【日時】2022年9月15日(木) 19:00開演
【会場】サントリーホール・ブルーローズ(小ホール)
【管弦楽】東京室内管弦楽団
【指揮】菅野宏一郎
【独奏】北川千紗(Vn)
〈Profile〉
愛知県生まれ。岐阜県にて3歳半よりヴァイオリンを始める。大垣市文化奨励賞、市民大賞受賞。2011年ベートーヴェン国際コンクール(ウィーン)、2013年ユーロアジア国際コンクール(東京)、2014年国際ソロヴァイオリンコンクール(クレモナ)において最年少第1位受賞。2016年第25回ABC新人コンサート最優秀音楽賞、ナウェンチュフ国際ヴァイオリンコンクール(ポーランド)部門総合グランプリ、2017年バルトーク国際ヴァイオリンコンクール(ブダペスト)審査員特別賞と3つの特別賞、2018年シンガポール国際ヴァイオリンコンクール第2位、あわせて聴衆賞、第1回国際ヴィクトル・トレチャコフヴァイオリンコンクール(ロシア)第2位、東京藝術大学同声会賞、第2020年、第89回日本音楽コンクールバイオリン部門第1位及び岩谷賞(聴衆賞)受賞。
これまでにサヴァリア交響楽団、シベリア州国立交響楽団、シンガポール交響楽団、リスト音楽院管弦楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京交響楽団、日本センチュリー交響楽団など多数共演。ヴァイオリン・フェスタ・トウキョウ2012、2014出演。毎年ラ・フォル・ジュルネTOKYO、飛騨高山音楽祭、ウィーン、シンガポールでの国際音楽祭に出演。
ヴァイオリンを青山陽子、青山泰宏、海野義雄、清水髙師の各氏に師事。東京藝術大学附属音楽高等学校を経て、同大学卒業。現在、桐朋学園大学大学院修士課程在学中。公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生、江副記念リクルート財団第46回生、宗次德二桐朋学園大学大学院特待奨学生。現在シンガポールRin CollectionよりStorioni Lorenzo1793を貸与されている。
伴奏チェンバロ:菅野宏一郎
【曲目】
①ヴィヴァルディ:協奏曲集『四季』 Op. 8
《休憩》
②ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 Op. 26
【演奏の模様】
①ヴィヴァルディ:協奏曲集『四季』 Op. 8
室内楽奏団は、舞台左翼に、立ち居でVn.4人、右翼に同4人、中央にチェンバロを配し、チェンバロは、指揮者の中野さんか弾き振りします。左翼VnとCemb.の間にソリストの北川さん、その奥に二台のVcと右並びにCb一台が揃いました。
定刻になって登場した北川さんは自信にあふれている様子。北川さんと中野さんはNoマスクですが、室内楽奏者は、皆赤いマスクをしています。座席は今時珍しい市松模様。港区が後援し、文化庁の補助対象事業だからこそ、出来るのかも。
①ヴィヴァルディ:協奏曲集『四季』 Op. 8.
暫く弦楽アンサンブルが鳴ると、すかさず北川さんのソロ音がさえずり始めました。力強く高々とVnを響かせていますが、それ程華美ではなく、かと言って地味な音でもなく、一種独特の音質です。不思議な音色を有している。『四季』は昔から色々聴いていますが、初めてとも思える音質です。コロナ流行前に聴いたイ・ムジチのソリストの時とも違うし、2020年2月に聴いた「鎌倉芸術館ゾリステン」の徳永さんのソロ音とも違う。勿論最近聴いたの若手奏者達とも。春の最初からかなり力を入れて弾いていたので、よく言えば力強く、別な表現だと、荒々しく聞こえたのかも知れない。春でさえ相当の激しさの箇所があちこちあったのですから、まして夏の雷鳴や激しい嵐は、弦楽アンサンブル共々狭い小ホールを、揺るがすが如きでした。でも小ホールだからなのか室内楽奏の響きは、強奏になればなる程、音が溶け合わず、室内を乱反射しまくっている感じ。ただ北川さんのソロ音だけが、独立系独歩、素晴らしい弓捌きで、弦をふるわせていました。秋の軽快なテンポの辺りや冬のLargoになって綺麗に、北川さんは堂々とソロ音を見事な技術で鳴り響かせ、Cb.やVn.のピッツィカートがよく似合って効いていた。冬では、3楽章の垢抜けしたしゃれた感じのソロ演奏が、自分の耳には、四季を通して一番の心地よい響きでした。この曲を聴くと、いつでも夢想してしまうことは、ビヴァルディの演奏です。きっと今日の中野さんの様にチェンバロをひきながら、孤児達に演奏指導をして、発表会の様なこともやっていたに違いない。丁度、東京室内管弦楽団規模の子供達(中には中、高生くらいの年の子もいたかも?)を前に指揮し、ある種満足感に浸っていたのでしょう。あくまでも妄想ですが。ただ同時のイタリアの建物は、柱廊に囲まれて、壁面がない中庭空間と一体化した解放空間もあったでしょうから、四方が、壁・扉で閉じられた「ブルーローズ」とは、同じく曲でも響きは、違っていたに違えない。さて、一人ごとはこの位にして、休憩の後は、②ブルッフのコンチェルトです。
北川さんが、Timp.と管の先導に続き、比較的低音部の調べを響かせ始めると、続く重音個所も、言うことなし完璧の演奏でもって、高音歌唱になってもいい音を立てました。ここです初めて気が付きました。北川さんのあの不思議な音しょくの響きは、あたかもこのブルッフのコンチェルトを弾くために開発されたものなのかー、と思ってしまうほど、曲にぴったりのサイズだったのです。この曲にぴったりの衣を纏わせ、ぴったりの靴を履かせて、擬人化した曲に素晴らしいバレエを踊らせているかの如き感触。(普通のヴァイオリニストがそうである様に)北川さんも、何百回となくこの曲をこれまで弾いてきた経験もあるのでしょうが、素晴らしい天分も発揮し、ブルッフのこの曲を見事に料理してしまったのでした。
尚アンコール演奏が一曲あり
エルガーの『愛の挨拶』
でした。万雷の拍手を受けていました。