
【日時】2026.8.25.(火)16:00〜
【会場】東京藝術劇場(池袋)
【管弦楽】新日本フィルハーモニー交響楽団
【指揮】角田鋼亮
【曲目】
①A.ドヴォルザーク『チェロ協奏曲 ロ短調 op.104』
演奏者:イ・ドンヨル(チェロ)
②S.プロコフィエフ『チェロと管弦楽のための交響的協奏曲ホ短調op.125』
演奏者:チョ・ユンソ(チェロ)
《20分の休憩》
③J.シベリウス『ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47』
演奏者:松木翔太郎(ヴァイオリン)
④チャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35』
演奏者:リ・スーイー(ヴァイオリン)
【演奏の模様】
14時開演から休憩を入れて終演は、19時頃、5時間に及ぶ熱闘でした。 先ず以外だったのは演奏順、先にチェロ協奏曲を二曲、そして休憩を挟んだ後半で、ヴァイオリンコンチェルト二曲が演奏されました。
①A.ドヴォルザーク『チェロ協奏曲 ロ短調 op.104』
演奏者:イ・ドンヨル(チェロ)
②S.プロコフィエフ『チェロと管弦楽のための交響的協奏曲ホ短調op.125』
演奏者:チョ・ユンソ(チェロ)
かなりの大曲とも言われるドヴォルザークのコンチェルと対峙したトップバッターのイ・ドンヨルさん。文字通り大曲に挑む挑戦者に相応しい、力を振り絞った奮闘振りを見せました。しかし全オケ全奏の大音には、ドンヨルさんのソロ音はしばし呑み込まれてしまうことも。第ニ楽章では、冒頭などやや弱含みの箇所も散見されました。第三楽章の入りは先ず先ずだったし、懸命に弾く姿は好感が持てたし、終盤のコンマスソロとの掛け合いは、ややVc.が力負けするも、最後の最後のドンヨルさんの調べは、有終の美を飾りました。
続いて女性チェロ奏者によるプロコフィエフのコンチェルトです。
初めて聴きましたが、仲々面白い作品でした。プロコのコンチェルトといえば、ピアノ協奏曲を思い出します。この曲もそれらに負けず劣らず高度な演奏技術を要する曲でした。それにもかかわらず、ヨンソさんは、果敢に難曲に挑み、殆どの箇所を力強く踏破して、しかも尻上がりにその調べも綺麗になってきて益々輝き、最後の山の頂きに立ったヨンソさんの満足そうな表情は印象的でした。やり切ったといった感じ。
全体的にカデンツァ部が重音奏のみならずハイテク奏の見せ所、聴かせ処が多かった。コンマスと第2ヴァイオリン首席との掛け合いもあり、ソロヴァイオリンとのやり取りは、プロコらしい遊び心に満ちた作品でした。
なお、①の演奏も含め、Ob.Cl.Fl.等の木管がソロVc.との掛け合いが、タイミング良く成され、木管トリオのみならず、Hrn.も安定した合の手を入れていたのが見事でした。勿論各種打楽器もピリリとソリスト音を引き締め、Vc.協奏曲のアクセントととなっていたことも特筆に値すると思いました。
《20分の休憩》
ファイナリストの演奏順は、少なくともヴァイオリン協奏曲の一つは、前半に演奏されるだろうと考えたのは、外れでした。後半にシベリウスとチャイコフスキーとが続けて演奏されました。
③J.シベリウス『ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47』
演奏者:松木翔太郎(ヴァイオリン)
松木さんは、ファイナリスト唯一の日本人です。
背高のしっかりした構えから振り下ろし戻され、弦上を行き交う弓は、生き物の様に呼吸し声高らかに謳い、シベリウスの質実剛健でお洒落な調べを、松木さんは、まるで森のフィトンチェドを吸い込み力を発散するが如く、体を大きく動かしながら、繰り出したのでした。
特に第1楽章のカデンツァは、圧巻でした。力強くもあり音は伸び、全オケの全楽強奏にフォローされた後の休止で力を貯めたか、更にオケ音を凌駕する強さが有りました。高音は絹糸の様に細く透き通り美しいものだった。第2楽章も相変わらず力強く、第3楽章では、序盤Timp.と低音弦楽奏の刻むリズムの上に乗って、松木さんのソロヴァイオリンが華麗な動きをし、その力強さは相も変わらず、最終場面では凄みを感じる力奏でした。
これまで色々シベリウスの協奏曲を聴いて来ましたが、若干荒削りとも思えるも、これだけ一貫して疲れも知らず完投出来る演者は、並々ならぬ底力を有した若者だと思いました。
ただ、一つ言えることは、全体的に素晴らしいとは思っても、何か自分の心を打つ様な感動的音波は伝わって来ませんでした。また微音、弱奏の機微を感ずる箇所も殆どなかった。そういう曲だと言ってしまえばそうかも知れませんが。
何れにせよ、まだお若いのですから、まだまだ伸びしろの大きい新人だと思った次第です。
④チャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35』
演奏者:リ・スーイー(ヴァイオリン)
スーイーさんは、中国国内およびアジア圏の国際コンクールを中心に輝かしい成績を残している様です。
検索結果だと、
中韓国際ヴァイオリンコンクールで 2019年に第1位を獲得しました。
国際音楽コンクールでの実績としては、2021年から2023年にかけて、Great Composersコンクールシリーズの「ベスト・ヴィエニャフスキ・パフォーマンス部門」で第1位を獲得したほか、イタリアの「チッタ・ディ・バルレッタ」国際若手音楽家コンクールなどでも優勝を重ねています。
現在は、活動拠点をアメリカのマンハッタン音楽学校(MSM)などで研鑽を積みながら、国際的な舞台へと活動の幅を広げている様です。
確かに、今回のチャイコ協奏曲の演奏を聴くと、初々しい荒削りの磨けば玉といった感じよりも、手練れた錬磨の奏者の印象が強かった。この曲は、何百回となく弾いたことがあり、難所も軽々と乗り越え、楽ちんの曲ですよと、訴えて来る様でした。勿論、スイスイと弾くその弓さばきは、見事なものがありましたが、例えば、第2楽章の管の序奏のあと、ヴァイオリンソロの憂愁に満ち満ちたチャイコ節の表情はもう少し暗くても良かったと思いましたが、最終楽章のオケ共々最後の華やかで熱狂的なフィナーレは、聴く者の気持を高揚させずにはおられないものでした。
これで4名のコンテスタント全員の演奏が終了です。会場からは大きな拍手が起こりました。

スーイーさんの演奏が終わったのが、19時頃、演奏開始からすでに5時間以上経っていました。フルオペラでも、これだけの時間の演奏会は少ないでしょう。会場アナウンスによれば、20時から入賞者発表と表彰式を行うらしいのですが、池袋のホールは自分の住む横浜から最遠の都内大ホールなので、おそらく20時からは、神尾審査委員長の講評があるかも知れない聴いてみたい、という気もしましたが、連日の暑さと長時間の演奏会を聴いたことで、かなり疲れたこともあり、残念ながら会場を後にし、帰りの電車の中で、この記録を書きました。家に着く頃には、コンクールの最終結果が出ることでしょう。
処で、8月20日に「横浜戸塚さくらホール」で、「早淵 綾香ヴァイオリンリサイタル」を聴きましたが、リサイタル終了後、会場出口で観客に見送りの挨拶をしていた早渕さんが、新日フィルの第2ヴァイオリニストであること、今度新日フィルの演奏も聴きに行くことなど短時間立ち話をしましたが、このコンクールのオーケストラの中に姿を見掛けました。
新日フィルは、メンバーの単独演奏会を推奨しているのか?今日のオケの中にも以前リサイタルやコンサートで聴いたことのあるビルマン聡平さんやチェロ奏者の広田 徹さんの姿もありました。今日のコンマスは崔さんではなかったですね。