HUKKATS hyoro Roc

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N響1939回定演『ブロムシュテット帰還演奏』を聴いて

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ヘルベルト・ブロムシュテット

 N響を指揮した歴代の指揮者の中でも、ブロムシュテットは、過去に傑出した数々の演奏を披露した経歴から、名指揮者の誉れが高い音楽家であり、今回はコロナ禍で二年振りの来日となったため、演奏会には多くの音楽ファンが駆けつけました。プログラムの概要は、次の通りです。

【日時】2021.10.16.(土)18:00~

【会場】東京藝術劇場(池袋)

【管弦楽】NHK交響楽団

【指揮】ヘルベルト・ブロムシュテット

【独奏】レオニダス・カヴァコス(Vn)

【曲目】

①ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77


②ニルセン/交響曲第5番 作品50

 

N響のプロモートメッセッジです。


今週末から始まる10月定期公演では桂冠名誉指揮者、ヘルベルト・ブロムシュテットがおよそ2年振りに登場。池袋Aプログラムではマエストロが愛してやまない北欧作品から、ニルセンの《交響曲第5番》を取り上げます。またプログラム前半のブラームス《ヴァイオリン協奏曲》の独奏は、現代最高峰と呼び声の高いレオニダス・カヴァコスです。厚い信頼関係で結ばれたブロムシュテットとの共演に期待が高まります。

 

指揮者略歴】

スウェーデン人の両親の元、マサチューセッツ州スプリングフィールドに生まれる。父親はスウェーデン生まれの牧師で、母親はアメリカ生まれのピアノ教師であり、ブロムシュテットも幼い頃からピアノに親しんでいた。2歳の時に一家は帰国するが、5歳の時にはフィンランドに移りそこで5年ほど過ごした後、再びスウェーデンに戻る。6歳頃からピアノ、後にヴァイオリンのレッスンを本格的に受け、ストックホルム音楽大学やウプサラ大学で各楽器の他、音楽学や指揮法などを学んだ。1949年と1956年にはダルムシュタットで現代音楽を、またバーゼル・スコラ・カントルムでは古楽を研究している。ザルツブルクでイーゴリ・マルケヴィッチに師事、さらにジュリアード音楽学校でジャン・モレルに、バークシャー音楽センターではレナード・バーンスタインに師事した。1953年にクーセヴィツキー賞を獲得し、1955年にはザルツブルク指揮者コンクールで優勝する。

1954年2月にロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団でベートーヴェン、ヒンデミットなどの作品を指揮して指揮者として本格的にデビューする。その後、ノールショピング交響楽団、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団、デンマーク放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団の首席指揮者を歴任する一方で、1975年から1985年までシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者の任にあった。その後、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督(1985年 - 1995年)、北ドイツ放送交響楽団の首席指揮者(1995年 - 1998年)を経て、1998年から2005年までライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席指揮者(カペルマイスター)を務めた。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と2010年頃から毎シーズン共演している他、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とは2011年1月26日にニコラウス・アーノンクールの代役として初共演しウィーンのモーツァルト週間に登場。後に定期演奏会のほか演奏ツアーやザルツブルク音楽祭にも登場するなど常連となっている。2019年7月にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団名誉会員の称号を贈られた。

2018年の時点で、サンフランシスコ交響楽団の桂冠指揮者、ゲヴァントハウス管弦楽団、バンベルク交響楽団、デンマーク放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団、シュターツカペレ・ドレスデンの名誉指揮者である。90代の高齢に至ってなお、世界中で活発な演奏活動を行っており、名誉ポストを務める各楽団の他にもベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、北ドイツ放送交響楽団、バイエルン放送交響楽団、パリ管弦楽団、ボストン交響楽団、クリーヴランド管弦楽団や北欧などのオーケストラに定期的に客演している。

2011年6月には、ライプツィヒ市からバッハメダル賞を、2014年にはスウェーデン王立科学アカデミーからショック賞音楽芸術部門を授与されている。

1973年、シュターツカペレ・ドレスデンの来日公演の指揮者として初来日。以降、国外のオーケストラを率いての来日のほか、1981年のNHK交響楽団への初客演以降、同楽団へ積極的に客演しており、日本においてもよく知られている指揮者となっている。なお、NHK交響楽団からは1985年に名誉指揮者、2016年に桂冠名誉指揮者の称号を贈られている。

2009年11月、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団との客演指揮者としての来日公演において、東京・大阪をはじめ全国数ヶ所で、ブルックナーの交響曲第8番やドヴォルザークの交響曲第8番や第9番「新世界より」などを指揮した。特にサントリーホールで演奏されたブルックナーの「8番」は、大きな話題を呼んだ。

2016年67回NHK放送文化賞を受賞。

2017年11月にはゲヴァントハウス管弦楽団の創立275年記念の海外ツアーの一環で日本を訪れ、楽団初演の作品を演奏した。

2018年10月に自伝が翻訳出版された。

 

【独奏者略歴】

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レオニダス・カヴァコス

アテネの音楽一家に生まれた。5歳の時にヴァイオリンを始め、ギリシャ国立音楽院に進み、ステリオス・カファンタリス(Stelios Kafantaris)に師事した。その後、オナシス財団の奨学金で、インディアナ大学のマスタークラスに参加し、ジョーゼフ・ギンゴールドに師事した。1984年、アテネ音楽祭でコンサート・デビューを果たし、1985年、シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで最年少の第1位、1986年にはインディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで銀メダル(第2位)を獲得した(第1位は竹澤恭子)。また、21歳の1988年、ニューヨークで行われたナウムブルク・コンクール、ジェノヴァのパガニーニ国際コンクールで第1位を獲得した(パガニーニ国際コンクールの第2位は諏訪内晶子)。

 

【演奏の模様】

 会場に入ってまず驚いたことは、あの東京藝術劇場の大ホールが観客で埋め尽くされ、空席は全くないと言って良いほどの観客の入りだったことです。数時間前の午後にはミューザ川崎で、石田泰尚さん達のカルテット演奏を、やはり大会場一杯の観客の一人として聴いてきたばかりだったのですが、それ以上の2000人近くの観客が入っているのです。おそらく大相撲だったら満員御礼が出るのではと思われる程。それだけブロムシュテットの数年ぶりの来日公演は期待が大きかった訳です。ブロム翁は何と94歳だという事です。そんな高齢でコロナ禍の世の中を日本にまで来て演奏したい、特に今回はニルセンの第5番を振りたいとのたっての希望だったといいますから、これはすごいことの何物でもありません。

 さて定刻になって、団員が入場してくるのが普通ですが、今回は違っていた。ブロムシュテット自ら先頭を切って入ってきたのです。ゆっくりとしかし、しっかりとした足取りで、独奏者のヴァイオリニスト、カヴァコスを伴って。その後にN響団員の入場となりました。もう観客は演奏前から大拍手の興奮状態。オケのチューニングの後ブロム翁は指揮台にやおら登ると一呼吸おいて振り始めました。ソリストも準備万端の様子。

①ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

 流石三大コンチェルトに挙げられだけあって、何度聴いても、誰が(と言ってもそれなりのレベル以上の人がですが)演奏しても、いつも、素晴らしい曲だと思います。カッコいい!と掛け声したくなる様な気分の曲。 

 冒頭、弦と続く管による前奏演奏が静かに流れ、弦の強奏による主題の表現があるとすぐに、カヴァコスのヴァイオリンが鳴り始めました。同じメロディが、ダイナミックな動きで小さい魔法箱から飛び出しています。ゾクッとする瞬間。ブロム翁は少し背中を丸め、躯体を逆S字にややねじれた姿勢で、腕を伸ばし手を軽く振って指揮しています。N響のアンサンブルは最初から迫力があり、オーケストレーションも見事。カヴァコスはソロ的箇所の演奏では、かすかなオケの背景音にも反応していると思われる程過敏な調べを、特に高音部では綺麗な繊細な音を出していました。中音から高音に移る際にほんの僅か不安定になったところあり。低音部での重音は力がみなぎっていました。Ftの音がやや弱かったかな?

 テーマの繰り返し部では、力がこもった運弓で、太くていい音が出ていました。 オケはブロム翁の手さばきの下、一糸たりとも乱れぬアンサンブルを響かせ、カデンツアに入るとブロム翁は、指揮の手を休めソリストの方をじっと見つめて、長いカデンツアの織り成す音の構築を聴いているのでした。あれはひょっとしたら目とか表情でカヴァコスに合図を送っていたのかな?細かいことは座席からは見えませんでしたが。カデンツァ演奏は随分ゆっくりした遅いテンポの様な気がしました。

第二楽章に入ると管⇒Obに橋渡された主題を首席オーボエ奏者が、それは見事な演奏を見せたのです。どこの管弦楽団もオーボエは上手な奏者をそろえている様ですが、特にこの日のオーボエ奏者は名手だと思いました。同じ旋律をゆっくりとVnが引き継いでなぞっていきます。何か牧歌的な響きに感じる。変奏部もVnは朗々とゆったりとしたテンポで、くねくねと音を重さね、奇麗な調べを紡ぎ出しています。ここでのVnは伸びは有りますが、繊細過ぎると思われるほどの、特に高音部で細い音を立てていました。非常にゆっくりしたと言うより遅いテンポの演奏でした。

 第三楽章では、初めから速いテンポでブラームス独特のリズムとメロディを伴った演奏ですが、もう少し迫力が欲しいと思ったのです。ブラームスのコンチェルトは昨年の10月に竹沢恭子さんの演奏を聴いて素晴らしいと思いました。勿論今回の演奏も一流の演奏で、大変良かったと思います。その竹沢さんの演奏の記録がありますので、抜粋を文末に参考掲載しておきました。 

 なお、ソロ演奏者のアンコール曲演奏が有りました。

 バッハ『無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006から 第2楽章「ルーレ」

  静かなメロディが会場に響き始め、カヴァコスは弓を軽く弦に乗せて音を紡ぎ出しています。ブロム翁は指揮台に立ってジッと奏者を見つめている。調べはやがて重音の伴奏に伴って変化する流れとなりそのペースを保ったまま静かに演奏を終えました。この間3分弱。会場からは大きな拍手が沸き起こりました。


②ニールセン『交響曲第5番 作品50』

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N響を指揮するブロムシュテット

 この曲は初めて聴きました。ニールセンという作曲家の名前くらいは知っていましたが、これまで一度もその作品を聴く機会はなかった。作曲家とその作品に関するNET情報を調べたら概要は以下の通りでした。

カール・ニールセン(またはニ ル セ ン、ニルスン 、 Carl August Nielsen (1865年6月9日~1931年10月3日)は、デンマークの作曲家。デンマークでは最も有名な作曲家であり、同国を代表するに留まらず北欧の重要作曲家として知られている。                                                                                       ニールセンは幅広い分野の曲を作曲しており、力強いリズム、旋律の豊かさと和声の活力、惜しみない管弦楽法には彼の個性が強く反映している。歌曲や聖歌、オペラやカンタータ、各種楽器の協奏曲、管弦楽曲、四重奏曲や五重奏曲をはじめとした室内楽、そして交響曲と多岐に渡って作曲した。                           交響曲は6つ作曲しており、それらには多くの共通点がある。全て演奏時間が30分強、オーケストレーションの要は金管楽器が握り 、どの作品も珍しい調性変化をみせ、それが劇的な緊張感を高めている。その中でも頻繁に演奏機会のある交響曲第5番(作品50 1921年-1922年)は二楽章構成で、秩序と混乱の間のもう一つの戦いが提示された。小太鼓奏者は拍子を無視してアドリブにより音楽を破壊するかの如く管弦楽に割り込む役割を課される。

②-1 タラタラタラタラと弱い音で、VnのトレモロにFgの低い音が続き、時折音がクレセンドするもののすぐに戻り、あたかもすがすがしい夜明けの様な雰囲気を醸し出します。すると小太鼓とシンバルが鳴り出し小太鼓のリズムが何か行進を思わせるリズムで続きます。ブロム翁は小刻みだけれど、力のこもった振りで指揮しており、次第に手振りが大きくなっていきました。チェレスターの音が個性を出し、シンバルは効果的に合いの手を入れ、Fgが靄に包まれた北欧の森を連想させるような音を立て、タンバリンは小太鼓と相まって、Hrが混じる低音弦のアンサンブルがいつしか響く様になりました。雄大な山々の自然を見るが如き滔々とした流れです。映画音楽にでも使えそうな箇所です。次第にHrやFtが弦楽アンサンブルに攪乱要因の様に入り込み、断続的に小太鼓が警鐘を発するが如く鳴っています。一旦弦楽は静まり、Fgがかすかに音を立てた後、管弦がかなりの音量で速いテンポのアンサンブルを鳴り響かせ始めました。弦楽には不協的な響きはなく良く調和のとれた和声で進み、管アンサンブルは時折不協の響きを入れるが、多くは調和のとれたもので管に寄り添っています。列車がスピードを上げて走る様子を連想させる様な速い行進リズム、。再度弦アンサンブルは静かなメロディーを演奏、アンサンブルは次第に大きな音を立て管弦のフル演奏で大轟音アンサンブルに発展、最後Krと小太鼓が静かに引き取って一楽章終了です。大体30分の曲の半分15分位、ブロム翁はその間立ち尽くして、①のブラームスの時よりも、手振り、指使い、演奏番の奏者への向き合いを活発化して指揮していました。とても卒寿を超えているとは見えない若々しさです。

  尚、この演奏の中頃~後半にかけてふっと気が付いたことは、それまで、行進曲的リズムを打ち鳴らして、存在感を示していた小太鼓奏者が消えていたことです。暫くすると、会場の外から小太鼓の音が、遠くに響き、やはりバンダ演奏があったのだ、と思いました。この意味合いが何かは、定かではないですが、小太鼓の音の役割が終わったことを示しているのだと思います。

 

 ②-2 Timp.とHr.の契機から弦楽が大きな音を立ててスタート。Obが鳴る中、ブなロム翁を見ると、一層気合いが入っている様子で指揮しています。

低音弦と高音弦が綺麗な調べで掛け合い、テーマは、Vcへと引き継がれて、再度全弦⇒管⇒Hr.+Fg.+ Ft.と遁走して、繰り返され、最後、全弦の高音アンサンブルが、大きく響くと、これに全管が力一杯の吹奏で加わり、Timpがダッダッダッと打ち下ろされと、あの広い大ホールは、獅子奮迅のブロム翁の飼い虎が吠えに吠えまわり、聴衆を追い回すのでした。演奏が終わり静まり返ると、一瞬人々は息を止め、続いて怒濤の拍手の嵐が鳴り響きました。皆感激しているのか、立ち上がって、激しく手を叩いています。ブロム翁も楽団員も、全力を尽くした満足の表情をして挨拶している。ブロム翁は、活躍の多かった打、管、弦の順に挨拶させ、それぞれにも

大きな拍手が届けられていました。楽団員が退場した後も翁は最後まで残り、袖に消えた後も何回か再び現れ、聴衆のアプローズを受けていました。

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 これは、滅多に聴けない演奏会でした。貴重な日本の歴史に残る名演奏だったと思います。ブラームスは勿論、ニールセンの5番は、ブロムシュテットさんがたっての希望だったという位あって、自信に満ちた素晴らしい演奏でした。

 

/(参考抜粋掲載)/////////////////////////////////////////////////////////////////////////

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 ◎サントリーホールシリーズ、ジェイド『新日フィル625回定期演奏会』

【日時】2020.10.8.(木)19:00~

 【管弦楽団】熊倉優 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団

器楽構成は基本2管編成、弦楽五部は基本10型の変形

 【独奏者】ヴァイオリン、竹澤恭子

 

【演奏曲目】
①ブラームス『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 』
②チャイコフスキー:『交響曲第4番 へ短調 op.36 』
③Vnアンコール:バッハ『無伴奏ヴァイオリンパルティータ2番サラバンド』

【演奏の模様】

①この曲は、ベートーヴェン、メンデルスゾーンのコンチェルトと合わせて、世界三大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれることも有り、これにチャイコフスキーのコンチェルトを加えて四大ヴァイオリン協奏曲と言う人もいます。

 曲構成は、1-1Allegro non troppo  1-2Adagio  1-3Allegro giocoso,ma non troppo vivace - Poco più presto の三つの楽章から成り。40分程に及ぶ大曲です。

 (1-1)

  スタートのオケの第一声がとてもいいアンサンブルで、少し長めのオケの前奏が続きました。熊倉さんは小振りの腕振り、タクトの振りで管弦を率いている。ブラムスらしいメロディのテーマが流れると、ヴァイオリンも同じメロディで強く荒々しくスタート、竹澤さんは険しい表情で弾き始めました。繰り返されるテーマを独奏者は体をかがめ或いはくねらせ、弱い音の重音演奏から弦の根元での強奏で感情をぶつけるが如く、緩急強弱自由自在に音を操り出します。時には苦しそうな表情をし、その表情を見ながら聴いているとまさに入魂の演奏。しかも(音が)表情豊かで綺麗な調べを紡ぎ出しています。中間でオケが独奏者を休めるが如く少し長く演奏する様にブラームスは曲を書いている。最後の短いカデンツアも重音から非常に速いパッセジまで難なく仕上げるところはさすがと思いました。この曲の大半がこの第一楽章に費やされました。

 (1-2)

 冒頭、ファゴットの音でスタート引き続きオーボエが冴え冴えとテーマを奏で結構長く独奏、続いてヴァイオリンが同じテーマを弾き始めます。ゆったりとした美しいメロディがホールを包み、竹澤さんはほとんど目をつぶってあたかも魂から音を振り絞っている様子です。兎に角音が綺麗、特に高音が。

 指揮者は時々足を前に踏み込み、気持ち良さそうな様子でオケを抑制しながらタクトを振り静かに伴奏を率いている。最後はオーボエ、クラリネット他の音も添えて、そのままゆったりとしたテンポのまま静かに弾き終わりました。

 (1-3)

  冒頭からヴァイオリンによるジャジャジャジャーンと力強い演奏、オケもそれに合わせて弾き始め、管弦アンサンブルがかなり大きな音を立てテーマを繰返しています。速いパッセージが多く、竹澤さんは時々指揮者の方を見ながら、短いカデンツア的表現から重音演奏の後は、非常に速い演奏で弾き切りました。

 聴き終わって、やはり期待していた通り、いやそれ以上の素晴らしい演奏でした。

 達人の作曲家による達人のための音楽を達人が見事に演奏したと言えるでしょう。これまで若い演奏者を多く聴いて来て、皆すごいテクニックを有し、見事な演奏をするので感心しましたが、でもそうしたものとは一味も二味も違いました。今回の曲の表現は、一朝一夕では到達できるものではないでしょう。優れた才能の上に長年の努力の結果だと思います。

 大満足でした。今度ベートーヴェンのソナタを弾くらしいのでまた聴きに行きたいと思います。

 尚、鳴りやまぬ拍手に再度登壇した奏者は、ヴァイオリンの音を慎重に調整した後、アンコールとして③バッハのサラバンドを弾きました。これまでいろいろ聴いたパルティータとは一味違った演奏でした。これも良かった。