
【日時】2026.29.(土)16:00〜
【会場】東京藝術劇場コンサートホール(池袋)
【管弦楽】東京交響楽団
【指揮】山下一史
【出演】
◎ピアノ部門四名(部門審査員長 東誠三)
【コンテスタント】
①山﨑夢叶 YAMAZAKI Yuto
(演奏曲目)
L.v.ベートーヴェン『ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37』
②星野悠羽 HOSHINO Yuha
(演奏曲目)
S.ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op.30』
《休憩》
③間世田采伽 MASEDA Ayaka
(演奏曲目)
P.I.チャイコフスキー『ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23』
④森永冬香 MORINGA FUYUKA
(演奏曲目)
P.I.チャイコフスキー『ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23』
【演奏の模様】
今日のピアノ部門本選も先日の弦楽部門同様、14時開始で休憩を入れて、終演は19時頃5時間に及びました。
先だっては、弦楽部門本選の演奏順に少し驚きましたが、今回のピアノ部門の演奏順は、前半が男性奏者二人、後半が女性奏者二人で、しかも女性二人共チャイコフスキーを弾くというのです。順序はどう決めるのか?抽選でしょうか?明らかに二人同じ曲を続いての演奏だと、細部まで出来不出来が比較されてしまいます。しかも最初の奏者はやや心理的に不利なケースも考えられます(オーケストラは大抵二回目の出来が良い場合が往々としてありますし)。そんな事気にしない奏者なら良いですが。
①山﨑夢叶 YAMAZAKI Yuto
L.v.ベートーヴェン『ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37』
〇楽器編成:独奏ピアノ、F.l(2)、Ob.(2)、Cl.(2)、Fg.(2)、Hrn.(2)、Trmp.(2)、Timp.(1)、弦五部12型
〇全三楽章構成
第1楽章 Allegro con brio
第2楽章 Largo
第3楽章 Molto allegro
トップバッター山崎さんは、ピアノの前に座ると、背筋をピンと伸ばし、おもむろにピアノ鍵盤をなぞり始めました。ピアニストは、目の下の鍵盤に向き合うため、どうしても、うつむき加減か背中を丸め気味になるケースが多々ありますが、山崎さんは、弾き始めから引き終わりまで、一貫して姿勢を崩さず、まるでルービンシュタインかと思わす、弾き姿でした。そしてその演奏振りは、質実剛健で安定無比、絢爛華麗のはでな演奏とは対極にある演奏でしたが。
特に第二楽章は、冒頭から緩やかなテンポでスタート、一貫してこれ以上無い位のSlowなテンポのパッセッジが多いLargo演奏の楽章でした。深く心を込めて弾いている感がする。こうした演奏は、好きですねー。大器晩成の感もする堂々たる演奏者でした。

②星野悠羽 HOSHINO Yuha
〇楽器編成:演奏開始前に金管奏者(Hrn.Trmb.Trmp.)が、二名づつ補充されました。
S.ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op.30』
〇全三楽章構成(約37〜45分)
・第1楽章 Allegro ma non tanto(約13~17分)
・第2楽章 Intermezzo. Adagio(約約11~13分)
・第3楽章 Finale. Alla breve(約13~15分)
星野さんは、このかなり高度な曲を立ち上がりこそ、やや歯切れが足りない気もしましたが、第1楽章のカデンツァ部あたりから本領発揮、オケとの相性もスムーズ化、第2楽章の激しいピアノソロと管弦楽との盛り上がりも力強く駆け上がるのでした。
それにしてもラフマニノフは、交響曲的厚みのある和声法だけでなく、殆ど歌曲と言えるかも知れない、綺麗な旋律を作り出したものですね。しかもそれらに憂愁と華美を兼ね備えてピアノ曲の主題に組み込み、其れ等をハイテクニックで囲って、唯一無二の協奏曲と成している。ラフマ自体のピアニストとしての高度な実演に裏打ちされた曲ですから、ピアニスト志望の徒の憧れとなるのも宜なるかなです。
星野さんは、尻上がりに調子を上げ、随分長いなと感じた演奏を演じ切ったのでした。兎に角テクニックは大したものです。

《休憩》
③間世田采伽 MASEDA Ayaka
P.I.チャイコフスキー『ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23』
〇楽器編成:フルート2、オーボエ2、B♭管クラリネット2、ファゴット2、F管ホルン4、F管トランペット2、トロンボーン3(テナー2、バス1)、ティンパニ、独奏ピアノ、弦五部12型
〇全三楽章構成
第1楽章アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ - アレグロ・コン・スピーリト
第2楽章アンダンティーノ・センプリチェ - プレスティッシモ - クアジ・アンダンテ
第3楽章アレグロ・コン・フォーコ

④森永冬香 MORINGA FUYUKA
P.I.チャイコフスキー『ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23』

二人の演奏を比べると各楽章とも、森永さんの演奏が一日(いちじつ)の長がある様に思えました。安定感も表現力も、オーケストラとの協奏というアンサンブルの観点からも、何にもまして、各パッセッジの切れも森永さんが上手でした。
でも二人が続いて演奏したから、各人の違いが、際だって聞こえたのかも知れません。若し森永さんがトップバッターで、間世田さんが、最後に演奏したとしたら、違って聞こえたかも知れない。今回の間世田さんの第1楽章序盤の強奏は、力が籠もっていて良いと思ったし、その後、Fl.(1)の合の手が入る中、間世田さんの右手奏はうねりを感じたし、その後のOb.⇒Cl.が鳴らされ、Pf.が同旋律を鳴らした辺りは◎でした。またカデンツァ部(1楽章)で、ピアノは、低音域からカデンツァに入り、右手と左手の掛け合い⇒高音域⇒下行など丁寧に弾いていたし、繰り返しパッセッジの1回、2回、3回とテンポを上げて弾いた箇所辺りも◎だと思いました。
何を言いたいかというと、、二人の別人が同じ曲の演奏を、他の曲の演奏を挟んだ後で弾いた場合と、続けて演奏した場合とでは、相当なスペシャルな聴く耳を持つ人(その曲を実際にかなりのレベルで弾いているピアニストがいい例かも知れませんが)でないと、多くの聴衆には、その違いが同じ様には聞こえない場合が多いのではなかろうかということです。
以上、今回聴いた本選の印象、感想を雑駁ですが、記憶が薄れない内に記しました。