先週フランス印象派絵画展(2019. 9/21 ~2020.1/ 13 の日程で横浜美術館で開催中)を観てきました。この展覧会は、パリ、オランジュリー美術館所蔵のルノアール他の印象派画家達、しかもパリに密接な関係を持つ(''パリに恋した’’と表現しています)画家達12人の作品を公開しているのです。パリのチェルリー公園にあるオランジュリー美術館は、ご存知の方も多いと思いますが、1階にある、モネの大きな蓮の絵の連作(国家へ寄贈)で有名です。昔それを見に行った時、何も知らないで地下にも何か展示している様だからついでに覗いてみるかと、階下に降りてみてびっくり、そこには宝の山があったのです。狭い通路の両脇に小さいながら、ゴッホやらピカソやらルノアールが沢山、惜しげも無く、壁に掲げられていました。本当にびっくりしました。こんなに沢山の名画があるとは!勿論上の階のモネの連作は素晴らしいものですが、階下のひっそりと展示されている絵画たちの方がもっと価値があると思ったものです。同美術館には、その他にも展示していない絵が沢山収蔵しているらしい。その時見た作品は沢山写真を撮ってきました(パリの美術館に限らず欧州では、撮影OKの処が多いですね。何故か日本ではどこも駄目)が、記憶させた外付けハードディスクが壊れて開けない、見られない。これらの作品群は20世紀初頭、パリの画商ポール・ギョームにより収集されたもので、死後フランス国家に寄贈されました。さて今回の展覧会では『ピアノを弾く少女』が目玉のようです。勿論、観客は自分のお目当ての作品を見に来る人も多いと思いますが。僕のお目当ては、セザンヌとシスレー。セザンヌの太い輪郭の静物画やプロブァンスの風景画が好き。シスレーは、淡い色で描写した印象的風景画が何とも言えない位素敵だねー。セザンヌの静物は2作品ありました。『リンゴとビスケット』『藁紐を巻き付けた壺、砂糖壺、りんご』。暗い絵と言えば暗い絵かも知れない。でもこうしたものを見ていると、かっての日本の台所の原風景を思い出して郷愁を感じるのです。プロブァンスの風景画はなかったのですが、『小舟と水浴する人々』が、素晴らしい構図で目を引きました。横長の絵で河口か大河の岸辺で水浴する人々を左右に配し、中央の水面の真ん中に小舟が浮かんでいる。その小舟から長い帆が画面を縦切って上に伸びている。この帆は恐らく、セザンヌが絵を描いていて、最後に書き入れたものではなかろうか?これが無いとすると、絵の構図は横長の単純な絵になってしまう。大胆に、ど真ん中に高々と帆を書き加え、左右のバランスをとると共に強いアクセントとしているのです。シスレーの作品は、『モンビュイソンからヴシエンヌへの道』一つでしたが、これがまたいい。広々とした遠景に左右から伸びる遠近感のある道。上方には、大きな空が圧迫感なく広がっている。季節は多分、秋でしょう。路傍の背高か草は立ち枯れし、木々には黄葉も見え、空の雲はいわし雲か?秋の感じ歩く人々の足は心なしか急いでいる様にも見える。見ていても早く遠くの街にたどり着きたい気持ちになってきます。
モジリアーニも肖像が3点出ていました。独特の曲がった胡瓜の様な顔輪郭と鼻筋。窄んだ顎。以前、ジラール・フィリップ演ずる『モジリアーニ』という映画を見たことありますが、モジリアーニも前述のシスレーも晩年から死に至るまで絵で名を成すことは無かった様です。
アンリ・ルソーの絵もありました。ルソーも好きですね。幻想的というか超現実的というか、例えば、今回は展示されていませんが『夢』などの作品の前に佇んでジッと見つめていると、絵の中に彷徨いこんだ自分が、大きな葉の陰に隠れて何か起きるのを待っているかの様な夢心地な気分に浸れるのです。
その他、もちろんルノアールやマティス、ピカソ、ドラン、ローランサン、ユトリロ他の絵が沢山展示されていますから、興味のある方は一度足を運んで見て下さい。どういう訳か、朝日新聞夕刊の最新版(2019.10/29水)『美術館 博物館』催し紹介一覧表には、載っていませんが(抜けたのかな?それとも、読売新聞社が共催なので、抜かしたのかな?)、まだ開催されている筈ですので。ご確認を。