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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

藤原歌劇団&日本オペラ協会 オペラガラコンサート2020

チラシ

 昨今のコロナ感染の急拡大の影響により、11月下旬の音楽会、特に来日予定演奏家の音楽会は軒並み中止になってしまいました。今回のガラコンサートは、かなり以前からチケットを確保しておいたもので、出掛けるのに逡巡したのですが、多分自分としては、今年最後の声楽部門鑑賞の機会になってしまいそうだし、出演者の顔ぶれを見ても、我が国を代表するオペラ歌手が並んでいますし、これは濃厚接触の相当のリスクはあるけれども、出来る限りの感染防止に努めて行かなくては、と考えました。主催者も音楽会を中止にしないでやるからには、最大限の感染防止対策をする筈でしょう。                                  

【日時】2020.11.29(日).14:00~

 

【会場】東京文化会館大ホール

 

【出演】
ソプラノ:伊藤晴、川越塔子、佐藤美枝子、沢崎恵美、長島由佳

メゾソプラノ:鳥木弥生

テノール:澤﨑一了、村上敏明

バリトン:須藤慎吾、牧野正人

ピアノ:藤原藍子

司会:折江忠道(藤原歌劇団総監督) 郡愛子(日本オペラ協会総監督)

 

【曲目】
①レオンカヴァッロ:オペラ『「道化師」より 、プロローグ』

②グノー:オペラ『「ロメオとジュリエット」より、 ああなんという戦慄が』

③プッチーニ: オペラ『「蝶々夫人」より 、花の二重唱』

④ヴェルディ:オペラ『「リゴレット」より そうだ、復讐だ!』

⑤團伊玖磨:オペラ『「夕鶴」より 、あたしの大事な与ひょう』

⑥水野修孝:オペラ『「天守物語」より 、おねえさまお懐かしい』 

その他。

 以上は、事前に発表された曲目ですが、当日配布のプログラムによりますと、演奏順の変更と曲目変更・追加がありました。

【演奏の模様】

 当日発表されたプログラムは以下の通りです。

追加曲目は、以下の②、③、④、⑥、⑨、⑪、⑫、⑭の八曲、削除曲はなし。

【第1部】ピアノ伴奏:藤原藍子

①レオンカヴァッロ:オペラ『「道化師」より プロローグ』牧野正人

②ポンキエッリ:オペラ『「ラ・ジョコン」より空と海』村上敏明

③ドリーブ:オぺラ『「ラクメ」より、鐘の歌(インドの娘はどこへ)』佐藤美枝子

④ヴェルディ:オベラ『「運命の力」より死とは恐ろしいもの~運命の箱~彼は助かった!』須藤慎吾

⑤プッチーニ:オペラ『「蝶々夫人」より 花の二重唱』沢崎恵美、鳥木弥生

⑥ドニゼッティ:オペラ『「ルチア」より裏切られた父の墓の前で』伊藤晴、野崎一了

 

       《休憩》

 

【第2部】ピアノ伴奏:藤原藍子(⑦⑧⑨は松本康子)

⑦團伊玖磨::オペラ『「夕鶴」よりあたしの大事な与ひょう』川越塔子

⑧水野修孝:オペラ『「天守物語」より、おねいさま、お懐かしい』川越塔子、沢崎恵美

⑨寺島民哉:歌劇『「紅天女」より目覚めよ生かされしこと~まこと紅千年の』長島由佳/田中黎山(尺八) 

⑩グノー:オペラ『「ロメオとジュリエット」より ああ、なんという戦慄が』伊藤 晴

⑪マスネ:オペラ『「ウェルテル」より、春風よなぜ私を目覚めさせるのか』澤崎一了

⑫チレア:オペラ『「アドリアーナ・ルクヴルール」より、苦い喜び甘い責め苦を』鳥木弥生

⑬ヴェルディ:オペラ『「リゴレット」より 、そうだ、復讐だ!』佐藤美枝子、牧野正人

⑭ヴェルディ:オペラ『「運命の力」より、アルヴァーロ、偽善者の衣をもって』村上敏明、須藤慎吾

 

 冒頭、司会役の折江忠道監督と 郡愛子(日本オペラ協会)総監督が登壇し、この半年コロナ禍で、歌手達は皆思う様に歌えず苦労してきたこと、今日この様にガラコンサートが開けて本当に嬉しいこと、歌うのは皆藤原歌劇団の、選りすぐりのスター達であること等のトークがありました。折江さんが、第1声で、大きな声を張り上げて ’ こんにちは ’と挨拶したのを、郡さんに "(感染防止のため)もっと小さい声で ’ とたしなめられる場面もありましたが、和気あいあいのトークに会場は大いに沸いていました。

 最初の①の曲は二幕物オペラの前奏曲後に道化師が登場して歌う「道化を演じる我々役者もまた血肉をもち、愛憎を重ねる人間であり、それを想った作曲者は涙しながらこの曲を作ったのだ、云々」との前口上(プロローグ)の歌です。

 バリトンの牧野さんは初めて聴きます。腹の底から太い声が出て、低音の響きが心地よいし、高音も 朗々と歌い安定感もあるし、さすがトップバッター、世界にも通用するのではなかろうかと思われる歌い振りでした。

②を歌った村上さんはこれまで何回か聴いたことがありますが、独特の完成された自前のテノールの歌声を、ホール一杯に響かせていました。 

③を歌った佐藤美枝子さんの歌は、これまで一度聴きたいと思っていたのですが、仲々機会がなく今回初めて聴きました。やはり日本歌劇界のスターですね。折江さんのトークでは、体調が余り良くないので予定曲目を変更したのだそうですが、なんのその素晴らしい美声を、しんみりとゆったりとしたテンポで張り上げていました。音楽性がいい。衣装・容姿も素敵でした。結構長い歌ですね。

④の須藤さんのバリトンは息も長いし声量も十分、本格的な響きを感じました。

説明が遅れましたが、ステージ奥には、プラスチックの衝立の様な舞台装置が四基置いてあり、中から照明でライトアップ出来る様になっていて、「運命の力」の時には赤い光が灯されていました。

⑤の「蝶々夫人」では、第二幕の、蝶々夫人のもとを去ったピンカートンが軍艦に乗って再び日本の港にやって来たと喜ぶ夫人と、お手伝いのスズキが歓迎のため部屋一杯を花だらけにしましょうと歌う二重唱です。お蝶らしい和服で現れた沢崎さんは、スズキ役の鳥木さんと息の合った重唱(会話的な歌のやり取りと二重唱)を響かせました。外人のマダムバタフライ役の歌手ですと、和服を着ても迫力のある様子が一目で分かる場合(時として和服が似合わない場合)がありますが、沢木さんは日本人ですから和服がピッタリです。その分迫力がもう少しあった方がいいかな?と思いました。

⑥の伊藤晴さんは、2019年1月に藤原歌劇団の『ラ・トラヴィアータ』でヴィオレッタ役でデビューした時聴きに行きました。沢崎さんもその時アルフレッド役で出ていました。お二方その時と比べると一周りも二周りも大きく成長された様にお見受けしました。折江監督が説明した通り確かに希望の星ですね。参考まで2019年1月26日に聴いた記録を文末に掲載して置きます。

休憩後は【第2部】の冒頭、三つの日本オペラからのアリアが続きました。

⑦日本のオペラでは、『夕鶴』が一番有名ではないかという気がしますが、どうでしょう?オペラとして演ずることは少ないと思いますけれど、オペラ以外の様々な形態で表現されているので世間に良く知られている内容です。

 鶴を模した白装束で現れた川越さんは、以前昭和音大のコンサートで聞いたことがある歌手ですが、その時より声が伸び、声量も増えた様な気がします。日本風のメロディは比較的単調でしたが、表現力がありました。司会の話では、川越さんは有名国立大法学部を卒業後、声楽の道を選ばれたとのことでした。将に「好きこそものの上手なれ」ですね。

⑧のオペラ『天守物語』は知りませんでしたが、調べてみると泉鏡花が書いているのですね。NET情報で見た粗筋は次の様です。

姫路城天守から、妖しい夫人富姫が地上を高みの見物のように見下ろしている。地方(猪苗代)から亀姫が遊びに来訪したりする。夫人が、地上での鷹狩の最中に不思議な力で鷹を武士らから奪い取ると、若い美男の鷹匠、図書之助が鷹を追って天守に上ってくる。恋に落ちる夫人と図書之助。そして事態は思わぬ方向へ

この歌は亀姫(川越)が富姫(沢崎)に合った時のやり取りで、確かに幻想的な雰囲気を有した二重唱ですね。それもその筈、原作が泉鏡花だというのですから。幻想文学の系譜に属する作家です。
 
⑨の「紅天女」はいつでしたか、そういうタイトルの歌劇をやっているということはその時の宣伝で知っていましたが、宝塚の類いだと思って見に行く気は全然起きませんでした。今回の長島さんの歌は素晴らしく、これを聴くと本格的なソプラノが力一杯歌うオペラその物だということに初めて気が付きました。機会があれば今度こうしたものも聴きに行きたい気が起きました。
 尚、⑦⑧⑨の伴奏は松本康子さんが弾かれましたが、日本的な歌の場合と西洋オペラの伴奏の弾き方は今回聴いては分かりませんでしたが、きっと弾き方が異なるのでしょうね。
⑩からは再び西洋オペラのアリア、しかもかなり有名な場面ばかりです。この歌は、グノーの5幕物のオペラ『ロメオとジュリエット』の第4幕でジュリエットがロメオから言い含められた「飲めば仮死に至る薬」を飲み干してジュリエットが歌うアリアです。伊藤さんの歌い振りは本当に今回堂々としたものでした。歌に勢いがあって、ビブラートがしっかり効いていて、力強い声を軽々と出していました。益々将来楽しみですね。欲を言えば最高音域での発生する種々の波長の音が、拡散する様な気がしましたので、もっと絞りを掛ければ心地良く聴こえるのではなかろうかと思いました。
⑪の澤崎さんの立ち上がりこそややこじんまりと聞こえましたが、歌が進むと伸びやかになって声量も上がり、歌い振りも素晴らしいものとなりました。
⑫鳥木さんの歌声心地良く聴こえました。特に後半の旋律はいいですね。
最後の⑬と⑭は何れも有名な二重唱です。
⑬の『リゴレット』第二幕フィナーレの、リゴレットとジルダの二重唱 "Si' vendetta"は、廷臣たちに誘拐された娘ジルダがマントヴァ公に陵辱されたことを知ったリゴレットが復讐を誓う場面の二重唱です。佐藤さん、牧野さんのベテランコンビと言っても良いでしょうか、素晴らしいDuetでした。ジルダの切なくも愛惜が残る心を美しい歌声で、時には激しく謳った佐藤さん、完璧でしたね。歌とは、音楽とはこうしたものでしょう。牧野さんのリゴレットは正統派のバリトンといった感じで、復讐に燃える父親の気持ちを身振り歌い振りで見事表現、この二重唱は名演と言っても良いと思います。
⑭の村上さんと須藤さんの対決、決闘に至る場面は将に歌で丁々発止火花散る歌のぶつかり合いでした。今日一番の大ホールを揺るがす大音響の響き合いでした。聞く方も手に汗握りました。
 以上、総じて感じたことは、我が国のオペラ歌手陣のレベルアップは、驚く程、目を見張る程、耳を逆立てる程の急速なもので、これは一種の画期的な飛躍と言えるのではないでしょうか.。その源は何かは分かりませんが、コロナ禍で結構長い期間舞台に立てず、恐らく基礎的な研鑽に励む時間が相当あったのが良かったのかも知れないと自分勝手に解釈しました。この逆境をさか手に取って力を貯め、いつの日か世界に打って出て日本歌劇の力を知らしめることが出来ることを期待します。将に「災い転じて福となす」 
 
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《参考》2019.1.27.hukkats記録(抜粋)

ところで昨日土曜日(2019.1.26.)藤原歌劇団の「ラ・トラヴィアータ」を観てきました。これは先日、東急本店でやっていた二期会の人達の歌を聴いて、‛日本人歌手もレベルが随分あがっている’との感じたので、すぐに何か適当な音楽会は無いかなと調べたら「椿姫」をやることが分かり急遽チケットをゲットしたものです。うちの上さんには「随分気分屋で衝動屋なのね。熱し易く冷め易い」と揶揄されました。でもめげずに上野に行ってきました(at東京文化会館大ホール14:00~)開演の前に会場で総監督の折江忠道さんから作品解説が30分程ありました。“スカラ座でのカラヤン指揮の「椿姫(ゼフレッリ演出)」が不評で以後何十年もスカラ座では椿姫が上演されなくなった”という話もしていました、カラヤンの責任ではないでしょうけれど。

(今年1/11~ 3/17のスカラ座では、ヴィオレッタをMarina RebekaとSonya Yonchevaのダブルキャスト、アルフレッドをFrancesco MeliとBenjamin Bernheimのダブルキャスト、ジェルモンを(ローマ歌劇場来日公演を欠席したあの)Leo NucciとDomingoのダブルキャストで公演中)  今回の藤原歌劇団公演は1月25日~1月27日の三日間とも演者が異なっており、ヴィオレッタ役伊藤晴さん、アルフレッド役澤崎一了さん、ジェルモン役折江忠道さんが演じるのを観ました。感想を端的に言いますと、アルフレッドは上手でステキな声の質なのですが、歌唱はやや小じんまりとした感有り、第2幕「ah,l’onta lavero(恥を拭い去ろう)」のアリアの最後を高い音で歌い切ったのは良かった。ヴィオレッタはスタートは他の例に漏れず緊張からかやや委縮した歌い振りだったが、次第に高音にも張りが出てきて全体としては、力演と言えるのでは。確か今回が椿姫役デビューでしたね、成功したと思います。今回の公演でジェルモンが一番プロの味を出していました。声量も十分、歌唱力もあり、ヴィオレッタを説得した後の二重唱を歌い終わると大きな拍手と歓声が場内に起きました。さすが、総監督。感想は以上です。入場料金の割には満足感があり、コストパーフォーマンスの良い観劇でした。一つ分からなかったことは、チラシ等では「新制作」とうたっていたのですが、どこが新制作なのか?作品解説でも説明は有りませんでした。ひょっとして舞台セットに各幕とも大きな油絵とおぼしき絵画が置かれていたことでしょうか?

人物画が多かったように思いますが、一体誰の書いた何を意味する絵なのでしょうか?