<ミラノ十月二十五日>
この日の記事は「タロッコ(タロット)」に関して、及びばったり出会ったフランス人に関して、自分の心情を吐露しています。
先ず、“今晩ビビン・カテナ夫人がタロッコを教えてくれた”と言っています。
タロッコはミケランジェロが発明したという人もいると書いていますが、これはミケランジェロの有名な絵をモチーフにして作られたタロットカードが、当時もあったからかも知れません。
タロッコにミラノ人は夢中になっていて、ゲーム中興奮して髪を掴み合わんばかりの怒鳴り合いになったエピソードを書いている。これはスカラ座の桟敷にいる時(桟敷では賭け事や色事や会話などが為されることは、<ミラノ十月四日>の記事で詳しく説明されている)起きた喧嘩で、一階席からは“静かに、静かに”という声が上がり、(オペラの)芝居はほとんど途切れてしまったとあります。この出来事をスタンダールは嫌悪するどころか “イタリア人の怒りは静かで控え目であり、今晩のは少しも怒りなどではない。おもちゃをとりあう二人の真面目人間の激しくおかしなイライラである。一瞬のあいだ子供みたいになって楽しんでいる” と好意を持って接しているのです。その後で “こうした極端な一本気と人の良さは、僕をいたく感動させたので、この国に落ち着こうかと考える。幸福は感染する。” とまで言っています。同感です。間違えなく「音楽の幸福感」も伝染しますね。
一方、スカラ座の真ん前の当時存在したカフェで、苦手と思っていた知り合いのフランス人に出会ってしまったことも書いています。彼はスカラ座の音楽に罵倒を浴びせ、これに対しスタンダールは、“イタリアではフランス人が僕のしあわせを一瞬にして潰えさせる~彼は僕の袖を引っぱり、冷雨が降っているとか、真夜中過ぎだとか、追剥に会う危険を冒すとか(後ろ向きで嫌なこと)を僕に思い起こさせる。” と嘆いています。これは多分当時ナポレオンのイタリア支配が失敗に終わり、イタリアに好意を持てないフランス人が多くいたことを意味するのではないでしょうか。
これを書きながら今日は『大野和士のオペラ玉手箱(オペラ名曲集)』の配信で、『リゴレット』他の解説と名場面のアリアなどを、大野さんのピアノ伴奏で歌っているのを聴いています。大野さんと言えば6/14の『ニュルンベルグのマイスタージンガー』のチケットを取って楽しみしていたのですが、中止になってしまいましたね。このオペラはワーグナー作曲のオペラの中でも「 Der Ring des Nibelungen /4 Opera 」などとは異なった色合いも多く好きな出し物なので、いい機会だったのですが残念でした。またその内やって下さい。
『リゴレット』より<ジルダのソロ>安井陽子
<リゴレットのソロ>、『椿
姫』より<プロヴァンス~>須藤慎吾
『サムソンとデリラ』より<二重唱>小林由香 村上敏明
『蝶々夫人』より<ある晴れた日に>木下美穂子
<二重唱> 木下由香 村上敏明
『リゴレット』 <四重唱> 出場者全員