HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東京バレエ団『ラ・バヤデール』二日目鑑賞

【日時】2022.10.13.(木)13:00~

【会場】東京文化会館大ホール

【演目】ラ・バヤデール(マカロア版)全三幕

【振付・演出】ナタリア・マカロワ(マリウス・プティパ版による)

【音楽】ルトヴィク・ミンクス

【装置】ピエール・ルイジ・サマリターニ

【衣裳】ヨランダ・ソナベント

【出演】東京バレエ団

【管弦楽】東京シティフィルハーモニック管弦楽団

【指揮】フィリップ・エリス

【配役】

〇ニキヤ(神殿の舞姫):秋山 瑛

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〈Profile〉

 7歳よりバレエをはじめる。2012年に東京バレエ学校を卒業後、リスボンの国立コンセルヴァトワールで2年間学ぶ。その後、イタリアのカンパーニャ・バレット・クラシコに入団、2015年まで、パレルモ・マッシモ劇場、ミラノのテアトロ・ヌオーヴォ、モデナのテアトロ・ミケランジェロ、メッシーナのテアトロ・メトロポリタンなどイタリア各地の劇場で踊り、『パリの炎』、『くるみ割り人形』、『眠れる森の美女』、『エスメラルダ』などの作品の抜粋に出演した。同カンパニー在籍中には、イタリアのMabコンクールで特別賞を受賞、また、ドイツのタンツオリンプでは銅賞を受賞した。2016年1月に東京バレエ団に入団。2022年4月にプリンシパルに昇進した。主なレパートリーに、ブルメイステル版『白鳥の湖』のパ・ド・カトル、四羽の白鳥、ナポリのソリスト、『ドン・キホーテ』のキトリ/ドゥルシネア姫、キトリの友人、キューピッド、4人のドリアード、『くるみ割り人形』のマーシャ、スペイン、フランス、マカロワ版『ラ・バヤデール』の「影の王国」ヴァリエーション1、、8人の巫女、『海賊』のメドーラ、海賊たち、薔薇、『ジゼル』のジゼル、『ラ・シルフィード』のエフィー、『パキータ』の第2ヴァリエーション、『タリスマン』のパ・ド・ドゥ、子どものためのバレエ『眠れる森の美女』のオーロラ姫、フロリナ王女、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』のキトリ/ドゥルシネア姫、『ザ・カブキ』の現代のおかる、ベジャール版『くるみ割り人形』の妹のクロード、『M』の円舞曲、『ギリシャの踊り』のパ・ド・ドゥ、ベジャール版『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥなどがある。

 バレエ団初演作品にプティ振付『アルルの女』(2017年)、バランシン振付『セレナーデ』(2018年)、プティパ振付『騎兵隊の休息』のパ・ド・ドゥ(2018年)、『海賊』のオダリスクのヴァリエーション2(2019年)、『くるみ割り人形』のマーシャ(2019年)、金森穣振付『かぐや姫』第1幕(2021年、世界初演)のかぐや姫などがある。

プリンシパルに昇格。

 

〇ソロル(戦士):秋本康臣

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〈Profile〉

Yasuomi Akimoto
神奈川県出身

 3歳よりバレエを始める。2000年、12歳でボリショイ・バレエ学校に留学。06年に18歳で同校を卒業した。  05年モスクワ国際バレエコンクールでファイナリスト、06年タンツオリンプ第3位。14年ペルミ国際バレエコンクール"アラベスク"で銀賞を受賞。国内のカンパニーを経て、チェリャビンスク・バレエに入団。プリシパルとして活躍。『くるみ割り人形』のくるみ割り王子、『ドン・キホーテ』のバジル、『レ・シルフィード』の詩人、『ジゼル』のアルブレヒト、『リーズの結婚』のコーラス、『眠れる森の美女』のデジレ王子、青い鳥、『白鳥の湖』ジークフリート王子、『ラ・バヤデール』のソロル、ブロンズ像などを踊っている。 15年夏、東京バレエ団にプリンシパルとして入団した。  以後のおもなレパートリーに、ブルメイステル版『白鳥の湖』のジークフリート王子(16年、バレエ団初演)、『くるみ割り人形』のくるみ割り王子、『ドン・キホーテ』のエスパーダ、『ラ・バヤデール』のソロル、ワシーリエフ振付子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』のバジル、『パキータ』のプリンシパル、ベジャール『ザ・カブキ』の由良之助、塩冶判官、『くるみ割り人形』のM...、グラン・パ・ド・ドゥ、『ボレロ』、『第九交響曲』、ノイマイヤー『スプリング・アンド・フォール』の主役、アシュトン『真夏の夜の夢』のオベロンなどがある。  バレエ団初演作品に、『ベジャール・セレブレーション』(『バロッコ・ベルカント』よりパ・ド・シス)(17年)、キリアン『小さな死』(17年)、フォーサイス『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』(15年)、バランシン『セレナーデ』(18年)、ロビンズ『イン・ザ・ナイト』(16年)などがある。  16年9月、17年3月には勅使川原三郎演出のオペラ『魔笛』に出演した。  20年、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

 

〇ガムザッティ(ラジャの娘):二瓶 加奈子

〇ハイ・ブラーミン(大僧正):安村 圭太

〇ラジャ(国王):中嶋 智哉

〇マグダヴェーヤ(苦行僧の長):井福 俊太郎

〇ブロンズ像:生方 隆之介

<第2幕 "影の王国">

第一ヴァリエーション:涌田 美紀

第二ヴァリエーション:金子 仁美

第三ヴァリエーション:長谷川 琴音

 

【粗筋】

バヤデールとはインドの寺院に仕える舞姫のこと。異国情緒豊かな古代インドを舞台に、主人公ニキヤと恋人の戦士ソロル、そしてニキヤの恋敵である王女ガムザッティとの三角関係を軸に、愛憎渦巻く宮殿の陰謀に巻き込まれる悲恋を描く、古典の名作である。

時は古代、南インド。寺院の巫女ニキヤと戦士ソロルはひそかに愛し合い、神に結婚の誓いを立てる。しかしラジャ(国王)に王女ガムザッティとの結婚を命じられたソロルは、権力と彼女の美貌に抗いきれず承諾してしまう。一方、ニキヤに求愛を拒まれた大僧正は、ニキヤとソロルの関係をラジャに告げる。ガムザッティはニキヤにソロルと別れるよう詰め寄るが、ニキヤは拒否。ラジャたちはニキヤの毒殺を画策する。
 ガムザッティとソロルの婚約披露の宴。ソロルに裏切られ、悲しみに沈むニキヤ。祝いの舞を命じられた彼女に、追い討ちをかけるようにガムザッティの魔の手が迫る。踊りの最中、毒蛇に噛まれたニキヤは絶望の中で死んでいく。
 罪悪感に苦しむソロルは、幻覚の中で再びニキヤとめぐり逢う。ガムザッティとの結婚式が行われるが、神聖な誓いを破ったソロルと愚かな人間たちに怒れる神の制裁が下り、寺院は崩壊、人々は死に絶える。ニキヤとソロルの魂は天国で結ばれる。 

 

《第一幕》

第1場:神殿の外、聖なる森の中

大規模なトラ狩りから戻ってきた戦士たちのところへ、国で最も高潔な戦士ソロルが現れる。彼は聖なる火の前で、ひとり静かに祈らせてくれと頼むが、戦士たちが立ち去るとすぐに、ファキール(=行者、托鉢者)の首領マグダヴェーヤを呼びにやらせる。ソロルは、彼に踊り子ニキヤとの逢引の手はずを整えて欲しいと頼む。そこへ神殿の僧侶たちと大僧正が登場し、マグダヴェーヤに祭りのために聖火を準備させる行者ともを集めよ、と命じる。巫女たちが登場するが、その中には特に選ばれた神聖な巫女ニキヤがいた。大僧正は彼女の美しさに圧倒され、胸のうちを打ち明けるが、ニキヤは“神の人”だとして相手にしない。自分の愛の告白に対して彼女の反応はあまりにも冷たく、大僧正は深く傷つく。
 祭りが始まると、巫女たちはファキールたちに水を運んでくるが、その時マグダヴェーヤはニキヤにソロルからのことづけを伝える。ニキヤはその申し出を受けるが、そのやりとりを、大僧正に目撃されて邪推される。儀式も終わり、司祭たちは神殿に戻って行く。マグダヴェーヤはソロルを呼び、ニキヤが来るまで森の中に隠れているよう伝える。ほどなくして会ったふたりは、聖火の前で永遠の愛を誓いあう。が、まさにその時、大僧正が神殿の中からふたりを見ていた。マグダヴェーヤはあわててふたりを離すが、大僧正は嫉妬に狂い、ソロルを殺すための力を与えよ、と神々に祈願する。

 

第2場 宮殿内の一室

ソロルを讃える席に、多くの戦士たちが招かれている。ラジャがその場でソロルの勇気と豪胆に対し、娘のガムザッティとの結婚を許すと発表。娘に引き合わされたソロルは、顔を覆ったヴェールを持ち上げるや、あまりの美しさに打ちのめされてしまう。ニキヤに永遠の愛を誓ったものの、彼にとってガムザッティの魅力とラジャの期待に応えたいという願望は、抵抗しがたいものだった。
 婚約したふたりのために、さまざまな余興が行われるが、大僧正の到着とともに静まる。彼はラジャと個別に話をしたいと申し出て、ニキヤとソロルが恋仲であることを告げる。大僧正はラジャがソロルを殺すことを期待していたのだが、王は逆にニキヤを消すべきだと判断し、大僧正を落胆させる。
 一方、この会話を聞いていたガムザッティは、ニキヤを自室に呼び出す。ソロルとの縁を切るように、宝石や贈り物でニキヤを買収しようと試みるが、彼女はまったく応じない。そればかりか、あまりの絶望からガムザッティに向かって刃物を突きたてようとするが、召使のアヤに押さえ込まれてします。ニキヤが部屋を走り去った後、ガムザッティは父ラジャと同じように、彼女を殺さなければ、と決意する。

 

第3場:宮殿の中の庭

 ガムザッティとソロルの婚約を祝い祝祭が催されている。大僧正は婚約の儀式のためにニキヤを連れて来たが、彼女はこの婚約を受け入れることができず、踊りで悲しみを表現する。召使アヤがソロルからの贈り物だといって花かごを渡し、ニキヤの心は慰められたが、この花かごは、ラジャとガムザッティが贈ったもので、花々の中には毒蛇が隠されていた。花の香りを嗅ごうと、かごを持ち上げた瞬間、ニキヤは蛇にかまれてしまう。大僧正が解毒剤を与えようとするが、ソロルがラジャとガムザッティに連れて行かれるのを見たニキヤは、このまま死んでしまおうと、心を閉じる。

《第二幕》

第1場:ソロルのテントの中

 ニキヤの死で絶望したソロルは、マグダヴェーヤから悲しみをやわらげるように渡されたアヘンを吸っている。

 

第2場:影の王国

ソロルは幻覚で死んだニキヤの姿を見る。彼女は影の王国に現れ、その姿はコールド・ド・バレエの群舞によって幾重にも重なってゆく。ソロルは聖火の前で、ともに愛の踊りを踊ったニキヤを繰り返し思い起こす。

 

第3場:ソロルのテントの中

 戦士たちがテントに入って来てガムザッティとの結婚の儀式へと連れ出そうとする。が、その間にもソロルはニキヤの幻に惑わされ、取り憑かれている。

 

《第三幕》

神殿

 偉大なる仏陀の膝元で、ブロンズ像が舞う中を、大僧正と僧侶たちがガムザッティとソロルの婚礼の支度を整えている。婚約したふたりが入場し、踊り子たちが集まって来て、神殿の外で燃えている聖なる火を思わせるようなキャンドル・ダンスをふたりのまわりで舞う。ラジャ、ガムザッティ、ソロルも踊るが、彼だけに見えるニキヤの幻に取り憑かれたままだ。不思議なことに、踊りの最中に、以前ニキヤが贈られたものと同じ花かごが持ち込まれたため、ガムザッティは恐怖と罪悪感に駆られ、父に一刻も早く婚約の儀式を終えるようにせがむ。大僧正が祭壇に上がり、式を進めるが、ソロルはどうしても誓いの言葉を口にすることができない。これまでのいきさつに怒っていた神々は、ついに神殿を破壊し、その荒れ跡に人々を埋め殺してします。そんななかで、ニキヤとソロルの魂だけが再び出会い、永遠の愛で結ばれるのでした。

 

【上演の模様】

    いつもの事ながら、会場のロビーはコンサート会場などと比べると華やいだ雰囲気が漂っています。


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    ただ今日はいつもとやや異なっていて、随分若い人のざわめき声や歓声が聞こえます。よく見ると女子高生がたくさん来ていました。恐らく学校のカリキュラムの一環として、バレエ観劇に来ている感じ。若い時に観ておくことは非常に大事だと思います。それだけ恵まれた環境にいるのでしょう。 

 

 さて演技・演奏の方は、第一幕から第三幕まで、見ごたえ・聴きごたえのある場面が多く、ニキヤが悲しげな音楽とともに登場、踊りで悲しみを表現しますが、後半、花かごを受け取った後は、喜びの踊りに変わる踊り、 また壺の踊り、太鼓の踊り、ガムザッティとソロルのグランパドドゥ、ここで見せるガムザッティのイタリアンフェッテとグランフェッテ、ブロンズ像の踊り、などなど。随分とバレエに堪能できる演目だと思いました。でも何といっても圧巻なのは、(多分コンマスの)ヴァイオリンソロに合わせて踊る、ニキヤとソロルのパ・ド・ドゥ。とても美しい旋律を奏でて、それに合わせる二人のプリンシパルの息の合った踊り姿に、うっとりと見とれない訳にはいかないでしょう。この演目では、ヴァイオリンソロの出番が多いですね。ヴァイオリン以外では、三幕で、チェロソロに合わせてガムザッティが踊っていました。チェロも独特のいい音を出していました。つまるところ、これ等の舞曲を作曲した、レオン・ミンクス(本名、ルートヴィッヒ・アロイジウス・ミンクス)が素晴らしくいい音楽を残したからです。彼は、1826年にチェコのブルノ近郊生まれ、1917年にウィーンで亡くなったと言いますから随分長生きの作曲家でした。主としてペテルブルグで活躍し、振付師マリウス・プティパの協力を得て、現マリインスキー劇場のために舞踊音楽を作りました。「ラ・バヤデール」の他に「ドン・キホーテ」「パキータ」なども作曲しています。上記した、美しいヴァイオリンソロは、自らもヴァイオリニストだったそうですから多くのヴァイオリン名曲が頭に入っていて、ルツボの中でそれらが溶け合って生まれたものなのでしょう。またダンサーの皆さんダンスと共に演技も上手で、主役のニキヤ役秋山さん、ガムザッティ役二瓶さんの表情、特に目つきと言うか眼力が場面で効いていました。 ❝目は口ほどにものを言う❞ですね。兎に角バレエでは一種のパントマイム、無口なのですから、大きな声で歌うオペラとは大きな差異が有ります。(音楽+踊り+演技)のバレエと(音楽+歌+演技)のオペラとどちらが有利か?と訊かれてもどちらとも言えません。何故なら音楽はどちらもオーケストラの場合が多く同じです。演技もどちらも演劇俳優の様な本格的なことは出来ないでしょう。従って踊りと歌ですが、何れも高度な技術を要して、一方は目に一方は耳に訴えます。技術の高低は一概に比較できないのです。耳よりは目に入って来る情報は一般に多いとされますが、それも条件に依るでしょう。ここで、バレエがオペラがやっている情報提供の一つである字幕的な物の利用を何故しないか不思議に思います。オペラの歌は外国語で、日本の多くの聴衆は意味が分からないという前提で字幕を流します。それにより舞台上で何が起きているかよく理解できます。バレエもストーリ―を良く知っているファンはいいのですが場面場面の説明字幕を流せば、あらゆる聴衆はさらによく理解できるようになると思うのですが、如何がでしょうか。

 

【Some Scenes(順不同)】

<東京バレエ団2011年公演>

 

 

<第二幕グランパ>ミンクス・バレエ

 

<第三幕影の王国/精霊たちの踊り>マリンスキー・バレエ