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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『室内楽演奏会』…夜クラシック最終会

 昨日金曜日、シューベルト3曲と、バッハ、ドビュッシー各1曲を五重奏、三重奏、独奏で演奏するコンサートを聴いてきました(2020.1.14.19:30~@文京シビックホール大ホール)。演奏者は、固定的な室内楽奏団ではなく、気が合った仲間が時間の都合がつく時に、年に数回集まって演奏するといった具合でしょうか? ピアノ(Pf.):萩原麻未、ヴァイオリン(Vn.):辻彩奈、ヴィオラ(Vla.)安達真理、チェロ(Vc.)横坂源、コントラバス(Cb.)加藤雄太の五名。演奏曲目は、

 ①ドビュッシー作曲『ベルガマスク組曲』より“月の光”(Pf.独奏萩原) ②エルンスト作曲『シューベルトの魔王の主題による大奇想曲作品26』(Vn.独奏、辻)

③バッハ作曲『無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュード』(Vc独奏、横坂)

④シューベルト作曲『弦楽3重奏曲第1番変ロ長調D471』(未完)第1楽章 (Vn.辻、Vla.安達、Vc.横坂)

⑤シューベルト作曲『ピアノ五重奏曲イ長調「ます」D667』(5人全員)

 先ずシューベルトの曲の演奏の感想ですが、②はハプスブルグ家支配時代のオーストリア帝国生まれのヴァイオリニスト、エルンストが、パガニーニに触発されて難曲として有名なこの曲を作曲、歌曲、魔王の旋律とピアノの伴奏メロディを、弦の速い動きによりVnだけで表現するという、超絶技巧を要する曲です。辻さんは何回かキーと異音を発することはあったが、全体的にほぼ完ぺきな演奏でした。弓を速い動きで上下させながら、重音演奏部も歌の低音伴奏音階と歌う高音音階の調べを重畳させて見事に弾き切りました。聴いていても弾くのが大変難しいことが伝わってきましたが、個人的には魔王はやはり歌で聴く方が好きですね。せわしないピアノ伴奏部分だけが強調されている感がして。演奏者にとっては、非常に弾き甲斐のある面白い曲かも知れませんが。

④の弦楽3重奏曲は初めて聴きましたが、大変奇麗なメロディで好きになれそうです(途中モーツァルトの影響が感じられるパッセージも有りませんか?)。聴いた後も「やはりシューベルトはいいな」といった思いになりました。演奏はそれぞれ立派に演奏して良く合っていましたが、欲を言えばアンサンブルとしての響き合い、溶け合いがもっと欲しい気がしました。Vn三重奏曲のきらいが若干あり。それにしても「未完」ということは惜しい限りですね。三楽章構成でいいから、いやせめて二楽章まででもいいから完成して欲しかった。もし完成していれば、きっといい曲になったでしょうに。シューベルトに関しては、この“若し何々だったら、きっとこうこうだったでしょうに。惜しいかな!”ということが多いですね。“若しあと数年生きていれば、生活も楽になり、きっともっともっと素晴らしい曲を残してくれたでしょうに”とか。

⑤はさすがに皆さん何回も演奏経験があるのか、この日一番の出来だと思いました。全体的にピアノは卓越しているし、Vnは相変わらず奇麗な音を立てて、箇所によってはかなり抑えて演奏をしている。Cbはアンサンブルの底をしっかり支えている。Vlaの音も冴えてきているし、Vcも存在感を次第に強めている。特に4楽章後半の主題変奏のVc独奏部は,

堂々とした演奏でした。

 シューベルトのアンサンブルは④と⑤の2曲でしたが、今後演奏回数を増やす毎に、アンサンブルとしての調和が益々磨かれてくることと思います。

 その他①ドビュッシーについては、Pf演奏そのものは大変良かったのですが、演出がどうかな?と思いました。というのも演奏開始直前、奏者が登壇する前に会場の照明がすべて消され、暫く静かな暗闇が続いた後に、演奏が始まったのです。演奏が少し続いた後、舞台のスポットライトがピアニストの萩原さんだけを照らしました。しかし座席は相変わらず真っ暗、プログラム資料も読めない状態が続きました。曲の題の如く“月の光”をイメージした演出かと思いますが、ドビュッシーのこの曲は、新月や月食の様な暗い闇夜でなく、明るい月明かりにより照らされた物に陰影が生じ、部分的な明暗の対照的風景を想起させるもので、決して暗闇ではないのです。檀上のスポットライトはそのままにし、客席も暗めのライトを灯した方が、曲がすんなりと心に入ってきたと思います。照明設備の関係で、その様な光は出せないのかな?せっかくいい演奏だったのに。

 もう一つの独奏、③バッハのこの1番の無伴奏チェロ曲は、余りにも有名。横坂さんは、心に浸みるチェロの調べを堪能させてくれましたが、個人的にはバッハの無伴奏チェロ曲は余りにも奥が深いというか、広いというか、恐れ多いというか、深淵な闇まで感じるので、余り近寄りたくはありません。無伴奏フルートソナタの方が好みに合っています。軽いと言われるかも知れませんが。

 最後に安達さんが、“今日はウィーンのシューベルトの曲が多かったし、今日がニューイヤーコンサートとして聴き初めの皆さんもいることでしょうから、おなじみの曲をやります”との趣旨をトークして、アンコールとして、演奏者全員で『美しき青きドナウ』を演奏し始めました。短く端折ったシュトラウスの曲の演奏でしたが、雰囲気は満点、万雷の拍手を受けていました。今回は若手の中堅クラスの演奏会でしたが、経歴を見るとパリとかウィーンとかドイツに留学経験の演奏家がごろごろいるのですね。やはり海外経験を積むと演奏に幅とゆとりが出るのではなかろうかと勝手に思っています。3月初めに、声楽部門ですが「文化庁海外新進芸術家派遣」成果発表の演奏会を聴きに行きます。楽しみです。