HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東日本大震災復興支援『チャリティコンサート』at タケミツメモリアルホール

 昨日(2020.8.31.)聴いて来た復興支援コンサートは2011年の大震災以降毎年開催され、今年で10回目になるとのことでした。

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当初予定のポスター

 本来であれば今年3月に行われる筈だったものがコロナ禍のため8月に延期になったものです。日程変更に伴い、館野泉、小林沙羅、郡山高等学校合唱団の出演が取りやめられ、それに従い演奏曲目の一部が変更となったそうです。

 出演者、演奏曲目は次の通り。 

【出演】

司会:好本惠(元NHKアナウンサー)

チェロ:伊藤悠貴、

ピアノ:椎野伸一 仲道郁代 尾崎未空

ヴァイオリン:大谷康子 千住真理子

声楽:西村悟 松本美和子 森麻季

 

【曲目】

<第一部>
①ラフマニノフ(伊藤悠青編)『夜のしじまCp. 4:3』 『ここは素晴らしいOp.21-7』『 春の水Op14-11』 (チェロ伊藤悠&ピアノ尾崎未空)

②Rシュトラウス『4つの歌Op27より「Morgen(明日の朝)」

(ソプラノ森麻季&ヴァイオリン大谷康子、ピアノ椎野伸一)


③グリーグ『抒情小曲集Op.62より第2曲「感謝」』(大谷康子 ピアノ伴奏:椎野)

④ジョルダーノ『オペラ・アンドレア・シェニエより“ある日、青空を眺めて”』

 (テノール西村悟 伴奏:椎野)

⑤プッチーニ『オペラ「つばめ」より“ドレッタの夢” (森麻季  伴奏:椎野)

⑥ベートーヴェン(ヘルマン編)『3つの二重奏曲第1番 WoO,27-1』

(大谷康子&伊藤悠貴)

⑦ドヴォルザーク:『オペラ「ルサルカ」より“月に 寄せる歌”
 野上彰作詞、小林秀雄作曲『落葉松(からまつ)』
 (ソプラノ松本美和子、伴奏:椎野)

≪休憩20分≫

 

<第二部>
⑧シューマン『子どもの情Op.15より“見知らぬ国の人々”“鬼ごっこ”“トロイメライ” ”詩人は語る”』

 (尾崎未空)


⑨レハール『オペレッタ・メリーウィドウより“唇は語らずとも”』(森麻季&西村悟 伴奏:椎野)


⑩JSバッハ『無伴ヴァイオリンのためのバルテ イータ第2番より第5曲 シャコンヌ』
 (ヴァイオリン千住真理子)

 

⑪ドビュッシー『ベルガマスク組曲より“月の光”』

 ブラームス『間奏曲 Op.118-2』
  (仲道郁代)


⑫菅野よう子『花は咲く』(松本美和子&森麻季&西村悟 伴奏:尾崎未空)

 

【演奏会の模様】

これだけ多くの有名音楽家が参加したコンサートはそう多くはなく、如何に大震災の復興を人々が望み、支援の気持ちがあるかを象徴していると思いました。

また今回参加したのは、演奏者の中でこれまで生演奏を聴く機会がなかった方々が複数いて、まとめて聴ける良い機会だと思った動機もありました。

①はラフマニノフのピアノ曲をチェリストの伊藤さんがチェロとピアノ用に編曲したそうで、短い3曲が演奏されました。立ち上がりのせいなのかチェロの音が澄んだ良い音には聞こえませんでした。でも二曲目になるとピアノの音に合わせたロマンティックな響きが、題名の“素晴らしい”を思わせる演奏でした。三曲目は春のチョロチョロした雪解け水でなく、それらが合流して流れる本流の如き激しいピアノとチェロの調べでした。

②の大谷さんのヴァイオリン、森さんのソプラノは生で初めて聴きました。テレビなどでは何回も拝見しているのですが。森さんは声楽部門では今を時めくマスコミの寵児と言ってもいい位なのですが、いつも感じていた硬質の独特の歌声に変わりはなく、声量も伸びもある迫力満点の歌い振りでした。大谷さんの演奏は、8月22日にミューザ川崎でモーツアルトのコンチェルトを演奏すると、確かNHKの放送だったと思いますが、ご本人が話していたのを聞いて、チケットを当日券がないかとミューザに問い合わせたのですが、売り切れということで聴きに行けませんでした。確かその演奏を無料ライヴ配信するとも放送していたので、パソコンをチャンネルにセッティングしておいたのですが、その日は残念ながら、急遽別の演奏会の当日券を求めてサントリーホールに行くことになってしまい、配信も聴けませんでした。従って今回が初めて大谷さんの演奏を聴いたのです。この歌を主体とした曲のヴァイオリン演奏はしずらいのか、音としてもいいなと思う演奏ではありませんでした。ピアノの椎野さんは地味な感じですが、しっかりと歌に合わせていました。

③演奏後の司会者とのトークで、大谷さんは(デヴューからか?)45周年になるということと、使用ヴァイオリンはストラスヴァリウス、確か1725年の「ウイルヘルミ」だと言っていました。でも演奏は曲が合わないのか、心を惹きつける響きが余り無かった様に思います。ppの音の細かい煌めきは感じられなかったのですが、ffの高音はしっかり出ていました。

④の西村さんのテノールも初めて聴きます。西村さんという歌手も初めて知りました。経歴を見ると9年前の日本音楽コンクールで優勝しているのですね。道理で今回の歌の第一声からこれは本物だと思わせる歌声だったわけです。タケミツホールの狭い空間を、迫力ある大きな声量の歌声で一杯に満たしていました。この様なテノールがいるとは知らなかった。知らぬが仏では済まされません。今度機会があればリサイタルを聴きに行きたいと思いました。

⑤の歌は初めて聴きました。勢いに任せて堂々と声を張り上げて歌い切ったのですが、ややせっかちな感がしました。あのメロディならばもう少ししみじみと歌った方がきっとイイナー。 

⑥の曲ではところどころモーツァルト的雰囲気のメロディが感じられたのは気のせいでしょうか。この様な軽やかな速いテンポの曲が、大谷さんには向いていさそう。②や③の時よりも惹きつける魅力を感じました。タイトルは二重奏ですが、チェロの活躍が余り無く伴奏的な感じ、そういった曲なのでしょうか?最終部は二重奏らしくなりましたが、最終部でのヴァイオリンのテンポがやや速くなったのでは?

⑦松本さんのご高名は存じていたのですが、これまで聴きに行く機会が一度もなく、今回が初めてでした。司会者がトークで「喜寿になられて」と言っていたので、びっくりしました。だって二期会のオペラプログラムなどで最近も名を見かけましたから、随分長く活躍されているソプラノ歌手だから60歳代なのかなと思っていたのです。トークで美容の話にも及んでいましたが、確かにお若く見えますね。住宅が水浸しになって復旧工事の影響で声の調子があまり好調ではないという話をされていました。率直で素直な方とお見受けしました。

 “月に寄せる歌”は、衰えを僅かにしか感じさせない十分な声量で、声質もソプラノのオーソドックスな本流派と言った感じ、素晴らしいものでした。“からまつ”も哀愁を帯びた歌声で、日本歌曲にもこんなにいものがあるのだと思わせる様な歌唱でした。若しオペラに出る予定があるのであれば是非聴きに行きたいですね。リサイタルでもいいですね。 

 

  休憩の後の最初の曲は、

⑧尾崎さんのピアノ独奏でした。シューマンの良く知られた曲です。プログラム記載の経歴を拝見すると、尾崎さんは過去にPTNAの特級ファイナルグランプリに輝いているのですね。なかなか大したものです。ただ今回のシューマンの演奏曲は、技巧と力量をピアノにぶつける曲とは正反対の繊細で柔らかい表現が必要なので、いま少し抒情を込めた表現出来ればさらに素晴らしいものになったことでしょう。特に「トロイメライ」を聴くといつも頭に浮かぶのは、ホロビッツがモスクワ音楽院で初めての帰郷演奏会で弾いた時の映像です。トロイメライを聴いている聴衆の男性がゆっくりと指を閉じた瞼下に添えたのですが、そこには目からにじんだ涙が一滴まさに流れんとしていたのでした。音楽とはこんなにも人の心を打つものか、と忘れられない風景となりました。尾崎さんはまだお若いのだから今後の精進と活躍が期待されます。 

⑨トークでは西村さんは、半年ぶりの舞台での演奏だと語っていました。でも二重唱の歌声はブランクを感じさせない真直ぐで伸びのある声で、森さんのソプラノと合わせると、相当な大きな歌声が会場に響き渡りました。間奏の間にヴァランシェンヌとカミーユが手を取り合って踊る演出も時々あるのですが、今回は無しです。伴奏の椎野さんは相変わらず堅実なピアノの音を立てていました。 

⑩の千住さんも生演奏は今回が初めて聴きました。幼い頃から注目されて多くの場を踏み、日本のヴァイオリニストとしてはトップレヴェルの知名度を誇るかも知れません。何故かこれまで聴きに行く機会がありませんでした。演奏会もたびたびやっていてチケットの案内も良く来たのですが、聴きに行くことなくこの日を迎えたのです。どうしてかな?テレビやラジオでちょくちょく放送しているので、聴いて知っている気になっていたのかも知れません。

 バッハのこのあまりにも有名な「シャコンヌ」はここ2~3年、いろんな奏者が、バッハ・ソナタリサイタルやオーケストラとの共演後のアンコール演奏などで演じるのをたびたび聴いて来ました。その都度、演奏者が素晴らしいからか、バッハの曲が素晴らしいからなのか、いやその両方だと思うのですが、兎に角この世間離れした調べに酔ったものです。

 千住さんはさすがですね、冒頭の重音演奏やそのほかの難しいテクニックも難なく表現して、連綿と続くメロディの流れを迸り出していました。トークではデビュー45周年と司会者が言っていましたから、普通だったら17、8歳デビューとしても還暦は超えてしまうのですが、12歳でプロデビューというのですから、まだ50歳代なのですね。まだまだお若い。今回の演奏も迫力がありました。それにシャコンヌの難しいテクニックをコツコツと乗り切って弾き進む姿からは、相当まじめな方とお見受けしました。やはり生演奏はテレビなどで聴くのと迫力が違いますね。敢えて言えば、少し淡々とした感じが強かったかな?この曲はそういうものなのかも知れませんが。さらに欲張って申しますと、音にキラキラする煌めきがもっともっとあれば、最高だったのですが。 

次は⑪仲道さんのドュビッシーとブラームス演奏です。仲道さんの演奏はこれまで何回か音楽会やリサイタルなどで聴いています。柔らかい女性らしい響きを奏で、それでいて男性的な強い調べも出せる、経験と知識豊かな演奏者だと感じていました。

“月の光”は聴きながら、雲間の月の動きを連想していました。そう言えば今回のコンサートでは“月”に関した曲が散見されます。明日9月2日(水)は中秋の名月だからと言う訳ではないでしょうけれど。7月中旬に聴きに行った「ららら♪クラシックコンサート」でも上原さんが“月の光”を演奏したのです。それを聴いて司会者の高橋克典さんが“この曲を聴きながら屋上で月を見ていたことがある”といった風流なことを話していましたが、明日の関東地方は天気があまり良くない予報なので、残念ながら月の光はささないかも知れません。ブラームスの演奏はもう少しブラームスらしさが欲しかった様な気がしました。 

最後の⑫はNHKソングとして良く歌われ、放送もされているので、知らない人は無いと言って良い程の歌だと思います。それを作曲した菅野よう子さんは、被災地の宮城県出身であることは余り知られていないかも。合唱でも良く歌われる曲なので、今回の「チャリティコンサート」でも当初演奏が予定されていた郡山高等学校合唱団の演奏が中止となって本当に残念でした。この演奏会を聴きに来る動機の一つが合唱を聴けることだったので。申すまでもなく被災地福島は合唱王国で、高等学校の合唱部は、合唱コンクールの全国大会で、毎年トップレベルの優秀な成績を上げています。震災でふさがれた人々の心を開くのに、合唱は最適の音楽かも知れないのに、コロナ禍がその前に立ちはだかりました。7月以降の音楽部門の再開の中でも、「合唱」演奏は飛沫飛散の観点から一番遅い再開とならざるを得ません。来年こそ様々な災難を克服し、明るい歌声が全国津々浦々まで響き渡ることを心から願っています。

 尚アンコールとして演奏者全員が舞台に立ち、『ふるさと』を歌いました。