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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

新国立劇場オペラ『愛の妙薬』最終日観賞

〜世界標準的に及第点の歌唱と、千穐楽ならではの最高潮の盛り上がり〜

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【観賞日時】2026.5.27(水).14:00〜(千穐楽)
【会 場】新国立劇場 オペラパレス
【演 目】ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti)『愛の妙薬(L'elisir d'amore ) 』全2幕

〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉 

【公演期間】
2026年5月16日[土]~5月27日[水]

【予定上演時間】約2時間30分(第Ⅰ幕70分 休憩25分 第Ⅱ幕55分)


【Introduction(主催者)】
〜嘘の薬とまことの恋〜
幸せな気持ちになれるロマンティック・コメディ!
ベルカント・オペラを代表する作曲家ドニゼッティの人気オペラ・ブッファ(喜劇)。偽の惚れ薬"愛の薬"をめぐる、コミカルでちょっぴりホロリとする恋の物語で、世界中で愛される人気作です。テノール屈指の名アリア「人知れぬ涙」をはじめ、ネモリーノのカヴァティーナ「なんて美しい!」、アディーナの告白のアリア「受け取って、私のおかげであなたは自由」、そしてドゥルカマーラの超絶技巧たっぷりの口上「お聞きあれ、村の皆様」と、色とりどりの美しいナンバーが盛り込まれています。
     新国立劇場のリエヴィ演出は遊び心がいっぱい。9メートルもある本や文字、実物大の小型飛行機などがカラフルな舞台上に次々登場し、丁寧な心理描写で恋物語を運びます。目にも耳にも楽しい『愛の妙薬』は、初めてのオペラの方にもお薦めです。
    アディーナ役は新星ソプラノとして大注目のライジングスター、フランチェスカ・ピア・ヴィターレ、ネモリーノには22年の『椿姫』で伸びやかな声が好評を博したマッテオ・デソーレが登場。薬売りドゥルカマーラには同役やモーツァルト、ロッシーニで大活躍中のマルコ・フィリッポ・ロマーノ、恋敵となる軍曹ベルコーレには大人気バリトンのシモーネ・アルベルギーニが出演する贅沢さ。指揮はイタリアの重鎮マルコ・ギダリーニです。


【公演日程】
2026年5月16日(土)14:00
2026年5月20日(水)19:00
2026年5月23日(土)14:00    
2026年5月27日(水)14:00

 

◎スタッフ・キャスト(Staff&Cast) 

【演 出】チェーザレ・リエヴィ(Cesare LIEVI)

〈Profile〉

    イタリアのブレシア・ガルニャーノ生まれ。イタリア、ドイツ、オーストリアで1980年代に舞台演出家として成功を収める。オペラの分野では90年代よりミラノ・スカラ座でシーズン・オープニングの『パルジファル』、ウィーン国立歌劇場『ジェズアルド』、メトロポリタン歌劇場『チェネレントラ』、ベルリン州立歌劇場『マノン』、モデナ市立劇場『ピーター・グライムズ』、カターニャ・ベッリーニ劇場『ラインの黄金』『ワルキューレ』などを手がけている。チューリヒ歌劇場には継続的に招かれ、『妖精ヴィッリ』『道化師』『シチリアの晩鐘』『ジュリオ・チェーザレ』『アルジェのイタリア女』など数多くの作品を発表している。最近ではサンパウロ歌劇場『マノン・レスコー』、クラーゲンフルト歌劇場『カルメン』、モンテカルロ歌劇場『ワリー』、パルマ・ヴェルディ音楽祭『ドン・カルロ』などの新演出を手がけている。

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指 揮】マルコ・ギダリーニ 
(Marco GUIDARINI)

〈Profile〉

    イタリアを代表する指揮者のひとり。ウィーン音楽大学でチェロと作曲を学び、ジェノヴァ大学で比較文学の学位を取得。モーツァルトやベルカント、ヴェルディやプッチーニの主要作から『ヴォツェック』まで200以上の管弦楽作品と70作以上のオペラを指揮。メトロポリタン歌劇場(『リゴレット』)、ミラノ・スカラ座(『劇場の都合、不都合』)、シドニー・オペラ(『トスカ』『魔笛』『コジ・ファントゥッテ』)、ボリショイ劇場(『トゥーランドット』)、コロン劇場(『ファルスタッフ』)など、世界の主要歌劇場で指揮。2001年から09年までニース・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務める。パリのベルカント国際コンクール・ベッリーニの芸術監督を10年間務める。フランス放送フィルと『妖精ヴィッリ』を録音し、シャルル・クロックス賞「オルフェ・ドール」を受賞。フランス芸術文化勲章、イタリア星の勲章、18年には音楽を通じた芸術と人道主義の国際大使としてポール・ハリス・フェローの称号も授与されている。新国立劇場初登場。

【合 唱】新国立劇場合唱団

【合唱指揮】富平恭平
【美 術】ルイジ・ペーレゴ
【衣 裳】マリーナ・ルクサルド
【照 明】立田雄士

【登場人物】
◯アディーナ(S):地主の娘。
◯ネモリーノ(T):村の若い農夫。
◯ベルコーレ(Br):村の守備隊の軍曹。
◯ドゥルカマーラ(Bs):いかさま薬売り。   

◯ジャンネッタ(Sop.)アディーナの友人である「村娘」の役柄。主な役割として、メインの独唱者(ソリスト)たちと村人の合唱をつなぐ重要な橋渡し役。

【キャスト】 

〈アディーナ役〉フランチェスカ・ピア・ヴィターレ(Francesca Pia VITALE)(ソプラノ) 

〈Profile〉
「OPERA WIRE」2022年オペラ界の新星トップ10に選出、「スカラ座アカデミーの輩出した最も有望な才能のひとり」(「Musica」誌)と評されるイタリアの新星ソプラノ。2020年ミラノ・スカラ座アカデミー修了。スカラ座へは18年『愛の妙薬』ジャンネッタ以来度々登場、25年には『リゴレット』ジルダに出演。近年ではパレルモ・マッシモ劇場、パリ・オペラ座、トリノ王立歌劇場、モンテカルロ歌劇場、ローマ歌劇場などへ『カプレーティ家とモンテッキ家』ジュリエッタ、『ラ・ボエーム』ムゼッタ、『ドン・パスクワーレ』ノリーナ、『愛の妙薬』アディーナ、『リゴレット』ジルダ、『羊飼いの王様』エリーザなどの役で出演。25年はマルティナ・フランカ音楽祭開幕公演『タンクレディ』アメナイーデ、ラヴェンナ音楽祭『オーランドー』アンジェリーナに出演したほか、リセウ大劇場、テアトロ・レアル、ベルリン州立歌劇場、アン・デア・ウィーン劇場へ『メローペ』エピティーデ役で登場し、リセウ友の会から「新進歌手」賞を受賞。26年はパルマ王立歌劇場シーズン開幕公演『オルフェオとエウリディーチェ』エウリディーチェ、パームビーチ・オペラ『真珠採り』レイラ、トリノ王立歌劇場『カルメル会修道女の対話』コンスタンス修道女に出演している。新国立劇場初登場。


〈ネモリーノ役〉マッテオ・デソーレ(Matteo DESOLE)(テノール)
サッサリ出身。モデナで学び、2015年にボローニャ歌劇場に『マクベス』マルコムでデビュー後、ヨーロッパ各地の劇場に次々にデビューし、サヴォーナ歌劇場『ルチア』エドガルド、AsLiCo連盟『リゴレット』マントヴァ公爵、ローマ歌劇場及びチロル音楽祭『椿姫』アルフレード、マルケ州劇場連盟『魔笛』タミーノなどでテノールの主要役のロールデビューを飾る。最近では、プラハ歌劇場『愛の妙薬』ネモリーノ、カリアリ歌劇場『ラ・ボエーム』ロドルフォ、『ラ・ファヴォリータ』ファルナンド、『ルクレツィア・ボルジア』ゲンナーロ、ルッカ歌劇場、フィレンツェ歌劇場『イル・トロヴァトーレ』マンリーコ、モデナ、レッジョ・エミーリアで『ナブッコ』イズマエーレ、ボローニャ歌劇場『ルチア』エドガルド、ホランドパーク・オペラ、ノルウェー国立オペラ、グラインドボーン音楽祭『椿姫』アルフレードなどがある。新国立劇場へは22年『椿姫』アルフレードでデビューした。


〈ベルコーレ役〉シモーネ・アルベルギーニ(Simone ALBERGHINI)(バス・バリトン)
ボローニャ生まれ。1994年オペラリア・コンクール優勝。ミラノ・スカラ座、グラインドボーン音楽祭、フィレンツェ歌劇場、ワシントン・オペラ、メトロポリタン歌劇場、英国ロイヤルオペラ、ナポリ・サン・カルロ歌劇場、ボローニャ歌劇場、バイエルン州立歌劇場などの主要劇場へ出演を重ねる。ロッシーニ・オペラ・フェスティバルに『オテロ』『タンクレディ』『泥棒かささぎ』『ウィリアム・テル』など数多く出演。『フィガロの結婚』アルマヴィーヴァ伯爵/フィガロ、『コジ・ファン・トゥッテ』グリエルモ、『ドン・ジョヴァンニ』タイトルロールのほか、『チェネレントラ』ダンディーニ、『ホフマン物語』悪役、『カルメン』エスカミーリョなど、モーツァルト、ロッシーニをはじめイタリア及びフランスオペラをレパートリーとする。最近では、トリエステ・ヴェルディ歌劇場『フィガロの結婚』フィガロ、ジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ歌劇場『ドン・ジョヴァンニ』タイトルロール、トリノ王立歌劇場『愛の妙薬』ドゥルカマーラなどに出演。新国立劇場では22年『ドン・ジョヴァンニ』タイトルロール、23年『シモン・ボッカネグラ』パオロに出演した。

〈ドゥルカマーラ役〉マルコ・フィリッポ・ロマーノ(バス)

〈Profile〉

『マティルデ・ディ・シャブラン』、ヴィルトバード・ロッシーニ音楽祭『ウィリアム・テル』『コリントの包囲』も絶賛される。ロッシーニやモーツァルト、『ドン・パスクワーレ』タイトルロール、『愛の妙薬』ドゥルカマーラ/ベルコーレなどのほか、18世紀や20世紀のオペラもレパートリーとする。最近の主な出演に、ワロン歌劇場『コジ・ファン・トゥッテ』ドン・アルフォンソ、フィレンツェ歌劇場『ドン・パスクワーレ』タイトルロール、ミラノ・スカラ座『チェネレントラ』ドン・マニフィコ、ウィーン国立歌劇場、フェニーチェ歌劇場、トリエステ・ヴェルディ劇場『セビリアの理髪師』ドン・バルトロ、レッジョ・エミリア、ピアチェンツツァ、モデナの『アルジェのイタリア女』タッデオなどがある。新国立劇場初登場。


〈ジャンネッタ〉今野沙知恵

〈Profile〉

    仙台市出身。桐朋学園大学音楽学部声楽専攻を首席で卒業、同大学研究科を修了。同大学交換留学生としてイタリア・ローマのサンタ・チェチーリア音楽院に留学。新国立劇場オペラ研修所第14期修了。

平成26年度文化庁在外派遣研修員としてドイツ・ニュルンベルクに留学。
    平成30年度五島記念文化賞オペラ新人賞を受賞、イタリア・ボローニャに留学。
第85回日本音楽コンクール声楽(歌曲)部門第3位受賞。
新国立劇場《修道女アンジェリカ》ドルチーナ役、《魔笛》侍女1役、日生劇場《魔笛》パパゲーナ役、神奈川県民ホール《ヘンゼルとグレーテル》グレーテル役等で出演。また、バッハ《マタイ受難曲》、ヘンデル《メサイア》、モーツァルト《レクイエム》 、《大ミサ》、フォーレ《レクイエム》、ベートーヴェン《第九》、マーラー《交響曲第四番ト長調》など、交響曲や宗教曲のソリストとしても活躍している。東京・春・音楽祭ワーグナー・シリーズにはvol.9《ローエングリン》に小姓1役で出演した。

【時と場所】19世紀、スペインのバスク地方の村

 

【粗筋】

〈第1幕〉

    時は19世紀、舞台はスペイン、バスク地方の小さな村。美しいけどちょっと高飛車な村娘アディーナは、『トリスタンとイゾルデ』の物語を村人たちに読んで聞かせています。トリスタンの飲んだ惚れ薬によって恋に落ちたイゾルデ姫。そんな薬が本当にあったらいいなと陰からそっと聞いていたのは、アディーナに恋していた純真無垢な若い農夫ネモリーノでした。
そこへ村の守備隊の軍曹ベルコーレが現れます。見るからに頼もしいベルコーレはアディーナを口説こうとしますが、アディーナは惹かれつつもここはかわしておきます。その様子を見て焦ったネモリーノもアディーナに勇気を出して告白しますが、相手にされません。しかし彼女は内心では、純粋な心を持つネモリーノを気にかけていました。
    村の広場には、金色の馬車に乗った薬売りのドゥルカマーラが到着しました。万病の特効薬を売るドゥルカマーラに、農夫ネモリーノは、あのイゾルデ姫が飲んだ「愛の妙薬」はないかと尋ねます。いかさま薬売りのドゥルカマーラは安物のボルドーワインのラベルを貼り替えて売りつけ、明日になれば効き目が現れると言います。その間にドロンしてしまおうというわけです。
    これで「明日にはアディーナは自分のものになる」という態度をとったネモリーノは、彼女のプライドを傷つけ、彼女はベルコーレ軍曹と結婚すると言い出します。しかも、今日中ということになり、ネモリーノは大いに慌てたのでした。

 

〈第2幕〉
 ネモリーノは愛の妙薬の効き目をはやく出すため、もう1本飲もうと思いますが、お金がなくて買えないため、命の保証も顧みず軍隊に入って、契約金を手に入れます。
実はちょうどそのとき、村の娘たちの間では、ネモリーノの叔父さんが亡くなって莫大な遺産が彼に転がり込んだという話で持ちきりになっていました。ネモリーノの周りに集まる娘たちに、何も知らない彼は薬の効き目が現れてきたと勘違いします。
    一方のアディーナはそんなおかしな光景を見せられ困惑しますが、ドゥルカマーラからネモリーノにまつわる一連の事情を聞きます。命を投げ出す覚悟で軍隊に入ってまで、妙薬を手に入れようとしたネモリーノの愛情の深さに、彼女は涙を見せるのでした。
    アディーナの涙にネモリーノも気が付きます。アディーナがネモリーノの入隊契約書を買い戻し、二人は結ばれました。ベルコーレ軍曹は、女は他にもたくさんいると言って気にしません。結局、「愛の妙薬」の効き目はありました。薬売りドゥルカマーラは村人に見送られて馬車を出発させたのでした。

 

【主なアリア等】

①「人知れぬ涙(Una furtiva lagrima)」

    まず真っ先に挙げなければならないのは、第2幕でネモリーノがアディーナの涙の理由を知り、自分を愛してくれていることを確信して歌う、喜びと切なさに満ちたアリア「人知れぬ涙(Una furtiva lagrima)」でしょう。リリック・テノール(抒情的な表現力を持った男性高声)の歌手の表現力が最も試されるかなり難しい曲で、特にパバロッティが歌ってから、オペラ史上に残る珠玉の名曲として不動の人気曲に。この曲の聴き比べをするだけのために当該オペラを見るという人すらいると謂われます。

②「二重唱:そよ風に尋ねてみよう(Una tenera occhiatina)」第1幕で、インチキ薬売りのドゥルカマーラ博士とネモリーノが繰り広げるコミカルな二重唱。テンポが良く、笑いを誘う軽快な掛け合いが魅力です。

③「彼女は美しく、僕を愛している(Quanto è bella, quanto è cara)」第1幕の冒頭近くでネモリーノが歌うアリア。アディーナへの純粋で熱烈な思いが溢れる、美しく甘いメロディです。

    その他、④ドゥルカマーラの登場のアリア「お聞きなされよ、皆の衆」は、まるで蝦蟇の油の口上のごとく立板に水と流れたり、⑤ベルコーレの「昔、パリスがしたように」はベルコーレのナルシストぶりや気障さが楽しめます。

⑥アディーナのアリア「受け取って、これであなたは自由よ」は可愛らしい小曲ですが、実はネモリーノとの短い会話を挟んで続く後半部分は、疲労が最高潮となる終盤に技巧的にも大変な難曲となっています。

一般に愛を歌い上げたり運命を嘆く二重唱が多いですが、⑦ドゥルカマーラとアディーナの“全く愛のない”二重唱も聞きどころの一つになっています。あくまでもコミカルに見られる結婚式の座興の二重唱はフィナーレにも現れ、なんやかやと言ってもお金じゃなくて愛が全てだよ、と受け取れるような構造になっています。

 

【上演の模様】

    新国立劇場オペラパレスでの、『愛の妙薬』は、2022年の2月にも上演される筈でしたが、コロナで行けず、払い戻ししました。それでもこれまで、一般公演他を数えると2010年の初演以来5シーズン30回以上上演されたという、人気オペラなのです。

     今回の新国立劇場の『愛の妙薬』は、独、伊などの歌劇場で場数を踏んでいる中堅歌手を四名揃え、中でも二人は新国立劇場初登場の新鋭歌手で、どの様な歌唱を披露するか興味津々の公演でしたが、都合上、落日の観賞となりました。

    最終日とあって、最近人気にやや陰りが見えるとも謂われるNNTTオペラですが、平日午後の上演にも関わらず、多くのオペラファンが駆けつけ、ホワイエはごった返していました。

   時間となり、ビットに指揮者が入り、すかさずチャチャチャチャターラッタタッタ、チャチャチャチャターラッタタッタとオケが鳴らし始めました。

    舞台は最初からかなり色彩感のある設定です。小道具も大きいセットが多く並べられ、沙幕と舞台動力機能がフルに稼働、照明は、明るい舞台を演出投影していました。

    以下歌手達の歌い振りを中心に記して行きます。

    物語の進行順とは前後しますが、先ず衆目の関心が集中する中で歌われた

①「人知れぬ涙(Una furtiva lagrima)」について最初に述べます。

    第1幕の立ち上がりから先ず々のテノールの声を響かせていたネモリーナ役デソーレは、満を持して歌ったこの名曲は、彼のこの日一番の出来だったと言えるでしょう。もうこの曲は、テノール歌手にとって、普通の歌の何十倍も練習や実演を積んで来た、オハコの一つなのかも知れません。 

    それにしてもパバロッティの歌声は凄いですね。自然に あの分厚い胸板から朗々とした歌声が、喉、口、頭頂を軽々と振動させながら、空気振動を介して聞く者の耳に届き感動させる、あれは、練習やテクニック向上で得られるものではないですね。天性のものでしょう。この曲は世界の歴代名テノール歌手が競って歌って来ましたが、ステファノやマリオ・デル・モナコでも敵わないでしょう。パバロッティの後釜と目されていたグリゴーロでさえ、まだまだその域に達していません。

    時々、天は極く稀れに歌手に飛び抜けた声と感性を与える事がある様です。日本の国の一つの狭い卑近な例として、例えば最盛期の北島三郎とか(分野は異なりますが、歌は歌です)。

②「二重唱:そよ風に尋ねてみよう(Una tenera occhiatina)」は、第1幕での、薬売りのドゥルカマーラ役ロマーノとネモリーノ役のソーレとの二重唱です。

テンポが良いのですが、コミカル感は、薬売り(自他称博士) の早口や声を潜めた歌口にはあったもののネモリーナ役ソーレは、歌は上手いのですが、少し型にはまった歌い振りで、面白ろ味や柔軟性は、余り無い様に感じました。声量もさ程大きくなく(時々大きな高音を出していましたが、)声質も伸びやかなベルカントテノールとは思えない処あり。従って一般的に笑いを誘う軽快な掛け合いが魅力の箇所にしては、会場を沸かせることはなかったのです。むしろ話しは前後しますが、第1幕後の休憩が終わって2幕開始前に指揮者が登場、ピットから顔を客席の方に覗かせた時、その近くのかぶり付きにいた若い女性が指揮者にグラスを渡し、何か飲みものを注いだのでした。指揮者は乾杯の仕草をしたり、サンキュウボーズを取ったり、この二人の突然の寸劇に会場は大笑い、拍手まで沸き起こりました。これで、会場は大分和んで緊張が取れた感がありました。

 

③「彼女は美しく、僕を愛している(Quanto è bella, quanto è cara)」は、ネモリーノ役デソーレが第1幕の早い段階で歌いました。立ち上がりのせいなのかどうか分かりませんが、テノールとして、確かに世界標準はクリアした声質と技術は感じましたし、歌は上手いのですが、どうも会場一杯に拡散する伸びのある声ではありませんでした。何か小ぢんまりした印象でした。

 

④ドゥルカマーラの登場のアリア「お聞きなされよ、皆の衆」で飛行機で登場した薬売りドゥルカマーラ役ロマーノは、機外に飛び降りて、村人(飛行機と質素な村とのギャップがありますが、登場手段は、何も馬車や荷車や徒歩でなくとも、凄い人=名ドクターとして人々の信用を得る手段としては、現代的読み替えであっても、許容されるでしょう)の前で、口上の第一声を上げました。如何にも名が馳せているかの様な調子で、

「・・・Son notiall'universo・・・e in altri siti.(世界に知れわたっている有名な、そして他の場所でも・・・)」「In pochi giorni io sgombero,io spazzo gli ospedali.(数日のうちに皆を退院させて、吾輩は病院を空にするのだ) 」と大見得を切るのでした。

   先に歌った兵士の軍曹ベルコーレ役、アルベルギー二の歌よりは、ずっしりしと、さすがBr.-Bs.である本領を発揮した厳粛な声での歌は、印象的でした。

    ここまで触れなかった、主役級の存在であるアディーナ役フランチェスカ・ピア・ヴィターレの歌について、遅ればせながら記しますと、第1幕登場から綺麗なソプラノの声を響かせていたヴィターレは、時々素晴らしく伸びる高音で、細かい修飾音を入れたアジリタを切れ良く歌って館内から大きな拍手を浴びたりしていましたが、時々疲れたのかやや不安定になったり、テノールのデソーレともども小振りの感がしないでもない状態でした。しかし、いよいよ最終の大詰めを迎えて、これ迄誰の目にも、村の地主の娘アディーナは、思い詰めたら一筋の純心な田舎青年ネモリーノを振ると言うか、歯牙にもかけなかったにも関わらず、ネモリーノの一途な気持ちに少しずつ気持ちが融解して来た様なのです。

⑥アディーナのアリア「受け取って、これであなたは自由よ」

    第ニ幕8場で歌う彼女と、彼女を思い続けているネモリーナとのやり取りの場面が、物語的にはクライマックスでしょう。

 

【アディーナとネモリーノ】

(アディーナ)
ネモリーノ! ...ちょっといい?

(ネモリーノ)
おいらどうしちゃったんだろう 若い娘もそうでないのも
美人もそうでないのもみんなおいらと結婚したがるんだ

(アディーナ)
それであなたは?

(ネモリーノ)
どの申し入れにも
おいら飛びつきたくないんだ まだ待ってるんだもの ...
おいらの幸せを...(すぐ近くなんだけどなあ)

(アディーナ)
聞いてちょうだい

(ネモリーノ)
〈陽気に〉
(ハ!ハ!来たぞ)
聞くよ アディーナ

(アディーナ)
答えて どうして行っちゃうの
どうして兵士になんかなる決心をしたの?

(ネモリーノ)
だって...だっておいら試したかったんだ、この手で。 自分の運がいい方に変えられるものなのかどうかを

(アディーナ)
あなたの身も...
あなたの命も私たちにとって大切よ...私は取り返してきたわ
この運命の契約をベルコーレから

(ネモリーノ)
あなたが自分で!
〜当然だな:愛のなせる業だ〜

(アディーナ)
受け取って 私のおかげであなたは自由よ  残ってよ 生まれ故郷に
そんなひどい運命なんてないわ  一日で変わらないほどの
〈彼に契約書を手渡して〉
ここではみんなあなたを愛してるわ
賢くて 愛らしくて まじめなあなたを  ずっと不幸で悲しむなんて
いいえ もうあなたにはあり得ないわ

(ネモリーノ)
〈さあ いよいよ告白だな〉

(アディーナ)
さようなら

(ネモリーノ)
えっ!おいらを置いてっちゃうの?

(アディーナ)
私が...そうよ...

ネモリーノ)
他においらに言うことはないの?

(アディーナ)
何もないわ

(ネモリーノ)
〈契約書を返して〉
それじゃ これは持っててよ
愛してもらえないのなら
おいら 兵士になって死にたいんだ
おいらにはもう安らぎはないんだ
おいらをドクターがだましたのなら

(アディーナ)
ああ!彼はあなたに正直だったわ
あなたが自分の心を信じるてるなら
それじゃ知っておいて ああ!これを知っておいて
あなたは私が愛する人なの あなたが大好き
あなたに今までみじめな思いをさせてきたけど
今は幸せにしてあげたいと思ってるのよ
私の残酷さは忘れてね
あなたに誓うわ 永遠の愛を

(ネモリーノ)
ああ!言葉に表せない喜びだ!
おいらをだましたんじゃなかったんだドクター(先生、博士)は!!
〚アディーナの足元にネモリーナは倒れる〛

 

 

    最後に日本人歌手として、只一人ソリスト入りしたジャンネッタ役の今野さんの歌と役割に関してです。      アディーナの友人の村娘役として、村人(合唱団)の先導とジャンネッタとの接触を演ずる歌を今野さんは、合唱団共々歌っていました。代表的場面の例として、

第1幕第1場
とある農場の入り口 奥には野原があり小川が流れている その岸では洗濯女たちが洗濯の支度をしている 中央に大きな木があり その下でジャンネッタや刈り入れの農民たちが寝そべって休んでいる アディーナは少し離れたところで読書しながら座っている ネモリーノはそれを遠くから見ている。

【ジャンネッタとコーラス】
「刈り取り人のすてきな慰めは
太陽がかんかんに照ってるときに
ブナの木の下 あの丘の麓で
休んで一息つくこと!
昼間の激しい熱気は
木陰や小川が和らげてくれる
けれど 燃え立つ愛の炎は
木陰も小川も和らげることはできぬ
幸運なのさ 刈り取り人はそんな用心せずとも良いから!」

 

    本を読んでいるアディーナが、その物語に感心して、ジャンネッタにその本の話しをします。その近くで、アディーナに密かに好意を寄せているネモリーノもそれをきいているのが、このオペラの筋の始まり、始まり、なのです。どんな物語なのでしょう。

アディーナ
(笑って)
すてきだわ このお話!
不思議な冒険なのよ

ジャンネッタ
何を笑ってるの?話してみてよ
あなたの読んでる面白い話を

アディーナ
これはトリスタンの物語よ!
愛のお話なの

コーラス
読んで、読んでみて

ネモリーノ
(彼女のとこに そっと そっと
近付いて仲間に入れてもらいたいなあ)

アディーナ
    「冷淡なイゾルデのことを
ハンサムなトリスタンが愛しました
けれど望みのかけらもありませんでした
彼女を得られる日
そこで彼が訪ねたときに
賢い魔法使いのもとを
魔法使いは彼に与えたのです 壺の中から とある愛の妙薬を
おかげで美しいイゾルデは
彼からもう決して逃げられなくなったのです」

全員
「こんな完璧な妙薬の
こんな不思議な効能の
作り方が分かればいいのにね
作れる人を知っていればいいのにね!」

アディーナ
「ほんの一口すすっただけで
その魔法の小さな壺から
たちまちその頑なな心は融けて
イゾルデは優しくなりました
変わったのです 一瞬にして
その冷淡な美人は
トリスタンの恋人に
生きたのです トリスタンに貞節に
彼はその最初の一口を
永遠に祝福し続けたのです」

全員
「こんな完璧な妙薬の
こんな不思議な効能の
作り方が分かればいいのにね
作れる人を知っていればいいのにね!」  

 

 

    何とワーグナーの有名な楽劇にもなった、『トリスタンとイゾルデ』の物語でした。

 

    さらに、ジャンネッタの出番で目立った箇所は、第2幕第4場で、行商から聞いた確とした話しを、内緒話として村人に歌う場面でも活躍しました。

【舞台奥の農家の中庭ジャンネッタと村娘たち】

コーラス
ほんとなの?

ジャンネッタ
たぶんきっとそうよ

コーラス:ウソでしょ

ジャンネッタ:絶対ほんとよ

コーラス:でもどうして? どこで知ったのよ?
誰があなたに言ったの?誰よ?どこでよ?

ジャンネッタ:音を立てないで 小声で話して
まだ噂を広めるわけには行かないんだから
知ってるのは - 行商人だけよ
彼が秘密を話してくれたの

コーラス:行商人があなたに言ったの!
じゃあ本当の話かも...ああステキね!

ジャンネッタ:いいわね 先日
ネモリーノの叔父さまが亡くなって
あの若者に遺したんだって その人
とんでもなく莫大な遺産をさ
けど...黙ってて お願いだから
しゃべっちゃだめよ

コーラス:もちろんしゃべらないわ

ジャンネッタ:今やネモリーノは大富豪よ...
このあたりで一番の大金持ちで ...
ぼんぼんで 良い玉の輿よ...
あいつを夫にできたら幸せ者よ!
けど黙ってて...静かにね...お願いよ
しゃべっちゃだめよ

コーラス:もちろんしゃべらないわ
(近づいてきたネモリーノを見て後ろに下がり 珍しそうに彼を見つめる) 

 

  今野さんは、中々器用で伸びのあるまだ若いソプラノでした。今後が楽しみな歌手でした。

 

   閉幕と同時に会場からは、これまてにない(各幕のアリアの聴かせ処で、拍手歓声は結構有りましたが)大きな拍手・喝采と歓声が沸き起こりました。

 

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ソリスト、左から

・軍曹役マルコ・フィリッポ・ロマーノ

・アディーナ役フランチェスカ・ピア・ヴィターレ 

・合唱指揮者、冨平恭平

・指揮者、マルコ・ギダリーニ

・ネモリーノ役 マッテオ・デソーレ

・ドゥルカマーラ役マルコ・フィリッポ・ロマーノ

・ジャンネッタ役 今野 沙知恵

 

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合唱団とソリスト、指揮者

 

 

【Photo Gallery(fromNNTT H.P.)】

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