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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

配信/サントリーホール『CMG初日オープニング』を聴く

アーカイヴズ配信は時間を取って聴こうと思っていましたが、色々あって今日まで聴けませんでした。やっと初日の分が聴けました。

 

【演奏日】2022.6.4.(土)18:00~

【会場】サントリーホール小ホール

【出演】

〇堤剛(チェロ)

〇吉田誠(クラリネット)

 

 <Profile>

 5歳からピアノを、15歳からクラリネットを、22歳から小澤征爾、湯浅勇治のもとで指揮を学ぶ。東京藝術大学入学後、渡仏。文化庁海外新進芸術家派遣員として、パリ国立高等音楽院、ジュネーヴ国立高等音楽院で学んだ。2020年11月、ソニーミュージックから小菅優とのデュオによる『ブラームス:クラリネット・ソナタ、シューマン:幻想小曲集ほか』を世界リリース。国内外のオーケストラ、音楽祭にソリストとして招かれ、日欧でリサイタル、室内楽公演を重ねている。パリと東京に在住。

〇小菅優(ピアノ)

 

 <Profile>

 2005年カーネギーホールで、翌06年にはザルツブルク音楽祭でそれぞれリサイタル・デビュー。デュトワ、小澤らの指揮でベルリン響などと共演。10年ザルツブルク音楽祭にポゴレリッチの代役として出演。現在はベートーヴェンの様々なピアノ付き作品を取り上げる新企画「ベートーヴェン詣」に取り組む。17年第48回サントリー音楽賞受賞。16年ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集完結記念ボックスセットをリリース。17年から4年にわたり、4つの元素「水・火・風・大地」をテーマにしたリサイタル・シリーズ「Four Elements」を開催し好評を博した。

【曲目】

①シューマン(キルヒナー 編曲)『カノン形式による6つの小品 作品56 より』


②ブラームス『クラリネット三重奏曲 イ短調 作品114 』


③藤倉大『Hop』クラリネット、チェロ、ピアノのための<サントリーホール、ラジオ・フランス、アレイミュージック共同委嘱>


④フォーレ:ピアノ三重奏曲 ニ短調 作品120

 

【概要】主催者プロモート解説

CMGの幕開けを飾る「堤剛プロデュース 2022」では、チェロの堤剛、ピアノの小菅優、クラリネットの吉田誠による三重奏をお届けします。昨年のCMGフィナーレ 2021で共演した3人が意気投合し、この編成による濃密なコンサートを企画しました。
晩年の円熟味が際立つブラームスとフォーレを中心に、またCMGでは既にオンラインとライブで取り上げてきた藤倉大の『Hop』は、この編成の可能性を追究した現代の代表曲といっても過言ではありません。気品に満ちたクラシック音楽の歴史と現在形を、心ゆくまでお楽しみください。

【演奏の模様】

①シューマン『カノン形式による6つの小品』

 最初は堤さんの弓裁きにClが僅かに追いつかない、追っている感が否めなかった。

クラリネットの音ってこんなにも雑だったでしたっけ?うちの再生装置が良くない?そうかも知れない。ピアノもチェロの音も綺麗に感じません。でも時々Pfソロ部は割と綺麗、澄んだ音です。

 アンサンブルでは耳で他の演奏者の音を聞きながら合わせることがほとんどでしょうが、目で相手を見て目からの情報も参考にすることは珍しくないでしょう。

 ピアノはカノンといっても伴奏的な演奏だったので、小菅さんはCl奏者を何回も見て合図を送っていたか(ピアノの影になってチェリストは見えないのでしょう)、合図を送りたい目をしていましたが、吉田さんは一度もピアニストを見ず、楽譜を一途に睨んでいました。先日のアルゲリッチのトリオ演奏の時も彼女はクレーメルを時々見て演奏していましたが、クレーメルはチェリストもピアニストもほとんど振り返らず演奏、ピアノソロの時はアルゲリッチの方に向いて見ていました。

 録音のせいか再生装置が悪いのかシューマンらしさが余り感じられず。拍手だけは盛大に聞こえました。

②ブラームス『クラリネット三重奏曲 イ短調 作品114 』

冒頭の堤さんのメロディーが大変良く聴こえます。続くピアノもクラリネットのフォローも良い。チェロが素晴らしい。三人三様力を入れ或いは抜き、表情豊かに演奏、アンサンブルとしても立派に溶け合っています。どうしてでしょうClの音が良く聴こえます。①の時と大違い。特に二楽章の冒頭のClソロが秀越な響き、その後のVcのソロもいい音でした。

この楽章で初めてトリオ演奏の中でクラリネットが主の「クラリネット三重奏」の感を呈して来ました。

 三楽章に進むにつれ吉田さんも堤さんを時々見て、またその逆もあり、目の情報もやり取りしている様子、ピアノはブラームスが恐らく一番得意とする作曲楽器なのでしょう。小菅さんの演奏でそれがはっきり分かります。

四楽章でも皆さん相当の力演、全体的に迫力ある演奏でした。

 

《20分休憩》

 

③藤倉大『Hop』クラリネット、チェロ、ピアノのための<サントリーホール、ラジオ・フランス、アレイミュージック共同委嘱>

プログラムノートを読むと、現役のン本陣作曲家による作品で、本人に言わせると「美しく穏やかな湖面に太陽が反射して静かに煌めく様な感覚」の響きを現出させたかったそうです。

確かにピアノやチェロがトリルを多用し、キラキラ感を出そうとしている様なのですが、湖面に藻や水草が繁茂し過ぎて光は乱反射気味、若しくは反射せず鈍く光るのみ。最終部では若い二人の迫力がアンサンブルを牽引し、その後の堤さんのソロ演奏は、湖面でなく潺を想起させる滔々とした流れの如き調べが心地良く、終了の箇所ではアンサンが静まり始め、主題の繰返しの後で次第に弱まる光の感覚は味わえました。

④フォーレ『ピアノ三重奏曲 ニ短調 作品120』

フォーレはこのピアノ三重奏を通常のピアノ、ヴァイオリン、チェロ用として作曲しました。ただその際、クラリネットを含む三重奏という構想もあった様で、結果的にはクラリネットを採用した楽譜にはなりませんでした。その理由は分かりません。フォーレの木管楽器用の作品はほとんどないのですが、ほとんどすべての管弦楽作品ではクラリネットを使用しています。またサン=サーンスのクラリネットソナタ(作品167、1921年)や友人ダンディのクラリネット三重奏曲を聴いているなど、クラリネットの響きを好んでいました。 この曲においてヴァイオリンをクラリネットに替えてもなんら問題はないという見解が有り、ヴァイオリン・パートに用いられているオクターヴ音程については、オクターヴの高い方のパートを吹くという解決法がなされました。クラリネットとチェロとの対話はむしろ特別な性格を持ち、この二つの楽器とピアノとの音のバランスも納得のゆくものとも謂われています。三楽章構成です。

 

第一楽章Allegro ma non troppo

Pf.先導ですぐにVc.が洒落た主題の旋律をかき鳴らし、続いて入るCl.もとうとうと謳い、穏やかにアンサンブルの流れが続いて行きました。処によりVc.の音が全然聴こえない箇所もありましたが、そこは多分Vcのパート譜はpかppの指示をしているのでしょう。そうでなければ若い二人が力を入れ過ぎかな?Pf.の小菅さんは丹念に同様な旋律を繰り返していますが、音はかなり太くて、Cl.も暖かい音を紡いでいました。

第二楽章Andantino

Pf.に続きCl.とVc.とが優しい旋律でやり取りし、皆さん抑制的に演奏しています。Cl.とVc.の斉奏では吉田さんの音があまり聞こえません。Pf.は前章同様弱い音で丹念に弾いています。終盤はVc.の音が弱まり、Cl.が顕在化しましたが、テンポや曲調は一貫して同じ淡々とした感じを保ったまま静かに終了です。最終部でのは吉田さんのCl.は、一楽章や二楽章の太い木質の音というより、細い金管の音に近く聴こえました。かなり高音のせいなのか?美しい旋律に富みます。

第三楽章Allegro vivo

Vc.の数回のゆるい出音に対し、Pf.がリズミカルな速い旋律で応じ、Cl.が低音で迎え撃ちます。Pf.は同じ軽快なメロディを繰り返します。この楽章ではCl.もVc.も割と冷静と優香感情を込めずに淡々と弾いていましたが、Pf.の小菅さんは相当力を込めて身振りも仕草も打鍵もエネルギッシュに演奏していた。フォーレの曲としては割とぶっきら棒な曲の終焉でした。

 この配信を聴いた限りでは、Cl.が活躍する珍しい曲という思い出は残るでしょう。唯全体的に、フォーレのイメージである洗練されたお洒落な印象、幻想的な雰囲気までは感じることは出来ませんでした。それはこの曲自体がフォーレの晩年、まさに不調な時期に作曲され、困難性を乗り越えんとする気概の下の作品のせいもあったかも知れません。

 いずれにせよサントリーホールのアーカイヴ配信は、音も映像も良くて、何よりいいことは、トイレタイムやちょっと用事を足すため、一時停止出来、また演奏の響きを確認したい場合など、若干巻き戻して聴けることがあります。そして何よりもいいことは、曲を聞いたばかりの印象をリアルタイムでブログにすぐ書けること。生演奏だと家に帰ってから書こうとしても印象が薄れたり、はっきりしなくなったりすることも珍しくありません。こうした数々の長所があるのですが、何より気になることはその音質、音量、臨場感、演奏の実雰囲気が生演奏に劣ること。もしそれが同じだったら、わざわざホールまで出かけなくともよくなってしまいます。そんな時代は絶対来ないでしょう?いやそう断言するのは危険かな?だって想像も出来ない様な技術革新の連続で、今日の人類の歴史は築かれて来たのですから。

 でも明日は、サントリーホールに足を運び、CMGの生演奏を聴いてみることにします。