
【日時】2026 .1.8.(木)14:00〜
【会場】横浜市戸塚区民文化センターさくらホール
【出演】ヴァイオリン/遠藤香奈子 ピアノ/遠藤和歌子
<プロフィール>
○遠藤香奈子
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。在学中、ヴァイオリンを鷲見健彰、原田幸一郎の両氏に師事。
2009年アフィニス文化財団の助成による海外派遣研修員としてニューヨークへ留学し、研鑽を積む。
第1回東京室内楽コンクール優勝。第2回大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門第2位。第5回パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールにて最高位ならびにサルバトーレ・シャリーノ特別賞を受賞。霧島国際音楽祭特別奨励賞、青山音楽賞バロックザール賞等受賞する他、国内外の音楽祭へ招待されるなど、アンサンブル奏者としての能力を高く評価され、室内楽からオーケストラの客演首席奏者まで幅広く活動している。
現在、東京都交響楽団第2ヴァイオリン 首席奏者、The 4 Players Tokyo(弦楽四重奏団)第2ヴァイオリン奏者を務める他、横浜シンフォニエッタのメンバーとしても活躍するなか、ソロリサイタルや施設へのボランティア出張演奏も定期的に行い、幅広い世代と環境へのクラシック音楽の普及に意欲的に取り組んでいる
【曲目】
①宮城道雄『春の海』
(曲について)
宮城道雄(1894 明治27-1956 昭和31)は、わずか8歳で失明し、若くして卓越した技術を持つ天才箏曲家でした。教育者としての功績も大きく、初心者用の箏や三味線の教則本を執筆し、ラジオによる講習など、新しい邦楽教育を実践しました。また、邦楽と洋楽の融合を図り「新日本音楽」の代表としても活躍しました。春の瀬戸内海のさざ波や海鳥の声を描いたこの曲は、昭和4年に箏と尺八の二重奏曲として発表されました。昭和7年に尺八パートをヴァイオリンに編曲し、フランス人ヴァイオリニスト、シュメーとの協演で好評を博し、世界的にも有名になりました。
②クライスラー『愛の三部作』
(曲について)
クライスラーの「愛の三部作」とは、ヴァイオリンとピアノのための小品集「3つの古いウィーンの舞曲」(Alt-Wiener Tanzweisen)のことで、具体的には「愛の喜び (Liebesfreud)」「愛の悲しみ (Liebesleid)」「美しきロスマリン (Schön Rosmarin)」の3曲から成り、これらがセットで演奏されることが多い。
特に「愛の喜び」と「愛の悲しみ」は対をなす作品として有名で、ラフマニノフにより、ピアノ版にも編曲されている、
三部作の構成
愛の喜び (Liebesfreud):喜びにあふれた、晴れやかなワルツ風の曲。
愛の悲しみ (Liebesleid):哀愁を帯びた、対照的な性格の曲。
美しきロスマリン (Schön Rosmarin):花の名前が付けられた、優美で美しい旋律の曲。
③ブラームス『ハンガリー舞曲第5番』
(曲について)
バッハ、ベートーヴェンと並んで「ドイツ三大B」とも称されるヨハネス・ブラームスは、幼少期から音楽的才能を開花させ、技巧に秀でたピアニストとしても活躍した作曲家です。晩年まで創作意欲が衰えることはなく、次々と作品を世に送り出しました。全21曲からなる「ハンガリー舞曲集」は、ブラームスのオリジナル作品ではなく、民族音楽の編曲としてピアノ連弾用に書かれました。 主にハンガリー民謡に基づいた舞曲の旋律が用いられ、リズムの緩急や変化に富んだ躍動感のある曲調が特徴です。1869年に第1番~10番が出版されるとたちまち大好評となり、管弦楽用にも再編曲され世界中で演奏されました。1880 年に第11番~21番が出版され現在の舞曲集になりました。今回は、ピアノ伴奏でヴァイオリン演奏です。
④サン=サーンス『序奏とロンド・カプリチオーソ』
(曲について)
イ短調、2/4拍子、アンダンテ・マリンコニコの穏やかな序奏の後に、6/8拍子、アレグロ・ノン・トロッポの、情熱的な舞曲調のロンド主部が続く。
主部の構成はA(イ短調)-B(ハ長調)-A-D-C(ハ長調)-A-D-B(ヘ長調)-A-コーダ。コーダの直前にはヴァイオリンの重音の連続による短いカデンツァが挿入される。コーダはピウ・アレグロ、イ長調に転じて音階による走句を繰り広げたのちタイトル通りあっけなく終結する。
当初、ヴァイオリン協奏曲第1番のフィナーレとして構想され、1863年に作曲された。初演もヴァイオリン協奏曲第1番と同時に、1864年4月4日にサラサーテの独奏、サン=サーンスの指揮で行われた。デュラン社からの出版は1875年に行われ、サラサーテに献呈されている。
ピアノ伴奏版はジョルジュ・ビゼーによって編曲され、1870年に出版されている。演奏時間は約9分。
【演奏の模様】
この演奏会は、戸塚区出身の東京都交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者の遠藤香奈子さんが、毎年地元のホールで正月に開催しているものです。妹さん(遠藤和歌子さん)がピアノ伴奏をし自分はヴァイオリンを弾くリサイタル方式です。今年で11回目となるそうです。
①宮城道雄『春の海』
演奏による正月雰囲気は、本来の「尺八と箏」程ではありませんでしたが、正月のイマジネーションを膨らませるには十分、姉妹の息がピッタリ合った演奏でした。
②クライスラー『愛の三部作』
②-1 愛の喜びでは、やや沈んだ印象の音質が出ていましたが、愛に溢れる様子は十分出ていたと思いました。
②-2 愛の悲しみでは、音の色合いと音の重量が②-1よりも、こちらを表現するに向いているのか、それをご自身も知っているのか漢詩三を意識的に強調して弾いていた様な気がします。
②-3美しきロスマリンでは、リズム感十分にテンポも変化を付け修飾音多用の曲を切れ味良く表現していました。
ところでロスマリンはご案内の通り、ハーブに用いられている植物、英名ローズマリーのドイツ名です。目立たない位小さな青い可憐な花を付けます。転じてこの曲では、その花の様な女性をイメージしているのでしょう。肉料理のハーブとしてよく使われ、内の上さんはたまにいいラムチョップが手に入った時には、ローズマリー焼きを作って呉れます。
この後当初発表には無かった「中国の太鼓」も演奏されました。
③ブラームス『ハンガリー舞曲第5番』
冒頭から相当Dynamicな奏力が強い調べが、迸り出ました。重音奏も入って来ます。かなり速いテンポの有名な調べが走り出し、遠藤香奈子さんは、かなりの力仕事の様子。テンポはslowdawnしたかと思うとすぐに速いキザミ奏に変化、速⇒緩⇒速と目まぐるしく変わり、最速は将に超特急、この変化に妹さんの和歌子さんは、良く伴奏でぴったりと寄り添っていました。姉妹ならではのアウンの一致があるのでしょう。
この曲を聴くと昔の思い出が蘇って来ます。チェコからハンガリーを旅した時、ブダペストで昼食をとったレストランには1人のロマの演奏者が、テーブル間をヴァイオリン演奏しながら回っていました。時々足を止めて「何かリクエスト曲は無いか?」と訊くのです。そしたらうちの上さんが「Brams, Hungarian Dance」と言ったのです。自分なぞ料理を食べるのに懸命でリクエストを出す気持ちの余裕等有りませんでした。そしたら数ある(多分21曲有るのですね)ハンガリア舞曲から5番を弾き始めたのです。やはり一番有名なのです。その響きは粗野では有りましたが、如何にも素朴さの残る民謡の味わいに満ちた演奏でした。ロマの演奏で思い出しましたが、あれもかなり昔の事、スペイン・グラナダのアルバイシン地区を訪れた時に見たロマのフラメンコ踊り、マドリッドの本格フラメンコダンサーとは違った素朴な土臭い踊りが妙に頭に残っています。
④サン=サーンス『序奏とロンド・カプリチオーソ』
演奏前に香奈子さんがマイクを握り、この曲は自分の父親が大好きな曲なので、過去にも弾いた事が有りますが、「パパに捧げて弾きます」と言った趣旨の説明をして演奏し始めました。
この曲の演奏が今回で一番出来が良かった(自分の耳に一番良く聞こえた)演奏でした。力の絶妙なかけ具合、表現もとても良く聞こえ速いパッセッジを挟むタイミングも良く曲の纏まりも均衡が取れていました。
この曲を聴くとやはり思い出すことが有ります。指揮者の小澤征爾さんが、(車椅子になる以前に)これが最後の指揮といわれたサントリーホールでの演奏会、2018年の12月のドイツグラムフォン記念演奏会でした。そこでアンネ=ゾフィー・ムターが小澤さんの指揮で『序奏とロンド・カプリチオーソ』を弾いたのです。その時の記録を文末に(抜粋再掲)して置きます。
今回の「ニューイヤーコンサート」は、以上の当初発表のプログラムに加えて、以下の曲も演奏されました。
(1)ラフマニノフ『ヴォカリス』
(2)岡野貞一『もみじ』
(3)ショパン『変奏曲イ長調<パガニーニの思い出>』
この中で(3)のみ妹さんの和歌子さんのピアノの独奏演奏でした。
尚最後にアンコールではないのですが、昨年国内某工房で作られたという出来立てのヴァイオリン(Ⅰ)を遠藤さんが紹介、弾いてみせてその調べを、自分が今回の演奏会で使ったヴァイオリン(Ⅱ)と弾き較べるというパフォーマンスがありました。正直言って、遠藤さんが使っている楽器(Ⅱ)の方が熟れたいい響きがしたと思いました。しかし新しい楽器(Ⅱ)も深いいい音がして、きっとこの楽器を長年使い込めばこむ程
いい音を出す様な気がしました。


/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////2018.12.8.HUKKATS Roc.(抜粋再掲)
・・・ムターさんはバッハのコンチェルト、ベートーヴェンのロマンス(一番有名な2番でなくて)1番、及びサンサーンスの序奏とロンド・カプリッチオーソの三曲。バッハはややくぐもった音が感じられた。1番のロマンスも綺麗な素敵な曲ですね。十分すぎる表現力でした。サンサーンスで初めて小澤さんが登場、病状に伏して一時回復後腰痛等で演奏をキャンセルと聞いていましたが、それ以来の再登板。ムターさんと手を取り合って登場し、かなり痩せられて気のせいか顔色が若干悪く感じられたのですが、ムターの、小澤さんの方を見ながら曲を奉げるが如き演奏の要所、要所は、力をふり絞ってタクトを振っていた。この日最高の演奏と思われました。演奏後は顔色も良くなり器楽奏者におどけた仕草をしたり、音楽に力を貰うお手本を見る思いでした。観客は総立ち、客席からは割れんばかりの大拍手と大きな歓声が上がり、小澤さんは何回も何回も退席してはまた舞台に戻り、観客の声援に答えて挨拶を繰り返しておられました。これまでの大業績を考えると本当に涙が出る程の感激でした。お疲れ様、有難う御座いました。さらに元気を回復され素晴らしい演奏をされることを祈ります。
なお、演奏会の休憩後の後半、天皇・皇后両陛下(hukkats注、今の上皇様と美智子様)がお見えになられ、最後の観客のスタンディングオベーションの時は両陛下もずっとお立ちになって拍手されておられました。・・・