HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

オペレッタ/J.シュトラウス『こうもり』初日鑑賞at 日生劇場

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 日本国内の主たるオペラ上演は、新国立劇場主催の他に藤原歌劇団公演、二期会公演によるものが多く、NBS(日本舞台芸術振興会)主催のオペラは、主として海外オペラ劇場の来日公演を扱っていたので、コロナ禍の昨今は皆無です。その他先日のサントリホール主催の「ホールオペラ」や東京では各区立ホールや私立劇場において、小さい規模のオペラが開催され、年間としては、相当数上演されている様です。 表記のオペレッタは、東京二期会が、創立70周年記念としてニッセイ文化振興財団(日生劇場)や文化庁他の協力を得て上演されたものです。プログラムの概要は次の通り。

【日時】2021.11.25.(木)18:30~

【会場】日生劇場(日比谷)

【出演】ダブルキャストで上演されます。

 (第1日から奇数日)  (第2日から偶数日) 

アイゼンシュタイン(バリトン)

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又吉秀樹

 

(ルナール侯爵に変装)

 

小林啓倫

ロザリンデ(ソプラノ)     

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幸田浩子

(ハンガリー公爵夫人に変装)

 

 

木下美穂子 ※

フランク(バス)

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斉木健詞

(刑務所長

、シュヴァリエ・シャグランに変装)

杉浦隆大

オルロフスキー(メゾソプラノ)

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郷家暁子

 

(女優オルガに変装)

 

成田伊美

アルフレード(テノール)

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澤原行正

(ロザリンデの元彼、夫に変装)

 

金山京介

ファルケ(バリトン) 

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宮本益光

 

(こうもり博士)

加耒 徹

ブリント(テノール)

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髙梨英次郎

 

(弁護士)

大川信之

アデーレ(ソプラノ)

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高橋 維

(小間使い、

女優オルガに変装)

 

雨笠佳奈

イーダ

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渡邊 史

(アデーレの妹)

内山侑紀

フロッシュ

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森 公美子 (全日出演)

 

(監獄の看守)

 

 

 

 

 

オペレッタ(喜歌劇)全3幕

【日程】11/25(木)~11/28(日)

日本語字幕原語(ドイツ語)歌唱、

日本語台詞上演


【台 本】カール・ハフナー、リヒャルト・ジュネー
【原 作】アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ『レヴェイヨン(夜食)』


【作 曲】ヨハン・シュトラウスII世                 

【管弦楽】東京交響楽団                      

【指 揮】川瀬健太郎  

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【合唱指揮】根本卓也  

                                        【演 出】アンドレス・ホモキ  

                                   

【演出助手】上原真希  

                                  

【舞台監督】幸泉浩司   

                             

【公演監督】加賀清孝   

                                      【舞台美術】ヴォルフガング・グスマン  

                               

【照明】フランク・エヴィン

 

【粗筋】 実はこの公演に関係する簡易版「こうもり」の上演を先月末に鑑賞しました。その時の記録に 概要や粗筋等を記しましたので、文末《2021,10.30/ hukkats記事(再掲)》を参照下さい。勿論出演歌手、歌の言語などは異なっていますが。

 

【今回の上演の模様】

 平日の上演でアフター5とは言え、18:30開演なので、遅れてくる人もかなりいたのでしょう。ホール座席は、7割程度の入りの様に見えました。空席もあちこちあります。でも通常オペラ観客は、年配者や老人が多いのですが、今回は気軽なオペレッタなので、若い女性たちも結構見かけました。2階の最前列だったので、舞台が良く見えました。ただオケピットは一部しか見えず、かなり狭いオケピットなので、二管編成8型の小編成かも知れません。

 このオペレッタは、通常のオペラ・ブッファ(台詞はレチタティーヴォ)と比べると全体的に台詞(せりふ)が占める割合が多く日常会話、しかも日本語で話されるので筋道が良く分かると思いました。

《序曲》

 今日の器楽構成は、二管編成(Ft2、Ob2、Cl2、Fg2、Hr4、Trmp2、Trmb3、Timp1、(小太鼓:大小2個、大太鼓、鐘、スプローネ (拍車)、トライアングル、シンバル、チューブラーベル、弦五部8型?)

  軽快なウィンナーワルツのリズムに乗った有名すぎるメロディが鳴り響き始めました。Obソロがいい音を出している。かすかな鐘の音も聞こえます。指揮の川瀬さんは、かなりせわしくタクトを振っている。手を大きく滑らかに動かし、出てくるオケの音と一体(当たり前かな?)になっています。下半身は席からは見えませんが、おそらくステップを踏んだり飛び跳ねたり、体全体を使ってエネルギッシュに指揮していたのだと思う。オペレッタの歌、セリフが始まる前の序曲としては、十分立派な演奏でした。幸先良い予感のする指揮、演奏でした。

 

《第一幕》アイゼンシュタイン邸の居間

 幕があくまで舞台上には大きな白い布で覆われていた舞台セットが、現わになりました。部屋の奥には左右に二つのかなり大きな洋服箪笥が、手前には幾つかのソファーと右側に大きなホールクロック、中心寄りにピアノ(ハープシコード?)が置いてありました。

 外からアイゼンシュタイン夫人ロザリンデの元彼、アルフレード(澤原)の歌声が聞こえます。ロザリンデの夫が収監されることを知って間男にやって来たのでしょうか?これは「こうもり博士」、ファルケの差し金なのでしょうか。小間使いのアデーレ(高橋)と夫人ロザリンデ(幸田)が登場、高橋さんは、最初からコロラテューラの歌声と共に現れますが、少し声が弱い、速い♪の切れが良くない。休暇が欲しいと申し出ても夫人は認めません。夫が収監されるという理由で。続く幸田さんとアデーレの二重唱では幸田さんは奇麗なソプラノを発声しており、声にはかなりの強さを感じます。

 そうしていると外からアルフレードが入って来てワインのボトルを注ぎ始め、アデーレの運んだ料理(豚の頭のローストか?豚口にはリンゴをくわえている)を食そうとし、また盛んに夫人をナンパしようとするも夫人に拒まれ、出て行って!出ていくよ!と押し問答しているうちに、二人は接近しソファーに倒れてしまう、あわよくばの場面で、突然主人アイゼンシュタイン(以下Eizsnと略記)が帰ってきました。慌てて奥右手の洋箪笥に隠れるアルフレード。

 弁護士のプリントもEiznにすぐに追いつき、この三者(ロザリンデ、Eizsn、プリント)で自分の言い分を主張する三重唱を歌いますが、喧騒そのものでした。

 弁護士を家から追い出した後、やってきた「こうもり博士」ことファルケとEizsnは入牢の前に晩さん会に行って楽しもうと算段します。ファルケ役の宮本さんの歌声は、安定した音程のバリトンで、力強さもありました。

 結局ロザリンデ、Eizsn、アデーレ三者三様、それぞれの思惑通り、偽装工作がうまく行き、晩餐舞踏会に行くことになりました。嬉々として歌う三重唱では先ずロザリンデのアリア『So muss allein ich bleiben』が歌われます。続いて三人で、共に悲しい振りをして歌うのですが、つい嬉しさを隠しきれなく速いワルツに合わせてステップを踏む始末。この辺が、このオペレッタの陽気な処、面白い処でもあります。

 この楽章14場のNr.5 finaleでは皆が退出しロザリンデだけが残ったところにアルフレードが衣装タンスから出てきて、またワインを傾け「酒の歌」が歌われます。アルフレード役の澤原さんの声は、最初に家の外から歌っていた時もそうでしたが、朗々と響くテノールでかなりいい声の持ち主と見ました。ただまだ出だしの方なので力をセーヴしているのかエンジンがかかりにくいのか馬力全開という歌いぶりではありませんでした。

 この幕の最後は、アルフレードがEizsnの身代わりとなって、やって来た刑務所長フランク(斉木)に捕縛され収監のため去るのでした。

 斉木さんの歌ですが、潤いは無い乾いた声のバスです。有無を言わせぬ強さがあり、刑務所所長役にピッタリだと思いました。

 本来ならば一幕と二幕の間で休憩となる筈ですが、休まずアタッカ的に第二幕に雪崩を打って入り二幕の途中で休憩となりました。

 

《第二幕》オルロフスキー公爵邸の舞踏会場

 この幕ではオルロフスキー公爵(郷家)をメゾソプラノの郷家さんが歌いました。またそのセリフが、非常に独特な言い回しで、日本語としてもかなり聞きとりにくい発音でした。そもそもロシアの若い富豪の貴族という設定なので、ドイツ語は流暢でないのかな?郷家さんはその雰囲気をしかも日本語で表現するために、試行錯誤練習したのでしょう。好演だったと思います。背も低いし役柄にピッタリ。でも歌の方は、以前郷家さんが歌うカルメンを聴いたことがあるのですが、カルメンの方が声質に合っているかなー、はまり役かも知れない、などと考えながら聴いていました。

ファルケ博士がオルフスキー公爵に、「今夜は“こうもりの復讐”という楽しい余興がある」と告げます。

オルロフスキーは「皆さん、ご自由になさってください。」と皆に向かって歌います。(Ich lade gern mir Gäste ein~) 

第7場で、Eizsnが変装するルナール侯爵が、アデーレ扮する女優のオルガが自分の家の小間使いにそっくりだと言うのに抗弁して、

『私の公爵様…(Mein Herr Marquis ein Mann wie Sie )』または『アデーレの笑いのアリア』が、ソプラノの髙橋さんにより歌われました。合唱を伴っています。

<ADELE>
Mein Herr Marquis, ein Mann wie Sie
Sollt' besser das verstehn!
Darum rate ich, ja genauer sich
Die Leute anzusehn.
Die Hand ist doch wohl zu fein, ah,
Dies Füsschen so zierlich und klein, ah,
Die Sprache, die ich führe, die Taille, die Turnüre,
Dergleichen finden Sie bei einer Zofe nie!
Gestehen müssen Sie fürwahr,
Sehr komisch dieser Irrtum war.
Ja, sehr komisch, hahaha, ist die Sache, hahaha,
Drum verzeihn Sie, wenn ich lache, hahaha,
Sehr komisch, Herr Marquis, sind Sie.

<ALLE>
Ja, sehr komisch, hahaha, ist die Sache, hahaha.

<ADELE>
Mit dem Profil im griech'schen Stil
Beschenkte mich Natur.
Wenn nicht dies Gesicht schon genügend spricht,
So sehn Sie die Figur!
Schaun durch die Lorgnette Sie dann, ah,
Sich diese Toilette nur an, ah,
Es scheint mir wohl, die Liebe macht Ihre Augen trübe.
Der schönen Zofe Bild hat ganz Ihr Herz erfüllt!
Nun sehen Sie sie überall,
Sehr komisch ist fürwahr der Fall.
Ja, sehr komisch, hahaha, ist die Sache, hahaha,
Sehr komisch, Herr Marquis, sind Sie.

(<アデーレ>
公爵さま あなたのようなお方はもっと分別がなくてはなりません。

ですからご忠告さしあげますわ そう はっきりと人間の観察の仕方を!
この手はとても綺麗でしょう あははは
この足も華奢でとても小ぶりですわ あははは
あたしの織りなすこの言葉づかい この身のこなし この体つきどこに似たところがあるというの お手伝いなんかと ねえ!
はっきりとおっしゃってくださいね
全くおろかな間違いだったと!
そう 全くおろかなね ははは こんなことって ははは
ごめんあそばせ ははは 笑ってばかりで はははははは!
まったくおろかな方ですわ 侯爵さま あなたは!

<全員>
そう 全くおろかなことだ ははは こんなことは ははは

<アデーレ>
この横顔 ギリシャ彫刻のようでしょう
天が私にお授け下さったものです
この顔だけではまだ十分でないとおっしゃるなら このスタイルをご覧ください!
あなたのメガネでしっかりと ああ 私の着ているものだけでも ああ たぶんそうでしょ 愛があなたの目をくらませてしまったのよ
その美人のお手伝いの姿が 心を一杯に満たしたからですわね!
さあ ご覧なさいな その娘の姿をしっかりと 全くおろかなことですわ そう 全くおろかなのね ははは こんなことって ははは
まったくおろかな方ですわ 公爵さま あなたは!)

髙橋さんは、身振り手振りを交えながらかなりの熱唱でした。

 ロザリンデは「ハンガリー人ではないのでは?」と疑われるので、ハンガリーの歌『チャルダッシュ』を歌って皆を納得させます。(Klänge der Heimat, Ihr Weckt Mir das Sehnen)

 本来、相当勢いよく歌われるリズミカルな舞曲なのですが、ここでは幸田さんの歌は、やや精彩に欠けたかな?、でもまずまずの歌いぶりでした。

 

人々はファルケ博士に「“こうもりの話”をしてくれ」と言う。3年前ファルケとアイゼンシュタインが仮面舞踏会に出かけた帰りに、アイゼンシュタインが酔いつぶれたファルケを森に置いて来てしまったときの話です。そのため翌日、ファルケは日も高くなった中、仮面舞踏会のこうもりの扮装のまま帰宅する破目になり、それを見た近所の子どもから「こうもり博士」という変なあだ名をつけられたのだった。

最後 『シャンパンの歌』をロザリンデが歌います。幸田さんは、さすが本場ウィーンでの経験豊かな感性(気質)にじませた華やかさで歌い切りました。

 

《第三幕》刑務所長フランクの部屋

フランクが「才能あるの?」と疑うので、アデーレは『役を演じて』その才能を証明します。(Spiel ich die Unschuld vom Lande)

ADELE
Spiel ich die Unschuld vom Lande,
Natürlich im kurzen Gewande,
So hüpf ich ganz neckisch umher,
Als ob ich ein Eichkatzerl wär'.
Und kommt ein saubrer junger Mann,
So blinzle ich lächelnd ihn an,
Durch die Finger zwar nur
Als Kind der Natur,
Und zupf an meinem Schürzenband;
So fängt man Spatzen auf dem Land.
Und folgt er mir, wohin ich geh,
Sag ich naiv: "Sö Schlimmer, Sö!"
Setz mich zu ihm ins Gras sodann
Und fang auf d'Letzt zu singen an:
La la la la la la la la!
Wenn Sie das gesehn, müssen Sie gestehn,
Es wär' der Schaden nicht gering,
Wenn mit dem Talent ich nicht zum Theater ging'!

Spiel ich eine Königin,
Schreit ich majestätisch hin,
Nicke hier und nicke da,
Ja, ganz in meiner Gloria.
Alles macht voll Ehrfurcht mir Spalier,
Lauscht den Tönen meines Sangs.
Lächelnd ich das Reich und Volk regier,
Königin par excellence!
La la la la la la la la!

(<アデーレ>
演じて見ましょう 素朴な田舎娘を
もちろん、短いスカートで
ぴょんぴょん元気に跳びはねるの
まるで小リスみたいに
若いステキな男の子がやってきたら
ニコニコしながらチラリと見るのよ
でも指の間からね
ウブな子だから
エプロンの紐なんかいじったりして
そうやって田舎の男を捕まえるの
それで男の子がついてきたら
無邪気に言うの 「悪いひとね!」って
それから彼と一緒に草の上に座り
最後は歌っておしまいよ:
ララララララララ! 
これを見たら 皆きっとこう言うでしょう
それってなんてもったいないことだ
こんなに才能がありながら 舞台に立たないなんて!

演じてみましょうか 女王様を
堂々たる足取りで登場よ
こちらに会釈し あちらに会釈し
そう、栄光に満ち溢れている
皆 かしこまって私を囲み
私の歌声に耳を傾ける
ほほ笑みながらこの国と民とを支配する
完全無欠の女王よ!
ララララララララ!)

 

フランクは「Eizsnは既に刑務所に入っている。」と語ります。
Eiznは「自分になりすましているのは誰か」を暴くために、弁護士の格好をしてブリントになりすまします。

最後にEizsnが許しを請い、ロザリンデは彼を許します。
『すべてシャンパンのせい』と皆で歌い、すべてが水に流されて幕が下りました。

 なお最終楽章で、歌手でタレントの森公美子さんが監獄の看守役で登場、方言(彼女は仙台で育ったといいますから本場の言葉です)や仕草、アドリブを駆使して観客をげらげら笑わせ(特に若い女性が大笑いしていた)、また昔取った杵柄で大きな体格から出る大きな声でアリアを歌っていました。日本人は「こうもり」を観ても言語が日本語セリフなのにもかかわらず余り笑い声は多くないですね。欧州の現地で上演すれば、途中の言葉遣い、演技を見聞きしただけでも観衆の大笑いを誘っています。

 今回はそうした「こうもり」の面白さ楽しさを森さん演技で補った形となりました。これはこれでいいと思いますよ。

 このオペレッタが何故長年に渡って欧州、特にウィーンにおいて年末(~年始にかけに上演され人気を誇ってきたのか、今日の公演を見ただけでも理解出来ると思います。人気の秘密を列挙すれば、

 ①「こうもり」の題名には、イソップ童話にもある様に、裏切り、卑怯、仲間はずれなどの寓意が込められており、こうもり博士(ファルケ)が被った被害(中傷、嘲笑)のプロローグ(劇前劇)が潜んでいるのです。すなわち、博士はアイゼンシュタイン(Eiznと略記)と以前一緒に行ったパーティの帰路途中酔いつぶれて寝てしまったが、Eiznは博士を放置し、翌日目を覚ました博士は皆から馬鹿にされ「こうもり博士」の汚名を着せられてしまった。そこで汚名を挽回するべくオペレッタ「こうもり」の二楽章の晩餐舞踏会をオルロフスキー公爵に開いてもらい(これも博士の策略で考え付いたことでしょう、きっと)、「こうもりの復讐劇」を演じること。

 これは第二楽章3場で博士がオルロフスキー公爵に何か面白い出し物は無いか?と訊かれ「こうもりの復讐劇が始まる」といった趣旨のことを答えたことで明らかです。

②登場人物がそれぞれの思惑で、別の人間に変身し、存分に楽しもうとする人間関係のすれ違いを絶妙に表現していること。人間には、自分の置かれた存在から何か変身出来たらという潜在意識があることが結構多いですから。

③ ❝こうもり❞ ❝復讐❞という暗いイメージのキーワードから程遠い喜劇的内容になっていること

④それらが明るいウィンナーワルツを中心とした音楽で支えられていること。

⑤❝復讐劇❞の結果、誰も大きく傷つくことが無く、お互い様でした!御愛想様でした!と笑い飛ばせたこと。

 等々、多くの要因が凝縮した結果なのだと思います。

(追記)東京交響楽団の演奏は小編成だと思われるのにもかかわらず、会場に大きく響き、個々のパートが頑張って舞台を下支えしていました。最初から最後までほとんど目だったミスは見当たらなくていい演奏でした。特にそれを牽引した指揮者川瀬さんは若さもあってか始終きびきびした動きで、見ていても音を良く引き出しているなと思われました。こうした指揮は好きですね。今後の発展を祈ります。

 

 

 

 

//////////////////////////////////////////////《2021.10.3.hukkats記事再掲///////////////////////////////////////////////

オペレッタ『こうもり』エセンス鑑賞

編集

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 上記『こうもり』は、オペラだけでなくミュージカルなどでも広く活躍しているバリトンの大山大輔さん、オペラ界のベテラン・テノール村上敏明さん達が中心となって、企画・演出された喜歌劇です。しかもハイライト中心に2時間以内に圧縮した内容で、「こうもり」前日の物語も付加して、説得性を向上しようとしたこと、ピアノ伴奏の演奏会形式に、セミステージ方式も加味し、演技的魅力を向上させる試み、それに、日本語歌詞に、大山さんの日本語台詞ナレーションも加えて、分かり易さも向上させようとする等の努力がされていました。

 

【演目】ヨハン・シュトラウスⅡ『こうもり』

    台詞付きハイライト日本語上演、 

【日時】2021.10.30.(土)14:00~

【会場】さくらプラザホール(横浜)

【出演】

 

//////////////////////////////《2021.10.3.hukkats記事再掲///////////

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オペレッタ『こうもり』鑑賞

【演目】ヨハン・シュトラウスⅡ『こうもり』

    台詞付きハイライト日本語上演、 ピアノ伴奏

【日時】201.10.30.(土)14:00~

【会場】さくらプラザホール(横浜)

【出演】村上 敏明 Toshiaki Murakami (アイゼンシュタイン)

    高野 百合絵 Yurie Takano (ロザリンデ)

    大山 大輔 Daisuke Ohyama (ファルケ)

 

    長島 由佳 Yuka Nagashima (アデーレ)

    巨瀬 励起 Leiki Kose (ピアノ)

【こうもり概要】

  • 原作:ロデリヒ・ベンディックスの喜劇『牢獄』(1851年)に基づいて、アンリ・メイヤックとリュドヴィック・アレヴィが書いた喜劇『夜食』(1872年)
  • 台本:カール・ハフナーとリヒャルト・ジュネがメイヤックとアレヴィの原作を手直しした
  • 作曲時期:1874年
  • 初演:1874年4月5日、アン・デア・ウィーン劇場

数あるウィンナ・オペレッタの中でも最高峰とされる作品で、「オペレッタの王様」ともよばれる。ヨハン・シュトラウス2世特有の優雅で軽快なウィンナ・ワルツの旋律が全編を彩り、その親しみやすいメロディーは全世界で愛されている。なお、台本には日付の設定はないが、ウィーンをはじめドイツ語圏の国々の歌劇場では大晦日恒例の出し物となっている。

歌手の歌の配分が比較的均等であり、合唱の活躍場面も比較的多いため、華やかにオールスターを並べることが可能である。ソロパートは8人だが、歌の上では軽い役であるフランク所長を高名なベテランが歌うことが慣例化しており、おおむね7人までスターが並ぶ。三重唱を1曲歌うだけのブリント弁護士のみは脇役専門のブッフォテナーの持ち役だが、ここに往年のスター歌手を起用した例もある。また、ドラマ上は脇役のアデーレに最も多くソロが用意されているため、主役級のロザリンデよりも格上のスターがあてられるケースが珍しくない。

ウィーン国立歌劇場では毎年年末年始に公演が組まれており、大晦日の国立歌劇場の『こうもり』と年始のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ニューイヤー・コンサート(大部分がシュトラウス作品)がウィーンでの恒例行事となっている。オーケストラは各70人前後のニ手に分かれて、二つのシュトラウス・プログラムに従事する。ドイツ圏の他の歌劇場またそれ以外の歌劇場でもこれにならっているところがある。

もっとも、かつてのウィーン国立歌劇場(ウィーン宮廷歌劇場)は格式を重んじてオペレッタの上演は原則的に行わなかった(それ以前にはシュトラウスの『騎士パズマン』をオペラという名目で初演)ため、『こうもり』については、初演20年後の1894年にシュトラウスのデビュー50周年を記念して、宮廷歌劇場の年金機関運営委員会の主催で上演されたのが初めてである。その後、1897年に当時の宮廷歌劇場総監督グスタフ・マーラーによって正式にレパートリーとなった。

 

【粗筋】

<第一幕>

ガブリエル・フォン・アイゼンシュタインの妻ロザリンデは困ったことに直面していた。一つは役人を殴ってしまったことで5日間の禁固刑を申し渡されてしまった夫。夫は刑の取り消しを要求したが、ブリント弁護士の下手な弁護でかえって刑期が延びてしまい、8日間の禁固刑にされてしまう。

それだけでも災難だが、家の前ではかつての恋人アルフレードが、毎日のようにセレナーデを歌ってロザリンデに思いを寄せている。しかも今夜ロザリンデの夫が刑務所に入るので、その留守にロザリンデと逢引しようと企んでいる。ロザリンデの方もまんざらでもないのだが、なにぶん世間体が気になるのでどうすることもできない。

そこへ夫の友人ファルケ博士がやってくる。博士はアイゼンシュタインに、「舞踏会が今夜、ロシアのオルロフスキー公爵邸で開かれる、そこで楽しんでから刑務所に入ればいい」と勧める。しかし「妻はどうする」と言ってためらうアイゼンシュタイン。博士は「奥さんなんて黙っておけばいくらでもごまかせる」といってそそのかす。すっかりその気になったアイゼンシュタインは、舞踏会に行くことを承知し2人は手を取って「ランラララ~」と歌いながら小躍りする。

博士が去ると、アイゼンシュタインは妻に「礼服を出して」と言う。「どうも夫は自分だけ楽しみにいくようだ」と察知した妻は、それなら自分も……と決心し、小間使いのアデーレに今夜は暇を出す。アデーレはおばさんの具合が良くないので今夜暇が欲しいと言っていたが、実は姉(もしくは妹)から手紙で誘われて、オルロフスキー邸の舞踏会に行くつもりだった。喜んで去っていくアデーレと夫を見送ったロザリンデ。そこへアルフレードが現れる。久々の浮気にロザリンデもまんざらではなく、2人は一杯飲みだす。ところが、あろうことかそこへ夫を連行しに来た刑務所長フランクが現れる。

夫がいないのに男を家に引き入れたことが知られるととんでもないことになる、と思ったロザリンデは、とっさにアルフレードを夫に仕立てる。後でどうにかするからというロザリンデに、アルフレードもアイゼンシュタインに化けることを承知して、身代わりに刑務所に連れて行かれる。

 <第二幕>

オルロフスキー邸では華やかに舞踏会が行われていた。この家の主オルロフスキー公爵は、ファルケ博士に「何か面白いことは無いか、退屈だ」と言う。ファルケは、「今夜は“こうもりの復讐”という楽しい余興がある」と告げる。

やがて、女優オルガと名乗ってロザリンデのドレスを着込んだアデーレや、フランス人の侯爵ルナールを名乗るアイゼンシュタインが現れる。アイゼンシュタインは、女優オルガにむかって「家の小間使いにそっくり」と言うが、彼女の方は「こんなに美しく優雅な女が小間使いなわけがないじゃない」とアイゼンシュタインをさんざんからかう(「私の侯爵様」)。

そこへ刑務所長フランクもシュヴァリエ・シャグランの偽名でやってくる。お互い知ってる限りのフランス語でめちゃくちゃな挨拶をするフランクとアイゼンシュタイン。そして仮面をかぶってハンガリーの伯爵夫人に変装したロザリンデが現れる。

ロザリンデは、夫が刑務所に行かずに遊んでいる上に、アデーレが自分のドレスを着ていることに腹をたて、夫をとっちめることを決意する。一方、アイゼンシュタインもこの伯爵夫人に目をつけ、自慢の懐中時計を取り出して、妻とはまったく気が付かず口説きだす。この懐中時計を浮気の証拠にしようと考えたロザリンデは、言葉巧みにこれを取り上げる。そこへ人々がやってきて、仮面の女性の正体を知りたがるが、彼女はハンガリーの民族舞踊チャールダーシュを歌って「私はハンガリー人よ」と言う。

さらに人々はファルケ博士に「“こうもりの話”をしてくれ」と言う。3年前ファルケとアイゼンシュタインが仮面舞踏会に出かけた帰りに、アイゼンシュタインが酔いつぶれたファルケを森に置いて来てしまったときの話だった。そのため翌日、ファルケは日も高くなった中、仮面舞踏会のこうもりの扮装のまま帰宅する破目になり、それを見た近所の子どもから「こうもり博士」という変なあだ名をつけられたのだった。

こうして話の種は尽きないが、オルロフスキー公爵の合図で晩餐が始まる。夜も更けると舞踏会を締めくくるワルツが始まり、みんなが華やかに歌い踊る。やがて午前6時の鐘が鳴り、アイゼンシュタインはあわてて「出頭する時間だ」といって去っていく。フランクも刑務所に帰らなきゃとばかりに、すっかり仲良くなった2人して会場を後にする。同じところに行くとは全く思わず。

 

<第三幕(刑務所長フランクの部屋)>

刑務所の中ではアルフレードが相変わらずロザリンデへの歌を歌っている。朝っぱらからスリポヴィッツ(チェコ産の度数の高いブランデー)でしこたま酔っ払った看守のフロッシュがくだを巻いていると、そこへ同じく酔っ払ってご機嫌なフランクが戻る。酔っ払い同士が掛け合い漫才をしていると、アデーレとイーダがやってくる。アデーレは「自分は小間使いだけれど女優になりたい、パトロンになって」とフロッシュに売り込みをかけるが、ルナール公爵が来たというので動揺したフランクはアデーレたちを留置場の空き部屋に入れる。

牢屋での再会に驚くアイゼンシュタインとフランク。お互いの素性を確認するものの、既に牢にはアイゼンシュタイン氏が入っているんだが、とフランクから言われて驚くアイゼンシュタイン。そこにアルフレートの要請でフロッシュが呼んだブリント弁護士が来たので、アイゼンシュタインは様子をうかがうためにブリントから服をむしり取って追い出し弁護士に変装する。刑務所を訪れたロザリンデは昨日の経緯をアイゼンシュタインが変装している弁護士に話す。同席したアルフレートも助言を求めるが、2人の態度に堪忍袋の切れたアイゼンシュタインが正体を現し妻とアルフレートをなじる。ところが妻は例の奪い取った時計を取り出して見せ、逆に夫をぎゃふんと言わせてしまう。追い詰められたアイゼンシュタインは「俺はアイゼンシュタインじゃない!牢屋にも入らん!」とわめきちらすが、そこにファルケ博士とオルロフスキー公爵その他舞踏会の客たちぞろぞろが現われる。

ファルケ博士が「昨日舞踏会に誘ったのは、すべて私が仕組んだこと。3年前の“こうもりの復讐”ですぞ。」と種明かしをすると、では浮気も芝居なのか、と安心するアイゼンシュタイン。アルフレードは「ちょっと実際とは違うけどまあいいか」とつぶやく。アデーレはオルロフスキーがパトロンとなって女優になることになり、最後はロザリンデの歌う「シャンパンの歌」で幕となる。(Wikipedia)

 

【感想】

感じたことを列挙すると次の通りです。

1.皆さん、日本オペラ界の第一戦で活躍される歌手ばかりなので、それぞれ個性は有りますが、聞きごたえのあるアリア、重唱で大きな拍手を浴びていました。ピアノの巨瀬さんの伴奏も、以前同ホールで、聴いた「カルメン」の伴奏の時よりもさらに、板についたというかこの方式の歌劇にピッタリ寄り添った演奏をしていました。前奏曲や間奏曲や歌の伴奏、実に雰囲気を良く表現したと思います。

2.元のオペレッタ自体が、コミカルな作品だけに、大山さん、村上さん、長島さん、高野さん、全員滑稽さを出そうと心掛けているのが伝わってきます。アデーレ役の長島さんは、小間使いに応募した九州出身の女の子という設定で、地方なまりで話し笑いを誘い、大山さんもひょうきんな説明と演技で、村上さんは吉本張りのお笑いキャラを出そうと懸命に演技しているのが、その真面目な顔つきが故により、より面白さを倍加するのに成功したと思いました。日本の歌劇界のチャプリンを目指して欲しい。

3.長島さん、ロザリンデ役の柴田さんのアリアは後半、有名な歌になれば成程上げ調子で、奇麗な声でコロラテューラも効かせた特に高音の箇所は、感心するほど上手に歌っていました。

4.難を言えば、当初「日本語で味わうオペレッタ」との謳い文句にしては、最初のアリアが日本語でなかったり、日本語での歌も発音がはっきりしなくて聞き取り難い箇所も散見されたり、「こうもり前夜」というには、本編への影響が今一つの感がしないでもない点など、やや気になりました。また筋道がやや分かり難らい嫌いもありました。

 でもはっきりと歌の歌詞が日本語で聴衆に伝わり、原典の枠を大きくはみ出て別な作品になることが避けられれば、原語での微妙なニュアンスの伝達部分が犠牲になっても、大筋において、言語+字幕で上演するよりは、オペラやオペレッタの面白さがより理解される様な気がしました。

 従って今回の様な試みは今後も引き続き行われ発展していけばいいことだと思います。

 11月には二期会が『こうもり』を上演する様ですから、本格上演はそちらで鑑賞したいと思います。