HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『都響スペシャル<チック・コリアに捧ぐ>』を聴く


f:id:hukkats:20220717125705j:image

 

【日時】2022.7.17.(日) 14:00~

【会場】サントリホール大ホール

【出演】東京都交響楽団

 ジョセフ・アレッシ(トロンボーン・ソロ)  

 

 〈Profile〉

Joseph Norman Alessi was born in Detroit, Michigan and attended high school in San Rafael, California. 

 His father, also named Joseph Alessi,was a professional trumpet player, and his mother, Maria (née Leone) sang in the Metropolitan Opera chorus. His

younger brother Ralph Alessi is a jazz

trumpeter. Displaying notable talent himself from an early age, Alessi graduated early from high school at age 16 and successfully auditioned to join the San Francisco Ballet Orchestra. During this time he appeared as a soloist with the San Francisco Symphony. In 1976-77, following a previously unsuccessful audition, Alessi gained entry to the Curtis Institute of Music (in Philadelphia), where he studied until 1980

 

【指揮】アラン・ギルバート

【曲目】

①ガーシュウィン:キューバ序曲

 1932年ガーシュイン35歳の作品、キューバ旅行中の経験から、ルンバのリズムや打楽器を取り入れた作品を帰国直後に書き、『ルンバ』と名付けその後『キューバ序曲』に曲名変更しました。緩ー急ー緩の三部形式。楽器構成は、三管編成弦楽五部16型、打楽器(小太鼓、大太鼓、ティンパニー、シロフォン、シンバル、ウッドブロック、グロッケンシュピール、キューバンスティック、ギロ、マラカス、ボンゴ)

 

②チック・コリア『トロンボーン協奏曲(2020)』[日本初演]

 

 

出生名 アルマンド・アンソニー・コリア
生誕 1941年6月12日
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国マサチューセッツ州チェルシー
死没 2021年2月9日(79歳没)
ジャンル
職業
担当楽器
活動期間 1966年 - 2021年

 この協奏曲は、トロンボーン奏者のジョセフ・アレッシの依頼を、ピアニストの小曽根真を仲介としてチック・コリアに頼んで実現した作品です。チック・コリアはジャズ部門では当初から有名なピアニストですが、その後活動範囲を広めクラシック界にも進出してさらに名を高めました。しかし、昨年55歳という若さで亡くなりました。そして今回その曲が初めてアレッシにより初演されました。ご冥福を祈ります。(くしくも東京では7月のお盆が済んで二日と経たないタイミングです)

 

③ラヴェル:スペイン狂詩曲

 

④ラヴェル:ボレロ

 

 

【演奏の模様】

 今日は三連休の中日、サントリーホールまでの電車は、以外と空いていました。最も出来るだけ大勢の人々が乗り換えるターミナル駅は、避けるようにしているので。横浜、渋谷、品川などなど。このまま7波感染が拡大すると、いくら軽症者が多いと言っても、重症者や要入院患者は、感染の一定割合で出る筈ですから、病院の逼迫が懸念されます。そうなると以前の何波の時だったか?と同じ様に、コロナ以外の急患が入院出来なくなったり、手術が延期されたり、結果、結局弱者にしわ寄せが行きます。最近聴きに(又は見に)行った音楽会は、6波がかなり収まって来た時にチケットを手配していたもので、つい最近、もうコロナは心配しないで聴きに行けるなどと楽観視していたのでした。そしたらとんでもない、7月に入ってから、BA5等という変異株が現れ、あれよあれよという間に感染が急拡大してしまったのです。BA5には、ワクチンはそれ程効果が高くないという人もいますが、矢張り接種はやった方がいいでしょう。

 さて演奏の最初は、ガーシュインです。

Vn主動でスタート、管も引き続き参戦、かなり姦しい位のアンサンブルに展開しました。低音弦はpizzicato。バックでは、ギロ(左図)や マラカス(右図)といった現地独特の打楽器が軽快にカリビアンリズムを出しています。

      

 何回も繰り返されるカリビアンの押し寄せる波高い音は開放的で磊落な雰囲気。

管弦が急に静まりました。変化の兆しです。

 Cl.が穏やかにソロ旋律を吹くと、継いでOb.⇒Fl.⇒Vn.(Cb.pizzi.)⇒Hn.と次々にカノン的に楽器を繋いで、ソロ又は弦斉奏の調べを響かせるところが面白かった。そうしているうちに再度冒頭の五月蠅いブンブンと飛びまくる、姦しい程のアンサンブルが鳴ってきましたが、リズムは常に南国風を失っていません。最初の如きけたたましいアンサンブルが響きわたり南国の打楽器と共に曲を一貫して貫いているカリビアン趣味の一条の音符糸、矢張りそこから瞼に浮かんで来るのは、リズムに合わせて踊る人々、サンバやら民族独自の動きやら、若し日本を仮想すれば、広い原っぱに集まった何百人という浴衣姿の踊る人々、そう盆踊りでしょう?それが見えませんか?

 

②トロンボーン協奏曲、

 ジョセフ・アレッシは、さすがと思える程の高テクニックを、聴衆に聞かせて呉れました。一番最初こそ、完全な安定から僅かに離れた音もありましたが、吹けば吹く程快調になるといった感じで、完璧な出音で旋律を、物凄く速い音符でさえ軽々と、吹いて出していました。驚く程の工みの技ですね。聴衆も大喜び、この曲の演奏が終わると、演奏前も凄い拍手だったのですが、もう拍手の嵐、鳴りやまぬ状態でした。何回もコールされ袖に行きつ戻りつ何回か繰り返し、アラン・ギルバートと何か言葉をやり取りした後、指揮者は団員に合図を送り、アンコール演奏が始まりました。同じチック・コリアの協奏曲、四楽章でした。特にトークは有りませんでしたが、チックコリアに捧げる気持ち、追悼する気持ちがよく伝わって来て、満場の喝采を受けていました。

 

《20分の休憩》

 

後半プログラムは、二曲ともラヴェルでした。

 最初の③スペイン狂詩曲は、自分としてはやや喧騒に取り囲まれた、落ち着かない不安さえ感じるような後味が残り、又聴いてみたいという印象は受けませんでした。でもそれは今日が初めて聴いたせいなのかも知れません。何回か聞いているうちに印象が変わる時がよくありますから。曲に原因があるのではなく、聴く本人の気持ちの持ち様なのかも知れない。この時かなり睡魔が襲っていたのですが、心地良い曲だと寝てしまったかも知れない。

 次の④ボレロは、もう何回も何回も、この曲の展開の様に繰り返し聴いた事のある曲なので、アラン・ギルバートのオケを盛り上げていくテンポとクレッセンドの様子が、見事に体に伝わって来て、瞼を閉じて聴いていると、ジョルジュ・ドンの踊るボレロの力強いバレエが浮かんで来るような気がしました。

小太鼓⇒Cl.⇒Fg.⇒Cl.のff音⇒Ob.⇒Timp.⇒(弱音器)Trp.⇒Hr.+celesta⇒・・・・

と次々に楽器を渡り歩いてそのたびに振り子は次第に大きな振りとなり、あたかも糸でぶら下げた球をバットで打ち、戻った処をまた打ち、それを繰返すと次第にボールは加速度を付けて上方に振り上がり、遂には糸を振り切って空中高く飛び去ってしまう様な感覚でしょうか(余りいい例えではないかな?)。この単純な旋律の繰返しで聴く者を感動させられる曲を作ったラヴェルはやはり天才ですね。

 尚、この曲が演奏される前にオケの皆さんが入場してきたのですが、その中にアレッシが混じっていて、何とトロンボーン演奏者席に座ったでは有りませんか。聴衆は大喜び、ここでも大きな拍手が湧いていました。

 それにしても、アラン・ギルバートはエネルギッシュで且つ器用なマエストロですね。あの体躯から繰り出すタクトの振りは、ある時は祈りを捧げる聖職者の如く、ある時は軍馬に鞭打つ猛将の如く、自在に富んだそれでいて息一つ乱れず、日本人には無い何かを持っている指揮者です。