HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東京バレエ団公演『ジゼル』千穐楽鑑賞

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【演目】バレエ・ジゼル 全二幕

【上演】東京バレエ団

【日程】2023.5.19. ~2023.5.21.(三日間)

 5月19日(金)19:00
 5月20日(土)14:00
 5月21日(日)14:00

【鑑賞日】2023.5.21.(日)14:00~

【会場】東京文化会館大ホール

【上演時間】約2時間10分(休憩1回含む) 

【管弦楽】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【指揮】ベンジャミン・ポープ

【出演】

〇ジゼル:足立 真里亜 Marie Adachi
〇アルブレヒト:宮川 新大 Arata Miyakawa


〇ヒラリオン:岡崎 隼也
〇ミルタ:政本 絵美
〇ドゥ・ウィリ:加藤 くるみ、榊 優美枝 


- 第1幕 -


〇バチルド姫:加藤くるみ
〇公爵:安村圭太
〇ウィルフリード:大塚卓
〇ジゼルの母:奈良春夏
◉ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):金子仁美-井福俊太郎、安西くるみ-後藤健太朗、湧田美紀-鳥海 創、工 桃子-樋口 祐輝
◉ジゼルの友人(パ・ド・シス):二瓶加奈子、三雲友里加、榊優美枝、長岡佑奈、平木菜子、富田紗永


- 第2幕 -


〇ミルタ:政本絵美

〇ドゥ・ウィリ:加藤くるみ

        榊 優美枝 

 

 

【Introduction(主催者)】

東京バレエ団の十八番、ロマンティック・バレエの真髄!
4年ぶりの海外公演を見据えて、東京でお披露目!

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 婚礼を前に死んだ若い女性の霊ウィリの伝説をもとにした、ロマンティック・バレエの名作「ジゼル」。
夢幻の輪舞を踊りながら夜の森を支配する、魔性のウィリたちの神秘的な美の世界と、死してその仲間となりながらもなおも恋人アルブレヒトを守るヒロインジゼルの至高の愛を描く物語です。
本作をかつて当たり役とした芸術監督斎藤友佳理の指導のもと、若手ダンサーたちが著しい成長を遂げた一昨年の公演は高い評価を得ました。また昨年秋、東京バレエ団は文化庁芸術祭において「ラ・バヤデール」で大賞を受賞していますが、バレエ・ブランの群舞の完成度は受賞理由の一つに挙げられたほど定評があります。
今年は7月にこの「ジゼル」を携え、コロナ禍以後中止を余儀なくされていた海外公演──初となるオーストラリア公演を実施。オーストラリア・バレエ団のシーズンプログラムの一つとして、メルボルンの劇場で11回の公演を予定しております。
充実したソリストの演技と比類のない群舞で、バレエ史に燦然と輝く傑作をどうぞ心ゆくまでお楽しみください。

【音楽】アドルフ・アダン
【振付】レオニード・ラヴロフスキー版
(ジュール・ペロー、ジャン・コラーリ、マリウス・プティパの原振付による)
【改訂振付(パ・ド・ユイット):ウラジーミル・ワシーリエフ
【美術】ニコラ・ブノワ

 

【粗筋】

《第1幕》
 ぶどう狩りの季節を迎えた美しい山間の村。美しい娘ジゼルが母親とともに住んでいる。立派な服装をした青年が、ジゼルの家の近くにある小屋に入っていく。それと入れ違いに若い森番ヒラリオンがやってきて、今朝も射止めた鳥を愛する ジゼルの家にそっと置いて帰っていく。
間もなく、小屋から村人風の服装に着替えた青年が出てくる。彼こそアルブレヒト伯爵で、ジゼルを見初め、変装してはたびたび村を訪れて彼女との逢瀬を楽しんでいる。今日も狩りの途中でそっと抜け出し、人目を忍んでジゼルに会いにきたのである。アルブレヒトは、たしなめる従者ウィルフリードの言葉も聞かず、彼を立ち去らせるとジゼルを呼び出す。

 ジゼルはアルブレヒトの愛を花占いで確かめる。凶と出たため、慌てたアルブレヒトは花びらを一片そっと捨てて吉と出るよう細工し、ジゼルを安心させる。

 二人の様子をうかがっていたヒラリオンは、自分こそが本当の愛を捧げているのだとジゼルに訴え出るが、アルブレヒトは命令するかの如く、この純朴なヒラリオンをその場から立ち去らせる。

 このときヒラリオンは、ジゼルと戯れるこの男が何者であるかを暴く決心をする。
ぶどう狩りの若者たちが集まってきて踊りが始まるが、ジゼルの母親は彼女が心臓の弱いのを理由に踊りをやめさせ、家の中に入れる。

 そのとき、角笛が鳴って、貴族たちが狩りにやってきたことを告げる。慌てたアルブレヒトは森に隠れる。

 アルブレヒトの慌てぶりをいぶかしみ、ヒラリオンはアルブレヒトの小屋にあったアルブレヒトの剣を発見する。村人に変装しジゼルに愛を誓っている男が、実は伯爵であることを確信したヒラリオンは、狩りの角笛が近づいたのを聞き、ひとまず隠れる。

 クールランド公爵はバチルド姫らとジゼルの家で休息することにし、飲み物の接待をジゼルの母に頼む。バチルド姫のドレスの美しさに目を奪われたジゼルは、思わずその裾に手を触れてしまう。その純真さに打たれたバチルド姫は、自分のしていた首飾りをジゼルに贈ることにし、手ずからジゼルの首にかけてやる。公爵は、出発するときは角笛で合図するよう従者たちに言いつけ、角笛をジゼルの家の戸口にかけ、休息のため中へ入る。

 ヒラリオンは剣と角笛の紋章が一致することを確認し、アルブレヒトが伯爵であることを確信する。やがて収穫から帰ってきた若者たちの踊りが始まる。

貴族の一行が去ったと思い込んだアルブレヒトが戻ってきてジゼルと踊っていると、ヒラリオンがそれに割って入る。そしてジゼルに向かって、アルブレヒトが実は伯爵であることを知らせる。アルブレヒトはヒラリオンを剣で倒そうとするが、ヒラリオンは身をかわし角笛をとって吹き鳴らす。家から出てきた公爵とバチルド姫はアルブレヒトが村人の服装をしていることに驚く。アルブレヒト伯爵はバチルド姫の婚約者だったのだ。全てを知ったジゼルは混乱のあまり気を失ってしまう。

意識を取り戻したジゼルはもはや正気ではなく、花占いどおり凶であったという仕種をし、皆の涙を誘う。ヒラリオンに強く呼びかけられて一瞬正気に戻ったジゼルは、母親の胸にとびこみ、続いて一度は愛したアルブレヒトに駆け寄るが力尽き、息絶えてしまう。

 ジゼルの死に、取り乱したアルブレヒトはヒラリオンに襲いかかるが、ウィルフリードに押し止められる。ジゼルを死に追いやったのは、ヒラリオンではなく偽りの愛でジゼルを騙したアルブレヒトであると疑っている村人もいた。

 

《第二幕》
 森の中の沼のほとり。巨木のもつれあった枝や、垂れ下がったつるが妖気迫る雰囲気を醸し出している。

 夜更け。月光に照らされ、ヒラリオンがジゼルの墓に近づいてくるが、鬼火が飛び交うのを見て、恐ろしさのあまりその場を逃げ去る。

 おごそかな静寂の中、ウィリの女王ミルタが現れる。ウィリは婚礼前に死んだ娘の霊で、彼女たちは通りかかる男たちを誘い込み、息絶えるまで踊らせるのだ。

ミルタはジゼルの霊を呼び出して蘇らせ、ウィリたちは新しい仲間を取り巻いて輪舞を踊りはじめる。そのとき誰かの近づく足音が聞こえ、ウィリたちは墓地へ隠れる。


 アルブレヒトが白百合の花を抱えてジゼルの墓にやってくる。悔恨の情に苛まれるアルブレヒトの姿に、今は偽らぬ愛を見たジゼルは、彼をウィリたちの目につかぬよう森の奥に誘う。

そのあとへ、怯えたヒラリオンが走り込んでくる。ウィリたちに捕らえられたのだ。ヒラリオンは許しを乞うがかなわず、息も絶え絶えになるまで踊らされ、ついには沼に突き落とされてしまう。

 やがてアルブレヒトもウィリたちに捕らえられ、沼地に追い込まれてくる。ジゼルはアルブレヒトを救おうと、ミルタに懇願するが彼女は冷たく、踊り続けることを命ずる。必死にかばうジゼル。最後の力を振り絞って踊るアルブレヒト。

 アルブレヒトの命の灯火がまさに消えようとする寸前、夜明けを告げる鐘の音が響き、彼は救われる。ウィリたちは朝霧のなかに静かに消え、次第に明るさを増す森に二人の永遠の別れの時が訪れる。やがてジゼルは墓の中へと消えていき、アルブレヒトは朝の光のなかに一人虚しく佇むだけだった。

 

 

 東京バレエ団の『ジゼル』はボリショイ劇場で1944年に初演されたラブロフスキー版によるもの。ペロー、コラーリの原典とプティパの改訂版を厳密に照合し、それらの振付演出のすぐれた部分をことごとく復元保存し、磨き上げ、この名作の完璧な舞台化に成功した『ジゼル』の決定版といわれている。

 東京バレエ団では1996年に15年ぶりに復活上演し、その際、舞台装置や衣裳を完全に一新した。初演の舞台装置は、ディアギレフのバレエ・リュスとの縁も深い、名匠アレクサンドル・ベノワのデザインを使用していたが、復活に際し、アレクサンドルの息子でスカラ座の舞台装置を多く手がけて成功したニコラ・ベノワのものを採用した。

 また、2003年にペザントの踊りがパ・ド・ドゥからウラジーミル・ワシーリエフ振付によるパ・ド・ユイットに改訂された。

 

【上演の模様】

第一幕で見ごたえのあったのはやはり、村の若者たちの踊りの場面でしょう。幾つものカップルが互いに手を携えて見事に舞曲を踊るのでした。


 この流れで、東京バレエ団が独自に採用した踊り、「ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):長谷川琴音-池本祥真、髙浦由美子-岡﨑 司、中沢恵理子-生方隆之介、加藤くるみ-大塚 卓」簡単に言うとパ・ド・ドゥが四組一緒に踊る場面です。結構華やかで見ごたえの或る場面でした。 

 この日の主役二人は足立真里亜さんと宮川新大さん、足立さんは初めて見ましたが、卒ない踊りでスピード感も有りました。特に狂気の場面は勢いがあった。宮川さんはこれまで何回も観ていますが、矢張りスピ-ド感の或る跳躍も高く、スケールの大きい踊りを披露していました。足立さんと宮川さんの練習風景です。


 この物語では、ジゼルが恋をしてしまうアルブレヒト(伯)は伯爵であることを隠してジゼルに接近しているのです。ジゼルを好きな村人(狩人)ヒラリオンは損な役回りですが、許婚まで有りながら村娘のジゼルと相思相愛になってしまうアルブレヒトの正体を暴くのです。危うく剣で刺されるのを避けたと思ったら、今度はジゼルがいわば心に剣が刺さったのでしょう。おかしくなってしまって狂う様に踊り、斃れてしまうのです。アルブレヒトは、許婚バチルド姫が嫌いだったのでしょうか?ジゼルには優しさを見せた姫なのですよ。それとも単なる遊びや軽い気持ちでジゼルに接近したのなら何をか謂わんですね。許さざる行為です。ヒラリオンの警告が正しいことになります。

   ヒラリオン役岡崎隼也

 

 

《第二幕》

 もう既にタイトルロールは死んでしまっている訳ですから、ここは所謂黄泉の世界、暗く静かで寂しく悲しい場面です。オペラでもこうした黄泉の国に愛する人を訪ねて行く場面がよくあります。物語の最たるものはダンテの神曲でしょう。様々な芸術に引用されたりしています。

 ここは東京バレエ団のコールドバレエの見どころ満載です。黄泉の少女たち、恐らく死んでも死に切れなかった少女たちが多いのでしょう。ウイリと呼ばれる一種の精霊となって、黄泉の世界に迷い込んだ男たちを虜にしてしまうのです(そして恨みを晴らすのでしょう。)

 

ジゼルとお墓

 

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////(2022-10-22)HUKKATS Roc.(抜粋再掲)

 新国劇バレエ『ジゼル・初日』を観る
 

【日時】2022.10.21.(金)19:00~

【会場】NNTTオペラパレス

【演目】ジゼル全二幕

【公演】新国立バレエ団

【出演】

〇ジゼル:小野絢子

 14年服部智恵子賞、16年橘秋子賞優秀賞、19年芸術選奨文部科学大臣賞などがある。プリンシパル。

 

〇アルブレヒト:奥村康祐

 12年大阪文化祭賞奨励賞、14年舞踊批評家協会新人賞、16年中川鋭之助賞、22年芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。プリンシパル。

〇ヒラリオン:福田圭吾

〇ミルタ:寺田亜沙子

〇ウィルフリード:清水裕三郎

〇ベルタ:楠元郁子

〇クールランド公爵:夏山周久

〇バチルド:益田裕子

〇ペザント パ・ド・ドゥ:池田理沙子/速水渉悟

〇モイナ:廣川みくり

〇ズルマ:飯野萌子

〇他ペザント達、ウィリ達多数。

【芸術監督・演出】吉田都

【振付】ジャン・コラリ / ジュール・ペロー/
マリウス・プティパ

【改訂振付】アラスター・マリオット

【音楽】アドルフ・アダン

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指揮】アレケセイ・バクラン

【美術・衣裳】ディック・バード

【照明】リック・フィッシャー

 

≪第一幕≫

 冒頭、フルートがハープの伴奏で、綺麗な音を奏でて幕が開くと、舞台は田舎の風景、奥中央には白樺の木でしょうか、林があって手前の広場左右には、左に二階建ての農家、右手に大き目の物置風の建物があります。農民たちが二十人もいましょうか、忙しなく動いたり踊ったり、ジゼルは左の家にいる様です。暫くすると出て来て、農民の服装をして農民を装ったアルブレヒト(実は、彼は貴族の王子なのです)と仲良く踊ったり、何やら話したり、村民に混じり踊ったりしていました。

 タイトルロール役の小野さんは、随分と手足の動きもしなやかに、優雅な踊り振りでしたし、その相手役の奥村さんの踊りは、全体的に跳躍、回転も、フィギュアスケートの様なスピード感よりも、フワッとしたこれまた優雅な大きく見える立派なものでした。

 ジゼルは、この第一幕前半が一番元気があって幸せそうに見え、踊りも生き生きとしたものだったので、大きな拍手浴びていました。またこの二人によるパ・ド・ドウは息がピッタリあっっていて、例えればペアフィギュアの如く、滑る様ななめらかな動きでした。 更にこの二人は、踊り以外の演技も上手なものでした。

 一幕後半で、ホルンの響きとともに、兵士を伴った公爵(アルブレヒトの叔父)が狩りの途中、村広場に登場し、一緒に富豪の娘、バチルドを伴っています。彼女はアルブレヒトの許嫁で、村人に扮したアルブレヒトの正体を、ジゼルに恋心を抱くヒラリオン(きこり)が、ばらしてしまいました。仕方なくアルブリヒトは許嫁バチルドにひざまづいて挨拶、これを見たジゼルは大ショックを受けるのでした。その後の小野さんの踊りは、いかにもショックを受けた娘を表現した纏まりの付かない様子で、さらには狂乱状態に陥ったジゼルの踊りや演技により、ジゼルの受けた心の打撃が如何に大きかったかを見事に表現していました。そしてジゼルは倒れて死んでしまうのです。

 又前後しますが、公爵たちの前で、踊りを披露する村人たちの群舞も、リズミカルな民族舞踊風で大変見ごたえがありました。

 

《第二幕》

  亡くなったジゼルの魂が存する黄泉の世界の話です。幕が開くと場面は暗い正面遠くに墓標がいくつも見えてその夜空には丸い月が掛かっています。 しかも舞台両サイドには不気味な太い木や根っこが配された如何にもこの世から隔絶した世界を上手にセットで表現していました。ここには、若くして死んだ生娘たちの魂が、夜毎にお墓から抜け出して、ウィリとなって踊るのでした。そのコールド・バレエの踊りは他の演目でもいつもそうなのですが、白いロマンティック・チュチュを羽織り、特にこの演目では、黄泉のウィリ達ですからベールも被り、全体として死に装束に見える多くのウィリ達の踊りは、特に清潔さに満ちた美しい群舞でした。幕が上がって最初はウィリ達のお頭と言うか夜の女王的ダンサーであるミルタ役をソロで踊った寺田さんは、見事に爪先立ちで猛スピードで舞台を横切り、又もう一度戻って行くその速さには少しびっくり、相当なテクニックを身に着けたバレリーナーだと思いました。その後のソロの踊りも立派なものでした。また表現力というか演技もうまい。アルブレヒトやジゼルが懇願のポーズをとっても無視する様子は、見るだけで何を語っているか聴衆に伝わってくる説得力が有るものでした。

 それにしても最後、結局アルブレヒトはジゼルに黄泉の世界まで会いに行って、しばし再会したものの、ミルタ率いるウィリ達に阻まれ、二人は結ばれず、永遠の別れとなってしまうのは、余りに可哀そうな結末ですね。他の演目やオペラでも、死んでしまった恋する人に会いに行って、遂にはその思いが達成されるハッピーエンドの物語は多いのですが、ジゼルの様に悲劇が悲劇で終結するのは、もう少しどうにかならなかったものかと思ったりします。が、それが実際の世の中の厳しさを的確に反映したストーリーなのかも知れません。余りにも酷な人生が世の中には何と多い事でしょう。