HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

自分勝手な文化満喫の日、第三弾『トリオ・ヴェントゥス リサイタル』鑑賞

 表記のコンサートをきいてきました。

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トリオ・ヴェントス(左から廣瀬心香、北端祥人、鈴木皓矢の各氏)

 

11月の文化の日には、少し早いのですが、10月10日は朝から天気が良く、自分勝手に「文化を満喫する日」と決め、一日中上野公園界隈での文化三昧を決め込んだのでした。

 その第一弾としては午前中に『工藤和真テノールリサイタル』の鑑賞、午後は第二弾として上野の森美術館で『KING&QUEEN展』を見て、19時に予定されている『トリオ・ヴェントゥス リサイタル』の当日券を買うため東京文化会館に向かったのです。この公演も、もともとコロナ対策で市松模様の座席配置でチケットを販売していたのですが、最近の規制緩和で追加の席を販売したのでした。いつもながら出来るだけ他の人から離れた通路側の席を希望しましたが、座席の両隣には既にお客さんが座っていました。開演直前に左隣(通路側)のご婦人が、隣り合うのを嫌ったのか、前の方の空席が続いて居る席に移動されたので、その空いた左隣に一つ移りました。これで一人おきの座席となり右に座っていたご婦人も少しほっとした様子でした。

 演奏会の概要は次の通りです。

 

【日時】2020年10月20日(火)19:00~

 

【会場】東京文化会館小ホール

 

【出演】ピアノ:北端祥人

ヴァイオリン:廣瀬心香

チェロ:鈴木皓矢

 

【演奏アンサンブル名の由来】

同時期にドイツ・ベルリンを留学の地として活動していた音楽家達により、日本へ活動拠点を移すのを境に、2019年の秋に結成。「VENTUS」はラテン語で「風」を意味する。同じ土地の「風」を浴びた三人による、三者三様の「風」の重なりを聴いて欲しい、という想いから名付けられました。

 

【メンバー略歴】

 

≪北端祥人≫ピアニスト

大阪府出身。2016年、第6回仙台国際音楽コンクール第3位、第21回宝塚ベガ音楽コンクール第2位などこれまでに数多くの賞を受賞。2018年、第9回リスト国際ピアノコンクール(ドイツ・ワイマール/バイロイト)において、ドビュッシ解釈に対する特別賞を受賞。京都市立芸術大学、同大学院を首席で修了後渡独、ベルリン芸術大学修士課程ソリスト科、同大学室内楽科を修了。ソリストとして、また室内楽奏者としてヨーロッパ各地でリサイタルを行う。2017年には仙台フィルとの演奏会に出演、2019年1月、ベルリンフィルハーモニー大ホールにてストラヴィンスキーの「詩篇交響曲」を、 3月には仙台フィルとバルトークのピアノ協奏曲第3番を演奏した。佐々木弘美、大川恵未、椋木裕子、上野真、マルクス・グローの各氏に師事。2020年度より東京藝術大学附属音楽高等学校の非常勤講師。

 

≪廣瀬心香≫ヴァイオリニスト

宮崎県出身。桐朋女子高等学校を経て、桐朋学園大学を首席卒業。ドイツ国立ベルリン芸術大学学士課程、修士課程を修了。ソリストとして、ドイツ・イエナフィルハーモニー、九州交響楽団、その他国内外のオーケストラと共演 全日本学生音楽コンクール、日本クラシックコンクール、江藤俊哉ヴァイオリンコンクール等入賞、霧島国際音楽祭賞を受賞。桐朋学園大学卒業時には皇居の桃華楽堂にて御前演奏を行う。ヨーロッパ各地でリサイタル、室内楽オーケストラにて演奏を行う。ドイツ・ハノーファー州立管弦楽団フォアシュピーラー奏者として活躍。これまでにヴァイオリンを木野雅之、加藤知子、ノラ・チャスティン、ノア・ベンディックス=バルクリーの各氏に、室内楽を東京クァルテット、アルテミスカルテットに師事。

 

≪鈴木皓矢≫チェリスト

桐朋学園大学チェロ科卒業。スペイン、バルセロナのリセウ音楽院、ヴィクトリア・デル・アンへレス音楽院にてルイス・クラレット氏のもとで研鑽、その後渡独。ハンス・アイスラー音楽大学ベルリン修士課程を修了。5歳よりチェロを始め、桐朋学園高等学校音楽科卒。これまでにルイス・クラレット、ダミアン・ヴェントゥーラ、倉田澄子、常光聡、ヴァーツラフ・アダミーラの各氏に師事。室内楽を東京カルテット、アンテア・クレストン、毛利伯郎、店村眞積の各氏に師事。第10回ラス・コルツ国際コンクール器楽部門第4位入賞。日本チェロ協会主催「第9回チェロの日」にソリストとして出演。2019年、東京文化会館にてソロリサイタルを開催。ドイツ日本国大使館にて演奏に招かれる他、ベルリンで行われた音楽祭“La Fête de la musique”に出演。古典から現代まで幅広いレパートリーを持ち、新曲初演の場にも多く携わる。

 

【曲目】

 

①ハイドン『ピアノ三重奏曲 ハ長調 Hob.XV27』

 

②ショスタコーヴィチ『ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 op.67』

 

③ブラームス『ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 op.8(改訂版)』

 

【選曲について…演奏者より】

ピアノ三重奏は珠玉の名曲が多く、その選曲は容易いものではありませんでしたが、時代背景が違う曲同士を組み合わせる事によって様々な視点から楽しむことができるのではないか、という結論に至りました。

この編成の萌芽とも言えるハイドンのトリオは、バロック期のトリオ・ソナタの伝統を踏襲しながらも、その伝統から如何に抜け出せるか、創意工夫が散りばめられています。

ショスタコーヴィチのトリオは、チャイコフスキーやラフマニノフからの伝統を汲んだ弔いの音楽であり、数々のオペラ、映画音楽を手掛けた作曲家ならではの描写力に驚嘆を隠せません。

ブラームスは、青年期に作曲したトリオを40年弱の刻を経て改訂しています。初稿版と改訂版を比較することにより、若くして既に老成した世界観を持ったブラームスが更に円熟し、洗練された技法を備えていることが分かります。

高密度なアンサンブルと、各々のソリストとしての一面を同時に感じられるピアノ三重奏というジャンルがどの様に発展を遂げたか、その歴史も併せてお楽しみ頂ければ幸いです。

 

【演奏の模様】

①ハイドン『ピアノ三重奏曲ハ長調Hob.XV27』

ハイドンのピアノ三重奏曲は45曲あり、このハ長調の曲は1796年頃の作曲、年代順だと第27番で、晩年の作品です。三楽章から成ります。

 

Ⅰ(Allegro 約8分)

 冒頭ピアノがメロディを奏でVnとVcが伴奏を演じます。Vcの音がやや弱いかな?明瞭に聴こえない。Vnは澄んだ音には聞こえません。ピアノの比較的高音域の主題はいいメロディですね。北端さんは時折左右の腕を交差させて気持ち良さそうに弾いていました。主題を何回か繰り返し変奏し、再度最初のアンサンブルを繰り返しますが、VnとVcは同じ調子でした。やはりピアノが主役なのでしょうか。 

Ⅱ(Andante 5分強)-

 やや早めのテンポのAndante でPfの先導で始まりVn⇒Vcと引き継がれました。

Pfのごくごく短いカデンツアの様な表現部分など、Pfの北端さんは時々他の二人を見ながら元気よく弾いていました。Vcは相変わらず余り聞こえません。Vnもいいなと思う綺麗な音ではありませんでした。短い楽章。 

Ⅲ(Presto 約5分)

 軽快な速いリズムでPfが主題のメロディを奏で⇒すぐVnへ。Vnの廣瀬さんは力を入れて弾いていますが、音は未だ最適化されていない感じ。

ⅠⅡⅢ楽章を通して、ピアニストが一人で張り切っていて、活躍の状況(力関係)はPf>Vn>Vcの様に思われましたが、個人的なものではなく、楽譜にそう演奏するように指示があるのでしょうか?Vnは技術は確かなのですが、音がいまいちの感。Vcは全体的に存在感が薄かったですね。

 

②ショスタコーヴィチ『ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調op.67』

ⅠからⅣまでの四楽章構成です。

 

Ⅰ(Andante-moderato 8分弱)

 冒頭から相当ゆっくりのペースでチェロが奏で始め、ヴァイオリンが弱い音で合わせる。Vcがハーモニックス奏法で高い音を出しVnが低い音程でそれに合わせています。これって普通の逆を行っている。鈴木さんのVcの音が少し大きすぎませんか、もっと繊細さが欲しかった。ピアノが強い調子で弾き始め、ヴァイオリンとチェロが高低逆転して演奏、時々ピッツィカートが入る。Pfは遠くの鐘の様に小さな音量で伴奏音を時々合わせ出してやや不気味な音を立てています。やがてそれらが次第に三者一致して強奏。大きな音となり始めテンポも速くなって次第に激しい重音奏法で廣瀬さんは存在感を増している。音もしっかりとしてきました。    

Ⅱ(Allegro con brio約3分)  

 速い軽快な大きい音の三者アンサンブル。ピアノが強い前打音で拍子をとり、終盤は三者が大きな音の強奏アンサンブル 。 VnとPfが速いテンポでメロディックな調べを繰り出し、最後までペースを崩さず、同じ様なテンポのまま終了です。Ⅰ楽章とは全くイメージの異なる感じの曲でした。短い楽章。

 

Ⅲ(Largo約6分)

 ピアノのジャーン、ジャーンと長―く伸ばしたPfの強打音で開始、緩いテンポの前奏から、弦が綺麗な寂しいメロディを惜々と演ずる。ピアノは時々弱い音で、ジャーン、ジャーンと伴奏。Vnのゆったりとした悲しそうなメロディを廣瀬さんは響かせ、①のハイドンの時とはうって変わった音で大変良い演奏でした。Vcの鈴木さんもいい音で追随していました。この楽章でさらにVcも本領を発揮してきた感じです。

 

Ⅳ(Allegretto 12分)

 アッタカで三楽章に続いて演奏されました。弦のピッツィカートにピアノの北端さんはスタッカート的なポンポンと音を立て、Vcの鈴木さんも弓で強く弦をたたき、まるで太鼓の様な音を出していました。不気味な有名な旋律は「ユダヤの旋律」とも呼ばれます。後半は短調そのもののアンサンブルの調べで結構長くVn, Vc  Pf も次第に大きな音量で力をこめて皆夢中になって同じテーマを繰返し繰返し演奏している様子。最後はかなりゆっくりと音も小さくなり最後再び勢いを増して大きくなり、最後弦はハーモニックスの音で、Pfはジャーン、ジャーンと音を立て、最後弦のピッツィと消えるPfの最終音で演奏を終え、ハイドンの時よりもはるかに大きい拍手が鳴り響きました。

 この曲は現今の感染症の猛威に斃れた人々への鎮魂の歌に思われました。 

 それにしてもショスタコービッチのこの曲は何とも言い難いのですが魅力が有りますね。つい最近まで彼の曲は昔聴いた時の(どの曲かは今では定かでは有りませんが)つまらなさ感で好きでは無い部類になっていて、つい最近までは進んで聴きたいとは思わない作曲家でした。それがいつだったでしょう?先々月かその前月に、NHKテレビ(多分BS3?)でゲルギーエフの指揮でショスタコービッチのシンフォニーの所謂『レニングラード』の演奏模様を放送していたのを見て、素晴らしい曲だなとその良さが分かったのです。天才の名に相応しい曲でした。

 今度機会があれば、その『レニングラード』の演奏を聴きに行きたいですね。 

 

③のブラームスの三重奏は若かりし頃、謂わば駆け出しの頃の作品です。その後の彼のピアノと弦のアンサンブルとはちょっと違った感じの曲です。勿論ブラームス臭はふんぷんとしますが。(改訂版)とあるのは、この曲の初版は19世紀中葉に作曲され40年近くも経ってからブラームスは曲を改訂しており、現在は改訂版が演奏されることが多いからです。

四楽章構成です。

 

Ⅰ(Allegro con brio約14分)

 冒頭の主題の何と素敵なメロディであることよ!ピアノのイントロをチェロが引き継ぎさらにVnがアンサンブルに加わって来ました。テーマは変奏も交え何回も繰り返され皆さん相当力を入れて弾いている。Pfなどかなりの力演、北端さんは手の指を鍵盤に平行近く平らにして弾いているのが見えました。最後は三者とも全力で弾いている感じでした。静かに終了。この楽章でVnの廣瀬さん、Vcの鈴木さんは本領を発揮したと思います。音もいいし楽器が素晴らしく鳴っていました。北端さんのPfは最初から快調でした。

 それにしてもこの曲からもブラームスの天才ぶりが分かりますね、少し粘着質ではありますが。

 

Ⅱ(.Scherzo:allegro molt 約7分)

 冒頭タタタッタタタタッタタと速い軽快なリズムでVc がスタート、同じメロディをPfが引き取り、さらにVcとVnのアンサンブルが同じメロディを繰返しました。全体としてPfの演奏が主役を演じた感じがしました、特に後半では。 

Ⅲ.(Adagio 約9分)

 ピアノの北端さんは他の二人を見ながらがかなりゆっくりとスタート、VnとVcが小さな音で伴奏アンサンブル、小さい音だけれど音が微妙に絡み合い調和していました。この三配分ペースは最後まで続きました。

  

Ⅳ.(Allegro 約 6分) 

 Vcが低く暗い主題をPfの伴奏でスタ-ト。Vnに引き継がれ次第に音も大きく劇的な展開とも言える三者の力を込めた演奏になりました。この楽章でもVc の活躍は目立ちました。

 何と言ってもこの曲で出色の出来は冒頭のチェロの綺麗な旋律でしょう。これは若い時作曲した中にも入っていたのでしょうか?それとも40年後に改定した時に入れたのでしょうか?楽譜が無いので分かりません。ブラームスはチェロの曲はそれほど多くは書いていない様ですね。二番のピアノ三重奏曲があります。第二楽章前半や終盤のチェロ(及びVn, Pf)のメロディも滔々とした美しいメロディですが、やはり一番の方がいいですね。

  演奏終了後、アンコールがあり、

ドヴォルザーク『ピアノ三重奏曲第3番』から第6楽章でした。

 今日回程度はお蔭様で四人の大作曲家のピアノ三重奏曲を堪能できました。感謝です。

 

最後に個人的なことなのですが、今日(10/23)はこのブログを立ち上げて丁度1年が経ちました。慣れなくて仲々しんどい時も有りましたが、何とか続けて来れました。しかもコロナ禍という伏兵がスタート直後に姿を現すとは考えてもいなかった。この時期に続けるのはホントにきついと感じる時も有りました。今後どうなるのか、コロナに斃れるのか、別なことが起こって断筆せざるを得なくなるのか全く分かりませんが、好きなことをやらせて貰える限り、出来るだけ音楽会等に行きその記録は残したいと考えています。