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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

新国劇バレエ『ジゼル・初日』を観る

【日時】2022.10.21.(金)19:00~

【会場】NNTTオペラパレス

【演目】ジゼル全二幕

【公演】新国立バレエ団

【出演】

〇ジゼル:小野絢子

 

<Profile>

東京都出身。小林紀子、パトリック·アルモン、牧阿佐美に師事。小林紀子バレエアカデミー、新国立劇場バレエ研修所(第3期修了生)を経て、2007年新国立劇場バレエ団にソリストとして入団。入団直後に、ビントレー『アラジン』の主役に抜擢され成功を収めた。その後、『眠れる森の美女』『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『ラ·バヤデール』『ジゼル』、アシュトン『シンデレラ』、ビントレー『カルミナ·ブラーナ』『パゴダの王子』『シルヴィア』、プティ『こうもり』『コッペリア』、フォーキン『火の鳥』、ウィールドン『不思議の国のアリス』ほか数多くの作品で主役を踊っている。 11年プリンシパルに昇格。主な受賞歴に04年アデリン·ジェニー国際バレエコンクール金賞、11年芸術選奨文部科学大臣新人賞および舞踊批評家協会新人賞、14年服部智恵子賞、16年橘秋子賞優秀賞、19年芸術選奨文部科学大臣賞などがある。プリンシパル。

〇アルブレヒト:奥村康祐

  

<Profile>

奥村康祐

大阪府出身。地主薫に師事。2003年、地主薫バレエ団に入団。07年全日本バレエコンクールシニアの部第1位、09年モスクワ国際バレエコンクールシニア部門銀賞、10年ジャクソン国際バレエコンクールシニア部門銀賞、12年新国立劇場バレエ団にソリストとして入団。13年『ドン·キホーテ』で主役デビューを果たした。『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』『パゴダの王子』『アラジン』『シンデレラ』『ペトルーシュカ』などで主役を踊っている。14年ファースト·ソリスト、16年よりプリンシパルに昇格。10年文化庁芸術祭新人賞、12年大阪文化祭賞奨励賞、14年舞踊批評家協会新人賞、16年中川鋭之助賞、22年芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。プリンシパル。

〇ヒラリオン:福田圭吾

〇ミルタ:寺田亜沙子

〇ウィルフリード:清水裕三郎

〇ベルタ:楠元郁子

〇クールランド公爵:夏山周久

〇バチルド:益田裕子

〇ペザント パ・ド・ドゥ:池田理沙子/速水渉悟

〇モイナ:廣川みくり

〇ズルマ:飯野萌子

〇他ペザント達、ウィリ達多数。

【芸術監督・演出】吉田都

【振付】ジャン・コラリ / ジュール・ペロー/
マリウス・プティパ

【改訂振付】アラスター・マリオット

【音楽】アドルフ・アダン

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指揮】アレケセイ・バクラン

  

<Profile>

 アレケセイ・バクラン

ウクライナ国立歌劇場指揮者。1987年、キーウ国立音楽院を卒業後、ウクライナ国立歌劇場にて指揮者を務める。95年、キーウ市アカデミー・オペラ・バレエ劇場首席指揮者に就任。ウクライナ芸術功労活動家の称号を授与される。ウクライナ国立歌劇場では『マーメイド』『コッペリア』『ウィンナー・ワルツ』『海賊』、また、キエフ市アカデミー・オペラ・バレエ劇場では『リゴレット』『ロメオとジュリエット』『ラ・バヤデール』『ジゼル』『白鳥の湖』『不死身のカシェイ』(リムスキー=コルサコフ)、『森の詩』(スコルリスキー)などのオペラ、バレエに指揮者・音楽監督として参加。ベートーヴェン『交響曲第9番』、ロッシーニ『スターバト・マーテル』、オルフ『カルミナ・ブラーナ』などを手がける。2003年、06年にはメキシコで、世界のバレエ界のスターたちを集めて行なわれたガラ・コンサート《バレエティッシモ》で指揮を務めた。06年にザグレブ国立歌劇場に招かれたほか、メキシコシティ国立バレエ団に度々招かれ、『ロメオとジュリエット』などの指揮を務める。また、ウクライナ国立歌劇場のドイツ、フランス、スペイン、スロベニア、ポルトガル、韓国、南アフリカ、メキシコ公演、およびキーウ市アカデミー・オペラ・バレエ劇場イギリス公演(05、06、07年)に参加。新国立劇場バレエ団では08年以降、『ラ・バヤデール』『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』『シンフォニー・イン・スリー・ムーヴメンツ』『大フーガ』『テーマとヴァリエーション』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』『ジゼル』などで指揮を務めている。

 

【美術・衣裳】ディック・バード

【照明】リック・フィッシャー

【粗筋】

第一幕

 村娘ジゼルと農民に変装したアルブレヒト、ジゼルは、身体は弱いが笑顔を絶やさない踊り好きな娘だった。ジゼルにはロイスという恋人がいた。しかし、農民であるロイスは偽りの姿。
 二人は想いを通わせるが、ジゼルに恋する村の青年ヒラリオンには面白くない。彼はアルブレヒトが普段の衣装や剣をしまう小屋を見つけ、村の青年ではないことを暴く。

 ある時、ジゼルの村にアルブレヒトの婚約者バチルダを連れた貴族が村に立ち寄った。ヒラリオンはアルブレヒトの剣を持ち出し、ジゼルの前に婚約者バチルダと公爵を連れて、その身分を暴いてしまう。

 身分を暴かれたアルブレヒトは、バチルダの手にキスをする。それを見たジゼルは気が動転し、髪を振り乱して錯乱し、母の腕の中で息絶えてしまう。

第二幕

森の精霊ウィリーの女王ミルタ。森の沼のほとりの墓場は、結婚を前に亡くなった処女の精霊・ウィリーたちが集まる場所。そのウィリーたちは毎晩墓場から抜け出して踊り狂い、通りかかった若い男を死ぬまでおどらせていた。その伝説の通り亡くなったジゼルもウィリーとなっていた。

ある日、ジゼルの墓に許しを請いにやってきたヒラリオンはウィリーに追い立てられる。
そして、自責の念を感じるアルブレヒトも深夜にジゼルの墓を訪れた。ウィリーたちがヒラリオンを追う間、ジゼルを失った悲しみと悔恨にくれるアルブレヒトが彼女の墓を訪れ、亡霊となったジゼルと再会する。

 ヒラリオンはウィリーたちに捕らえられ命乞いをするが、女王ミルタは冷たく突き放し死の沼に突き落とす。

 精霊ウィリーに捕らえられるアルブレヒト
ミルタはアルブレヒトをも捕らえ死に追いやろうとする。アルブレヒトが最後の力を振り絞り踊るとき、朝の鐘が鳴り、ウィリーたちは墓に戻っていきアルブレヒトは助かった。

 ジゼルも朝の光を浴び、アルブレヒトに別れをつげて消えていくのでした。

 

 

【上演の模様】

≪第一幕≫

 冒頭、フルートがハープの伴奏で、綺麗な音を奏でて幕が開くと、舞台は田舎の風景、奥中央には白樺の木でしょうか、林があって手前の広場左右には、左に二階建ての農家、右手に大き目の物置風の建物があります。農民たちが二十人もいましょうか、忙しなく動いたり踊ったり、ジゼルは左の家にいる様です。暫くすると出て来て、農民の服装をして農民を装ったアルブレヒト(実は、彼は貴族の王子なのです)と仲良く踊ったり、何やら話したり、村民に混じり踊ったりしていました。

 タイトルロール役の小野さんは、随分と手足の動きもしなやかに、優雅な踊り振りでしたし、その相手役の奥村さんの踊りは、全体的に跳躍、回転も、フィギュアスケートの様なスピード感よりも、フワッとしたこれまた優雅な大きく見える立派なものでした。

 ジゼルは、この第一幕前半が一番元気があって幸せそうに見え、踊りも生き生きとしたものだったので、大きな拍手浴びていました。またこの二人によるパ・ド・ドウは息がピッタリあっっていて、例えればペアフィギュアの如く、滑る様ななめらかな動きでした。 更にこの二人は、踊り以外の演技も上手なものでした。

 一幕後半で、ホルンの響きとともに、兵士を伴った公爵(アルブレヒトの叔父)が狩りの途中、村広場に登場し、一緒に富豪の娘、バチルドを伴っています。彼女はアルブレヒトの許嫁で、村人に扮したアルブレヒトの正体を、ジゼルに恋心を抱くヒラリオン(きこり)が、ばらしてしまいました。仕方なくアルブリヒトは許嫁バチルドにひざまづいて挨拶、これを見たジゼルは大ショックを受けるのでした。その後の小野さんの踊りは、いかにもショックを受けた娘を表現した纏まりの付かない様子で、さらには狂乱状態に陥ったジゼルの踊りや演技により、ジゼルの受けた心の打撃が如何に大きかったかを見事に表現していました。そしてジゼルは倒れて死んでしまうのです。

 又前後しますが、公爵たちの前で、踊りを披露する村人たちの群舞も、リズミカルな民族舞踊風で大変見ごたえがありました。

《第二幕》

 亡くなったジゼルの魂が存する黄泉の世界の話です。幕が開くと場面は暗い正面遠くに墓標がいくつも見えてその夜空には丸い月が掛かっています。 しかも舞台両サイドには不気味な太い木や根っこが配された如何にもこの世から隔絶した世界を上手にセットで表現していました。ここには、若くして死んだ生娘たちの魂が、夜毎にお墓から抜け出して、ウィリとなって踊るのでした。そのコールド・バレエの踊りは他の演目でもいつもそうなのですが、白いロマンティック・チュチュを羽織り、特にこの演目では、黄泉のウィリ達ですからベールも被り、全体として死に装束に見える多くのウィリ達の踊りは、特に清潔さに満ちた美しい群舞でした。幕が上がって最初はウィリ達のお頭と言うか夜の女王的ダンサーであるミルタ役をソロで踊った寺田さんは、見事に爪先立ちで猛スピードで舞台を横切り、又もう一度戻って行くその速さには少しびっくり、相当なテクニックを身に着けたバレリーナーだと思いました。その後のソロの踊りも立派なものでした。また表現力というか演技もうまい。アルブレヒトやジゼルが懇願のポーズをとっても無視する様子は、見るだけで何を語っているか聴衆に伝わってくる説得力が有るものでした。

 それにしても最後、結局アルブレヒトはジゼルに黄泉の世界まで会いに行って、しばし再会したものの、ミルタ率いるウィリ達に阻まれ、二人は結ばれず、永遠の別れとなってしまうのは、余りに可哀そうな結末ですね。他の演目やオペラでも、死んでしまった恋する人に会いに行って、遂にはその思いが達成されるハッピーエンドの物語は多いのですが、ジゼルの様に悲劇が悲劇で終結するのは、もう少しどうにかならなかったものかと思ったりします。が、それが実際の世の中の厳しさを的確に反映したストーリーなのかも知れません。余りにも酷な人生が世の中には何と多い事でしょう。