今日三月三日は桃の節句、ひな祭りです。朝から晴れ渡り風も弱いし、絶好の日和になりました。うちでは雛人形は、家内が親に買って貰った七段飾りを、以前は毎年飾っていたのですが、いつからだったでしょう、飾らなくなって久しいです。人形達の所持品の小物飾りで、紛失してしまったものが結構あるらしくて(本当は飾るのが面倒なのかも知れない?)。そこで家内は、ひな祭りを開催している、余り家から遠くない場所を調べ、市内の平戸という近場でやっていることを掴んで、友人と行って来たらしいのです。他にも毎年やっている処があったらしいのですが、今年はコロナの影響で、急遽取り止めとなった処もあるそうです。写真を撮って来てくれたのでアップしました。
随分いろいろな人形があるものですね。ぶら下がっているのは「吊るし雛」と言うらしい。
現在の様な内裏様、三人官女等を段に飾る様になったのは江戸時代以降の様ですが、その衣服姿形は遠く平安時代を偲ばせます。平安時代にはひな祭りの原型と謂われる「ひいな遊び」があり、ひいなとはお人形のことです。紙などで作った人形と、御殿や、身の回りの道具をまねた玩具で遊ぶもので、枕草子三十段には、“過ぎにし方恋しきもの 枯れたる葵。ひひなあそびの調度。…”とあり、「ひいな遊び」を清少納言も懐かしく思い出しているのです。
ついでに枕草子第四段では、三月三日の桃の節句に関しての記述があります。もっとも旧暦ですので新暦の現代とは約一ヶ月あとの暖かになった春の日なのですが、今年は暖冬なので、今日の様な風もなく晴れの良い日は将に旧暦の節句に近い気候でしょう。
[第四段]
“三月三日は、うらうらとのどかに照りたる。桃の花の今咲きはじむる、柳などをかしきこそさらなれ。それもまだまゆにこもりたるはをかし。ひろごりたるはうたてぞ見ゆる。おもしろく咲きたる桜を、長く折りて、大きなる瓶(かめ)にさしたるこそをかしけれ。桜の直衣(なほし)に出袿(いだしうちき)して、まらうどにもあれ、御兄人の君達(きんだち)にても、そこ近くゐて物などうち言ひたる、いとをかし”
春の風情、情景のぬくもりが伝わって来ますね。
この日の情景を良く表現した音楽は、やはり『うれしいひな祭り』でしょう。山野三郎作詩、川村光陽作曲。山野三郎とはサトウ ハチロウの事です。色々な名前を使っていたみたい。この歌は四番まであるのですね。
1明かりをつけましょ ぼんぼりに、お花をあげましょ 桃の
花、五人ばやしの 笛太鼓、今日はたのしい ひな祭り。
2お内裏様とおひな様、二人ならんで すまし顔、お嫁にい
らした 姉(ねい)様に、よく似た官女の 白い顔。
3金のびょうぶに うつる灯を、かすかにゆする 春の風、
すこし白酒 めされたか 赤いお顔の 右大臣。
4着物をきかえて 帯しめて、今日はわたしも はれ姿、春
のやよいの このよき日、なによりうれしい ひな祭り。
いい歌ですね。状況がピッタリ合っている。ユーモラスでワクワクするうれしい気持ちもよく出ています。名曲だと思います。