HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『マロのブラームス…篠崎史紀・入江一雄デュオ・リサイタル』

 先週12月4日(水)、ヴァイオリンとピアノのデュオ・リサイタルをみなとみらいホールで聴いて来ました。演奏はVn篠崎史記、Pf 入江一雄の両名。篠崎さんはNHK交響楽団のコンマスで「マロ」の愛称で親しまれています。一方入江さんは、藝高から大学院まで進み、卒業後モスクワ音楽院に留学後各種コンクールで最高位を獲得、今活躍中のピアニストです。 曲目はオールブラームス。『ピアノとヴァイオリンのためのソナタ1番』から『3番』までを通して演奏しました。その前に手始めとして短いが、決然とした力強い曲『F.A.E.ソナタよりスケルツオ』を弾いた。F.A.E.は“Frei aber einsam(孤独だけど自由)”の意味で、このソナタは本来四楽章から成り、その第3楽章が『スケルツオ』です。5分程度の曲でしたが、Pf の音が卓越してVnはやや控え目な演奏でした。『ソナタ1番』は前半の聴きどころ、30分近くもある大曲です。VnとPfの息がぴったり合った兎に角、旋律が美しい演奏でした。第3楽章の有名な「雨の歌」はブラームスの歌曲から取った旋律でカンタービレ風にも聞こえ、Pf の低音が雨脚の如きイメージを与えてくれる。「雨」を題材にした曲は結構多いですね。ショパンも作曲したし、Gigliola Cinquettiの歌うカンツォーネは超有名ですね。
 休憩を挟んで後半が『ソナタ2番』と『ソナタ3番』の演奏です。今回はカタログに「マロが語り、弾く!…」と宣伝している様に、マロさんが中心のトークまた入江さんとの掛け合いトークも交えながら演奏されました。『2番』については、“恋人なのか、誰なのか待ち人ありの曲で、すぐにおいでといったラブレター的曲であり”、また“花の香は言葉にすると色褪せやすいので、音で表現した”といった趣旨のことを話していました。 第2楽章のメロディがVnもPfも大変綺麗で、また篠崎さんの高音がまさに“細い透明な絹糸が天に煌めくが如き音”として体感出来ました。
 続いての『3番』は四楽章から成り、説明によると第1楽章が “心臓の鼓動が聞こえる様な”、第2楽章が “ロマンティックな”、第3楽章が “ハンガリー舞曲的な”、第4楽章が “荒々しい感情を表す”メロディとのことでした。演奏を聞くと、悲痛な調べから始まり、2楽章は、もの悲しいけれど、シックな綺麗なメロディでした。
 マロさんの演奏は、全体を通じ力任せにエネルギッシュに弾くのではなく、スーと、フーと力を抜いて、弓が弦を鳴らしているのであって、手と腕は弓の動きをそーと支えているのみ、といった感じのする年季の入った演奏でした。「音楽とはこういったもの」と思われる流石の演奏でした。