HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東京二期会オペラ『TURANDOT』第1日目詳細Ⅰ(第一幕+第二幕)

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【日時】2023.2.23.(木・祝) 18:00~

【会場】東京文化会館

【演出】ダニエル・クレーマー

〈Profile〉

イングリッシュ・ナショナル・オペ前支配人。オペラ、演劇、ダンス等の監督、演劇監督、ダンス監督を務め、今回の「」はteam lab とともにデジタルアートを融合した没入型のオペラを演出した。

【管弦楽】新日本フィルハーモニー交響楽団

【指揮】ディウス・マテウス

<Profile>

ベネズエラの⾳楽教育エル・システマ出⾝の英雄ディエゴ・マテウス。東京⼆期会には初登場ながら、⼩澤征爾⾳楽塾初代⾸席指揮者に就任するなど、その実⼒を知るファンは少なくありません。今回は、通常『トゥーランドット』公演で採⽤されることの多いアルファーノ版ではなく、より登場⼈物の⼼理描写に重きを置いているとされるルチアーノ・ベリオ版による第3幕補作版を使⽤。その点においても、プッチーニの究極の⾳楽をマテウスがいかに導くのか注目される


【合唱】二期会合唱団

【合唱指揮】佐藤 宏

【セノグラフィー、デジタル&ライトアート】チームラボ
【ステージデザイン】チームラボアーキテクツ
【衣裳】中野希美江
【照明】シモン・トロッテ
【振付】ティム・クレイドン
【演出補】デレク・ウォーカー
 【演出助手】島田彌六
 【舞台監督】幸泉浩司
【公演監督】大島幾雄
【公演監督補】佐々木典子

 

配役

2月23日(木・祝)

  

トゥーランドット姫

田崎尚美

 

 

皇帝アルトゥム

牧川修一

 

 

ティムール

ジョン ハオ

 

 

王子カラフ

樋口達哉

 

 

 

リュー

竹多倫子

 

 

大臣ピン

小林啓倫

 

 

大臣パン

児玉和弘

 

 

大臣ポン

新海康仁

 

 

役人

増原英也

 

 

 

【プロモート記事】

ジュネーヴで絶賛されたオペラ『トゥーランドット』が東京に!チームラボによる最先端の舞台を鑑賞しよう。
  
東京二期会では、国際的アート集団チームラボがセノグラフィーを手掛けた、ジャコモ・プッチーニ作曲のオペラ『トゥーランドット』を、2023年2月23日(木・祝)から26日(日)まで東京文化会館大ホールにて上演。

©teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Grand Théâtre de Genève, and Pace Gallery

これまでのオペラの概念を超える『トゥーランドット』.同公演の演出は、日本初登場となるイングリッシュ・ナショナル・オペラの前支配人ダニエル・クレーマーさん。チームラボと5年の構想期間をかけて創りあげたその舞台は、彼の大胆な解釈をもとに、チームラボによる光の立体的な彫刻で没入的な劇場空間に構築され、これまでの「オペラ」の概念を超える、最先端の総合芸術『トゥーランドット』が誕生。スイスのジュネーヴ大劇場で上演されたワールドプレミエは、驚きと賞賛で迎えられた。

 

また版は、より登場人物の心理描写に重きを置いているとされる、ルチアーノ・ベリオ氏による第3幕補作版が使用されている。

共演でも好評を博し、来年には小澤征爾音楽塾初代首席指揮者に就任することも決定している。

今回は、小澤征爾さんが創立した新日本フィルハーモニー交響楽団とともに、東京二期会公演に初登場を果たす。

また、キャストには、タイトルロールのトゥーランドット姫に田崎尚美さんと土屋優子さん、王子カラフに樋口達哉さんと城宏憲さん、リューに竹多倫子さんと谷原めぐみさんといった、今まさに旬を迎えている実力派がダブルキャストで揃う。

共演でも好評を博し、今回指揮を執るディゴ・マテウスは、来年には小澤征爾音楽塾初代首席指揮者に就任することも決定している。今回は、小澤征爾さんが創立した新日本フィルハーモニー交響楽団とともに、東京二期会公演に初登場を果たす。

この『トゥーランドット』で今までにない感動を。

[PR times Inc.のIGNITE紙より]

 

【粗筋】

<第一幕>伝説の時代の中国、北京の城門前

 役人が群衆を前に布令を読み上げている。美貌を誇るトゥーランドット姫は、求婚する者に三つの謎を解くことを課し、解けない場合は斬首刑に処するとの旨。折しも今日は謎解きに失敗したペルシャの王子が処刑されるという。刑をひと目見ようと揉みあいになる群衆のなか、国を追われたダッタン国の元国王ティムールと、彼に付き添う女奴隷のリューは、生き別れとなっていた王子カラフに出会う。3人が再会を喜ぶのも束の間、群衆から同情の声が上がるなか、首斬り役人とともにペルシャの王子が処刑場に引き立てられていく。そして宮殿のバルコニーにトゥーランドット姫が現れると、カラフはその美しさに魅せられてしまう。父であるティムール、涙ながらのリュー、そして宮廷に仕えるピン、パン、ポンの3人の大臣たちは皆、カラフに求婚を思いとどまるよう説得するが、カラフの決心は翻らず、謎に挑戦する合図となる銅鑼を、トゥーランドット姫の名を叫びながら3回打ち鳴らす。

 

<第二幕>

第1場 3人の大臣たちの控えの間
 ピン、パン、ポンの3人が噂話をしている。トゥーランドット姫の謎かけのせいで、今年はすでに13人もの若者が命を失った。3人は、この暗い時代を嘆いて、平穏だった遠いふるさとを懐かしむ。さて次なる若者は婚礼か葬式か……。

第2場 宮殿前の広場
 トゥーランドット姫の父である皇帝アルトゥムを讃える群衆。姿を見せたアルトゥムは、カラフの決意が変わらないか確認する。やがてトゥーランドット姫が登場、カラフに冷たい一瞥を投げながら、何故このような謎かけを始めたのかを語る。それはトゥーランドット姫の崇敬するロウ・リン姫が、かつて攻めてきたダッタン軍の若者によって捕らえられ、非業の死を遂げたことに対する復讐だった。しかしそれでもなお、カラフの決意は変わらない。そこでいよいよトゥーランドット姫は三つの謎をかけるが、カラフはそれを「希望」、「血潮」、「トゥーランドット」と次々に解いていく。皇帝をはじめ群衆は歓喜に包まれるが、ひとりトゥーランドット姫だけは、絶望のうちに焦り、父帝に約束を反故にするよう願い出るが、誓いは神聖なものとして却下される。そんな様子を見たカラフは、今度は自分から一つの謎を出題する。「明朝までに私の名を言い当てたら命を捧げよう」と。トゥーランドット姫はこの申し出を受け、群衆が皇帝を讃える内に幕となる。

 

<第三幕>

第1場 宮殿の庭
 夜も更けて北京の市中には、若者の名がわかるまで誰も寝てはならない、という布令が出される。カラフはひとり勝利を確信して「誰も寝てはならぬ」と歌う。そこへピン、パン、ポンが現れて、美しい娘たちや金銀財宝でカラフの機嫌をとり、この国を立ち去るよう懇願するが、カラフは拒絶する。その時突然、ティムールとリューが群衆の前に引き立てられ、若者の名を明かすよう責められるが、2人は口を固く噤んでいる。トゥーランドット姫はリューを鞭打たせながら、このような責め苦にリューが耐える理由を訝しむ。リューは自らの最期を悟り、これが恋の力というものであることをトゥーランドット姫に向かって説き、短刀を奪って己の胸に突き刺して果てる。人々はリューの一途な心に感動し、その死を嘆いて遺骸を運び去る。あとにはカラフとトゥーランドット姫の2人が残された。カラフは動揺するトゥーランドット姫のヴェールを剥ぎ、抱きしめて熱い口づけをする。初めての口づけに氷のようなトゥーランドット姫の心も溶け、愛の強い力を感じるのだった。そこでカラフは自分の名を明かし、トゥーランドット姫に己の生命を委ねる。

第2場 宮殿前の広場
 皇帝アルトゥムの御前、群衆に囲まれたなかで、トゥーランドット姫は若者の名が判明したと高らかに宣言する。その名は……愛! と、トゥーランドット姫は喜ばしく叫ぶ。カラフはトゥーランドット姫に駆け寄り、群衆は歓呼して皇帝を讃え、大団円を迎えて終幕となる。

 

【上演の模様】

 この演目については、昨年4月に東京春音楽祭2022で演奏会形式ですが濃密な上演を行なったのを見ているので、その時の記録を参考まで、文末に再掲しておきます。

 以下に各幕の聴き処を中心に記します。かってはマリア・カラスも演じたタイトルロールのトゥーランドット姫、カラスのみならずティバルディ、カティア・レッチャレッリ、カバリエ、など歴代の歌姫たちも競うが如く歌いました。 

 

第一幕

ステージ前面ピットには新日本フィルハーモニー交響楽団が陣どって、ほぼ原典の器楽構成で配置し、ステージ中央には何やら四角い寝床様の上に上向きに捕縛されている若い男が一人、周囲を男性ダンサー10人程が乱舞しています。何か狂気に溢れている様子で。どうもペルシャの王子が月の出と共に処刑される模様。乱舞する足元には既に処刑された前日以前の死体が幾体か転げ置いてある。指揮台に載ったモランディが指揮棒を振り盛んにオケを鳴らせ始めました。ここは、中国・北京の宮殿前の広場。多くの群衆があふれかえっていて、そこに役人が登場,皇帝アルトゥムの娘トゥーランドット姫(以下姫と略記)が実施している北京の掟を知らせるのです。ブラスの響きに続き弦が単音を間隔を置いて布告調に鳴らし、続くパーカッションにはシロフォンの音あり。役人は宣告します。❝(役人)ペキンの民よ!これは法である。清らなるトゥーランドット姫は王家の血を引く者の花嫁となるだろう。姫が出される三つの謎を解いた者の。だが 挑戦者がもし敗れたときには、斧にその誇り高き首を差し出さねばならぬ❞と。役人はペルシャの王子等多くの挑戦者が失敗し首をはねられたことを単調な調子と声で、歌いあげます。顔をはっきり識別出来ないですが、配役表から推定すると「役人」役の増原英也さんでしょうか。いい声ですがやや籠り気味。ステージ奥の回り舞台の上部に設置された大きな横長の四角いコンテナ風のセットの中で、合唱団が群衆の叫びを模して歌っています。 ❝死ね!そうだ 死ね!われらは死刑執行人を待っている!早く 早く!死だ!死だ!処刑だ!死ね!死ね!早く 早く!お前が現れないのなら われらがお前を起こしに行くぞ!プー・ティン・パオよ プー・ティン・パオよ!宮殿へ!宮殿へ!宮殿へ!❞とせわしなく歌って騒ぎ立てる群衆を表現。管弦楽も力一杯合唱ともども異様な雰囲気を演奏で表現している。その後舞台前面に王子カラフと従者リュウと老人ティムール(実はカラフの父親)が登場し、この三人のやり取りが歌われました。カラフ役の樋口さんは、自分たちの王国が瓦解して逃亡、それ以来会えていなかった元王の父親にやっと会えて「父上、私です」と必死で歌いました。声は通るのですが、深さ(濃密さ)は感じられない歌声。一方の老父ティムール役のジョン ハオが「息子よ 生きていたのか」と歌う声は、ややくぐもったバリトンでした。この三人の中でもリュウ役の竹多さんが歌う「おききください、王子さま」は、奇麗な声で、王子の挑戦を止めようとして下僕(しかも女奴隷として)の身分を顧みず、命を顧みない献身的な気持ち、を切々と歌う姿に会場は静まりかえり、シーンと聞き耳を立てている感じでした。勿論自分もそうでした。

❝<リュー>ご主人さま お聞きください。ああ、ご主人さま お聞きを!リューはもう耐えられません。心が砕けてしまいます!ああ どれほど長い道のりをあなた様の名を心に抱きあなた様の名を口にしながら歩いてきたことか。でももしあなた様の運命が明日にも決まってしまったなら さすらいの道の上で私たちは死んでしまいます。あの方は息子を失い...私はあの微笑みの面影を失うのです リューはもう耐えられません ああ!❞ 。

竹多さんの歌うソプラノは(後で聴いた三幕でのアリアを思い起こせば、)最初のアリアだったせいで調子がまだ出なかったのか、高音は細く出していいのですが、全体的には今一つの感じを受けました。 これは低い身分でありながら、心深くに抱いていた王子に対する淡い恋心に近い尊崇の念の表現でもあるのでしょう。プッチーニはこうしたお涙頂戴の滔々としたアリアを、タイトルロール役でないキャストに割り振って作曲したのです。しかも高い身分の者に愛、恋などは語ってはならない低い身分の者のアリアとして。でもよく考えれば、リューはご主人様である元韃靼人の王ティムールを、助けながら北京まで落ち延びてきた訳ですから、もともと王に仕えていた王の覚え目出度き、最も信頼のある世話役の侍女だったのでしょう。中華物の歴史書や歴史ドラマを見ると、昔は戦争で勝った国は、敗者(勿論軍隊のみならず民間人まで)の命から財産まで蹂躙してしまうのですが、男、子は皆殺しにされても、女性、特に高い地位にあった者(宮廷の後宮や貴族の子女、例えば王族や貴族の夫人、側室、子女、また何らかの理由で勝者の王に見初められた女性は命を助けられ、女奴隷として勝者にかしずくか、奴隷市場で売られるのが珍しくなかった様です。中国ではの例ではないですが、確かアイーダもそうじゃなかったかな? 従ってリューも女奴隷という身分にせよ、その以前は高いたしなみと気高い気質を有していた、別な国の高位の身分出身だった可能性があるのでは?などと同情してしまいます。                                   これに対して王子カラフが答えて歌うアリア「泣くなリュー」が続いて歌われました。この辺りが第一幕の大きな見どころ聴き処でしたが、感動する程では有りませんでした。

❝<カラフ:泣くな リューよ!もしもあの遠い日に私が微笑んだのならその微笑みに免じて可愛い娘よ聞いてくれ お前の主人は明日には多分この世に一人ぼっちだ...彼を見捨てないでくれ お前と一緒にここを去るのだ!❞

ここで「お前の主人」と言っているのは、カラフの父ティムールのことです。ティムールとカラフ、リューたちはもともと北京まで逃げ延びて来た流民(今風だと難民)ですから、何も北京に留まる理由は無い筈でした。再会した三人が新天地で力を合わせてやっていけば、別な人生展開があったかも知れません。そこを父親とリューは主張したのですが、何せ、トゥーランドット姫をチラッと見た王子は一目惚れしてしまったというのですから、始末に負えません。そんなに絶世の美女だったのかな?いや王子の好きなタイプだったのでしょう、きっと。でも普通だったら謎解きの成功率はフィフティーフィフティと考えて躊躇する筈ですが、カラフ王子は一貫して自信満々ですね。弱音を吐いていません。何等かのからくりがあるのでは?例えば謎の回答集の過去問を予習したとか、姫の漏洩情報を手にしたとか。いけない、いけない!下衆の勘繰りをしてはいけません。でも王子カラフの内心は非常に苦しかったのでしょうね。以下の歌のやり取りに葛藤する気持ちがよく表れています。

❝<カラフ>おお聖なる美しさよ 奇跡よ!私は苦しいのです 父上 私は苦しい!

<ティムール>いかん いかん!わしを支えてくれ リューよ お前からも話してくれ!ここに救いはないのだ!お前の手で彼の手を取ってくれ!

<リュー>ご主人さま ここを立ち去りましょう!

<ティムール>人生は別のところにある!

<カラフ>これが私の人生です 父上!

<ティムール>人生は別のところにある!

<カラフ>私は苦しいのです 父上 私は苦しい!

<ティムール>ここには救いはないぞ!

<カラフ>人生は 父上 ここにあります!トゥーランドット!トゥーランドット!トゥーランドット!

<処刑されたペルシャの王子の声>トゥーランドット!

<群衆>
ああ!

<ティムール>
(息子を抱いて)
お前もあのように死にたいのか?

<カラフ>
勝ち取って見せます 父上 彼女の美しさを!

<ティムール>
お前もあのように死にたいのか?

<カラフ>
見事勝ち取って見せましょう
彼女の美しさを!

 ここで、カラフ役の樋口さんは、綺麗なテノールなのですが、ややもやもやと聞こえる処があり又全体としての旋律の安定性不足の箇所が散見され、まだまだ発展途上といった感じを持ちました。                      

 一方、父親ティムール役のジョン ハオは自分の型を有しているバリトンと見ました。この声質は過去にどこかで、確かジェルモン役の歌手で聴いた時の感じに似ていました。だれだったかは俄かに思い出せないのですが。

 ここまででも独唱者の奮闘は聞いていて、十分な実感として伝わってきましたが、それ以上にマティウス指揮の新日フィル交響楽団アンサンブルの活躍と、管と打の大活躍で大いに盛り上がった、トゥーランドット姫の残忍さ、民衆の場的興奮を、一層際立たせる役割を果たした合唱陣の活躍を、特記しておかなければなりません。「殺せ!殺せ!」と叫ぶ興奮した人々の集団心理の怖さは、フランス革命を持ち出すまでもなく、イタリアにおける各種戦争・紛争の歴史の中で、プッチーニは良くそれを認識していたと思うのです。

 又これも特記しておかなければならない点は、プッチーニがこのオペラの歌唱にも、オケの演奏曲にも、東洋風調べをふんだんに取り入れたという点です。度々登場する「東天紅」の旋律は冒頭何か「夕焼け小焼け」に似た感じもあり近親感が湧きましたし、児童合唱も登場させて「向こうの山々でコウノトリが泣きました・・・云々」などと歌わせて効果を上げていました。

 又以上に記した(準も含めた)四大タイトルロール歌手以外では、所謂三人組(ピン、パン、ポン)のテノール若しくはバリトンの歌手陣もなかなかの健闘振りでした。

 歌だけでなく、動作、雰囲気に道化的コミカル性を要する役ですが、小林、児玉、新海の三氏は、演技も含めやや角張っていたかな?

第一幕の最後にカラフが銅鑼を三回打ち鳴らして謎解きに挑戦する意思を表したのを受けて、二幕の最初第1場では、シロフォンの音が響き、三人組、ピン、ポン、パンが登場、謎に挑戦するカラフの結果によっては、葬式か結婚式のどちらかをしなくてはならないので、その準備に大わらわの情景を日本人三人の歌手が歌いました。この三官吏について、その役どころ、名称の起源等については、割愛します。

三人は、長年に渡る落付いた幸せな時代が、トゥーランドット姫の出現により崩れ去り、毎年、謎解きに挑戦しては失敗した若者の首がはねられる連続だと嘆き歌います。

そして、次幕の第1場では、自分たちの出身の故郷に戻りたいとも。その中で、パンの歌に ❝<PANG>Ho un giardino, presso Kiu, <パン>私はキウに庭園を持っている❞ と出てきますが、このキウ(Kiu)は、最近名称が変わったウクライナのキーウでしょうか?英語表記だとKyivですが、イタリア語表記だとどのように変わったのでしょうか?

 それはそれとして、この間、管弦は中国風というか異国風の旋律を歌に合わせて伴奏します。ピンなぞ❝七万世紀の長きにわったて幸せに眠っていた❞などと言っている。ま―これは「白髪三千丈」的誇張表現な類いなのでしょうけれど。サマルカンドの王子、インド人サガリカ、キルギスの王子、弓を持ったタタール人が首をはねられと歌い、次第に興奮して❝殺せ、殺せ❞と叫び、群衆もそれに呼応して ❝油をさせ 砥げ、刃が迸しらせるのだ 血を❞ と益々興奮して合唱するのでした。ここまでの今日の合唱は二期会合唱団、いわば歌のプロの歌手の集団です。女声と男声が別々に歌う場面、交互に合の手状に掛け合う場面、混成で歌う場面、何れにおいても流石と唸る歌声でした。ただここまでは興奮した群集心理で、残酷な叫びを合唱で表現することが多かったので、聴いていて少し疲れたかも知れない。又舞台表現は前宣伝の通り、映像テクニックを駆使した、派手なカラフルさに溢れた演出で、特にレーザー光線を使い、舞台や背景にホールの彼方此方(正面客席上部光源、左右側面上部光源、舞台の前面下部に設置した光源など)から強く明るいビームを舞台上やセットに照射して、又場面場面に応じたカラフルなライトで舞台を染め(たとえば死刑の際は真赤なライト、)非常に華やかに感じる舞台を作り出していました。恐らくコンピュータ制御された放光装置、照射装置を使用したのだと思います。こうした演出は、オペラによっては不向きな出し物、例えば『ラ・ボエーム』や『セビリアの理髪師』などには派手過ぎて向いていないかも知れませんが、『アイーダ』やワーグナーの多くのオペラにも使える様な気がしました。

 さて三人の大臣の存在は一種の気分転換、息抜きの場かも知れません。宮使いの三人が本音を告白したり、つくづく残酷な姫の下で働くことが嫌になっているのか、望郷の念に駆られたり、またそれぞれの大臣の個性が異なる面が歌に現れたり、滑稽さまで感じる場面です。望郷の歌で彼らが近隣諸国或いは、かなり遠くからやって来た廷臣だという事が分かります。要するに中国の周辺諸国、大臣ですから、漢人が登用された漢人王朝ではないと想像出来ます。しかも北京ですから北朝政権で異民族との戦いにあけくれた王朝、後の幕でトゥーランドット姫が先祖の時代、外国に蹂躙され死んだ王女の話が出て来るところを見ても、常々遊牧民族や移動民族、侵略民族の脅威にさらされていたため姫の様な強硬姿勢の政策が実行されたとも考えられます。このオペラの台本作家(ジュゼッペ・アダーミ&レナート・シモニー)は『千一日物語』(原題Les Mille et un Jours、『千一夜物語』とは別の作品)の中の「カラフ王子と中国の王女の物語」を基にヴェネツィアの劇作家 カルロ・ゴッツィが1762年に著した戯曲をベースとして台本を書いたのです。それにプッチーニが曲を付けた。従って現代の中の物語を観れば、中国のどの時代の王朝を念頭にしているか或いは全くのフィクションなのかが判別できるでしょう。

 

第二幕

第1場

舞台では一旦幕が下り、普通はここで休憩が入るのですが、今回のオペラは一幕、二幕通しで演じられます。

さて一幕に続きピン、パン、ポン、の三大臣は、ここでもかなり長く歌うのですが、三人とも存在感を示したとは言い難い歌い振りでした。ポンが故郷のツィアンの美しい林を所有している事を懐かしみ、続いてパンがキーウの庭園を二度と見ることはないだろうと嘆き歌い、ピンはホーナンの竹林に囲まれた青い湖に戻りたいと望郷の念を歌いました。さらに三人は、サマルカンドの王子の死、インドの王子、キルギスの王子の死、タタール人の王子の死を交互に歌うのでした。ここでの歌い振りは、テノールの二人の歌は目立った特徴は感じられず、ただバリトンの大川博さんの歌が、あくまで比較的ですが、印象に残りました。 三人はまたいつもの挑戦者の王子に対する姫の謎かけ尋問が始まる銅鑼の音を聞きその儀式に参列するため退場しました。

 

第2場

この姫とカラフの問答対決を見物しに、多くの群衆が宮殿の広い前庭に集まっている。

オーケストラはそれまでの、ちまちました中国風(異国風)調から一転して威風堂々とした旋律に変わり、合唱と共に転調を繰り返して大合奏となりました。

 

 ❝<群衆> 偉大で 巨大で 堂々と 封印された謎の答を手に すでに賢人たちが行進してきている そこにピンが!あそこにポンが!あそこにパンがいる!❞

続いてひと際高く金管の音が行進メロディを繰り返し鳴らし、小太鼓の音に混じって皇帝アルトゥムが登場、群衆は歌います。

 ❝<群衆>永遠の時をわれらが皇帝に!御代に栄光あれ!❞

姫の父である皇帝アルトゥムは舞台中央の一段と高い円形状にかこまれたセットの中に立って出現、そして皇帝の第一声の歌が発せられます。アルトゥム役牧川さんは、比較的乾いた落ち着いたテノールで歌いました。 ❝<皇帝>恐ろしい誓いがわしを縛り付けている この暗い掟を遵守するようにと、そしてわしの手にしている聖なる笏は 血にまみれているのである もう血はたくさんじゃ!若者よ 行け!❞

 牧川さんは、二期会の研修所所長経験者らしく歌は卒ない立派な歌い振りでしたが、結構なお年と見えてやや声圧が感じられません。でも枯れた味わいはあります。 

 ここで「行け」とは、ここを去ってどこかに行きなさいという事です。姫の父親の皇帝ですら、姫の謎かけとその結果の血なまぐさい処刑の連続にはうんざりしている様子。ここは何か納得のいかない不自然な所ですね。 第一幕で 謎かけは「法律である」と公告しているのですが、皇帝の一存ではその法律を変えることが出来ないのでしょうか?詮索すると、①皇帝に実権は無く。事実上の皇嗣であるトゥーランドット姫が公務を仕切っている。②皇帝は法律改定をしたいが、姫が我儘を言って「それなら結婚しない」などと、皇帝に水を差す ③皇帝は口先だけで実のところは、このやり方は仕方ないと認めている。 等のどれかでしょうか。それはどうでもよい事です。通常皇帝役には威厳のある割りと太い声をした歌手が担当することが多いですが、その点でやや物足りなかったかな?

 それでも姫の謎かけに挑戦することを諦めない、ひるまないカラフに対し、遂にトゥーランドット姫が登場し、クイズ番組が開始されたのです。姫も中央の一段高い円形状のブースにすっぽり収まり、底から舞台に居る王子カラフを見降ろしての尋問です。 姫の第一声は、先ず、何故自分がこの様な試みをするか心情を吐露する歌でした。

 ❝<トゥーランドット>この宮殿の中で 今より幾千年も前 絶望の叫びが響き渡ったのです その叫びは 子孫から子孫を通じて この私の魂のうちに宿りました!プリンセス ルー・リン 優しく 清らかなご先祖は支配したのです 厳しい沈黙の中 清らかな喜びで そして抵抗してきました 屈することなく決然と 苛烈な異国の攻撃に、今私の中で彼女はよみがえる!❞

 

 

この「幾千年も前」という年代は、余りにも古すぎて真実性が疑われる言葉です。その後続いて姫が歌うアリアとも矛盾している。 

 ❝<トゥーランドット>でも 皆がよく記憶しているその時代は 混乱と恐怖と銃声の時代でした 王国は破れました!王国は破れました!そしてルー・リン様 私のご先祖は引きずり出されたのです あなたのような男に あなたのような男に 異邦人よ あの恐ろしい夜に どこに姫の若い声があるというの!❞

 姫役の田崎さんは、以前にも聴いた事のあるソプラノですが、今回も最初から力の籠ったやや張り叫び調ですが、声量もある大声で歌いました。ここでは狂気冴え感じる姫の声、歌としてピッタリだと思った。

 「銃声」等聞こえる筈が有りません。火薬は9世紀頃中国で唐の時代に発明されたと謂われます。しかし火薬を飛び道具に利用したのはヨーロッパでは14、5世紀、日本では16世紀。中国でも12世紀の宋の時代です。別にオペラの鑑賞には差し触りが無い些細な事ですが、例えば、椿姫を見ていたらパリとヴィオレッタ&アルフレッドの愛の棲家を往復するのに、馬車でなく自動車が出てきたら何か違和感を感じる様なもの。これも中国式「白髪三千畳」の大袈裟な表現を使って、台本作家が書いたのでしょうか?それはさて置き、トゥーランドット姫役の田崎さんは、ここで本格的に歌い始めたのですが、その第一声を聴いただけで、トゥーランドット向きの歌唱でだと思いました。確かに声には強靭性が備わり、この役の特徴の高音もしっかりと出ていて、なれないと少し耳に聴きづらい響きが有りましたが。

往年の名歌手の録音を聴くと、カラスにせよティバルディにせよ、高音でかなりヒステリック(少し言葉は悪いですが)に、自分の先祖(プリンセス ルー・リン)に対する思いを叫び伝えるのです。でも彼女たちの歌声はすんなりと耳に、心に、伝わってきます。ヴィブラートは僅かにかけてはいるものの、ほとんど気にならないか感じない位のストレートな歌声です。勿論音楽性はキャリアの違いからか、格段に差が有りますけれど。そういう意味で田崎さんの歌声はこの役に適役ではないかと思ったわけです。ただイタリア語の発音はどうなのか?田崎さんはワーグナーやドイツ物の出し物の方に、さらに向いている役柄がある様に思われました。 前後しますが、第二幕の役割の一番は、カラフと姫との謎問答・対決です。

姫は第一の謎を発して歌いました。

❝異邦人よ お聞きなさい 暗い夜に虹色の幻影が飛ぶ 空高く翼を広げ 無数の黒い人々の間を 世界の皆が呼び求め そしてすべて世界の皆が探し求める だがその幻影は夜明けと共に消える 心の中で生まれ変わるために 毎晩生まれ そして毎日死ぬ!❞

 するとすかさずカラフは答えて歌うのです。

❝そうだ! よみがえる よみがえる(歓喜に満ちて)それと一緒に私も運んで行っておくれ
トゥーランドット姫、それは 「希望」だ❞ ⇛正解

 

二問,

❝<トゥーランドット>そう 希望です いつも失望をもたらす!
炎のよう燃え立つがしかし炎ではない それは、時には狂乱する 熱気をほとばしらせ 熱く燃える!力を失えばそれは澱む あなたが負けたり死んだりすれば冷たくなるが
あなたが征服を夢見るなら 燃え立つ 燃え立つ!あなたが聞けば震えあがる声を持つ そして鮮やかな夕日のように輝く!❞

❝<カラフ> そうだ プリンセス!燃え上がり そして同時に弱まる あなたがこの私を見ると この血管の中では それは「血」だ!❞ ⇛正解

第三つ目の謎,

❝<トゥーランドット>
(王子に)炎を与える氷 そしてあなたの炎から もっとたくさんの氷が!真っ白でしかも黒い!あなたが自由でいたければ あなた奴隷にするし あなたが下僕となることを受け入れるならば あなたを王にします!異邦人よ 恐怖で蒼ざめていますね!
あなたは負けを感じ取ったのでしょう!異邦人よ 炎を与える氷 それは何か?❞

❝<カラフ>私の勝利だ 今、あなたは私のものだ!私の炎は あなたを融かすだろう
それはトゥーランドット!❞ ⇛ご名答 

 こうして、対決は完全にカラフの勝利に終わるのでした。この間、オケは最小必要限に絞られ、時々ティンパニーが相槌を打ち、カラフが答えると合唱が繰り返し念を押していた。そして合唱団は、

❝<群衆> トゥーランドット!トゥーランドット!栄光あれ、栄光あれ、おお勝利者に!栄光あれ、栄光あれ、おお勝利者に!あなたに生がほほ笑んでいる!あなたに愛がほほ笑んでいる!万年の時をわれらが皇帝に!光の輝きよ この世界の万物の王よ!❞

と人々は口々に叫び、喜び勇んで カラフを讃えるのでした。

 ここまでモランディ読響も合唱団も疲れを見せない強靭な調べを繰り出し、二人の対決の場を盛り上げていました。

ところが、これで一件落着、目出度しめでたし、とならない処が面白いところ。

トゥーランドット姫は「私いやよ!」とばかり、そっぽを向いてしまうのです。我儘娘!気まぐれ姫!これではとても聖君にはなれないどころか、❛噓つきは泥棒の始まり❜になってしまいますよ。一番困ったのは、カラフでしょう。約束を守れと詰め寄れば、不敬罪で逆に逮捕されて首を切られるでしょうし、かといって引き下がったのでは、「背中の男が泣いてるぜ」です。そこで一世一代の勝負に出たのでした。彼は歌う、

 ❝<カラフ>三つの謎をあなたは出して その三つを私は解きました ただ一つだけ あなたにも私から出しましょう。 あなたは私の名前をご存じない 私にその名前を告げてください 私にその名前を告げてください 夜が明ける前に そうすれば夜明けと共に私は死にましょう!❞

と。これは遠方からの難民である自分を知っているものは、北京には誰もいない、従って名前なぞ知る筈もない。とカラフは踏んだのでしょう。だけれど、ただ一つ見落としていたのです。それは第一幕で民衆の前で、謎問答に出るな、出るの押し問答をした、元侍女リューと元王で自分の父親のティムールの存在でした。群衆はそれを見て知っていたし、姫の耳に届かない訳はないのですから。でも取りあえず人々は、カラフの勇気と英明さに感銘し、皇帝ともども讃える最後の合唱を歌って幕となったのでした。

❝ <群衆>御身の足元にわれらひれ伏さん 光る輝きよ この世界の万物の王よ!
御身の英知に 御身の仁徳に われらは御身に身を捧げん 慎ましき喜びのうちに
御身のもとにわれらの愛が届かんことを!万年の時をわれらが皇帝に!御身 イエン・ワンのお世継ぎなるお方に われら叫ばん 万年の時をわれらが皇帝に!高く 高く御旗を!御身に栄光あれ!御身に栄光あれ!❞ と東天紅の旋律に乗せて、オーケストラと一体となった最後の咆哮は大ホールを揺るがし、トゥーランドットの叫びとも思われました。

《続く》

 

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////(2022.4.15 HUKKATS Roc. 再掲)

〇オペラ速報/東京春音楽祭『トゥーランドット』


【日時】2022.4.15.(金)18:30~

【会場】東京文化会館

【演目】プチーニ『トゥーランドット』全三幕、約3.5時間(休憩50分含)

【出演】
トゥーランドット(ソプラノ):リカルダ・メルベート
カラフ(テノール):ステファノ・ラ・コッラ
リュー(ソプラノ):セレーネ・ザネッティ
ティムール(バス・バリトン):シム・インスン 
皇帝アルトゥム(テノール):市川和彦 
ピン(バリトン):荻原 潤 
パン(テノール):児玉和弘 
ポン(テノール):糸賀修平 
役人(バリトン):井出壮志朗 

【管弦楽】読売日本交響楽団

【指揮】ピエール・ジョルジョ・モランディ

【合唱】東京オペラシンガーズ

【児童合唱】東京少年少女合唱隊

【合唱指揮】宮松重紀(児童指揮、長谷川久恵)

【上演状況】
平日の夕刻に雨模様が重なり、出足は快調とは言えません。開演時は空白が目立ち、入りはざっと目視で5~6割程度か?それが休憩後は仕事帰りの観客が増えたのか、6~7割にアップ(計1000人は越していたでしょうか?)。全体の印象を箇条書きにまとめれば次の通りでした。

〇ザイネッティ(リュー役)、大いに気を吐く!!

〇コッラ(カラフ役)、荒削りのテノールで圧倒!!

〇メルベート、目立ちにくいタイトルロール役。

〇ド迫力のモランディ・読響!!

〇邦人歌手三人組地道に得点。

〇合唱団(男女声各30人規模+児童)大活躍。