HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

藤沢オペラ/ヴェルディ『ナブッコ』鑑賞

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表記のオペラの第2日目を観ました。このオペラは三年に一回開催されるプロのソリストと市民音楽団体の共演で藤沢市が全面的にバックアップしているそうです。

【会期】2/26,2/27,3/5,3/6

【鑑賞日時】2022.2.27.(日)14:00~

【会場】藤沢市民会館大ホール

【出演】

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上段(2/26,3/5)
下段(2/27,3/6)

【演出】岩田達宗

【管弦楽】藤沢市民交響楽団

【指揮】園田隆一郎(藤沢市民オペラ芸術監督)

【合唱】藤沢市合唱連盟

【合唱指揮】浅野深雪

【舞台監督】菅原多敢弘

【衣装】半田悦子

【照明】大島祐夫

【美術】二村周作

【音響】山中洋一

 

【粗筋】

時と場所:紀元前587年エルサレムおよびバビロン  

序曲

演奏時間7分少々。はじめヴェルディは本格的な序曲を書くべきかどうか迷っていたが、義兄(亡妻の兄)ジョヴァンニ・バレッツィの勧めもあってこの序曲をまとめたと伝えられる。内容的にはオペラ曲中で用いられる各テーマを要約したもの。

第1幕

第1幕舞台情景

バビロニア国王ナブッコと、勇猛なその王女アビガイッレに率いられたバビロニアの軍勢がエルサレムを総攻撃しようとしている。ヘブライ人たちは周章狼狽の態だが、大祭司ザッカリーアは「当方はナブッコの娘フェネーナを人質としているので安心」と人々を静める。

そのフェネーナとエルサレム王の甥、イズマエーレは相思相愛の仲であるが、アビガイッレもまたイズマエーレに想いを寄せている。アビガイッレは神殿を制圧し、イズマエーレに「自分の愛を受け入れれば民衆を助けよう」と取引を提案するが、イズマエーレはそれを拒絶する。

やがてナブッコも神殿に現れる。ザッカリーアは人質フェネーナに剣を突きつけて軍勢の退去を促すが、イズマエーレがフェネーナを救おうとしたためその試みは失敗する。ヘブライの民衆はイズマエーレの裏切りを非難、勝利を収めたナブッコは町と神殿の完全な破壊を命ずる。

第2幕

第1場

アビガイッレは自分の出自の秘密を記した文書を発見、ナブッコ王は王女フェネーナに王位を譲るつもりであることを知り激しく嫉妬する。バビロニアの神官たちは「フェネーナはヘブライ人の囚人たちを解放しようとしている。自分たちはナブッコ王が死亡したとの虚報を流布するので、この隙に王位を奪ってほしい」とアビガイッレを焚きつける。

第2場

ザッカリーアは破壊された神殿と祖国、そして人々の心の中の信仰心の復活を祈る。ヘブライ人たちはイズマエーレの裏切りを問責するが、ザッカリーアは人々に「今やフェネーナもユダヤ教に改宗した」と告げ、若い二人をかばう。

アビガイッレとバビロニアの神官たちが現れ、フェネーナから王冠を奪おうとする。そこに死んだはずのナブッコ王が登場、「自分はただの王ではない。今や神だ」と誇る。その驕慢は神の怒りに触れ、ナブッコの頭上に落雷、彼は精神錯乱状態となり、力を失う。こうして王冠はアビガイッレが手に入れる。

第3幕

第1場

アビガイッレは今や玉座に座っている。彼女は異教徒たちを死刑とする命令を作成、力を失ったナブッコに玉璽を押すように強いる。押印したナブッコは、改宗した実の娘フェネーナも死刑となることを知りアビガイッレに取り消しを懇願するが、彼女は聞かない。

第2場

ユーフラテス河畔で、ヘブライ人たちが祖国への想いを歌う。ここで歌われるのが有名な合唱曲「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」Va, pensiero, sull'ali dorateである。ザッカリーアは祖国の最終的な勝利とバビロニアの滅亡を予言、人々を勇気付けようとする。

第4幕

第1場

監禁されているナブッコはエホバの神に許しを請う。遂に忠臣たちが彼を解放する。ナブッコはフェネーナを救い、王位を回復することを誓う。

第2場

ヘブライ人たちがまさに処刑されようとする刹那、ナブッコが登場、彼はバビロニアの神々を祀った祭壇の偶像の破壊を命ずる。偶像はひとりでに崩壊する。ナブッコはこれを奇蹟であるとし、エホバの神を讃え、ヘブライ人たちの釈放と祖国への帰還を宣言する。群衆はエホバ神賛美を唱和する。形勢不利であると悟ったアビガイッレは服毒し、ナブッコとフェネーナに許しを乞いつつ絶命、ザッカリーアはナブッコを「王の中の王」と讃えて、幕。

【上演小史】

<イタリア各地での再演>

初演の行われた1842年3月9日は、スカラ座同年のシーズン終了直前であったが、同オペラはそこからシーズン終了までに7回の再演がなされた。また1842年夏-冬には臨時のシーズンがもたれ、『ナブコドノゾール』はそこで記録破りの57回の再演がなされている。ミラノ外では1843年春のヴェネチア・フェニーチェ劇場を皮切に各地での上演がもたれている。

<イタリア半島外>

『ナブコドノゾール』はイタリア半島外でも早くから上演がなされたオペラのひとつである。1843年4月、ウィーンでの上演がイタリア半島外での初演であり、同年秋、リスボン1844年にはバルセロナ、ベルリン、シュトゥットガルト、1845年にはパリ、ハンブルグ、1846年にはコペンハーゲン、1848年にはニューヨークでの上演がなされた。

1844年、コルフでの上演が題名を『ナブッコ』に短縮して行われた最初のものであり、以後イタリア半島の内外でこの短縮題名が慣例化して今日に至っている。

1846年3月3日、ロンドン、ハー・マジェスティーズ劇場での英国初演では、旧約聖書の内容を舞台化することへの反対論に配慮して、題名を『ニーノ』Ninoとするなどの変更が加えられている。

<日本>

日本での初演は「声専オペラ研究会」により1971年6月25日の演奏会形式による公演( 訳詞上演?)で、指揮は星出豊、管弦楽は  新星日本交響楽団。

 

【上演の模様】

この会場は初めてです。駅から少し離れていますが、途中からピデストリアン・デッキに上がると会館まで直行出来ました。これも利用者の便利を考えた設備でしょう。

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立体橋を通ると会場直結

 古い建物と聞いていましたが、行ってみると結構新しく見えます。市のメンテナンスが良いのでしょう。

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ホールに入ると既に結構な観客が集まっていました。

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 係の人に訊いたところ、三年に一度の公演という事で市民の期待も大きいのでしょう。座席数1400弱ですが、今回はコロナ感染対策として飛び飛びの市松模様の座席ですから満席でも約700位でしょうか。市の肝入りなので、クラスター発生は絶対避けたいところでしょうし、主催者、出演の関係者にも財政的支援がきっとあるのでしょう。 一階の左端の座席を取りましたが見切れることは無く、しかも休憩後に右隣のご夫婦が戻らなかったので、左右はかなりゆったりと空いた状態で観劇出来ました。

以下、各幕の見処、聴き処を中心に記します(参考:配布プログラムノート)。

<第一幕>

 冒頭の低いブラスの音が心地よく響きます。続く全オーケストラのアンサンブルはやや迫力に欠けたかな?ピットに音が籠ります。 指揮者の園田さんのtwitterなどを読むと何回も練習を重ねて丹念に仕上げたことが見て取れ、冒頭は一番弾いた回数が多い筈なのですが。

管(Cl.Ob.Fl.)と交差する弦の響きたるやよし。Trp.による主題の繰り返しの音もいいですね。

 続く軽快で特徴あるタッタタタタタッタタタタという付点リズムの弦楽アンサンはその後も出てきます。それが全オケの盛り上がりに繋がり、再度付点リズムの調べが繰り返される。この作品は、ヴェルディの出世作品だそうですが、後のヴェルディのオペラではあまり見られない古典的響きの旋律が実に綺麗で何人も満足する序曲でしょう。

 今回のオケは藤沢市民交響楽団というアマテュア管弦ですが、50年以上のキャリアを持つ湘南地方ではN01の経験と実績を誇る市民オーケストラだそうです。

 出だしを聴いた限りでは、団員の皆さん小慣れた感じで、細部を除きまずまずのスタートだと思いました。

 続いて合唱団が男声⇒女声でアッシリアの攻撃に恐れおののき静かに歌います。

【僧たち】

祭祀の飾りよ 落ちて砕け散れユダの民よ 喪服をまとえ!
怒れる神の怒りの代弁者としてアッシリアの王はわれらの上に襲いかかる!
野蛮な軍勢の恐ろしき咆哮が聖なる神殿の中でとどろいている!白いベールを、乙女らよ、引き裂くがよい。懇願の腕を上げて叫ぶのだ。けがれなきくちびるからの命の祈りは主のもとに上ってゆく心地よい香りだ。祈るのだ 乙女らよ!...お前たちによって
敵の激しい怒りも鎮められるやも知れぬ!

 

【乙女たち】
偉大な神よ、風の翼に乗ってお飛びになり、震える雲から雷を放たれるお方よ
追い散らし破壊したまえ、アッシリアの軍隊を。ダビデの娘たちに喜びが戻ってくるように!私たちは罪を犯しました...けれど、天に私たちの祈りが届き、お慈悲を受けて、過ちに赦しが得られますように!

 冒頭の感じでは合唱がやや弱いかな?全体としての力強いハーモニーが不足気味。最も敵に攻撃され滅亡寸前の呆然とした心境なので抑え気味に歌っているのかも知れません。

聴きながら ❝ウクライナは、キエフはどうなのだろう?❞と重なって考えてしまう。

続いて大司教ザッカーリアが登場、敵の人質フェネーナを手元に確保している限り大丈夫。攻撃をかわせると歌うのです。ザッカリーア役のジョン・ハオさん(中国系?)は目立った程の太いバスではないですが、厳粛な低音で歌い、うろたえるエルサレム・ソロモン神殿の人々を落ち着かせるのです。ジョン・ハオさんは最初から最後まで安定した歌唱を披露していました。敢闘賞といったところかな?

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ザカリーア

 神殿に乱入したバビロンの王ナブッコは、ヘブライ人は皆殺しだ!と叫びますが、愛娘のフェネーナに短刀を突き付けて、牽制するザッカーリアを前にたじろぐのです。ナブッコ役は須藤さん、これまで何回かかけの歌うオペラは見ていますが、最近疲れ気味なのでしょうか?実力を発揮して素晴らしいバリトンを響かせる時もあれば、時々安定した声が続かない時がありました。その傾向は最後まで続き、第4幕では声がかすれる場面も度々ありました。それにしてもナッブッコのメイクアップは、如何にも残忍な王と言った風貌に仕上げられており、どこかの残忍王も斯くもや?という程の形相をして敵陣をにらみつけるのでした。

 ところがその人質フェネーナといつの間に相愛の関係になっていたエルサレム王の甥、イズマエーレが、人質可愛さの余り殺させたくなかったのでしょう、ザッカリーアの短刀を振り払ってしまうのです、これを契機にナブッコ軍は雪崩を打って神殿を占領してしまうのでした。イズマーレ役の清水さんは声が伸びず、やや籠り気味に聞こえました。

<第二幕>

 このエルサレム攻略に加わっていたナブッコの長女アビガイッレ(実は血の繋がりは無く、単に王に娘として育てられていたのです)が、自分の身の上を知ってしまい、悲しいというより嘆き憤って歌うのでした。アビガイッレ役の中村さんは初めて聴きましたが、余り好みの声質では有りません。ヴィブラートを効かせたかん高い声を張り上げるのですが、ややキンキンして耳に心地よく響きませんでした。

 ナブッコの留守中良からぬクーデーターモドキの計画を立てるアビガイッレ、それが急遽帰国したナブッコに知られてしまうのですが、ナブッコの慢心、過信がから ❝自分こそ王の中の王だ!”神なのだ!❞と叫んだ瞬間、天罰なのか落雷がナブッコを打倒し、それを契機に王冠の争奪が始まったのです。

 この幕では合唱団は次第に慣れて来たのか良くハモって歌っていました。特に女声が良くなった。

 

<第三幕>

ナブッコは辛うじて命を取り留たのですが気もおかしくなり廃人に近くなってしまう。玉座に座ったアビガイッレは、捕虜としたヘブライ人全員を処刑しようとするのですが、そのヘブライ人の中には王の愛娘フェネーナも入ってしまう、何故なら彼女は捕虜の時代からヘブライに好きな男も見出し、ヘブライの教えにも次第に共感するようになって遂にはユダヤ教に改宗してしまっていたからです

(第二幕)

 それを知ったナブッコが娘として育てたアビガイッレにすがりながら愛娘の命乞をして歌うのです。

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アビガイッレにすがる老いたナブッコ

 須藤さんの歌は廃人として歌う訳ですから、勢いは必要無く、どうか命だけは助けてくれと切々と歌いました。歌もさることながらその演技が迫真の素晴らしいもので、須藤さんは優れた歌手であるばかりでなく、優れた役者でもあるのですね。涙なしでは見られないかも。

尚この幕で歌われる有名な合唱の

※「行け、我が想いよ」について。

 第3幕第2場で歌われる合唱「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」は、このオペラ『ナブッコ』で最も有名な曲で、『旧約聖書』の『詩編』137「バビロンの流れのほとりに座り、シオンを思って。私たちは泣いた。」に題材をとった歌です。 現在では 「イタリアの第二の国歌」とみなされる程イタリア人の人口に膾炙してきました。   でも今日の合唱団の歌は、何か精彩が無く勢いに欠け物足りないものでした。合唱団の皆さんこの歌だけを単独で歌う機会がこれまでなかったのでは?と思う程でした。

 

<第四幕>

 最後にどうしても愛娘の命を救えなくにっちもさっちも行かなくなったナブッコは、遂に敵陣のヘブライの守護神に過去の行いを懺悔し、救いを求めたのでした。すると突然正気に戻ることが出来たナブッコは、急ぎ部下達をかき集め、ヘブライ人たちの処刑場に急行するのでした。こうしてめでたしめでたし、ヘブライ王国は、今やユダヤ教に改宗したバビロンの人々と共存したのでしょう、きっと。これは史実には悖るのですが、物語ですから少しはフィクションが入っても、作者の作った内容から逸脱したわけではないので許されるでしょう。

 なおこの幕で記せねばならない点が三つあります。第一点目は、タイトルロールを歌った須藤さんの本調子とは言えない歌い振りでしょう。この幕では、声がかすれたり、喉の奥に引っかかる様なケースが結構見られ、疲れがあった様です。昨年四月の『ランモルメールのルチア』のエンリーコ役を歌った時の素晴らしさが頭に残っているので、今回は余り体調が良くなかったのだろうと推測します。

 第二点目は、活躍の場こそ多いとは言えないフェネーナ役の中島さん、さすがの詠唱でした。そお大きい声ではないですが、安定したメッゾの声を心地よく響かせ、演技も納得のえられるものでした。

 第三点目はもう一人の主役級の配役、アビガイッレに関してです。上記した様に自分の好みには合わない声質、歌唱法の中村さんの役でしたが、最後の最後で歌う場面、

ABIGAILLE
a Fenena Su me … morente … esanime …discenda … il tuo perdono!
Fenena! io fui colpevole …Punita … or ben ne sono! ad Ismaele Vieni! …
a Nabucco costor s'amavano …fidan lor speme in te! …Or … chi mi toglie al ferreo
pondo del mio delitto! agli Ebreiei Ah! tu dicesti, o popolo: "Solleva Iddio l'afflitto".
Te chiamo … te Dio … te venero …non maledire a me...❞

 

❝【アビガイッレ】
[フェネーナに] 私に...死んでゆく...生気のない私に..与えてください...あなたの許しを!
フェネーナ!私は罪を犯しました...罰を受けました...それは当然のこと!
[イズマエーレに] 来て!...
[ナブッコに] 二人の愛をお許しください...あなたに彼らの望みをお任せ致します!...
ああ...誰が取り除いてくれるのでしょう。 この鉄のような私の罪のとてつもない重さを!
[ヘブライ人たちに] ああ!あなたたちは言いましたね、人々よ神は苦しむ者を救い給うと御身を呼び求めます...あなたたちの神を..私は崇拝しましょう...私を呪わないでください...❞

と歌う場面が、この日一番素晴らしい歌い振りだと思いました。すべての歌手を通して最高だったかも知れない。死ぬ間際を演じるためかなり抑えてppで歌ったのが良かったのかも知れません。逆に言うと他の場面では力み過ぎだったのかも知れない。

 総じて市民オペラと称していましたが、ベテランのプロ陣はまずまず健在で、市民オーケストラとは言えセミプロ級の腕前で、合唱団は次第に慣れてくれば大きな実力を発揮出来るし、見ごたえ聴きごたえのあるオペラでした。三年に一回なのは少し残念な気もしますが。

 

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