≪パヴィア十二月十六日②≫
スタンダールがパヴィアに二日間程滞在した中で、パヴィア大学については、陳列室等の自然科学は自分に向いていないので何も記さない、ただしマスケローニの詩句が、その辺りをうまく表現しているので引用する、とお茶を濁したのでしたが、この日の長い記述の後半では、パヴィア大学のロンバルディア出身の学生たちに関して、いろいろと他と比較しながら述べています。
“パヴィアに来てここの大学で学んでいるロンバルディーアの青年、イタリアでもっとも造詣が深い人々に会った。僕はこのことにこのうえなく満足した。僕がパヴィアに立ち止まることを知ったミラノの五、六人の夫人が、彼女らの息子のために僕に用事を頼んだ。僕がナポレオンとかモスクワについて大急ぎで話してあげたこれらの青年たちは、僕の宿での夕食と、僕がクァトロ・カヴァリエリ劇場に借りた桟敷への招きに応じてくれた。ゲッチンゲンの学生たちと何という違い!パヴィアの街にあふれている青年たちは、ゲッチンゲンの連中のようにバラ色をしていない。彼らの目は、黄金郷をぼんやりと思ったりして惑わされることは少しも無いようだ。彼らは警戒心が強く、寡黙で、非社交的である。”
ここに出て来る“クァトロ・カヴァリエリ劇場”の名は現在は無いようです。パヴィアには「フラスキーニ歌劇場」というのが現在あります。それと全く同じ建物かどうかは分かりませんが、恐らく時代ごとに改修、拡充が行われて現在の形になったのだと思います。
さらにスタンダールはドイツの歴史ある都市、ゲッチンゲンの名をあげています。これは、この“紀行”のスタート地点であるベルリンからミュンヘンに抜けて、イタリアにやって来ているので、恐らくその途中にゲッチンゲンに寄ったのでしょう。“ナポレオンとかモスクワについて云々”とは、スタンダールがナポレオンのモスクワ遠征戦に従軍したので、その時の体験をミラノの夫人たちは、パヴィアに留学中の息子に話して欲しいと頼んだのでしょう。教育熱心ですね。
さらにフランス青年とも比べています。“黒ないし栗色の多量の髪の毛が暗い要望にかぶさり、顔のオリーブ色がかった青白さは、フランス青年の手軽なしあわせや好ましいおっちょこちょいが無いことを表している。” “女性がたまたま通りに出てくると、これら若き愛国者の暗い荘重さが一変した表情になる。パリのお洒落な女はここに来れば死ぬほど恐れるだろう。これらすべての青年をごろつきだと思うだろう。僕が彼らを好きなのはこのためだ。”
またスタンダールはパヴィア大学のこれら(ミラノの知人たちの子息)の青年たちに関し “これらの青年たちはペトラルカの全作品を暗唱でき、少なくともその半分はソネットであった。“彼らの一人が、ペトラルカ詩集の冒頭のこの世でもっとも美しいソネットを僕に朗唱してくれた。”と感激して、その詩を掲載しています(ここでは割愛)。
さて今日の夜の報道では、12/30のコロナ感染者数は東京では将に千人/1日に達しようとする勢いです。明日大晦日には、東京文化会館で小林研一郎さん指揮のベートーヴェン全シンフォニー演奏会があり、チケットを大分以前から買って近くに宿も取って、とても楽しみにしていたのですが、とても行く勇気が出ません。残念ながら宿はキャンセルし、チケットはこうしたこともあったという記念に、ファイルしておくことに決めました。その代わりと言っては何ですが、横浜みなとみらいホールで大晦日に『ジルベスターコンサート2020』が行われ、急遽有料配信もするということなので、それを自宅で、ビールでも飲みながら鑑賞することにしました。家での大晦日だと「紅白歌合戦」とかの誘惑もありますので、主としては配信コンサートを聴き、紅白などはピックアップ的に聞きたいもの、見たいものだけ見ることにしました。