表記のバレエを今日(9/26日曜)の最終日、観てきました。これは、オペラやバレエを主として扱うNBS《(公)日本舞台芸術振興会》からの通知で、公演予定とチケット販売予定などを知りました。数年前ですと、NBSは毎年、海外オペラ劇場の来日公演をプロモートしていたのですが、コロナ禍で海外オペラ来日は全滅になってしまい、国内のバレエ公演を中心に扱かざるを得ない状況の様です。でも先月中旬には、『第16回世界バレエフェスティバル』を開催にこぎつけ、コロナ禍の下での厳しい感染対策実施により、見事全公演成功に導いたことは記憶に新しいです。今回の『海賊』はバレエ演目の中ではトップクラスに挙げられる中身と人気のバレエで、東京バレエ団が国の補助事業である<舞台の魅力体験事業>として、公演最終日には、バレエ公演だけでなく、公演前のプレトーク、講演後の舞台装置の特別公開を加えた公演を行いました。
【日 時】
2021.9.23.(木) ~2021.9.26.(日)14h~(9/24のみ19h~)
【会 場】東京文化会館大ホール
【管弦楽】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【指 揮】冨田実里
【音楽】アドルフ・アダン、チェーザレ・プーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、ペーター・フォン・オルデンブルク
【編曲】ケヴィン・ガリエ
【振付】アンナ=マリー・ホームズ(マリウス・プティパ、コンスタンチン・セルゲイエフに基づく)
【出演】東京バレエ団
(主なソリスト)
メドーラ :上野水香
コンラッド :柄本弾
アリ :宮川新大
ギュルナーラ:三雲友里加
ランケデム :樋口祐輝
ビルバント :鳥海 創
アメイ :政本絵美
パシャ :木村和夫
パシャの従者:ブラウリオ・アルバレス
【装置・衣裳】ルイザ・スピナテッリ
Teatro alla Scala of Milan Production.
【上演時間】約2時間30分
以下はネット情報です
【物語】
第一幕
舞台は、ギリシャに面した地中海のイオニア海の浜辺。海賊たちを乗せた船が嵐で難破し、海辺に打ち上げられる。そこへギリシャの娘メドゥーラと友人のギュリナーラ達が通りかかり、一緒に海賊たちを救い出す。この海賊は首領コンラッド、その友人のビルバンド、コンラッドの忠臣アリである。コンラッドは目を覚ますとそこにメドゥーラがいた。2人はお互いに惹かれあった。すると突然トルコ軍が乱入。メドゥーラ達は捕えられ、奴隷商人ランケデムに引き渡されたあと奴隷市場に連れていかれる。コンラッド・ビルバンド・アリの3人は娘たちを救うことを誓う。
場面は変わって奴隷市場、ギリシャの娘たちはトルコ総督パシャの見る前で売りに出され、美しいギュリナーラがまず買われる。メドゥーラが競売にかけられた時、奴隷を買いにきた商人に変装した海賊たちが現れ、メドゥーラを高値で引き取ろうとする。しかし、トルコ総督がおかしいと言い出したために海賊たちは正体をあらわし、メドゥーラとギリシャの娘たち、奴隷商人を連れて逃げる。
第二幕
洞窟で娘たちを取り返した海賊たちは宴を開いている。メドゥーラは愛するコンラッドと忠臣アリとともに嬉しそうに踊る。そこへギリシャの娘たちがメドゥーラに家に返してくれるようコンラッドにとりなしてくれ、と頼む。コンラッドはメドゥーラの願いをきき、娘たちを解放しようとするが、ビルバンド以下全員が反対する。それを押し切ってコンラッドは娘たちを解放する。コンラッドがメドゥーラと寝室へと消えたあと、奴隷商人は海賊たちにコンラッドへの報復をけしかける。ビルバンドらは睡眠薬をふりかけたバラを用意し、メドゥーラに届ける。罠とも知らずにメドゥーラはコンラッドにバラを捧げ、コンラッドは眠りに落ちる。そこへ、ビルバンドや奴隷商人ランケデムが現れ、メドゥーラが抵抗して混乱した隙にランケデムはメドゥーラを奪って逃げる。騒ぎを聞きつけたアリがかけつけるが、すでにメドゥーラ達は連れ去られた後だった。
第三幕
奴隷商人ランケデムから奴隷としてメドゥーラ達を買ったトルコ総督パシャの屋敷のハーレムにある花園。パシャはギュリナーラの踊りをみて満足するが、他の娘たちの踊りは気に入らない。そこへランケデムがメドゥーラを連れて現れ、パシャは早速買い取る。パシャは娘たちの衣装を着替えさせ、その間うたたねをする。夢の国では着飾った娘たちが花輪をもって花園で踊り、ギュリナーラとメドゥーラも美しい踊りを披露する。眠りから覚めると早速宴を始めるパシャ。そこへ巡礼者を装った海賊が現れ、祈りを捧げるふりをしてころあいをみて正体をあらわし、メドゥーラやギュリナーラを助け奴隷商人をこらしめ、船で逃げる。しかし船は嵐にあって沈没。コンラッドとメドゥーラは奇跡的に大岩に打ち上げられ助かるのであった。
詩人バイロンの物語詩に想を得た壮大なグランド・バレエ「海賊」は、クラシックの中でも楽しさと見どころが詰まった作品です。オスマン帝国が支配する地中海世界。多様な文化が混ざり合うバザール(市場)、海賊たちの根城である島、パーシャ(太守)のハーレムを舞台に、海賊の首領コンラッドと美女メドーラを中心とした愛と冒険の物語が展開します。
2019年、東京バレエ団はロシアのセルゲイエフ版を基にしたアンナ=マリー・ホームズ版を、ホームズ自らの指導のもと、ミラノ・スカラ座製の豪華な装置・衣裳で初演。プティパ作品を踊りこんできたダンサーたちがその底力と個性を発揮して大好評を博しました。
再演となる今回は、新たなキャストも得て、新鮮な組み合わせでの上演が実現します。パワフルなエンタテイメント性に溢れたステージは、キャストの組み合わせを変えて何度でも見たくなること請け合いです!
今回のバレエは上記【物語】とほとんど同じ内容で進行しましたが、念のため以下に東京バレエ団発表の【粗筋】を転載します。
【粗筋】
⚪プロローグ
海賊の首領コンラッドと彼の奴隷のアリや仲間のビルバントを乗せた海賊船が、トルコに向かって航行している。
⚪第1幕 賑やかな市場(バザール)
商人や買い物客が賑やかに行き交うバザールに、奴隷の女達が連れ出され、競りにかけられようとしている。コンラッドと彼の仲間達が到着すると、バザールの所有者であるランケデムが競りを始めた。コンラッドは、競りにかけられた奴隷の少女メドーラを一目見るなり、彼女と恋に落ちた。ファンファーレが鳴り響き、一帯を統治するセイード・パーシャが現れた。ランケデムは3人の娘を売りつけようとするが、パーシャは気に入らない。続いてギュルナーラが差し出された。パーシャは、この愛らしい奴隷の少女を買い取った。最後にメドーラが競りにかけられた。彼女の美しさに、誰もが夢中になった。メドーラもまた、パーシャに買われていった。コンラッドは、メドーラを取り戻すよう、奴隷のアリに命じる。海賊達は村を襲撃し、ランケデムを連行した。
⚪第2幕 海賊が潜む洞窟
コンラッドは、再会したメドーラを、海賊達の隠れ家である洞窟に案内する。ビルバントは仲間の海賊を呼び寄せ、略奪してきた財宝を洞窟に運び込むように指示した。奴隷の娘達とランケデムも連れてこられた。メドーラとコンラッド、海賊達は踊りに興じて、仲間を楽しませた。宴が終わると、メドーラはコンラッドに懇願した。自分を愛しているのなら、奴隷の娘達を解放してほしい、と。コンラッドはメドーラの願いを受け入れるが、ビルバントは納得しない。他の海賊達をそそのかして、コンラッドに歯向かった。しかし、コンラッドは威厳に満ちた様子で圧倒的なパワーを見せつけて、海賊達に畏敬の念を抱かせた。彼らは反旗を翻すことを断念した。しかしビルバントは諦めず、新たな陰謀を講じた。ランケデムを仲間に引き入れ、眠り薬を振りかけたバラの花をメドーラに受け取らせた。ビルバントの魂胆を知らないメドーラは、バラの花をコンラッドにあげてしまう。かぐわしい花の香りをかいだとたん、コンラッドは昏倒した。洞窟に戻ってきた海賊達が、メドーラを拉致しようとする。メドーラは気丈にもビルバントに抵抗し、奪い取ったナイフで彼の腕を切りつけた。この騒ぎに乗じて、ランケデムはメドーラを奪い返し、洞窟から逃走する。ビルバントはコンラッド を殺害しようとするが、すんでのところで海賊達に阻止される。目を覚ましたコンラッドは、メドーラが失踪していることにショックを受ける。ビルバントは自分が悪事を働いたことはお首にも出さず、コンラッドに忠誠を誓った。
⚪第3幕、第1場 パーシャの宮殿
ギュルナーラがパーシャと戯れていると、ランケデムが、ベールをかぶったメドーラと共に現れた。パーシャはメドーラが自分の許に戻ってきたことを大喜びし、彼女を自分の第一夫人として寵愛する、と宣言した。
第3幕、第2場 踊る花園
麗しい女性達に囲まれて上機嫌になったパーシャは、彼女達が美しい花園で踊る夢を見る。
第3幕、第3場 パーシャの宮殿
巡礼者に変装したコンラッドとビルバント、仲間の海賊達が宮殿を訪れる。夢から覚めたパーシャは、巡礼者達を宮殿のなかに招き入れた。メドーラは、巡礼者の一行がコンラッド達であることに気付く。すると彼らは身に着けていたマントを脱ぎ捨て、正体を明かした。宮殿は大混乱に陥る。コンラッドと彼の仲間達は、パーシャや護衛兵、妻達を追い払い、勝利を祝って乱舞する。ギュルナーラのあとを追いかけて、ビルバントがそこに飛び込んできた。二人は、コンラッドとメドーラ と鉢合わせになる。メドーラは、ビルバントが裏切り者であることをコンラッドに明かした。コンラッドはビルバントに銃口を向け、引き金を引いた。奴隷アリの手引きで、メドーラとギュルナーラはコンラッドと共に宮殿から抜け出し、海賊船に乗り込んだ。
第3幕、第4場 嵐
海賊船は、穏やかな海を航行している。舵を操るコンラッドのかたわらには、メドーラが寄り添っている。突然、嵐が吹き荒れ、かき曇った空に稲妻が光る。突風が帆を切り裂き、帆柱は落雷で真っ二つに折れてしまう。海賊船は荒れ狂う海のなかに沈んでいった。
エピローグ
嵐がおさまり、海はふたたび穏やかになった。夜空には、月が輝いている。月光が、岩にしがみついたコンラッドとメドーラの姿を映し出した。彼らは奇跡的に嵐を生き抜いた。二人の愛は、試練に打ち勝ったのだった。
【感想】
前回の『世界バレエフェスティバル』でも同様だったのですが、先ずオペラやオーケストラ演奏会とは客筋が全くと言って良い程異なっています。若い年代の層が多いし、女性客の割合が多くて、小さい子供連れも随分多いです。従って、入場時、休憩時、退場時は勿論コロナ対策で会話自粛、マスク必着なのですが、かなり華やいだ雰囲気がありました。ホールに入ると、前回の「世界大会」ほどでは無いですが、7~8割方座席が埋まっていたでしょうか。平土間はほぼ満杯の状況、上階の中断にまとまって空席がある斑模様でした。それでも、規制数に達したので早々とチケットは売り止めされたとのことでした。
踊りはやはり主役のメドーラ役の上野水香さんと、柄本弾さんの二人とアリ役の宮川新大さんがかなりのテクニックを身につけている様子が伺えられ、大きな拍手を浴びていました。
またパシャ役の木村和夫さんは演技が上手で、ひょうきんな身振りで笑いを誘っていました。
主役たちのダンスのみならず、多くの若いダンサー達が花飾りを手にしたり、同時に踊る舞台は本当に華やかで、現実を忘れさせる夢みたいな光景でした。