HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

フランス映画『すべてうまくいきますように』鑑賞

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【原題】Tout s‘est bien passé(2021|フランス・ベルギー)113分

【言語】フランス語・ドイツ語・英語

【提供】木下グループ 

【配給】キノフィルムズ

【字幕翻訳】松浦美奈

【鑑賞日時】2023.2.27.(月)21:00  ~

【上映館】

ヒューマン・トラストシネマ有楽町

【プロモート言】

芸術や美食を楽しみ、ユーモアと好奇心にあふれ、何より人生を愛していた父が突然、安楽死を願う。脳卒中で倒れたことがきっかけだが、治療の甲斐あって順調に回復しているにもかかわらず意思を曲げない父に、二人の娘たちは戸惑い葛藤しながらも、真正面から向き合おうとする─
『まぼろし』や『8人の女たち』で恐るべき才能と讃えられ、ベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』で名匠の地位を確立したフランソワ・オゾンが、すべての人に訪れる死を巡りながら、家族の愛とは何かを問いかける。

娘を演じるのは、『ラ・ブーム』の世界的大ヒットでスーパーアイドルとなりハリウッド大作にも出演、フランスの国民的俳優として愛され続けるソフィー・マルソー。
オゾン作品に深みを与えてきたシャーロット・ランプリングと共演を果たす。

最期の日を決めた父と娘たちの前に、様々な人々が立ちはだかる。
サスペンスフルなストーリーテリングを得意とするオゾンが、緊迫感に満ちた展開の先に用意した結末とは?


【監督・脚本】フランソワ・オゾン(『ぼくを葬る』『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』など)

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【出演】

ソフィー・マルソー アンドレ・デュソリエ ジェラルディーヌ・ペラス 
シャーロット・ランプリング ハンナ・シグラ他

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<Profile>

13歳の時にオーディションで数百人の中から選ばれた『ラ・ブーム』の主役でデビューし、一躍トップ・アイドルとなった。実名とイニシャルを変えないように、マルセル・マルソーから姓を採った。西洋人ながら、ややアジア人に似た外見が特徴で、これは本人も認めるところである。また、イザベル・アジャーニに似ているともいわれた。

フランスでの人気は高く、女優部門で51%の支持を集めトップになったとも、 最も売れている女優であるともされている。



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【概要】

小説家のエマニュエルは、85歳の父アンドレが脳卒中で倒れたという報せを受け病院へと駆けつける。意識を取り戻した父は、身体の自由がきかないという現実が受け入れられず、人生を終わらせるのを手伝ってほしいとエマニュエルに頼む。一方で、リハビリが功を奏し日に日に回復する父は、孫の発表会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。だが、父はまるで楽しい旅行の日を決めるかのように、娘たちにその日を告げる

 

【感想】

 この映画では、場面の殆どが大病院、クリニック、若しくは自宅のベッドに横たわる父親アンドレと、その娘エマニュエル達との会話のやり取りから成ると言ってもいい程です。脳出血で命を失いかけた父に、献身的に見舞い話しかける娘、危篤を脱して回復の方向に向かうも、ある考えに取り付かれた父親の頑固一徹さは異常な位です。性格と言うよりもアンドレのそれまでの生き様が影響しているのではなかろうか?つまり、元を質せば、妻クロードとの離反生活が大きい様な気がしました。病床でアンドレが語っている様に結婚する時、クロードの両親から❝ホモとの結婚は反対❞といわれ、死んでも両親と同じ墓地には埋葬されたくないとの趣旨のことをエマニュエルに話すのです。ホモと謂われても子供を三人も設けているのですからね?  また息子ジェラールの存在も大きく影響していると思います。娘たちは彼をどうしようもない男、くず男とまで思っている。確かに父親に傷を負わせたり、無心したりするのですがアンドレはそれでも息子の要求をいつも飲むのです。要するに息子を捨て切れない、可愛いのでしょうね。娘たちはその分親孝行だし父親を愛している、特にエマニュエルは。孫の男の子もアンドレは可愛がり以前は度々一緒にピアノをひいたり、演奏会発表会に行ったり、この世の未練はまだいろいろ多くある筈です。自分も含め常人だったらそう考えます。でもアンドレはそうでなかった。娘たちもそこまで父親が未練を簡単に捨てるとは非常にショックなのでしょう。それはそうです、献身的な自分たちも簡単に捨てるのですから。ここまで色々考えても、矢張り❝何故なんだ?❞と言う疑問は残りました。

ピアノと言えば、父親アンドレはピアノ曲就中ブラームスが好きだったのですね。

最後の晩餐もしましたが、家族と別れて一人スイスに運ばれ最後に聴いたのもブラームスのピアノ曲であったそうです。この映画では場面場面で流されるピアノ曲他が非常にいい。ブラームスのピアノソナタ3番2楽章若しくは3楽章、こんなにも素敵な響きとして耳に入って来るのは、映画の場面を見、又その台詞を聴いてより感傷的になるからなのでしょうか?それにしても誰が弾いているのか?素晴らしい。これまでの演奏会で聴いたことない様な哀愁に満ちた、しかもお洒落な雰囲気を漂わせる演奏でした。又孫の音楽発表会でクラリネットを吹くベートーヴェン『ピアノ三重奏曲第4番』もペーソスに溢れた場面に輪をかける効果がありました。クラリネットはクラシック音楽では度々そうした場面を表現するのにつかわれる楽器ですから。

その他、終盤のクライマックスで流れる『シューベルト―四手のための幻想曲ヘ短調D.940』やその他、ベートーヴェン『ピアノソナタ第32番』、シューベルト『ピアノソナタ第21番』の一節など、この作品(脚本も含む)を作り出した監督オゾンの音楽センスの良さは抜群でした。半ば素晴らしい音楽鑑賞をした気分で帰路につきました。


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