表記のガラコンサートは、先週配信されたもので、フランス、シャンボール城での500周年記念コンサートです。このお城は、フランソワー1世が16世紀初頭にレオナルド・ダ・ヴィンチの設計で建てた城とされていて、パリから南南東へ約170km、ロワール川沿いの街ブロアから程遠くない箇所に建っています。ブロアから西南西に流れるロワール川沿いには、多くの古城が残っており、世界遺産に登録されているのです。
今回のコンサートでは、古楽を得意とするレ・タラン・リリク(hukkats注)に依り、バロック音楽を中心にグルックからケルビーニやロッシーニの古典派に至るまでの古楽器演奏や歌が演奏されたものです。
(hukkats注)
レ・タラン・リリク(フランス語Les Talens Lyriques)は、フランス・パリに本拠地がある古楽オーケストラおよび合唱団である。1991年にクリストフ・ルセにより設立された。名称はジャン=フィリップ・ラモーの歌劇『エベの祭典』の副題(オペラの才人)にちなんでいる。レパートリーは17、18世紀のフランス音楽・イタリア音楽を中心に、モンテヴェルディからヘンデルのほか、モーツァルトまで及ぶ。
【管弦楽】Les Talens Lyriques
【指揮】Christophe Rousset
【作曲者・曲目・演奏者】
曲は、リュリ、ラモー、ヘンデル、ビヴァルディ、グルックからロッシーニ、ドビュッシーに至るまでの有名な作曲家の他にも初めて聞く作曲家の曲も演奏されました。
00:19 Jean-Baptiste Lully Ah! J’entends un bruit qui nous presse (Amadis/1684) Sophie Karthäuser - SOPRANO Emiliano Gonzalez Toro - TENOR Jérôme Boutillier - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
01:26 Jean-Philippe Rameau Entrée très gaye des troubadours (Les Paladins/1760) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
02:36 Pierre Certon Reviens vers moy (1517) Doulce Mémoire & Denis Raisin Dadre
03:54 Jean de Cambefort Overture (Ballet royal de la nuit/1653) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
06:20 André Cardinal Destouches Ô nuit, témoin de mes soupirs secrets (Callirhoé/1712) Véronique Gens - SOPRANO Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
09:07 J.-B. Lully Les vents (Alceste/1674) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
09:36 J.-B. Lully Piglialo sù, Signor Manzu (Monsieur de Pourceaugnac/1669) Emiliano Gonzalez Toro - TENOR Jérôme Boutillier - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
11:17 J.-B. Lully Quatrième air pour les coups de sabre (Le Bourgeois gentilhomme/1670) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
11:54 J.-B. Lully Marche pour la cérémonie des Turcs (Le Bourgeois gentilhomme/1670) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
13:11 George Frideric Handel Come rosa in su la spina (Apollo e Dafne/1709/10) Jérôme Boutillier - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset (cembalo) 15:53 Antonio Vivaldi Concerto for strings in G major ′Alla rustica′ - Presto (1725/30) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
17:17 G. F. Handel È un folle, è un vile affetto (Alcina/1735) Emiliano Gonzalez Toro - TENOR Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
21:19 Nicola Porpora Alto Giove (Polifemo/1735) Philipp Mathmann - COUNTERTENOR Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
25:37 J.-P. Rameau Deuxième Rondeau pour les chasseurs (Hippolyte et Aricie/1733) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
26:54 J.-P. Rameau Tonnerre, Ciel! Quels éclats! (Zaïs/1748) Sophie Karthäuser - SOPRANO Jérôme Boutillier - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset 28:15 J.-P. Rameau Cruels tyrans qui régnez dans mon coeur (Zoroastre/1744) Jean-Sébastien Bou - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
30:53 J.-P. Rameau Danse des Sauvages (Les Indes galantes/1739) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
32:58 André-Ernest-Modeste Grétry Overture (L’ami de la maison/1771) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
34:03 Christoph Willibald Gluck Pour vous, quand il vous plaît (Armide/1777) Jérôme Boutillier - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
35:25 C. W. Gluck Ah! Quelle erreur, quelle folie! (Armide/1777) Sophie Karthäuser - SOPRANO Emiliano Gonzalez Toro - TENOR Jérôme Boutillier - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
36:34 C. W. Gluck Le calme rentre dans mon coeur (Iphigénie en Tauride/1779) Jean-Sébastien Bou - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
38:37 C. W. Gluck Air des Furies (Orfeo ed Euridice/1762) Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
42:30 G. F. Handel Sarabande (Suite No. 4 in D minor /1733) Christophe Rousset - CEMBALO
44:26 Luigi Cherubini Ah! Nos peines seront communes (Médée/1797) Véronique Gens - SOPRANO Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
51:25 Gioachino Rossini Sois immobile, et vers la terre (Guillaume Tell/1829) Jean-Sébastien Bou - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
53:59 Henri, Comte de Chambord À l’hirondelle (1872) Lucile Richardot - MEZZO-SOPRANO Vanessa Wagner - PIANO
56:10 Prosper de Ginestet Triste victime de la guerre (François 1er à Chambord/1830) Sophie Karthäuser - SOPRANO Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
1:00:00 P. de Ginestet Que je revoie avec ivresse (François 1er à Chambord/1830) Jérôme Boutillier - BARITONE Les Talens Lyriques & Christophe Rousset
1:05:58 Claude Debussy Clair de lune (Suite bergamasque/1905) Vanessa Wagner - PIANO
約一時間ちょっとの演奏でした。お城の上階の広場での演奏です(一部室内での演奏)。
楽器は当然のことながら古楽器です。日本でのバロック演奏では見かけない形のものも有りました。楽譜は手書きのものも使っていた様です。器楽演奏と歌とを大体交互に演奏していましたが、歌の方が多かったかな?歌手も多く参加していて、ソロ、二重唱、三重唱も有り(合唱は有りませんでした)、よりどりみどり、飽きません。器楽演奏も古楽器オケの他にチェンバロ独奏、チェンバロ六重奏伴奏での歌、ピアノ伴奏の歌独唱、などの他、最後はドビュッシーのピアノ曲『月の光』を城の二階広場で月明かりを浴びながらという風流な演奏で幕となりました。
会場といい、楽器といい、多岐にわたる演奏者といい、日本では今のところ真似のできないコンサートだと思いました。
ところで、昔何年も前ですが、ロワール川沿いに城を見て廻ったことがあります。自由にあちこち見学して歩けるなど、今から思えば夢の様な時代でしたね。いつになったらそうした時が再び戻って来ることやら。
丁度マロニエの花が真っ盛りのとても良い季節でした。
上記シャンボール城は外観を見て、それからレオナルド・ダ・ヴィンチの銅像のある城、アンボワーズ城を見ました。15世紀に遡れる古い大きな城で、フランソワー1世が住む以前に、シャルル8世、ルイ11世、シャルル7世が過ごした城です。フランソワー1世が、レオナルド・ダ・ヴィンチをイタリアから呼び寄せて、近くの城館にすまわせたことでも有名です。川岸にダ・ヴィンチの像がありました。ダ・ヴィンチの像は寝転んだ姿勢でしかも裸体像なので、うちの上さんなど恥ずかしがって良く見ませんでした(この写真も上さんの要請で顔は非公開です)
銅像はお城の対岸にありました。
確かに見た目にも古い歴史を感じさせる城でした。その他の城も外観をざっと見ただけのものが多く、これはその先にじっくり中まで良く見たい城があったからです。限られた時間で内部まで見て廻れるのは一日かけても、一つか二つの城でしょう。
最後にじっくり見たのは『シュノンソー城』。昔イタリアやフランスの歴史書を読んで、その城に、纏わる人物たちに興味を持っていたからです。
この城はフランソワー1世の後王位を継いだアンリ二世が愛妾ディアヌ・ド・ポアチェに贈与したものです。アンリ二世には、カトリーヌド・メディチというフィレンツから輿入れした正妻がいましたが、政略結婚で彼女の性格も余り好まなかった王はディアヌ(=ダイアナの意味)の方を愛しました。ディアヌはこの城にアーチ形の橋を建設したり、庭園を拡充したり城と王をこよなく愛していました。
しかしアンリ二世の死(槍の試合で目を射抜かれての事故死)により、城はカトリーヌに返上することになったのでした。以後カトリーヌはこの城にイタリア風の生活の様式を取り入れたりイタリア料理を中心に作らせたり、今度は彼女のお気に入りとなったのです。
城の内部には絵画が沢山飾ってありました。
殆どが肖像画です。
ディアヌは所謂ダイアナ神の意で、狩りと貞節・月の女神ですから絵にもその寓意が現れています。
中でも一番注目したのはオルガンを弾いている絵です。
聖セシールはローマ初期の殉教者で聖人に列せられました。音楽の聖人としても有名で、この絵ではオルガンを弾き生徒に歌を歌わせています。
又別なフロアーには厨房があって、これが中世の台所かと驚く程の設備が整っていました。
当時はフランス料理よりもイタリア料理の方が先進的なものだったのです。カトリーヌはメディチ家を通じてイタリアの様々な要素をフランスへもたらしたのでしょう。