韓国映画です。日本でも韓流（ハンリュウ）テレビドラマは盛んに放送されており、歴史物は結構見たことがあるのですが、映画館に行って見ることはほとんどありませんでした。一つだけ、2010年にハ・ジウォン主演の「ＴＳＵＮＡＭＩ-ツナミ」という作品を観たのが強く印象に残っています。何故ならその数か月後、東日本大震災が勃発、映画と同様な大津波が日本にも押し寄せたのですから。忘れるに忘れられない作品となってしまいました（映画では100ｍの津波が押し寄せます。電力会社のトップもあの映画を見ていれば津波対策が違ったものになっていたかもしれませんのに）。
それはそうと、今回のノミネート作品群の中では、「パラサイト」は、異彩を放ってていました。
韓国で公開されたのが昨年５月、以来観客動員数は1000万人というヒット作品になり、既にカンヌ映画祭で「パルム・ドール」を受賞していました。そして今回アカデミー賞作品賞他都合４冠受賞を達成し、数々の記録を樹立したのです。
丁度今の時期、幾つかの映画館で上映していますが、港に近い方は敬遠して内陸部の比較的観客が少ない映画館で見ました（客席にいたのは数十人程度だったと思います）。 ストーリーの詳細は割愛しますが、大雑把に言って、半地下に住む貧困（気持ち的には貧困でなく上昇意欲に満ちている）家族4人が全員、裕福なＩＴ企業経営者の家族の家にうまく就職出来て、寄生虫（Parasite）状態となり、生活も安定していくのですが、最後の最後どんでん返しがあって、超悲劇が起きてしまうのです。
この映画に関しては、既にテレビ、新聞、ネット等で多くが報道され、多くが語られており、私もその通りだと思いますので詳細は省きますが、二、三付け加えておきますと、寄生出来たのも才能があったからです。語学力（英語力）のある息子、美術のセンスと知識のある娘、運転上手の父親、家事（料理）力のある母親、それに加え全員、巧みな話術、演技力と度胸と機敏さも兼ね備えている。（これだけうまくやれるのに何故、以前の事業は失敗して倒産したのでしょうか？）とにかくこの家族が金持ちの家に次々と入り込む手口に、抱腹絶倒、こんなに面白い映画は久し振り、と思って見ていると最後の最後にどんでん返し、修羅場が待ち構えていた訳です。余りの凄惨さに顔を背けたい程。この凶行の怒りはどこから来ているのだろう？Anger is temporary madness。 鬱積した怒りは凶行を呼びます。聖バーソロミューの虐殺、清教徒革命、フランス革命、ロシア革命、ユーゴのチトー打倒の革命。怒りは抑圧すればする程、内に籠り爆発威力が増します。風船を周りから圧迫すればする程、内圧が高まり遂には破裂するのと同じことです。
ある人曰く、パラサイトの怒りは、貧富の差に対してだ。別の人曰く、韓国を抑圧する米国に対してだ。体臭が臭いと言われた侮辱に対する怒りである、などなど。映画の解釈はどうでもいいのですが、ただ問題なのは、そうしたフラストレーションの内圧が自分の中で、身の回りで、家族の中で、学校で、職場の中で、いや日本の中で、世界で高まっていないかどうか、良く見極める必要が有るのではないかと思いました。
尚、パラサイトの話題の陰に隠れてしまった感がありますが、ブラピの初の助演
男優賞受賞、オスカー助演女優賞を既に得ていたレネィ・ゼルウィガーの初めての主演女優賞受賞も、もっと大きな話題となっていいと思われます。ブラピはこれまで多くの良い作品、面白い作品に出演し、何回も見ていますが、何故俳優としてオスカーが取れないのかなと思っていました。とうとう取れましたねと賞賛の声を上げたい。ゼルウィガーは2005年に「シンデレラマン」にボクサー役のラッセル・クローの奥さん役で出演したのを見た時、この女優はすごい美人でもないし演技が際立って素晴らしい訳でもないけれど、何か言葉では表せない、雰囲気というかオーラというか感ずるところがあって（カリスマ性という人もいますが？）、ずーと頭から離れない女優でした。遂に取りましたね、🎊。 きっと最高の演技だったことでしょう。
３月上旬に同じ映画館で上演されるので、しかも歌手を自ら演じて歌うということですので是非見に行きたいと思っています。
後味の悪いパラサイトを見て少し嫌やな気分もあった帰り道、路傍には早や木瓜（ボケ）の花が咲いていました。ラッパ水仙の花も。春は確実に近づいています。
また名が分からないのですが小さいながら今盛りと咲いている花も見かけました。こうしたものは心を癒してくれますね。
