HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

映画『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』鑑賞

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【日時】2021.12.19.(日)15:35 ~

【上演館】kino Cinema 横浜みなとみらい

【監督】フランソワ・ジラール

【出演】ティム・ロス(マーティン役)

クライヴ・オーウェン(ドヴィドル役)

キャサリン・マコーマック(ヘレン役)

スタンリー・タウンゼント(ギルバート役)

ミシャ・ハンドリー(マーティンの子役)

ルーク・ドイル(ドヴィドルの子役)

【音楽】ハワード・ショー

【Vn演奏】レイ・チェン

 <Profile>

1989年3月6日生まれ。台湾出身のオーストラリア人ヴァイオリニスト。4歳でヴァイオリンを開始し、98年には、長野オリンピックの開会記念コンサートにも参加した。2009年のエリザベート王妃国際コンクールでは、史上最年少優秀を獲得し、注目を浴びる。
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とも共演し、3枚のアルバムをリリース。うち1枚目の「ヴィルトゥオーゾ」はエコークラシック賞を受賞。2017年にはデッカ・クラシックスと専属契約を結ぶ。「ヴァイオリンの貴公子」と呼ばれ、今もっとも世界が注目する気鋭のアーティスト。

【粗筋】

第二次世界大戦が勃発したヨーロッパ。ロンドンに住む9歳のマーティンの家にポーランド系ユダヤ人で類まれなヴァイオリンの才能を持つ同い年のドヴィドルが引っ越してきた。宗教の壁を乗り越え、ふたりは兄弟のように仲睦まじく育つ。しかし、21歳を迎えて開催された華々しいデビューコンサートの当日、ドヴィドルは行方不明になった―。35年後、ある手掛かりをきっかけに、マーティンはドヴィドルを探す旅に出る。彼はなぜ失踪し、何処に行ったのか? その旅路の先には思いがけない真実が待っていた……

【感想】

演奏会がドタキャンにならない様に、なんとか手を尽くせなかったのかという思いは残ります。払い戻しして主催者は経営が傾いたのでしょう。その家の子が行方不明となった天才ヴァイオリニストを探し求める処がサスペンスっぽくて面白かった。今の日本だったら公演延期とか中止するにするにしても、いつ何時、振替公演をするとか手を尽くすでしょう。大戦中のロンドンですし、そんなこと出来なかったのかも? 独軍の空爆の激しさが、街の風景から良く分かります。その風景をうまく利用した内容です。

 今年来日したバレンボエムの6月11日の公演など、全然予告のない全曲別な曲の演奏ですから、払い戻しがありました。主催者はバレンボイムに報酬は払ったのでしょうからかなりの損害が出たことでしょう。そういえば、バレンボエムはユダヤ教を嫌っているとみる向きもある様ですが、今回のヴァイオリニストはユダヤ教徒に偶然会ったことが運命の転換になるのでした。

 映画の中のユダヤ教のラビが歌う特殊な旋法の節には興味が湧きました。

 ギリシャ正教には、リディア旋法、ドリア旋法、などのギリシャ旋法が使われ、キリスト教のグレゴリオ聖歌にもその影響があるみたいですし、ユダヤ教にも独特の旋法があるという事が、この映画からも分かります。これらは後世のクラシック音楽にも影響を与え、例えば、ベートーヴェンは『弦楽四重奏曲第15番』の第3楽章「病い癒えし者の神への聖なる神の歌」にリディア旋法を利用しています。この映画では反ユダヤ教側に分からない様に、死者名簿は文字で表わさず歌で表現し、それを語り継ぐ(歌い継ぐ)というのにはびっくりしました。

 やはり、物語は宗教か恋愛か戦争かが絡むと複雑模様になるのは、古今東西の文学も示しているところです。

それにしても映画の中で演奏されるブルッフのヴァイオリンソナタ(管弦楽伴奏版)の美しいことといったらありません。さすが映画館はスピーカーを沢山配置し、いい音を再生させますね(METライヴィングビューなども臨場感があります)。演奏しているのは、台湾出身でオーストラリア人の若いヴァイオリニスト、レイ・チェンです。略歴は次の通り。 

1989年3月6日生まれ。台湾出身のオーストラリア人ヴァイオリニスト。4歳でヴァイオリンを開始し、98年には、長野オリンピックの開会記念コンサートにも参加した。2009年のエリザベート王妃国際コンクールでは、史上最年少優秀を獲得し、注目を浴びる。
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とも共演し、3枚のアルバムをリリース。うち1枚目の「ヴィルトゥオーゾ」はエコークラシック賞を受賞。2017年にはデッカ・クラシックスと専属契約を結ぶ。「ヴァイオリンの貴公子」と呼ばれ、今もっとも世界が注目する気鋭のアーティスト。

来日公演があれば聴いてみたいですね。 

 ところで、家に帰って

夜9時過ぎにテレビを付けたら、NHKEテレビで、「NHK音楽祭2021~未来へ~:NHK交響楽団公演」という番組をやっていて、今回のショパンコンクール1位のブルース・リュウが尾高さん指揮のN響と共演し、ショパンのコンチェルト1番を弾いている場面が放送されていました。慌てて録画したのですが、第一楽章も中頃になっていました。あれ!いつ公演したのだろう?と思い、見ながら調べてみると、先月11月8日(月)にオーチャードホールで行われた模様。残念ながら見落としていました。日本人入賞者にばかり目が向いていて、「一位の子はやらないのかな?カナダからコロナのせいで、来日出来ないのかな?などと思っていました。主なホールの演奏会の資料は入手してNET情報も見てどの演奏会に行こうか?と検討しているつもりでした。オーチャードホールは、定期的に演奏情報が送られてくるのですが、見落としの抜けが多い盲点のホールなのです。Bunkamuraには、ル・シネマに映画を見に行くことが主で、コンサートは他のホールの類似のものや興味のない曲が多くて、ほとんど聴きに行かないのです、演奏会情報を見落としてしまいました。リュウのコンチェルト演奏は、放送を聞いた限りでは、かなりゆったりと綺麗な音のメロディ作りに腐心している様に見受けました。でも一楽章の終盤の演奏など、大昔のブーニンの素晴らしいリズムとダイナミックな演奏が耳に残っていて、どうしても比較してしまい物足りなさを感じてしまうのです。二楽章と三楽章は非常に軽やかな、将にリュウ流のショパンが煌めく演奏でした。こういう演奏をされたら、反田さんでもかなわなかったのは分かりました。                                                          

 音楽番組が終了した後、続いて今年のノーベル賞受賞関係の番組を放送していました。ちょっとだけ見たのですが、その中で、ノーベル賞化学部門は不斉有機触媒の開発に与えられたのでしたが、ノーベル財団は、その受賞者発表文の中で❛シンプルな発想程時には最も難しい❜と言及したそうです。これはアミノ酸の一種プロリンというありふれた小さな分子量の有機物が、不斉触媒になることを発見したことを指しています。不斉合成は既に20年前に野依教授により開発された触媒、バイナップによる不斉合成にノーベル賞があたえられている訳ですが、バイナップは大きな分子量の錯体という物資で、扱いにくい点もありました。それが非常に簡単な有機化合物プロリンでも可能だという事ですから、これは本当に目からウロコですね。

 今回のブルース・リュウの演奏会情報も、手元にあるオーチャードホール情報を見さえすれば、簡単に聴けに行けたのにと反省することしきりでした。