表記のリサイタルは、新進気鋭のフルーティストによる、初CD リリース&リサイタルでした。
【日時】2021.11.22.19:00~
【会場】大倉山記念館ホール(横浜)
【出演】八百板 芽威(Ft)
飯田 彰子(Pf)
【ゲスト出演】中野 真理(東京音大准教授)
【演奏曲目】
①モーツァルト『ロンドニ長調 K184』
②カミュ『シャンソンとバディネリ』
③ライネッケ『フルートソナタ<ウィンディーネ>Op.167』(Ⅰ~Ⅳ楽章)
《休憩》20分
④プーランク『フルートソナタ』 (Ⅰ~Ⅲ楽章)
⑤F&Cドップラー『ヴラヴーラのワルツOp.33』
⑥クロンケ『二匹の蝶々Op.165』
⑦ユーグ『仮面舞踏会』による協奏的大幻想曲Op.5
(hukkats注)
⑤,⑥,⑦は八百板さん(Y)とゲストの中野さん(N)のデュオ演奏。 ⑤は1st:N,2 nd:Y ⑥は1st:Y,2 nd:N ⑦は1st:N,2 nd:Y
尚、⑤でF&Cドップラーとあるのは、兄弟の作曲家で二人共フルートのヴィルトゥーソだった。Fがフランツ、Cがカール
【Profile】
〇八百板芽威
東京都出身。9歳よりフルートを始める。東京都立小山台高等学校を経て、東京音楽大学卒業。
第1回夢二コンクール第1位。同コンクール優勝記念プレミアムコンサートにて、吉田秀氏(NHK交響楽団首席Cb奏者)・EnsembleJaguarと、ヴィヴァルディ作曲「フルート協奏曲ニ長調『ごしきひわ』」のソリストとして共演。
第2回Kフルートコンクール入賞。同コンクール入賞者演奏会に出演。
第17回長江杯国際音楽コンクール第1位及び審査員特別賞。同コンクール入賞者演奏会出演。
日本フルート協会主催「第44回各音楽大学より推薦された若きフルーティストたちによるデビューリサイタル」(東京オペラシティリサイタルホール)に出演。
平成27年度東京音楽大学短期留学奨学生として、リュエイユ=マルメゾンコンセルヴァトワールへ留学。留学中ミシェル・モラゲス、パスカル・フェブリエ、フィリップ・ピエルロの各氏に師事。
2019年度東京国際芸術協会海外助成奨学生として、ウィーン国立音楽大学ムジークセミナーを受講し、ディプロマを取得。ギゼラ・マシャエキ=ベア教授の推薦を受け、ウィーンにてコンサートに出演。
ラ・フォル・ジュルネTOKYO2015、2018に出演。第68回東京国際芸術協会新人オーディションに合格し、同新人演奏会に出演。
カプースチン作曲「ピアノとオーケストラのための協奏曲第3番」Pf川上昌裕、指揮曽我大介の両氏との世界初演に出演。
フルートを中野真理、相澤政宏、菅原潤、吉岡アカリ、竹下正登の各氏に師事。ピッコロを菅原潤氏に師事。室内楽を四戸世紀、細川順三の両氏に師事。これまでに、ハンスゲオルグ・シュマイザー、ヴァンサン・リュカ、アンドレア・オリヴァ、レナーテ・グライス=アルミン、ロバート・レルヒ、サラ・ルヴィオン、ペトリ・アランコの各氏マスタークラスを受講。
〇飯田 彰子
北海道旭川出生。宮崎、福岡、神奈川出身。
東京音楽大学ピアノ演奏家コース、同大学大学院修了。在学中、特待奨学金を得る。東京音楽大学卒業演奏会、東京音楽大学校友会神奈川県支部新人演奏会、葉山町新人演奏会出演。
ヤングアーチストピアノコンクールEグループ金賞、Fグループ銀賞。ピティナ・ピアノコンペティションG級全国大会決勝入選。日本演奏家コンクール一般の部第2位。
第5回東京芸術センター記念ピアノコンクール入選。
同センターにて招聘され11年4月、14年2月にソロリサイタルを開催。ASIA International Piano Academy & Festival with Competition in Korea金賞受賞。
第14回ショパン国際ピアノコンクールin Asia アジア大会 一般部門金賞受賞。
定期的にソロリサイタルを開催、好評を博す。
劇団公演の音楽や、演奏会、その他多くの公演などに楽曲提供するなど積極的に作曲・編曲活動も展開している。
また、同大学でティーチングアシスタントを経て、後進の指導にもあたっている。ソロ以外にも、室内楽、伴奏、様々な地域で演奏活動を行っている。
テレビ、CM、ラジオなどのメディアにて、ピアノ演奏出演。横浜市民広間演奏会会員。
【演奏会の模様】
大倉山記念館ホールは横浜にあるのでそう遠くなく、聴きたい演奏があれば年に数回行くコンサート―ホールです。前回は、この夏にアイリッシュ・ハープの演奏会に行きました。今回は、朝からかなり強い雨が降り一日中肌寒い天気の中、東横線大倉山駅から登る坂道は雨が吹き付け暗くて足場が良くないので、ホールまで大した距離ではないのですが、かなり濡れて疲れました。そのせいなのか非常に小さいホールですが満席状態には最後までなりませんでした。
演奏曲目は、八百板さんが留学したウィーンとパリに因んだフルート曲を選曲したそうです。前半は①モーツァルト ②カミュ ③ライネッケ から、後半は④プーランク、⑤ドップラー、⑥クロンケ、⑦ユーグ の曲でした。
①や③、④、⑤は素人の自分でさえ、聴いた事のある作曲家ですが、今回は⑤、⑥、⑦は二重奏だったので非常に珍しく興味深い演奏でした。
②カミュは、あの有名な文学者ではなく聞いたことの無い作曲者です。村松楽器の解説文を引用しますと、
<解説>
20世紀初頭のパリの作曲者達は、フルートのために数多くの作品を書きました。この曲も、タファネル 「アンダンテ・パストラールとスケルツェッティーノ」 やエネスコ 「カンタービレとプレスト」な どと同じく、ゆっくりと歌わせる 「シャンソン」 と機敏に動き回る 「バディヌリ」 の2つの部分から出来ています。作曲者カミュについては定かなことは分かりませんが、タファネルの後を継いでパリ音楽院教授を務めたエネバンに捧げられていることから、当時の音楽院学生のために作曲されたものではないかと思われます。(卒業試験用に書かれた作品と似た構成を取っている)「シャンソン」 の楽想は、前述のタファネルやエネスコの曲に比べると平凡な感じを まぬがれないけれど、そこを補って、そこはかとない憂いを感じさせる曲想をイメージしてみて下さい。「バディヌリ」 は、バッハの管弦楽組曲第2番の中の曲と同じ由来の舞曲で、「おどけ」、「たわむれ」 の語義。優雅な音のたわむれになると素敵です。(解説/三上明子)
ライネッケは19世紀のドイツロマン派の作曲家、ドップラーは19世紀ウィーンで活躍した作曲家。クロンケはドレスデンで活躍した作曲家。
ユーグに関しては、以下の解説文を参照のこと。
<解説>
イタリア・ロマン派歌劇の最大の作曲家であるG.F.F.ヴェルディ (1813-1901) の名作歌劇 『仮面舞踏会』 の名場面の主要主題を題材に、華麗に仕立て上げられた素晴らしい大協奏幻想曲です。歌劇の各幕中から、第1幕、第2場より 「今日、最初に握手する人に殺される」第2幕、前奏の後のアリア 「あの草を摘み取って恋を忘れる事ができたなら」第3幕、第2場より 「仮面舞踏会の場」の主題を順に用いて、2本のフルートを駆使し、接続変奏曲にした技巧的な作品です。作曲家のL.ユグー (1836-1913) は、G.ブリチァルディ (1818-1881)、G.ガリボルディ (1733-1905) と共に、イタリアのフルートの黄金時代を 築き上げたフルーティストであり、『フルート二重奏教程、全4巻』 作品51や作品32・75・101の 『練習曲』 で知られています。伴奏付きの二重奏曲はこの作品を含めて全部で6曲、共に 『幻想曲』 として作曲され、当時のリコルディ社から出版されました。この度 (IMC社) 再版につき、ドップラー兄弟、フュルステナウ親子の二重奏曲、同様に、お二人仲良くお願い致します (難関あり)?それから、「草を摘み取って恋を忘れ」 ても、この曲だけはお忘れならないよう、お願いします!(解説/佐野悦郎)
八百板さんの演奏は、想像していた何倍もすばらしいものがありました。何と言ってもテクニックがハイレベルですね。非常に速いスラー部の表現も、強いタンギングを要する箇所も、息使いも指使いもテンポも曲の表現力も大したものでした。冴え冴えと響く高音、深い響きの低音、どれをとってもほとんどノーミスで吹き切りました。特に自分の先生だという中野さんとのデュオ演奏が圧巻でした。お二方の息がピッタリ合って、時として斉奏、時として音が絡み合う二重奏が見事なフルートによる絵巻を描きあげていました。それにしても先生の音はやはり凄い、低音パートの時は柔らかく八百板さんの高音を包み込み、その逆の場合は煌めく高音で八百板さんを牽引、きっと優れた指導者なのでしょう。トークによると八百板さんをここまで成長させてくれた恩人らしい。八百板さんも尊敬し切っている様子が伺えました。息の合った指導者に巡り合えて、そのチャンスをものにするのも才能の一つでしょう。
欲を言えば、音しょくが少し硬いので、さらなる研鑽を積み、先生のような柔らかい音の出すコツを習得すればさらに素晴らしいフルーティストに成長するでしょう。今後が楽しみな演奏家です。
C.P.E.バッハの「無伴奏フルートソナタ」やバッハのフルートソナタ全曲が大好きなので、若しこの曲の演奏会を八百板さんがやる時があれば是非また聴いてみたいです。
ピアノ伴奏の飯田さんは、如何にもプロ演奏の風格があり、フルートの相の手をこれまた素晴らしいアウンの呼吸で合わせていました。ソロ部分の演奏音などとても綺麗な音のピアノ演奏でした。
フルート演奏は音楽コンクールの入賞者や近場で若手のフルーティストの演奏があれば出来るだけ聴く様にしています。有名な日本の演奏家の演奏も例えば、工藤重典さんの演奏を、今年4月にはミューザ川崎で、6月にはサントリーホールで聴きました。でもフルート演奏は、矢張りドイツ・オーストリアやフランスを代表とする欧州が伝統的に多くの優れた演奏家を輩出している様です。モイーズ、ガッツェローニ、カールハインツ・ツェラー、パユ、ゴールウェイ、ガロワ、ランパル、ニコレなどなど。モイーズの録音は一枚持っています。ランパル、ニコレは昔来日公演を聴きました。最近はコロナ禍で海外演奏者はほとんど来日出来ないケースが多い中、パユが来日演奏会を予定していたのですが、今週のフェスティバルホールやサントリーホールでの演奏会を中止にした様です。コロナの影響と書いてありました。不思議と来週予定の地方(静岡、埼玉)公演は中止公告がなされていません。やるのでしょうか?でも遠かったり他の公演と重なっているので残念ながら聴きに行けません。