HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

映画鑑賞『盗まれたカラヴァッジョ』

 今日のニュースによると、パリ、ルーブル美術館も、館員の業務拒否により、急遽閉館に追い込まれましたね。訪れた観客は中に入れず。がっかりしていたそうです。日本でも音楽会は続々と中止が相次いでいます。チケットが手元にあるだけでも、「シッラ」「慶大定期演奏会(今のところ延期?)」「文化庁、二期会主催の若手声楽家特別演奏会」「ムーティのマクベス」「工藤さんのブランデンブルグ」「早大オケ定演」「区民センターのマリンバコンサート」「ベヒシュタイン使用のリサイタル」などほとんどが中止です。まだはっきりしないのが3月だけでも「日フィル+藤田真央」「上原ピアノリサイタル」、4月のコバケンさんのチャイコフスキー全曲は大丈夫でしょうね。通し券を購入しています。中止になると払い戻しという七面倒な作業が生じてしまう。
こうした状況なので、なかなか出かけるにはリスクが付きまといます。特に閉じた空間では、リスクが高まるといわれます。いくら季節が暖かいと言っても野外音楽会は寒くて、今の時期はやらないでしょうし、ほかの趣味中心にならざるを得ない。そうした訳で昨日日曜日、映画を見ました。2月25日に書いた映画『スキャンダル』鑑賞でも述べたことと、同じコロナ対策処置を講じて行ったのですが、200の座席のうち、数えたら観客数は10人ポッキリでした。館内の換気装置はうなりをあげているのが聞こえるし、エスカレーターの手すり等を、アルコールを吹きつけながら丹念に消毒している職員の姿に、相当注意・警戒をしているなと感じました。かなり安心しました。

 見た作品は『盗まれたカラヴァッチョ』。2018年製作のイタリア映画で、日本では1月から公開されています。これを見た動機はかなり以前に「カラヴァッチョ天才画家の光と影」という映画を見て、天才的で破天荒なカラヴァッチョの生涯の詳細を知り、またミラノの美術館でカラヴァッチョの名作「エマオの晩餐」を見た時、カラヴァッチョがそれを描いた年に、殺人を犯してしまうという驚きの事実を知ったことが、重なって思い出されたからです。“盗まれた”というタイトルに何かダヴィンチコード的な暗号解読とかサスペンス的な響きがあり、惹かれたのです。でも結論的にはそういった類(たぐい)の作品ではありませんでした。知的満足度は低かった。


●監督:ロベルト・アンドー、

●主演(ヴァレリア役):ミカエラ・ラマッツォッティ
●元捜査官アルベルト・ラック役:レナート・カルベンティエリ
●人気脚本作家アレッサンドロ・ガスマン役:アレッサンドロ・ロペス
●ヴァレリーの母親役:ラウラ・モランテ

 粗筋を簡単に記しますと、この映画は1969年10月16日、カラヴァッチョの大作「聖ラウレンティウスと聖フランチェスコのいる生誕」所謂「パレルモの生誕」がサン・ロレンツオ礼拝堂から盗まれたという実際に起きた事件を基としており、映画では犯人マフィア説をとっている。
 

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聖ラウレンティウスと聖フランチェスコのいる生誕

 元捜査官を名乗るラックが、映画製作会社の秘書ヴァレリア(実は人気脚本家アレッサンドロのゴーストライター)に接触し、カラヴァッジョの「キリスト降誕」盗難事件を映画化するよう秘密裏にアドバイスする。彼女が書いた盗難事件を基にした脚本は、映画会社から絶賛され製作も決定するが、アレッサンドロが何者か(あとでマフィアの仕業と分かる)に誘拐され、ボコボコにされて昏睡状態で捨てられていた。ヴァレリアはラックから情報を得て脚本を書き続け、最後は映画化にこぎつけるのでした。途中ヴァレリーの色仕掛けの探偵並みの行動や、独身をとおして実子ヴァレリーを育てた母親の秘密、ラックの秘密、などが次々に明らかになり物語の進行を彩るが、やや偶然が多過ぎる感じと、ヴァレリーを陰で守る老人ラックの神業的スパイ並みの行動力は、ややオーバーだなと思いました。そして何より残念だったのは、タイトルで「盗まれたカラヴァッチョ」と大上段に振りかざした割には、この絵画盗難に関してのヴィジョンが何も無く創造性、創作性もなく、ただ“盗まれた”という事実だけを利用した内容になっていることでした。映画パンフに、ヴァレリアを絵画の嬰児キリストの位置に、ごろ寝させた合成写真を作っているが、内容的に全く絵と関係なく、全体的な芸術性を損ねていると思います(上掲の絵と比べてみて下さい)。

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 でも勉強になったというか、イタリア政治の現状把握の参考になるかなとも思いました。それは、昨年12月に伊元首相ベルルスコーニに関する映画を観たのですが(2019.12.11の記事『LORO 欲望のイタリア』参照)、イタリア政界の堕落が描かれていた。今回も、ここまでイタリア政治のトップは腐っているのかと思う程の描写でした。あながち誇大描写、嘘八百ではないでしょう。火の無い所に煙は立ちません。
 

 さてこのカラヴァッチョの絵の行方は未だ分かっていないのです。発見されていません。そのカラヴァッジョの貴重な絵画が、ニュースによると、2015年末、残存する写真等を基に 最新デジタルテクノロジーを駆使した印刷技術でこの絵が複製され、上記礼拝堂の元の位置に展示されたそうです。オープニング当日は、現イタリア共和国大統領セルジョ・マッタレッラ(パレルモ人)が訪れ、名画の復活を祝ったとのことでした。