシュカは時おり引き攣ったようにぎこちなく動き、人形の体の中に閉じ込められた苦しみの感情を伝える。

 

【演奏の模様】

 演奏の前に山崎皓太郎さんのプレトークがありました。ラザレフの来日は、昨年の2月に来日した時は、九州公演のみ指揮し、東京で日フィルを指揮するのは、2019年以来1年半振りで、その時は、今回と同じグラズノフの6番とストラビンスキーの火の鳥’だったとのこと。4/5に日本に着き、翌日から14日間のホテルに待機し20日からのリハーサルに臨んだ。そして無事サントリーホールでの演奏会が、実現したのだけれど、その陰では多くの人の努力、協力があったといった趣旨のことを話していました。尚1947年版と書いたが言葉足らずだった、最後の部分を省略した演奏会用を演奏しますとの訂正をしていました。

 

①『交響曲7番』

第1楽章は、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」のリズムや素材を引用しています。清澄な空気を吸いこんだときの心地よさを思わせる音楽で、遠方から牧童の笛の音が聞こえたりするところ、春の高原を散歩しているようです。グラズノフの自然賛歌といったところでしょう。

第2楽章は、厳粛な緩徐楽章で、サラバンドのリズムで導入されます。中間部では半音階的な旋律が対位法的に処理されていますが、安泰なものが多いグラズノフの音楽の中にあって、強い印象を植え付けられるものです。

第3楽章は、陽気な踊りのスケルツォ。如何にもロシアの田舎風景が連想されます。ここに出てくる金管の調べは、リムスキー=コルサコフ的なものとも謂われます。

第4楽章は、ロシアの聖歌風の主題が広がりをみせ、雰囲気が高揚して行きました。金管の高らかな響きが最高潮に達し、ここにもリムスキー=コルサコフの影響が見られます。

ラザレフの指揮ぶりはというと、まるで多くの猛牛かバイソンの群れの中に突っ込む重戦車の如き馬力とエネルギーを発散して指揮をしている様に、最初から最後まで一貫して見えました。 若干太り気味に見えるのは、二週間の待期期間の為めなのでしょうか。それまで体に鬱積したストレスとエネルギーをいっぺんに吐き出している感じがしました。

② 『ペトルーシュカ』の演奏に関して、次の様な注意書きがありました。

ストラヴィンスキー作曲バレエ音楽《 ペトルーシュカ》は、指揮者の意向により、1947年版の演奏会用の終わり方で演奏いたします。「仮装した人々」までになり、記載のある「乱闘」「ペトルーシュカの死」「警官と魔術師」「ペトルーシュカの亡霊」は演奏いたしません。

<曲の構成>

第1部:謝肉祭の市 Fête populaire de semaine grasse

〇導入 - 群集 Début - Les foules

〇人形使いの見世物小屋 La baraque du charlatan

〇ロシアの踊り Danse russe

第2部:ペトルーシュカの部屋

〇ペトルーシュカの部屋 Chez Pétrouchka

第3部:ムーア人の部屋 Chez le Maure

〇ムーア人の部屋 Chez le Maure

〇バレリーナの踊り Danse de la Ballerine

〇ワルツ(バレリーナとムーア人の踊り) Valse: La Ballerine et le Maure

第4部:謝肉祭の市(夕景) Fête populaire de semaine grasse (vers le soir)

〇乳母の踊り Danse de nournous

〇熊を連れた農夫の踊り Danse du paysan et de l'ours

〇行商人と二人のジプシー娘 Un marchand fêtard avec deux tziganes

〇馭者と馬丁たちの踊り Danse des cochers et des palefreniers

〇仮装した人々 Les déguisés

 

ブラスの響きが新鮮、打楽器の活躍も目立ちます。時々フレーズの締め括りにTimpと小太鼓が、ダダダダダダダダと小気味よく長く連打する処も良い。弦だって滔々とした弦楽アンサンブルよりも、ピツィカートの多用、弓で弦を叩く様な奏法などまるで打楽器として扱っているみたい。

 ストラビンスキーはやはり天才ですね。グラズノフはその辺りは何となく感じていたのでしょうが、何せ自分の音楽とは全く異質な響きにアレルギーを起こして低く評価をしていた可能性がある。

  ラザレフは 前半と同じく全く衰えないエネルギーを体全体から発散して指揮しています。兎に角ブラスの響きが透明ですごくいい。Flがソロを弾き始めると、ラザレフは指揮台から降りてしまい吹くに任せてしまいます。これは余程楽団員との絆なが強く、熟知していないと出来ない技です。

  最後は髪を振り乱しながら、ダダッダンと曲を一刀のもとに切り捨てるが如き切れ味の良い終焉でした。      

 演奏後、ラザレフは真っ先に首席ホルン奏者を立たせて、次にチューバ奏者、トランペット(外人)、ファゴット、クラリネット、オーボエ(女性)、イングリッシュホルン、フルート(女性)、と主だった金管奏者を挨拶させて最後にコンマスを手招き、ヴィオラ奏者、そしてもう一人ピアノ奏者を指揮台まで呼んで紹介し、しかる後に全員起立して深々と挨拶していました。グラズノフ自身も分厚い両手を叩きながら、客席に向かってまでも手を叩きガッツポーズまでしていた。袖に下がってからまた登場、今度は奥のフルートとオーボエの所に歩み寄り、両手に花とばかり手を繋いでかざし客席の方に向いたり、客席に対し起立の合図の様な手ぶりをしたり、相当茶目っ気もある個性の強い指揮者と見ました。でもこれ程自信に満ちた力強い指揮は久し振りでした。オケ猛牛団も重戦車に対抗して猛烈なエネルギーを発揮し、これに応じていました。すごい演奏会だった。  配信期間がまだまだあるので、今後他のオケストラの演奏会を聴いた後で、配信を時々覗き雰囲気の違いを感じたいと思います。

 

話題は変わりますが、昨日、今年の第93回アカデミー賞の発表がありました。主な受賞者は次の通りです。

監督賞は『ノマドランド』クロエ・ジャオ                     作品賞は 『ノマドランド』                           主演男優賞は『ファーザー』アンソニー・ホプキンス 
主演女優賞は『ノマドランド』フランシス・マクドーマンド                                          助演男優賞は『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア』ダニエル カルーヤ     助演女優賞は『ミナリ』ユン・ヨジョン                      

アメリカの車上生活者を描いた『ノマドランド』関係が多くのオスカーを獲得、中国出身で米国で活動する女性監督クロエ・ジャオ(国籍中国)が注目されています。  

本邦初演の上映があれば見なくちゃ! 

 

(追記)『ノマドランド』は各地で現在上映中なので、すぐにでも見に行きたいのですが、ゴールデンウィーク中のほとんどの日は、‟出歩かないで”という呼びかけに応じて、自宅待機しようかと思っています。