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キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィル2023来日公演 東京初日を聴く

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 【日時】2023.11.20.(月)19:00~

【会場】サントリーホール

【管弦楽】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

【指揮】キリル・ペトレンコ

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 〈Profile〉 

キリル・ペトレンコ(指揮)
Kirill Petrenko, conductor
2019年シーズンよりベルリン・フィル首席指揮者・芸術監督を務める。シベリアのオムスク出身。地元で音楽を学び始め、のちにウィーンで研鑽を積む。オペラ指揮者としてのキャリアはマイニンゲン歌劇場とベルリン・コーミッシェ・オーパーの時代に始まり、2013-20年バイエルン州立歌劇場音楽総監督を務めた。ウィーン、ロイヤル・オペラ、パリ、メトロポリタン、バイロイトなどの名歌劇場や、ウィーン・フィル、コンセルトヘボウ管、シカゴ響、イスラエル・フィルなど世界を率いるオーケストラに度々客演。ベルリン・フィルとは2006年のデビュー以来、同フィルの中核をなす古典派やロマン派、スーク、コルンゴルドなどの知られざる作品、ロシア音楽など様々なプログラムに力を入れている

 

【曲目】プログラムB(11/20  11/23 11/25)


Ⅰ.レーガー:モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ Op.132

(曲について)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトピアノソナタ第11番(トルコ行進曲付き)の第1楽章から主題を取った変奏曲で、1914年4月から7月にかけて書かれた。初演は同年10月に行われる予定であったが第一次世界大戦の勃発のために遅くなり[1]1915年1月8日ヴィースバーデンでレーガーの指揮によって行われた。1914年中にジムロック社から出版され、レーガーが職を辞したばかりのマイニンゲン宮廷楽団に献呈された。レーガーは作品の性格を「気品に満ちて、俗世の苦しみから解き放たれている」と述べており、作曲にあたっては当時の音楽界の「混乱」、同時代人たちの作品の「不自然さ、奇妙さ、奇抜さ」への対抗の宣言という意図があった。おびただしいレーガーの作品のなかでも明快さと高い完成度を持つ代表作とされ、初演直後からヘルマン・アーベントロートアルトゥル・ニキシュフリッツ・ブッシュなどが取り上げ、現在でも演奏機会は多い。

日本でも早くから紹介され、1929年(昭和4年)に近衞秀麿の指揮する新交響楽団で初演されている。

(作曲者について)

 ヨハン・バプティスト・ヨーゼフ・マクシミリアン・レーガー(Johann Baptist Joseph Maximilian Reger, 1873年3月1916年5月)は、ドイツ作曲家オルガン奏者ピアニスト指揮者・音楽教師。とりわけオルガン曲、歌曲、合唱曲、ピアノ曲、室内楽曲の分野で多くの作品を残しており、後期ロマン派の作曲家として位置づけられている。

 1902年、レーガー自身はカトリック信徒であったにもかかわらず、離婚歴のあるプロテスタント信徒の女性エルザ・フォン・ベルケン(Elsa von Bercken)と結婚し、結果的にカトリック教会から無式破門に処せられた。ミュンヘン時代のレーガーは、作曲家としても、また演奏会ピアニストとしてもきわめて積極的に活動している。1905年にはミュンヘン王立音楽院の打診を受けて、ヨーゼフ・ラインベルガーの後任作曲科教授に就任するが、わずか1年後には保守的な同校と意見の食い違いを起こすようになっていた。

 1907年に演奏活動でカールスルーエに滞在中に、ライプツィヒ音楽院の教授に選任されるが、その後も演奏活動と創作活動を続け、1908年には教授職を退き、1911年から1914年の始めまでマイニンゲン宮廷楽団宮廷楽長に就任した。1914年にマイニンゲン宮廷楽団が解散されると、イェーナに転居。その後も精力的な作曲活動と演奏活動を続けている。心筋梗塞のために43歳で急死したが、極度の肥満や暴飲暴食、ニコチン中毒過労も死因に関わったとされている。

 

Ⅱ.R.シュトラウス:交響詩『英雄の生涯』 Op.40

    《割愛》

 

【演奏の模様】

 今日のプログラムの二曲は、今年8月のベルリンフィル 23/24年シーズンの幕開けで演奏された曲です。現地での評判は以下の様だったとのことです。

首席指揮者キリル・ペトレンコが、2023/24年シーズンの開幕演奏会を指揮しました。R・シュト ラウスの交響詩《英雄の生涯》では、英雄、宿敵、忠実な伴侶といったさまざまな人物が音楽で描かれます。シュトラウスが自らの人生と重ね合わせて描き、耽美的な音響の壮麗さで聴き手を魅了するこの作品。ペトレンコによる解釈は、「荒々しく揺れ動き、作曲家による皮肉も適度に散りに められ、素晴らしい独奏の尊さに満ち溢れている」 と評されました(「フランクフルター・アルケ マイネ・ツァイトゥング」 紙)。コンサート前半には、レーガーの「モーツァルトの主題による変 奏曲とフーガ」が演奏されました。

ですから、ペトレンコ/ベルリン・フィルにとっては手慣れた演奏曲だと言って良いでしょう。

 

Ⅰ.レーガー『モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ』 Op.132

<楽器編成>Fl.(3) Ob(2). Cl.(2) Fg.(2) Trmp.(2) Hrn.(4) Timp.(1)Hrp.(1) 弦楽五部12型 

 本来トロンボーンを欠く小規模な編成の曲。弦楽は二部ずつにさらに細かく分割され、弱音器を付けた音色と通常の音色とを対比する手法が試みられているのです。

 

<楽曲構成>

⓪主題 Andante grazioso

モーツァルトの主題が木管楽器と弱音器を付けた弦楽器による清澄な音色で提示される。

①第1変奏 L'istesso tempo。主題が原型のまま奏され、繊細なパッセージが添えられる。 

②第2変奏 Poco agitato

へ長調に転じ、主題が反行形で奏される。

③第3変奏 Con moto

イ短調 2/4拍子。主題は簡略化され、足早に通り過ぎる。

④第4変奏 Vivace

ホ短調。ヨハネス・ブラームスの『ハイドンの主題による変奏曲』の第6変奏を思わせる。力強い変奏。

⑤第5変奏 Quasi presto

イ短調、6/8拍子。複雑な響きを持つ皮肉っぽいスケルツォ。 

⑥第6変奏 Sostenuto

ニ長調4/8拍子。木管楽器の三連符によるパッセージが印象的。後半では動きがより細かくなる。

⑦第7変奏 Andante grazioso

 ヘ長調6/8拍子。原型の主題に、対位旋律が複雑に絡み付く。

⑧第8変奏 Molto sostenuto

 嬰ハ短調-ホ長調、6/4拍子。最も規模の大きい変奏で、入念なテクスチュアによって表情豊かな歌が歌われる。

⑨フーガ Allegretto sostenuto

 イ長調、6/8拍子。軽快に始まる大規模な二重フーガで、終結部では二つの主題に加えモーツァルトの主題の原型が対位法的に結合され、壮大なクライマックスを築く。

 

⓪冒頭、主題を先ずOb.ソロで歌い上げ続いてVn.アンサンブルが優雅な調べで引き取りました。木管楽器達と弦楽アンサンブルが掛け合い優雅にテーマ奏を終了。

①前半は木管のテーマ奏に対して小刻みな弦楽の変奏が寄り添い、後半全弦によりテーマの変奏がデフォルメされて奏され、次いで木管で、引き続き弦楽の合いの手でテーマ奏で最後を〆ました。FL.のパユの演奏が最初から光っていました。

②長調の弦楽アンサンブル反行形のテーマ奏は分厚さは感じますが、不協音とも違う雑多な響きを感じました。管も鳴っていましたがあまり聞こえず、後半は随分と分厚いオケアンサンブルですがOb.ソロ音も須臾に弦楽に飲み込まれてしまっての終了でした。

③短調旋律でした。管と弦が交互に恐らくテーマの変奏を掛け合いましたが、既に余りにデフォルメされていて、原型をとどめず、モーツァルトの変奏曲と言えるのでしょうか?Hrn.のドールの音が他のHrn.奏者を圧倒していた。輝いていた。

④ズンズカズンズン、ズンズンズンズンと速いテンポで弦楽奏が力奏され、木管も鳴っていますが、あまり聞こえない。後半はTrmp.が聞こえますがすぐに弦楽奏と共に止みました。短い演奏。

⑤この辺短調が続きました。モーツァルトの原型はほとんど留めません。木管の緩い響きに対する弦楽の合いの手は速いテンポの強奏、後半はFl.類の速い変化に緩徐奏で応じた弦楽奏、次第に強い弓裁きでクレシエンドして、Fl.音を伴う急速な下降旋律へ変化、終焉部は穏やかなOb.の音で〆括るのでした。

⑥長調に転じました。速い木管のタラッラッタッタッタと刻むリズムに合わせてゆっくりと弦楽が奏され、Hrn.の弱音にモーツアルトのテーマがかすかに認められました。次いで弦楽奏もモーツァルトテーマ変奏を流し始め、Hrp.も聞こえました。モーツァルト変奏の最後の旋律の変奏もまた。金管がその線に沿って同様に鳴らし、最後のテーマの分散和音による短い変奏のFl.独奏は、恐らくレーガーらしさの現れなのでしょう

⑦明快なモーツァルト主題に回帰した金管+木管がゆったりと奏で、それを受け継ぐ弦楽アンサンブル。変奏というよりもモーツァルトそのものです。終焉部まで演奏、繰り返し部も同様。最後のFl.の共鳴管は良く鳴っていました。流石、ベルリンフィルの世界のパユですね。

 

⑧冒頭からモツを離れた流麗な切ない様な弦楽奏の旋律が流れだし、低音域のアンサンブルには管も参加して来ていました。Hrp.(2)+Fl.の合いの手が入るも、弦楽の低相の響きは管達の合同の力を得て分厚いアンサンブルとなり、この辺はレーガーの本領発揮と言った感じを受けました。中盤は低音弦の非常に渋い響きが流れ、次いでFl.∔Ob.等の木管に引き取られましたが、通奏低音の様に弦楽は底を弾き締め、続くOb.の調べにはモツ的変奏を感じつつすぐに弦楽の通奏低音奏に移行、高音部でのややモツ的弦楽アンサンブル等、この辺りはペトレンコ/ベルリンフィルの真骨頂発揮といった処で素晴らしいアンサンブルとその躍動する変化を見せつけて呉れました。何か交響曲の一節を聞かせて貰っている感じでした。それにしても終盤のFl.やHrn.の短い合の手はいい響きでした。パユとドールですから、ゴールデンコンビでしょう。めったに聴けない重奏です。一番長い変奏曲でした。

⑨最後の変奏曲のフーガは大いなる聴き処でした。冒頭のコンマスとセカンドのVn.ソロは歯切れの良い高音変奏で、バッハ的感触が広がりました。コンマスは樫本大進、ここでは、流麗なVn.の音を披露、次の「英雄の生涯」での長いソロ演奏の期待が高まりました。そして、その後ろのVn.奏者もカノン的に加わってさらには全Vn.アンサンブルに広がり、軽快な歯切れの良い調べは、何声部あるか分かりませんでしたが複雑に絡み合い、それに低音の木管も参加、次いでFL.Ob.も含め、Ob.はバッハ的調べの下行音をソロで吹き、その後もフーガ的進行は続きました。この辺りはレーガーが、もともとオルガン奏者だったキャリアとライプツィヒでの音楽院教授の経験により、バッハを十分知り尽くした作曲家であったが故のなせる技なのでしょう。

 全体的には、ベルリンフィルの演奏は、手練れのつわもの達が肩肘を張らずに心安らぎながら演奏している風で、ペトレンコも力は入れていますが、非常に楽しく指揮している様に見受けました。

この曲で、注目に値するのは、複数奏者によるアンサンブルの素晴らしさの他に、個人奏者の名人芸です。Hrn.のシュテファン・ドール氏、Fl.のエマニュエル・パユ氏。コンマスの樫本大進氏etc. その他Ob.Cl.も凄く良かった。

 

Ⅱ.R.シュトラウス:交響詩『英雄の生涯』

    

     《割愛》