今年も年の瀬が迫ってきました。いつも年末の第九には昔から左程拘っていないのですが、一昨年は拘って、大晦日に小林ケンさんの1番~9番までの全交響曲演奏の中で第九を聴きました(その時の記録を参考まで、文末に再掲(抜粋)します)。昨年も同じく大晦日に全交響曲演奏会を聴こうとして、宿まで取ったのですが、コロナで中止になってしまいました。そんなことがあって今年のチケット売出しの頃は、感染状況下がひどく、また中止になってしまうと困るので、買いませんでした。第九はもういいやと思うようになったのです。 最近、年と共に随分 ’熱しやすく冷め易くなったものだ’ と思うのです。小さい時から ’諦めにくい子だねー。一度思ったら一生でも諦めなそう’ と親があきれる程の執着性で、自分でもその通り、生まれながらの凝り性だと思って生きてきました。それが、あれは、たしか10年ほど前だったでしょうか、演歌歌手の中村美律子の歌が気に入って ’あの上手な節回しは、浪曲の素養からきているのでなく、クラシックにも通ずる音楽性がいいからだ ’などと言って、新宿コマ劇場まで聴きに行った程でした。それがしばらく経つと、 ’目を醒ませと呼ぶ声が聞こえ’た訳ではないのですが、すっかり熱は冷めて興味が無くなってしまいました。家の上さんに「テレビでみっちゃんが歌っていますよ」と言われても、今新聞をみているから、と乗り気にならない自分に気が付き、’ひょっとしたら自分は、飽きっぽいのでは?’ と気が付いたのでした。無駄口はこの辺にして、でも第九を聴かないで年を越すのも何なので、数多くの第九演奏会の中から、今年は、神奈フィルの第九を聴いて見ようと思ったのです。プログラムの概要は以下の通りです。
【日時】2021.12.18.(土)14:00~
【会場】神奈川県民ホール
【管弦楽】神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【指揮】川瀬賢太郎
【曲目】ベートーヴェン『交響曲第九番(合唱付き)』
【ソリスト】小林良子(Sop.)林美智子(Alt.)清水徹太郎(Tenr.)宮本益光(Bar.)
【合唱】神奈フィル第九合唱団(Profess.)
【演奏の模様】
会場に入ると2500以上の座席は超満員の観客で埋まっています。ステージには、オケ用の椅子、譜面台が並んでいるのですが、かなり少ない数です。その奥の高い舞台には、合唱用の椅子と、ソリスト用の椅子が並んでいます。数は計30以内でしょうか?思ったより少ない。時間になって演奏者が登場、着席するとやはり小規模編成でした。二管編成の弦楽五部8型?の変形(10-8-6-4-5)でしょうか。 合唱団は、男声と女声それぞれ12人づつの24名、それとソリスト4人が真正面に並びました。
第一楽章の前半は、あの広いホールに対し、やや音の広がりが足りないかな?と気になりましたが、これは、小規模編成という先入観があったためそう感じたのかも知れません。後半では、Timp.も全開、全体的に躍動感のあるVIVIDな響きになってきました。
二楽章になると、もうこれは、十分過ぎる程のオーケストラの轟音が会場を満たし、川瀬指揮により神奈フィルは、火がついた様な猛烈な勢いで、演奏をしていました。
三楽章では、弦楽が透明感のあるゆったりした調べを奏で、管が加わってより透明性を増していきます。あたかも果てしない大平原を水が流れる様に光輝き、川瀬さんは、風にたなびく柳の様に体をくねらせて指揮しています。Ft.のソロに近いメロディが高音のピツィに伴われ、Cl.からHr.に引き継がれ、突然の変化の予告が2回鳴り響きます。Hr.は大きな役割の箇所を上手く乗り切り、またTimp.は又してもパンチ力で打ち鳴らされ、最初の楽章から大活躍でした。ここの楽章に、ベートーヴェンは、もう少し変化を付与出来なかったものかと、時々思うのです。少し退屈になることがある。
オーケストラは、アタッカー的にすぐ第四楽章に入りました。冒頭の箇所は、何か劇的なことが起きる予感を与える調べで、低音弦(Cb、Vc)の下降音にFt.音が挿入、続いてFt.の悠々とした旋律が、低音弦の不気味な音に対向し、低音弦は、歓喜の歌のメロディを予告しました。Vcがフーガ的に入り、再度Timp.が冴え渡り、歓喜の弦楽アンサンブルも良く鳴っていました。Timp.が鳴るとコーラス陣は起立。まずは、バリトンの宮本さんの声が、ホールに朗々と響きました。申し分ない声量と声質と迫力。オペラで鍛えた歌声はさすがと思わせるもの。ソリスト全員による四重唱も厚みのある安定した風圧を吐き出していました。Sop.の小林さんは今回初めて聴きましたが、派手ではないがしっかりと存在感を示す声が聞こえました。経歴を見ると広島を地盤として活躍しているSop.の様ですね。オペラは、これまで夜の女王を歌ったことがある様です。機会があれば、今後聴いてみたい歌手だと思いました。テノールの清水さんも関西を拠点に活躍されている様です。歓喜の歌の短いソロを聞いて、もっと本格的に長く歌う処を聴いてみたいと思いました。林さんと、宮本さんは、オペラを関東で随分歌っている歌手ですから、新国劇や日生劇場や文化会館のオペラを聴きに行けばまた何処かでお目にかかる機会はあるでしょう。
また今回の第九で特筆すべきは、合唱団の活躍です。24名の小人数の布陣でも、過去に聴いた50人、100人の合唱団にも負けない様な分厚いコーラスの塊をホールの観客にぶつけてきました。これは、きっと一人3倍の力を発揮したのでしょう。人数が多い大合唱団でも、コーラスが揃っていないと、歌声の響きは散けてしまい、綺麗にはなりません。今回は、プロの歌い手を揃えたといいますから、少数精鋭の良い例だと思いました。
最後に川瀬賢太郎さんについて。彼の指揮は、最近(今月始めか先月だったか?調べれば分かりますが)聞いて、非常にきびきび、生き生きと若さを生かした指揮振りで、最初から最後まで、疲れも見せず良く振っていたのには、関心しました。今回も前回と同じ印象を受けましたが、きっと練習やリハーサルでも若さを前面に出して音作りに励んでいるのでしょう。オーケストラには、老若男女、様々な人が居るでしょうから、自分の理想のアンサンブル作りは、かなり険しい山登りになるに違い有りません。演奏会本番を聴くと、なかなかいい結果を出していると思いますので、様々な困難を乗り越え、これからますますの活躍を期待する若手指揮者の一人です。その時有力な武器となるのは、時間がたっぷりあるということです。何分、若いのですから。
///////////////(2019.12. 付hukkats記事再掲)////////////////////////////////////////////////
2020-01-02『1~9交響曲半日で演奏』コバ研・ベートーヴェン全曲演奏会』
大晦日の2019.12/31(火)東京文化会館で小林研一郎さんがベートーヴェンの交響曲を1番~9番まで全曲を振るというので、聴きに行きました。
[中 略] さて最後の9番合唱付きになりました。Soloはソプラノ市原愛、アルト山下牧子、テノールジョン・健・ヌツィオ、バリトン青山貴の各氏。独唱の番が来ると、ソリストたちは次々と立って、大声を張り上げました。まずまずですね。テノールがやや弱かったかな? 合唱は武蔵野合唱団、先月武蔵野音大の定期演奏会で荘厳ミサ曲を聴いた時の合唱団は「武蔵野音大合唱団」でしたが、今回はメンバーが異なるのでしょうね。かなり年配の方の顔も見えましたので。大学合唱団+OB+関係者(または所謂第九を歌う会の如き)混成チームでしょうか?150人くらいはいたでしょう。合唱は別に人数が多いといいとばかりは言えないのですが、ある程度のレベルに達した合唱団員だと多い方が迫力が断然違いますね。合唱の番が回ってきて、最初の合唱は透明度がすんなり耳に届いて来なかったのですが、2回目3回目の繰り返しの大合唱になるとオケとも相まって会館を揺るがす様な素晴らしい響きを轟かせました。終了が零時5分前、アンコールがあるのかと思いましたが、さすがにコバ研さんは疲労困憊のご様子、予定曲終了で「明けましてお目出等御座います」の時刻になり、解散となりました。