HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

塩野七生著『コンスタンティノープルの陥落』散読

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Ⅰ.著者について

    以前、面白そうだったので買って途中まで読んで、そのままになってしまった本の一つです。何年も経ってしまっていました。大分記憶が薄れていたので、今回最初から読み直しました。 ご存知の様にコンスタンティノープルは現在のイスタンブールでトルコ最大の都市です。ビザンチン帝国の首都であったコンスタンティノープルは、9~11世紀の最盛期には人口、30~40万人を数え、最大の都市でした。それが11世紀にイタリア都市国家が勃興し、海洋交易国家として勢力を伸ばしてくると、ビザンチン帝国は衰退し、13世紀中葉には人口4~7万人と六分の一以下となってしまったそうです。こうした中で、オスマントルコの攻撃により1453年に首都は陥落しビザンチン帝国は瓦解するのです。
 この物語は、コンスタンティノープルの攻防戦とその前夜に関しての歴史書というより史実を参考とした小説と言った方が相応しいかも知れません。
 著者塩野さんはイタリア物で有名ですが、ドイツのフリードリッヒ2世に関する本や「ギリシャ人の物語」なども書いている。昔朝日新聞に塩野七生作の「サンマルコ殺人事件」という連載物が載りました。毎回切り抜きをしてファイルし最初は次回掲載を楽しみにしていましたが、ダンダンと面白くなくなり、最終回までいかず見るのをやめてしまったことがあります。“殺人事件”と言えばそれ以前にはコナンドイルやアガサ・クリスティなど小、中学生のころから読み親しんで来たのですが、イタリア、ヴェネティア、サンマルコ広場、鐘楼など舞台は揃っていた筈なのに、ワクワクする面白さが感じられなかったのです。
 今回読んだ、「コンスタンティノープルの陥落」の攻防前夜の描写も、詳細に渡っているのですが、何か面白みが足りない。例えば新スルタンマホメッド二世が即位した時、亡き父スルタンの愛妾マーラが、嫁ぎ元のセルビアに丁重に返された題材から血肉の通った物語を描き出すことは出来なかったのでしょうか?ヴェネチアの医者ニコロが提督トレヴィザンに請われて、コンスタンティノープル行きの軍船の船医として故郷を発たなければならなくなった時の最後の兄弟との晩餐の描写はそっけない程簡単に書いており、妻子に関しては“話題にものぼらなかった”と言っている。妻子との会話、出立準備などなど、多くの物語が書けそうですが、全体的にそうした表現は意図的にかどうかは分かりませんが避けている結果となっています。従って面白さが足りない。教科書を読んでいるみたい。
 これも塩野さんの経歴を見るとむべなるかなと納得がいきました。ものすごい秀才だったのですね。高校は日比谷、あの全盛時代の日比谷高校です。亡くなったピアニストの旦那さんの芥川賞作家、庄司薫と日比谷で同級生だったそうです。私は違うのですが日比谷高校出身の人は何人か知っています。ものすごい博覧強記、頭がいい。塩野さんは東大受験には失敗したものの再度目指しての浪人はせず、自分の習いたい先生のいる学習院大に進んだというのですからすごい。イタリア物の第一人者になって当然の人だったのです。そういう優等生のありがちな面白さ・ユーモア不足、いい加減さ不足が原因ではなかろうかと勝手に解釈しました。
(続く)