
Festa Summer Muza 川崎 2026/祝祭の響き、熱狂から歓喜へ!
【日時】2026.8.11.(火・祝)15:00〜
【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール
【管弦楽】東京交響楽団
【指 揮】原田慶太楼
【独 奏】久末 航(Pf.)
【曲 ⽬】
①ファリャ:歌劇『はかなき人生』から〈スペイン舞曲第1番〉
(曲について)
スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャ (1876~1946) の歌劇「はかなき人生」は、ロマの娘サルーの悲恋を描いた悲劇。1913年にフランスのニースで初演された。サルーは裕福な青年パコと愛を誓うが、パコは身分に見合った別の女性を花嫁に選ぶ。サルーはふたりの結婚式の場にあらわれ、絶望のあまり命を落とす。第2幕のスペイン舞曲第1番は、情熱的ながらも暗い予感を漂わせるアンダルシア風の舞曲。
②プロコフィエフ『ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op. 26』
(曲について)
「はかなき人生」が初演された頃、ロシアでモダニストとして旋風を巻き起こしたのが、セルゲイ・プロコフィエフ (1891~1953)。革命による混乱から祖国を離れたプロコフィエフは、アメリカに渡った後、パリに拠点を移す。1921年の夏、ブルターニュに滞在し、自身のための名人芸的な協奏曲としてピアノ協奏曲第3番を書きあげた。第1楽章はクラリネットによる浮遊するような主題で開始される。すぐに活発なアレグロに突入し、独奏ピアノがスリリングな楽想を展開する。第2楽章は「主題と変奏」。虚ろな表情の擬古的な主題に、性格の異なる5つの変奏が続く。第3楽章はファゴットによる民謡風の主題で開始され、ピアノとオーケストラの対話がエネルギッシュにくりひろげられる。
③山本菜摘『UTAGE~宴~』
(曲について)
山本菜摘(1998~)の「UTAGE~宴~」は群馬交響楽団の委嘱により作曲され、 2024年に原田慶太楼の指揮で高崎芸術劇場で初演された。作曲者は群馬県に滞在して作品の構想を練り、群響、富岡製糸場の機織り、空っ風、八木節、草津節などを題材に、群馬をイメージした響きをちりばめたという。
山本菜摘は仙台市出身、東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。東京交響楽団&サントリーホール「新曲チャレンジ・プロジェクト2023」や、石川県立音楽堂「和洋の響 IV (2023年度)」で作品が採用されている。
④チャイコフスキー『交響曲第5番 ホ短調 op. 64』
(曲について)
ピョートル・チャイコフスキーが1888年に作曲した『交響曲第5番 ホ短調 作品64』は、「運命」のモティーフが全楽章に現れ、暗い苦悩から輝かしい勝利へと向かうドラマチックな名曲です。4つの楽章からなり、演奏時間は約42分。一つの主題が全ての楽章に登場し作品全体に統一感を与えている。この主題は「運命」を象徴しているとされており、第1楽章の冒頭で暗く重々しく提示されるが第4楽章では「運命に対する勝利」を表すかのように輝かしく登場するといった具合に、登場するつど姿を変える。第1楽章と第4楽章は序奏とコーダがあるソナタ形式。緩徐楽章である第2楽章は極めて美しい旋律をもち、第3楽章にはスケルツォの代わりにワルツが置かれている
【演奏の模様】
①ファリャ:歌劇『はかなき人生』から〈スペイン舞曲第1番〉
〇楽器編成:
・木管楽器
フルート2 ピッコロ1 (フルートからの持ち替え含む)
オーボエ2 イングリッシュホル1 クラリネット(B♭管2) バスクラリネット1 ファゴット2
・金管楽器
ホルン4 トランペット:2 トロンボーン3 チューバ1
・打楽器
ティンパニ その他:スネアドラム(小太鼓)、バスドラム(大太鼓)、シンバル、トライアングル、タムタム、カスタネット(スペインの雰囲気を出す重要楽器)、グロッケンシュピール、チャイム(チューブラーベル)、ハンマー
・その他(鍵盤・撥弦楽器など)
ハープ:2 セスタ(チェレスタ)
ギター(オペラ全編の編成に含まれますが、舞曲単独の演奏やアレンジャーによっては省略・補填されることがあります)
この曲は、グラナダの空の下、ロマの娘サルーシャが富貴な男との恋に破れ、第2幕のその男の結婚式の場面で、踊られるアンダルシア地方の素朴なフラメンコ舞曲です。大都市の有名タブラオ店のフラメンコの様な一流の芸術的レベルの見事な踊りとは違い、何処か泥臭さの残る、例えばアルバイシン地区の洞窟内で踊るロマ娘の泥臭さと苦悩さえ感じられる素朴な踊りです。こうした観点から見ると、原田・東響の演奏は、情熱の発露は十分な演奏でしたが、哀愁感はそれ程感じない、オペラの筋道(サルーシャは、裏切り男の結婚式で、倒れて死んでしまう)とはかなりかけ離れた印象でした。 でも、カスタネットの音は効果的。
この曲には、クライスラー編曲のヴァイオリン版がありますが、こちらは、切れの良いスタッカート奏がフラメンコのステップを連想させ、情熱的ヴァイオリン演奏もあるのですが、ヴァイオリンでは、カスタネットの表現は難しいですね。
②プロコフィエフ『ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op. 26』
〇楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、打楽器(大太鼓、カスタネット、タンブリン、シンバル)、弦楽五部14型
〇全三楽章構成
・第1楽章 Andante - Allegro
・第2楽章Tema con variazioni : Andantino
・第3楽章Allegro, ma non troppo
この曲は、多くの世界的ピアノコンクールに於いて、2番の曲と共に、ファイナル演奏の課題曲または選択曲に指定されています。久末さんが二位となったエリザベート王妃国際音楽コンクールもしかり、ただ久末さんは、ブラームスのコンチェルトを選んだ様です。久末さんの実演は、今回初めて聴きました。プロコフィエフのコンチェルトは、これまでに今年久し振りに来日公演したマツーエフが、ウィーンフィルと協奏した時、聞いたことがあります。
クラリネットや木管の序奏音が少し続き、次いで久松さんの疾走音がホールに響き始めした。鍵盤上を交差跳躍を含め、縦横無尽に行き交う指使いは軽やか、再度クラリネットの合の手が入ると、ピアノも同様な旋律を繰り返して、緩やかな静かな演奏に暫し浸りました。しばらく息を潜めて弾いていたソリストは、低い管の途切れ途切れの音が数回鳴ると、それが合図とばかり再び息を吹き替えしたが如くテンポを急発進、両手をそろえた和声の連続を快調に飛ばしました。
今回の久末さんの演奏は、リズミカルな明確なピアニズムで、歯切れの良い音を繰り出し、第1楽章を弾き終えました。原田・東響のアンサンブルとは齟齬が無くうまく溶け合っていた様子。Picc.とPf.との掛け合いも面白い。
第2楽章では、Cl.などの序奏の次に入った久末さん、小カデンツァ的に紡ぐゆっくりした調べは非常に心に響きました。暫くして、ピアノは突然の突進に入り、オケもそれに負けず劣らぬ喧騒の極まりを演じ始めましたが、原田・東響の全楽全奏の強奏になると、やや久末さんの音は負けてしまって、聞き取りにくい、聞こえない演奏のきらいがありました。次の三楽章では、終盤のオケとピアノが溶け合う幽玄の極みは、良かった。しかし音量不足かなと思った箇所もあり、これまで実演を聴いたことのあるマツーエフのプロコ・コンチェルトに比すれば、力不足は否めない印象でした。若しエリザベートコンクールの最終演奏で、この曲を弾いていたら、申し訳ないですが、多分入賞は出来なかったでしょう。
演奏が終わるとチケット売り切れの会場からは、大きな反応がありました。歓呼に応えて、久末さんはアンコール演奏を行いました。
《ソリストアンコール曲》
リスト『巡礼の年 第1年:スイス』から 第9曲〈ジュネーヴの鐘〉
③山本菜摘『UTAGE~宴~』
「 富岡製糸場を見学した印象や、群馬の山々が重なり合う風景などを音楽に織り込んだ」曲らしいのですが、最初から最後まで賑々しく「草津節」や「八木節」の景気のいい音楽がメドレー的に繰り出し、今回のミューザの夏祭りのフィナーレを盛り上げるには、ぴったりの曲、これ以上ない指揮者、夏祭りを弾き通した、これ又最適の管弦楽の組み合わせで、コンサートのフィナーレを飾りました、オットト最後の曲は、もう一つチャイコ・ファイヴが残っていたんですね。八木節について、家の故母が、自分が小さい頃、 ❝八木節は好き!景気よくて格好いい!❞と言っていた事を覚えています。
盛り上がりの点からは、山本さんのこの曲を最後にもってきても良かったのでは?でも大々的な音楽祭の最後の曲としては、軽る過ぎるかも?そうした意味からは、チャイコファイヴは、重みのある最終曲に相応しい曲でしょう。
④チャイコフスキー『交響曲第5番 ホ短調 op. 64』
〇楽器編成:フルート3(第3フルートはピッコロに持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2(A管)、ファゴット2、ホルン4、トランペット2(A管)、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、弦五部16型。
クラリネットとファゴットの組み合わせが全体的に重要な音色となっていました。また、この作品におけるチャイコフスキーのオーケストレーションは、楽器群の効果的な対比など、従来の作品に比べて熟達しているとされます。
〇全四楽章構成
4つの楽章からなり、演奏時間は約42分
第1楽章
第2 楽章
第3 楽章
第4楽章
一つの主題が全ての楽章に登場し作品全体に統一感を与えています。この主題は「運命」を象徴しているとされており、第1楽章の冒頭で暗く重々しく提示されますが、第4楽章では「運命に対する勝利」を表すかのように輝かしく登場するといった具合に、登場するつど姿を変えるのです。第1楽章と第4楽章は序奏とコーダがあるソナタ形式。緩徐楽章である第2楽章は極めて美しい旋律をもち、第3楽章にはスケルツォの代わりにワルツが置かれています。
チャイコフスキーは初演を含めて6回この曲を指揮したが、作品に対する自己評価は揺れ動いた。今日では均整がとれた名作の一つとして高く評価されており、交響曲第4番、交響曲第6番『悲愴』とともに後期の「三大交響曲」として高い人気を得ています。
この曲は、聴き始めの頃は、あまりに重すぎて、好きになれませんでした。あれは何年前でしょう?確か2018年の斎藤記念オーケストラが、小澤征爾指揮で演奏された時、(指揮と言っても小澤さんの体調が既におもわしくない状態で、小澤さんの指揮は、ムターの弾くサン=サーンス『序奏とロンド・カプリッチオーソ』
に限られたもので、他の曲は控えの指揮者の演奏でした。)この時演奏された曲の一つが、チャイコフスキーの5番だったのです。今考えれば、この時の斎藤記念の演奏が、余りにも迫力のある素晴らしいものだったので、自分としては消化不足で、胃もたれして、かなり疲れた記憶があります。それ以降暫くは、チャイコは、6番か4番を優先して聴きに行く様になり、6番は避ける様になってしまった。暫くそうした状態だったのですが、その後録音も含め時々
聴くにつれて、違和感が徐々に薄れ、今では6番と同じくらい好きになって来ました。好きと思うのと嫌いと思うのとでは、同じ物でも違って見えるのですね。今回の原田・東響の5番の演奏は、全体的にツボをしっかり押さえた構築力の高さを示しつていました。何と言っても、この曲の好きな処は、アンサンブルのやり取りが入り組み、拡大された力強さに変化して行っても、必ずと言って良い程、美しい主題(チャイコ節と自分では呼んでいる)に戻る醍醐味、今回の演奏ではそれを十分満喫しました。
《オーケストラ・アンコール曲》
山本直純『好きです かわさき 愛の街』
❝ 何でいつもこの曲なんだろう? ❞と肩にミューザのタオルを掛けながら、独り言を呟き振り始めた原田さん。いつもの明るさと元気さで、アンコールを弾き切り、会場をこれ以上無いくらい盛りあげました。

これで今年のミューザ夏祭りも終わりです。自分で厳選した演奏を幾つか聴きましたが、何れも聴き応えのある演奏が殆どでした。また来年も素敵な企画を願います。事務方の皆さんの更なる工夫とご苦労に、感謝と期待を寄せたいと思います。